野楽力研究所

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東京多摩地区街中自然観察・・・令和6年4月19・20日

 草花が随分多くなり街中での自然観察が楽しくなってきました。昨日と今日の様子をご紹介します。

(↑上の写真)左=街中風景、中=オニタビラコ(鬼田平子)、右=ハハコグサ(母子草)

 ハハコグサ(母子草)はキク科ハハコグサ属。『APG牧野植物図鑑』によると「東アジアの温帯から熱帯に分布し、日本では各地の道ばた、畑、荒地などにふつうに生える越年草。葉と共に白軟毛でおおわれる。花は春から夏。和名は、本来はホオコグサが正しく、茎の白毛や花の冠毛がほおけ立っていることに因むという。春の七草のオギョウはこの草で若苗を食べる」とあります。しかし、ホオコグサの名づけのわけは分かりましたが、オギョウの謂れの説明がありません。深津正著『植物和名の語源』を読むと「『文徳実録』に嘉祥3年3月に文徳天皇の父君である仁明(にんみょう)天皇崩御され、5月には祖母君にあたる嵯峨太皇太后が続いて崩御され、お二人は母子である。ところでその年、餅草(母子草)が不作で餅が作れなかった。不作なのは、母子が亡くなられたことを(天が)悲しんだためといわれた。それでこの餅草のことを母子草というようになった、という記述がある」と指摘し、母子草の名づけのわけを説明しています。さらに「この餅草は、仁明帝母子の悲運を衆に知らしめたというので、この餅草は仁明天皇母子の御像(みすがた)つまり御形(みかたち)を具現したものであると考えられた。それで後世の人が帝母子の御形を具現した草という意味で、この草を御形(おぎょう)と称えるようになったもの、と(文徳実録が)述べている」とあります。これでハハコグサ、オギョウの名づけの由来がお分かりになったと思います。春の七草ハハコグサのことをなぜオギョウというのか、今、分かりましたね。

(↑上の写真)左=ホトケノザ(仏の座)、中=キュウリグサ(胡瓜草)、右=ウラジロチチコグサ(裏白父子草)

 キュウリグサ(胡瓜草)はムラサキ科キュウリグサ属。『APG牧野植物図鑑』によると「アジアの温帯から暖帯に分布し、日本各地の道ばたに生える越年草」とあります。下部の葉(特に根生葉)には長い葉柄があるので似ているハナイバナと区別が付けられます。山田隆彦著『草花・雑草図鑑』には「葉を揉むとかすかにキュウリの香りがすることからこの名がついた。端がサソリの尾のように巻いている花序が、花が開いていくにつれてだんだんまっすぐになって伸びていく。これをサソリ形花序(巻散花序)といい、ムラサキ科の特徴」とあります。

(↑上の写真)左=キツネアザミ(狐薊)、中=ハルジオン(春紫苑)、右=アメリカフウロ(亜米利加風露)

 キツネアザミ(狐薊)はキク科キツネアザミ属。『APG牧野植物図鑑』によると「オーストラリアや東南アジアに広く分布し、日本では本州、四国、九州の道端や田畑に普通に生える越年草。葉は柔らかく、刺は無い。花は春から初夏。和名は、アザミに似ているがよく見るとアザミではなく、狐に騙されたような気分になるという意味」という(一部翻案)。冨成忠夫著 野草ハンドブック1『春の花』には「キツネという響きにはなんとなくうさんくさい感がある……花の色があまり冴えない点からも、キツネの名をつけた人の気持ちがうなずける」と述べています。しかし、背の低い草の生えた野原の端で、この花が首筋を伸ばして楚々と咲いている姿は、和服姿のうなじの延びた女性の後姿を彷彿とさせます。それが、キツネの化けた女性かなと想像すると、この花に近寄りがたい妖艶さを感ぜざるを得ませんが、どうでしょうか。

(↑上の写真)左=ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟)、中=シロバナスミレ(白花菫)、右=ヒメツルソバ(姫蔓蕎麦)

 ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟)はケシ科ケシ属。雛罌粟はコクリコと読みフランス語でヒナゲシのことだそうです。ナガミヒナゲシはヨーロッパ地中海沿岸原産の1年草で、秋に発芽し、ロゼット状態で越冬し、春先に急に大きくなり花を咲かせます。花期は4月から6月。昭和36年(1961年)世田谷で初めて帰化が報告され、それ以来、急速に分布を拡大しています。花後細長い円筒状の果実を作るので、その様子からケシの実のように丸っこくなく、長いので「長実」、花はケシより小さいので「雛ケシ」というわけでナガミノヒナゲシと名づけられたそうです。1つの果実に約1500粒の種子を作り、一株に多数の果実をつけるので、爆発的に個体数を増やしています。自然観察していても年々分布が拡大していることが実感できます。皆さんの家の周りではどうですか?昭和36年世田谷で見つかった子孫というわけです。(日本日本帰化植物写真図鑑、Web「川越市」、H21年4月19日付朝日新聞朝刊などを参照、引用翻案しました。)

(↑上の写真)左=ノミノツヅリ(蚤の綴り)、中=ペラペラヨメナ(ペラペラ嫁菜)、右=ノゲシ(野芥子・野罌粟)

