野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

多摩地区街中自然観察・・・令和3年6月14日

 梅雨のような雨の間に薄日が差す頃合いを見計らって街中の自然を観察に歩きました。畑の周囲は自然があるように感じますが、綺麗に除草されています。作物以外の野の花は、却って、一般家庭の周囲に残されていました。アジサイは、例年より早く満開を過ぎていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)各種アジサイの様子

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(↑上の写真)各種ガクアジサイの様子

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(↑上の写真)左=コヒルガオ、中=ヒャクニチソウ、右=ホタルブクロ

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(↑上の写真)左=マツバギク、中=ハルシャギク、右=ゼニアオイ

 ゼニアオイ(銭葵)はアオイ科ゼニアオイ属。日本には江戸時代に鑑賞目的で渡来したものが逸出した越年生草本。原産地はヨーロッパ南部で、花はハーブティーになるそうです。和名の由来が載っている図鑑には「花の大きさが五銖銭と同じなので、銭葵と呼ばれるようになったという」と書かれています。しかし、江戸時代に渡来した花で、五銖銭は7世紀には中国で使われなくなっている貨幣で、江戸時代の人たちには馴染みがなかったはずです。しかも銭葵は、中国では漢名「錦葵」というそうで、銭葵の由来は俄かに怪しくなります。この花に関しては中国に倣い、錦葵がいいのではないでしょうか。錦葵なら上品さと香しさが表現されるのではないでしょうか。

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(↑上の写真)左=ヒメツルソバ、中=ペラペラヨメナ、右=ハキダメギク

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(↑上の写真)左=イヌガラシ、中=ノボロギク、右=ヤブガラシ

 ノボロギク(野襤褸菊)はキク科ノボロギク属。『APG牧野植物図鑑』によるとヨーロッパ原産で明治初期に渡来した帰化植物、各地の道端、空き地に生える1・2年草(越年草)ということです。和名の野襤褸菊は、上記図鑑では「ボロギク(サワギク)に似て野に生えるためという」と引用した表現になっています。サワギクとは花の姿が全く似ていないのに葉の形がちょっと似ているからといって、どうしてノボロギクとしたか疑問に感じます。他の説では、タンポ果(野楽力研究所の用語:タンポポのような実(痩果)の形)を遠くから見ると襤褸のようだから、というのがあります。タンポ果をそのように見るなら、タンポポの仲間はすべてボロギクということになります。野楽力研究所の和名の由来の提案です。ボロギクというのはダンドボロギク、ベニバナボロギクもすべてそうですが、花の開花を期待して待っていると遂に開花せずタンポ果になってしまうので、「折角大切に育てていたのに」と、がっかりします。この「なァーんだ咲かないのか」という感情をボロで表現したものと思います。ノボロギクも期待して開花を待っているといつの間にかタンポ果になってがっかりします。それで当にノ・ボロギクです。

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(↑上の写真)左=タチチチコグサ、中=チチコグサモドキ、右=スズメノカタビラ

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(↑上の写真)左=シモツケ、中=シロバナシモツケ、右=キンシバイ

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(↑上の写真)左=アメリデイゴ、中=常緑ヤマボウシ、右=シャラノキ(ナツツバキ)

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(↑上の写真)左=ウメ(完熟)、中=ダイコン、右=イヌタデ

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(↑上の写真)左=ヒマワリ、中=キュウリ、右=畑のある街中の風景

 

 

入笠湿原・入笠すずらん山野草公園・・・令和3年6月6日

 登山途中で予報通り、雨が降り出したので入笠山(にゅうがさやま)にある入笠湿原のクリンソウと入笠すずらん山野草公園のホテイアツモリソウを見ることを今日の目当てにしました。東京の四月初旬の陽気でした。

<↓入笠湿原にて>標高=1734m

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(↑上の写真)左=湿原風景、中=クリンソウ、右=クリンソウの群落

 クリンソウ九輪草)はサクラソウサクラソウ属。北海道、本州、四国の山地の谷川沿いの湿地に生える多年草だそうです。『APG牧野植物図鑑』によると「和名九輪草は、花が何段も輪生するのに対し、最大の数を表す九を当て嵌めたもの」とあります。そうかな?と思います。花が何段も輪生している様子は仏教寺院の塔の先端を飾っている宝輪(九つあるので九輪ともいう)にそっくりです。しかし、その数は、最大の数の九を表しているのではなく、「Web:やさしい仏教入門」によると九輪は五大如来と四大菩薩を表しているということです。数が多いことを表すのは、八ヶ岳に象徴されるように八のはずで九ではありません。勝手な説を立てましたが、一理ありそうに思いますが、どうでしょうか。

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(↑上の写真)左=スズラン、中=チゴユリ、右=シロバナノヘビイチゴ

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(↑上の写真)左と中=ミヤマエンレイソウ、右=ミヤマバイケイソウとオオハンゴウソウの若草

 ミヤマエンレイソウ(深山延齢草)はシュロソウ科エンレイソウ属(以前はユリ科)。別名シロバナエンレイソウ。北海道から九州の山地の木陰に生える多年草。ミヤマ(深山)とつきますが、エンレイソウより高山に生えるということではないそうです。エンレイソウは延齢草で、根茎を干したものが生薬で胃腸薬とされます。有毒サポニンを含むので誤飲すると危険ですが、食べ物を吐き出させる効果があり、命拾いをすることがあるということで延齢草とついたともいわれます。外側と内側の3枚の花弁のように見えるものは萼片で、内側の萼片(内花被)は白く(花が終わりなので色づいています)花弁のようですが萼片だそうです。エンレイソウの萼片(普通内花被はありません)は紫色ですが、ミヤマエンレイソウの内花被は白色です。

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(↑上の写真)左=スズラン群生地、中と右=この群生地では、まだ花が一部開き出した状態。

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(↑上の写真)左と中=ズミ。右=山彦山荘を望む入笠湿原

 ズミ(酸実、桷)はバラ科リンゴ属。各地の山地、特に湿地に生える落葉低木ないし小高木。ウィキペディアによると「リンゴに近縁な野生種で、和名は、樹皮を煮出して黄色の染料を取ることから染み(そみ)というのが、語源と言われている。別説には、実が酸っぱいことから酢実、とよばれ、語源になった」ともいわれるそうです。ズミというと遠い故郷の山々を思い出しますが、花や実が、カイドウ、リンゴ(いずれもバラ科リンゴ属)、ナシ(バラ科ナシ属)に似ることから、ヒメカイドウ、コリンゴ、コナシなどとも呼称されるようで、こういう呼称を聞くと急に身近に感じられますね。 

 

<↓入笠すずらん山野草公園にて>標高=1740m

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(↑上の写真)左=(ホテイ)アツモリソウ、中=クマガイソウ(花最後の一株)、右=ヤマシャクヤク

 アツモリソウ(敦盛草)はラン科アツモリソウ属。本州中部地方以北の山地の草原に生える多年草クマガイソウ(熊谷草)はラン科アツモリソウ属。北海道から九州の山地の木陰に群生する多年草。写真のホテイアツモリソウはアツモリソウの変種とされ、地元の方はさらに釜無川に因んでカマナシホテイアツモリソウといって、大切に保存しています。ホテイは布袋様の布袋で、唇弁(花の下の膨らんだ部分)の膨らみが布袋様のおなかの膨らみに似ているということに由るものです。普通のアツモリソウはこれほどには膨らんでいないようです。アツモリソウは平敦盛、クマガイソウは熊谷直実に因んでいますが、一の谷の合戦で熊谷直実が平山季重と先陣争いをしたとき、平敦盛を組み伏せて首級を取ったといわれます。この花は、その時の互いに背負っていた母衣(ほろ)に見立てて名づけられたといいます。

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(↑上の写真)左=恋人の聖地八ヶ岳展望台も雨の中、中と右=すずらん園にて

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(↑上の写真)どれもマイヅルソウ

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(↑上の写真)左=サクラソウ、中=アマドコロ、右=クリンユキフデ

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(↑上の写真)左=ズダヤクシュ、中=ツバメオモト、右=ベニバナイチヤクソウ

 ズダヤクシュ(喘息薬種)はユキノシタ科ズダヤクシュ属。北海道、本州、四国の亜高山帯の林下に生える多年草。地味な花なので、眼を止める登山客はほとんどありませんが、薬効があると言われています。ズダとは長野、福井、富山県方面の喘息の呼び名ということです。ヤクシュは薬種で薬ということで全草を乾燥させて、お茶のように煎じて飲むようです。しかし、今では残念ながら自然保護の観点から採取して試してみるわけにはいきませんね。ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)は、イチヤクソウと同種でツツジ科イチヤクソウ属。本州中部以北から北海道の亜高山帯の森林内に群生する常緑の多年草。日本薬学会HPによると根毛が発達せず、内生菌根と共生することで栄養を得る菌根植物だそうです。『牧野富太郎植物記2 野の花2』では、この種子が芽を出すと根菌と呼ばれる菌類がまつわりつき、これに養われて育つということです。このために、移植栽培は難しいとされています。民間では生の葉汁を打撲傷、切り傷の外用に、また保温を目的に浴湯料に、また煎液には利尿作用があり、脚気やむくみによいとされています。このように和名は1つの薬草で諸病に効くことから「一薬草」といわれるようになったということです。イチヤクソウの白い花に対してベニバナイチヤクソウは紅い花です

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(↑上の写真)左=レンゲツツジ蕾、中=ヤグルマソウ蕾、右=ササバギンラン

 

 

都立長沼公園・・・令和3年5月25日

 今日は真夏のような日照りでした。ヤマボウシが満開で陽を照り返していました。コアジサイも咲き始めました。サイハイランが群落で満開でした。群落は、付近にたくさんありました。この珍しい様子は今、ここでないと見られません。今日の自然の様子です。

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(↑上の写真)どれもヤマボウシ、中=花のアップ、右=花の裏側

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(↑上の写真)左=コアジサイ、中=ウグイスカグラ実、右=ヤブムラサキ(裏側から)

 コアジサイ(小紫陽花)はアジサイアジサイ属。山渓ハンディ図鑑4『木の咲く花』2によると「関東地方以西の本州、四国、九州の山地や丘陵の明るい林内や林縁など普通に見られる日本固有の落葉低木」という。「葉は対生で縁には三角状の鋸歯が規則的に並ぶ。花は6~7月、枝先に直径5cmほどの散房花序を出す。装飾花はなく、花はすべて両性花の小花の集まり。花弁は白色から淡青色で5枚。なお、葉は秋には黄葉する。種子は約0,6mmと小さい」という。今の時期、花を林縁に見ることが出来ます。上の写真では白色ですが、紫色のように色づいたものもあります。

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(↑上の写真)どれもサイハイラン、右=ランの仲間であることを示す花のアップ写真

 サイハイラン(采配蘭)は、ラン科サイハイラン属。日本、東アジアの山地の木陰に生える多年草という。葉は、越冬性で、写真のように開花と前後して枯れるので茶色になった葉も写っています。その後、新しい葉を伸ばし、その葉は越冬します。部分的菌従属栄養植物ということです。菌類から必要な栄養をもらっているので葉の数が少なくても栄養が足りるとのこと。葉が広いので、他の草の葉が枯れている冬の間にも栄養を貯めているようです。そのうち従属栄養専科になるとオニノヤガラのように葉が無くなると考えられています。和名は、花の様子を武将の采配に見立ててつけられました。

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(↑上の写真)左=トリアシショウマ、中=オカタツナミソウ、右=園路

 トリアシショウマ(鳥脚升麻)はユキノシタ科チダケサシ属の多年草。トリアシショウマはアカショウマと似ていて区別がつきにくいです。ヤマブキショウマとは葉の形がヤマブキにそっくりで葉脈がはっきりしていて、葉が厚いので区別できます。矢野亮監修『日本の野草』夏編によると「北海道、本州(中部地方以北)の山地の林内や草原などに生えるアカショウマの1変種」ということです。だから似ているわけです。牧野富太郎著『牧野新日本植物図鑑』によると「草丈60cm内外、葉は2~3回3出複葉。小葉は薄く卵形または長卵形で先端は尾状に鋭く尖り、縁には重鋸歯があり、長さ3~10cm位」とあります。頂小葉の先端が尾状に鋭く尖るというところが区別点です。上の写真は、花に近づけずに撮りましたが、尾状の感じは撮れています。草姿が漢方の升麻に似ていて、花茎が丈夫にすっと伸びている感じが鳥の足ではなく、脚に似ているということだそうです。3出複葉が鳥の足(指)に似ているのかと思いましたが、そうではないようです。

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(↑上の写真)左=ドクダミ、中=オオバコ、右=ヘビイチゴ

 ドクダミ(蕺草、蕺)はドクダミドクダミ属。『牧野富太郎植物記2 野の花2』によると「日本のほか中国、インドシナ半島にしか分布しない世界的には名高い珍しい植物」ということです。「中心の花穂は、小花の集まり。この小花は、花弁も萼もなく、3本の雄しべと1本の雌しべがあるばかりで、雄しべも雌しべもしなびていて繁殖能力がありません。そのため種子が出来ず、もっぱら、地下茎を伸ばして繁殖します」と書かれています。しかし、多田多恵子著『したたかな植物たち』によると「日本のドクダミは、3倍体で受粉せずに結実〈単為生殖〉する」とあります。牧野先生より多田先生の方が現代の学者なので、多田先生を信じたいと思います。ドクダミの繁殖の様子を見ていると地下茎だけでなく、飛散した種子から芽生えたとしか思えない離れたところで芽生えが見つかり、繁殖しているのを見ることがあります。皆さんは如何でしょうか。なお、ドクダミの語源は、毒にも痛みにも効くという意味の「毒痛み」や独特のにおいが毒を溜めているようなので「毒溜め」が転訛したという説や抗菌や殺菌作用を持つので「毒を消す」という意味で「毒を矯める」と言われ「毒矯め」からドクダミになったという説もあります。

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(↑上の写真)左=リョウメンシダ、中=オクマワラビ、右=ヤマイタチシダ

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(↑上の写真)左=イノデ、中=ベニシダ、右=ヤブソテツ

 

津久井湖城山公園・・・令和3年5月17日

 神奈川県立公園です。ちょうど花の端境期で見られる花の種類は少なかったですが、オカタツナミソウ、フタリシズカは満開でした。ここでは、ミミガタテンナンショウが見られるのですが、今回は咲き終わっていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=筑井古城碑、中と右=オカタツナミソウ

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(↑上の写真)左=フタリシズカ、中=ジシバリ、右=ブタナ

 フタリシズカ二人静)はセンリョウ科チャラン属。日本各地の山地や林野に生える多年草。茎は分枝せず節がある。葉は一見、輪生に見えますが、対生し輪生状ではありません。ヒトリシズカは群生しますが、フタリシズカは、疎らに生え、なかなか広がりません。ヒトリシズカの花が終わるとひっそり咲き始めるのがフタリシズカ。花びらは無く、白い雄しべ(内側に花粉がついている)が雌しべを直接包み込んでいる形の花が花軸に並んでいます。花穂は普通フタリシズカと言われる所以の2本ですが、写真のように3本以上あるものもあります。ここ城山公園では2本だけというのが稀で、ほとんどが写真のような具合です。こうなると静ではなく、姦しいということになるでしょう。何をがやがや話しているのでしょうか。

 ブタナ(豚菜)はキク科ブタナ属。ヨーロッパ原産で、日本では昭和10年代に札幌と神戸で帰化が確認され、それ以後、帰化植物として各地に分布するようになった多年草。ブタナはフランス語の俗名で豚のサラダと言われていたものを翻訳したものだそうです。20年ほど前、多摩市で見られて以来、分布を周辺に広げ、今では多摩地区全域で見られます。葉が根元にロゼット状につき、花茎は普通途中で二股に分かれ、それぞれに鮮やかな黄色のタンポポ花をつけます。葉のつき方、花茎が二股に分かれるのが特徴で、見分けがつきます。

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(↑上の写真)左=ハルジオンとヒメジョオン、中=吸蜜するアサギマダラ、右=ヤブヘビイチゴ

 今まで春にはハルジオン(春紫苑)キク科ムカシヨモギ属が咲いていましたが、これからはヒメジョオン(姫女苑)キク科ムカシヨモギ属も咲き始めるので、両者が咲いていると区別がしにくくなります。上の写真は両者が写っています。ヒメジョオンは写真では、まだ咲いていません。名前は、ハルはジオンで、ヒメはジョオンです。お姫様は女性なのでジョオン(女苑)です。以下の特徴を確認すると区別が容易です。そのつもりになって観察してください。ハルジオンの茎を軽くつぶすと中空であることが分かります。ヒメジョオンは、充実していて堅いので、強そうに見えます。葉の基部が茎を抱いているようならハルジオンで、ちょっと葉柄がある感じだったらヒメジョオン。花の蕾がうつむいてうなだれている様だったらハルジオン。これは咲いてしまうと区別し難いです。どの図鑑にも書かれていませんが、ハルジオンの根は、ひげ根ですが、ヒメジョオンの根は、ゴボウ根、即ち主根がまっすぐ伸びています。除草する場合などに観察ください。

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(↑上の写真)左=エゴノキ、中=マルバウツギ、右=男坂の通行止め

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(↑上の写真)左=ハカタシダ、中=ヤブソテツ、右=オオバノイノモトソウ

 

オオムラサキセンター農村公園・・・令和3年5月14日

 山梨県北杜市オオムラサキセンター農村公園を訪れました。時節柄、訪れる人が全く無く、じっくり自然観察です。水辺にはコウホネリュウキンカカキツバタキショウブの花が咲き、園路にはホタルカズラが足元に咲いていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=水車小屋のある農村公園の風景、中=コウホネ、右=リュウキンカ

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(↑上の写真)どれもマムシグサ、仏炎苞が左と中=暗紫色、右=数の少ない緑色

 マムシグサ(蝮草)はサトイモ科テンナンショウ属の多年草。北海道から九州にかけて分布し、山地や原野の湿った林床に生え、日本には同属の自生種が30種ほどあるそうです。(多田多恵子著『したたかな植物たち』より翻案)マムシグサは雌雄異株なので花が咲き終わると、実を結ぶのは雌株のみ。仏炎苞の中にちょっと顔を見せている花軸の先端の付属体と呼ばれる棍棒状のものは、特殊な臭いを放ち、キノコバエの仲間をおびき寄せます。この匂いにキノコバエは、ふらふらと酩酊し、仏炎苞の筒状になった底の方に転落していきます。それが雄株だったら、転落した先に雄花が花粉を出していて、キノコバエは、酩酊状態で飛び回り、花粉まみれとなります。酩酊から覚めると底の方に逃げられる孔(あな)が用意されていて、孔から飛んで逃げます。花粉まみれとなって必死に逃げだしたキノコバエは、今度は雌株の付属体の匂いに、またもやふらふらと酩酊し、雌株では奈落の底となる仏炎苞の筒状の底に転げ落ちます。そこに雌花の柱頭がたくさん突き出ていて、ふらふら酩酊して動いているうちに、雄株で花粉まみれとなった花粉を結果的に柱頭にこすりつけることになり、マムシグサの戦略による受粉が完成することになります。キノコバエは酩酊から覚めて、逃げようとしますが、雌株には雄株と違って逃げられる孔が用意されていません。徹底的に花粉を剥ぎ取られるわけです。孔がないなら上に逃げようとしても労力を使い果たしてふらふらで、却って付属体の下にある鼠返しのために奈落の底に跳ね返され、キノコバエはそこで一生を終えるというわけです。そのうちできるマムシグサの赤い実の陰には、隠された残酷物語があるんですね。

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(↑上の写真)左=ホタルカズラ、中=ウシハコベ、右=キショウブ

 ホタルカズラ(蛍蔓)はムラサキ科ムラサキ属。日本全国の山野の乾燥地や林中の半日陰の草地に生える多年草。別名蛍草。紫色の花弁には目立つ白い稜があり、その対比が見事で、緑の草の中の蛍の光に譬え、走出枝で増えるので蛍蔓と名づけられたようです。澤田ふじ子著『羅城門』に蛍草が出てきます。(秦高成によって気を狂わされたもず女の夫、真継が殺されたことに端を発した飛騨番匠たちの暴動が平定されてしまって)「なすべきことも果たさずに、矢を射かけるとは、外道の仕打ちじゃ。これでは、真継も死んだ五百枝(いおえ)たちも浮かばれまい……」平湯の蔵六は、もず女がふと小腰をかがめ、蛍草を摘むのを見てつぶやいた。古川の安国など、先き程から、穴麻呂の徒党に加わり、大きな騒動をひき起こしてやりたいと口走っている。(番匠たちの緊張の中で、気が触れたもず女が独り無心に蛍草を摘んでいる。)著者は、蛍のように輝く蛍草を気が触れたもず女に癒しとして無心に摘ませたかったんですね。

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(↑上の写真)左=ササバギンラン、中=カキドオシ、右=クサノオウ

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(↑上の写真)左=オヘビイチゴ、中=ミツバツチグリ、右=ヤブヘビイチゴ

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(↑上の写真)左=ギシギシ、中=スギナ、右=オオムラサキセンター入口

 

高尾山(1号路→山頂→6号路)・・・令和3年5月6日

 高尾山(599,15m)は季節の訪れが平地よりも遅いようで、シャガが満開でした。タカオスミレが咲いています。クワガタソウが満開で、この時期の来ないと見られませんね。なお、6号路は14:00までは上り専用の一方通行路になっていました。今日の高尾山の山野草の様子です。(写真をクリックすると拡大されます。)

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(↑上の写真)左=高尾山登山口(右端が1号路登山口)、中と右=シャガ

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(↑上の写真)左と中=タカオスミレ、右=フタリシズカ

 タカオスミレ(高尾菫)はスミレ科スミレ属。昭和3年に高尾山で最初に発見されたので名づけられ、その後、30年ほど前、ヒカゲスミレの一品種とされたそうです。花後赤褐色の葉は緑色に代わるそうで、そうするとヒカゲスミレでいいようですが、咲く時期がずれているのでどうでしょうか。コミヤマスミレに花の時季も葉の色も似ています。素人には傍観するしかありませんが、ここでは、せっかく高尾山に来たのですから、タカオスミレとしておきます。(菱山忠三郎著『高尾山 花と木の図鑑』、その他Webを参照)

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(↑上の写真)左=オカタツナミソウ、中=コバノタツナミ、右=霞台からの眺望

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(↑上の写真)左=山頂に設置された五輪マーク、中=キンラン、右=ヤマツツジ

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(↑上の写真)左=ヨゴレネコノメの花後の様子、中と右=クワガタソウ

 クワガタソウ(鍬形草)はオオバコ科クワガタソウ属。(ウィキペディアによると)「日本固有種。本州の東北地方から関東地方・中部地方の太平洋側、紀伊半島に分布し、山地の樹林下や沢沿いなどのやや湿り気のある場所に生育する」ということで、ほとんどの図鑑は、これと同じ表現です。しかし、「北海道、サハリンに分布」という図鑑もあり、高尾山の分布はどうなりますかということになります。花については、これはどの図鑑も「花冠は深く4深裂し」とあり、花弁(花びら)が1枚なのか、4枚なのか、離弁花なのか、合弁花なのか、明確に説明している図鑑は見当たらず、基本情報ともいうべき花弁(花びら)について触れている図鑑が見当たりません。今回の観察で、その点を見過ごしてしまったのは悔やまれます。なお、和名の鍬形草について兜の鍬形に似ているというのは、どの図鑑でも同じですが、果実の形が似ている、というものと、花の雄しべ2本が対で立っている姿が鍬形に似ているというものもあります。どちらもそれらしく感じます。

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(↑上の写真)左=ジュウニヒトエ、中=キランソウ、右=ミズナ

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(↑上の写真)左=ホウチャクソウ、中=ヘビイチゴ、右=ヤブヘビイチゴ

 ヘビイチゴ(蛇苺)とヤブヘビイチゴ(藪蛇苺)は、ともにバラ科キジムシロ属で、日本各地の山地の林の縁などに生える多年草です。ヤブヘビイチゴヘビイチゴよりも草姿が大きく、実がある時は苺の色や種子(痩果)に皺がないのがヤブヘビイチゴということでルーペを使って比べているようです。花の時季に違いを知りたいですね。簡単な区別点は花弁の外側の萼、両方とも尖っています。そのさらに外側に副萼片がついていて、ヤブヘビイチゴは写真のように大きく広がっています。詳しく言えば副萼片の先端が5つほど切れ込んでいます。ヘビイチゴは写真では写っていないように副萼片が小さく、先端の切れ込みも3つくらいです。これでかなり判別できると思います。

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(↑上の写真)左=ツルカノコソウ、中=その匍匐枝の先端、右=カキドオシ

 ツルカノコソウ(蔓鹿子草)はスイカズラ科カノコソウ属。『APG牧野植物図鑑』によれば、「本州、四国、九州及び台湾、中国南西部に分布し、山地の湿った木陰などに生える多年草。茎の葉は羽状に裂けるが、根生葉と走出枝の葉は広卵形。花後に細長い走出枝を根元から著しく伸ばして繁殖することが和名の起こりである。」という。もともと「鹿子草」のピンクの花が鹿の子絞りに似ているので鹿子草と名づけられ、その鹿子草に草姿が似ていて、根元から蔓のように送出枝を出して繁殖するので、ツルカノコソウと名づけられたようです。走出枝の先端は写真のように広卵形の葉なので、これがツルカノコソウの芽とは、見落としがちです。写真では走出枝が随分出ています。

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(↑上の写真)左=ココメウツギ、中=マルバウツギ、右=クサノオウ

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(↑上の写真)左=ホソバカナワラビ、中=ヤマイタチシダ、右=イノデ

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(↑上の写真)左=ジュウモンジシダ、中=シケチシダ、右=ハカタシダ

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(↑上の写真)左=参道の様子、中=山門内の北島三郎歌碑、右=6号路の様子

多摩地区街中自然観察・・・令和3年5月3日

 コロナ禍で出かけることが遠慮されるこの頃です。巣ごもりの中、ちょっとご近所の自然を観察してみました。どんな草花が観察されるでしょうか。外来種が多いので和名はいろいろつけられているようです。今日の自然の様子です。

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(↑上の写真)左=畑も残る街中、中=ヒルガオ、右=コヒルガオ

 ヒルガオ(昼顔)はヒルガオ科。『牧野植物図鑑』によると「日本各地、朝鮮、中国に分布し、野原や道端に普通に見られる多年草。地中を横走する白色の地下茎から長い蔓性の茎を出して捲きつく」ということです。コヒルガオと似ています。ヒルガオ、コヒルガオは花の大小だけでは、育ちによるので見分けられないことがあります。区別点は葉の耳の形(正式には葉脚と言うそうです)の違いです。ヒルガオは写真のように葉の耳が三角形、従って尖りが一つですが、コヒルガオの葉の耳は、尖りが2つになっています。上の写真を参考に、これからの花ですから、実物をご覧ください。

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(↑上の写真)左=ユウゲショウ、中=ヒルザキツキミソウ、右=ナガミヒナゲシ

 ユウゲショウ(夕化粧)はアカバナ科マツヨイグサ属。『日本帰化植物写真図鑑』によると、「熱帯アメリカ原産でヨーロッパやアジアで野生化している多年生草本で夏から秋にかけて茎の上部に花を咲かる。明治年間に花卉として輸入され、関東以西で逸出、野生化している」ということです。和名の由来は、午後遅くに紅色の艶っぽい花をあたかも夕化粧をしているかのように咲かせることからといわれますが、実際には昼間でも開花していますね。艶っぽく見えるでしょうか。

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(↑上の写真)左=ツルニチニチソウ、中=コマツヨイグサ、右=ムラサキツユクサ

  コマツヨイグサ(小待宵草)はアカバナ科 マツヨイグサ属。『日本帰化植物写真図鑑』によると、北アメリカ原産で、アフリカやアジアに広く帰化している越年生草本で、茎は斜上または匍匐して基部から能く分岐し、屡々上の写真のようにマット状に広がるということです。マツヨイグサがまだ花の時季を迎えない前に月見草(=待宵草)と同じような花を開くので、ちょうど菜の花に代わって月を愛でている感じでしょうか。

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(↑上の写真)左=ムラサキカタバミ、中=イモカタバミ、右=シロカタバミ

 ムラサキカタバミ(紫片喰)はカタバミ科カタバミ属。南アメリカ原産で江戸時代末期に観賞用として導入されて以降、日本に広く帰化環境省により要注意外来生物に指定されています。しかし、赤紫の花色が淡く、清楚な感じがしますが、夏場に橙色のサビ病が多発し、それが毎年同じところで発生し、現在、随分数を減らしています。種子を作らず木子(きご)といわれる母球の周りの小さな球根でふえるので株を取り除くと消滅してしまいます。代わって南アメリカ原産で戦後帰化したモカタバミ(芋片喰)が急速に数を増やし、多摩地区ではムラサキカタバミを圧倒しています。花弁の色が鮮やかな赤色で、中心部はさらに濃い赤色になっているので見分けられます。根が芋の数珠のようになっているので名づけられたそうです。シロカタバミ(白片喰)は別名シロバナイモカタバミといわれ、イモカタバミの白花をいうそうです。

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(↑上の写真)左(緑葉)と中(赤葉)=同種のカタバミ、右=タチカタバミ

 カタバミ(片喰、牧野富太郎傍食を用いる)は、カタバミ科カタバミ属。世界の暖帯から熱帯に広く分布し、日本各地の道端に生える多年草。多田多恵子著『したたかな植物たち』によると「葉が緑のものをカタバミ、葉が赤みがかるものをアカカタバミ、中間色のものをウスアカカタバミと呼び分けることもあるが、同じ種類の中での個体差である。花は朝開き、午後には閉じるが、午前中に活動するハチに合わせて花を開き、ハチが活動しない時や雨の日は花を閉じて花粉の流出を防いでいる。3つの小葉を合わせた葉元に水分量で葉の開閉をする組織があり、葉も夜には閉じて、夜間に放射冷却で葉の温度が下がるのを防ぎ、また、日中でも光が強く葉の温度が上昇しすぎる時には、葉を閉じて温度を下げるようにしている」ということです。足元の何気ない植物ですが、なかなか賢い生活をしているんですね。

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(↑上の写真)左=ペラペラヨメナ、中=ツタバウンラン、右=コモチマンネングサ

 ペラペラヨメナ(ぺらぺら嫁菜)はキク科。『日本日本帰化植物写真図鑑』によると、「中央アメリカ原産で、主に花卉として栽培される多年生草本。茎は基部で分岐して、斜上または、匍匐して長さ50cmほどになる。下部の葉は柄があって3~5裂し、上部の葉は全縁で無柄、互生する。観賞用に導入されたが昭和24年に京都市で野生化が知られ、その後、関東以西に広まった」といいます。茎の下の方の葉には、菊のような切れ込みのある葉がありますが、上部花近くの葉は、写真のようにすっとした細い葉(披針形)をつけています。種子が飛ばされてあちこちで芽生えるので、街中でも大分増えています。親株はどこにあったのかを調べてみるのも楽しいです。名前が何とも妙です。

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(↑上の写真)左=ハコベ、中=ウシハコベ、右=アメリカフウロ

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(↑上の写真)左=キショウブ、中=シラン、右=チガヤ

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(↑上の写真)左=ナズナ、中=コグンバイナズナ、右=ノボロギク

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(↑上の写真)左=ハルジオン、中=ヒメジョオン、右=カラスノエンドウ

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(↑上の写真)左=キュウリグサ、中=セリバヒエンソウ、右=ヤブジラミ

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(↑上の写真)左=モッコウバラ(白)、中=モッコウバラ(淡黄)、右=ノイバラ

 モッコウバラ(木香薔薇)はバラ科バラ属。『牧野植物図鑑』によると「中国原産の蔓状によじのぼる低木。享保年間(1720頃)に渡来し、現在ではしばしば庭などに植えられる。5月ごろ枝の先端に散房花序の花をつけ、盛んに淡黄色または、白色の八重咲の花を開く。白色のものは芳香を放ち、黄花のものは匂わない」とあります。湯浅浩史文『花おりおり』には「大勢の人が薔薇を愛してやまない。だが棘がある。薔薇愛好家の手を見て栽培をためらう向きに、この種類をどうぞ。棘がない。花は小ぶりの八重。淡い色調が上品だ」と奨めています。因みに秋篠宮眞子さまのお印は淡黄色の方の木香薔薇だそうです。

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(↑上の写真)左=ハクチョウゲ、中=コデマリ、右=カナメモチ