 ノミノツヅリ(蚤の綴り)はナデシコ科ノミノツヅリ属。『APG牧野植物図鑑』によると「アジア・ヨーロッパの温帯から亜熱帯に広く分布。日本各地の道ばたや荒地、田、草原などに普通に生える越年草」とあります。よく見ると各節ごとに対生の葉腋から分枝し、先に向かって倍、倍に広がり、小さい草に関わらず、大きく勢力範囲を広げる、なかなか頼もしい草です。花は拡大してみると可愛らしい5弁花で白い花弁の間に萼が緑をのぞかせています。因みにノミノツヅリは小さい蚤に着せる粗末な着物ということのようです。

(↑上の写真)いずれもカタバミ(片喰)、左=茶色葉、中=緑葉、右=中間

 カタバミ(片喰、牧野富太郎傍食を用いている)は、カタバミ科カタバミ属。世界の暖帯から熱帯に広く分布し、日本各地の道端に生える多年草といわれます。多田多恵子著『したたかな植物たち』によると「葉が緑のものをカタバミ、葉が赤みがかるものをアカカタバミ、中間色のものをウスアカカタバミと呼び分けることもあるが、同じ種類の中での個体差である。花は朝開き、午後には閉じるが、午前中に活動するハチに合わせて花を開き、ハチが活動しない時や雨の日は花を閉じて花粉の流出を防いでいる。3つの小葉を合わせた葉元に水分量で葉の開閉をする組織があり、葉も夜には閉じて、夜間に放射冷却で葉の温度が下がるのを防ぎ、また、日中でも光が強く葉の温度が上昇しすぎる時には、葉を閉じて温度を下げるようにしている」ということです。足元の何気ない植物ですが、なかなか賢い生活をしています。赤い葉と緑の葉のカタバミは別種と思われがちですが、多田多恵子氏のこの説明によると「どれも同種で色の違いは個体差」ということです。中間の色のものも同種とうことで分ける意味はないということです。

(↑上の写真)左=タチカタバミ(立片喰)、中=ツタバウンラン(蔦葉鄆闌)、右=マツバウンラン(松葉鄆闌)

(↑上の写真)左=イモカタバミ(芋片喰)、中=シロバナイモカタバミ(白花芋片喰)、右=ユウゲショウ(夕化粧)

 モカタバミ(芋片喰)は、カタバミ科カタバミ属。南アメリカの比較的標高の高い地域が原産。日本へは、第二次世界大戦後に観賞用として導入されて以降、昭和42年に帰化の報告があって後、国内に広く帰化しています。ムラサキカタバミに似ていますが、区別点は、花弁の中心部が赤く彩られているところです。また、根がムラサキカタバミでは鱗茎といわれる小さなつぶつぶの集まりになっていますが、イモカタバミの根は塊茎といわれる大きな塊になっていています。それがイモのようなのでイモカタバミといわれるわけです。根がイモ状態なので、丈夫で繁殖しやすいわけです。

(↑上の写真)左=イヌガラシ(犬芥子)、中=カモジグサ(髢草)、右=コバンソウ小判草

(↑上の写真)左=シャガ(射干)、中=イチハツ(一初、一八、鳶尾草)、右=シラン(紫蘭

(↑上の写真)左=タチジャコウソウ(立麝香草)(タイム)、中=ツリガネズイセン(釣鐘水仙、スパニッシュ・ブルーベル)、右=オオアマナ(大甘菜

(↑上の写真)左=コヒルガオ(小昼顔)、中=セリバヒエンソウ(芹葉飛燕草)、右=ミヤコワスレ(都忘れ)

(↑上の写真)左=ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)、中=ネモフィラ、右=カキネガラシ(垣根芥子)

(↑上の写真)左=アジュガ(西洋十二単)、中=ドイツスズラン(独逸鈴蘭)、右=ヘビイチゴ(蛇苺)

(↑上の写真)左=整然とした住宅街、中=ヤマブキ(山吹)、右=シロバナヤマブキ(白花山吹)

(↑上の写真)左と中=サツキ(皐月)、右=ドウダンツツジ灯台躑躅

 ドウダンツツジ灯台躑躅、満天星)はツツジドウダンツツジ属。Web「恵泉女学園大学」によると「本州の静岡、愛知、岐阜、紀伊半島、四国の高知、徳島、九州の山地に局所的に自生している」とのこと、今では至る所で生垣として植栽されている落葉低木です。名称についてはツツジ科なのでツツジは分かりますが「ドウダン」の由来は結灯台にもとづくとのこと。深津正著『植物和名の語源』によると「ドウダンツツジの由来は『俚言集覧』にドウダンツツジの異称として「どうだいつつじ」の名があげられている。『大言海』によれば「どうだい」は「とうだい」すなわち灯台のことで「とうだいつつじ」つまり3本枝を交叉して結び合わせ、上端の三叉状の台架状の上に灯明皿を置いた灯台器のこと。ドウダンツツジの枝はよく分枝し、しかもその先端がこの結灯台(むすびとうだい)の台架のように三叉状になっているから、このように言われたものらしい」とあります。「結灯台の台架のように三叉状になっている」とは頭を傾げたくなります。花が終わって芽を伸ばし始めるところを観察してみると、灯台を逆さにした脚の部分が芽を伸ばした枝の恰好です。花が終わった後、観察してみてください。どうでしょうか。ただし、どうやらドウダンツツジの異称の解説になってしまって、肝心のドウダンの由来は解説されてませんでしたね。なお、満天星は漢名で中国の伝説に基づいたものということです。

(↑上の写真)いずれもハナミズキ(花水木)、左=白花、中=紅花、右=紅白のハナミズキ

(↑上の写真)左=レッドロビン、中=クロガネモチ(黒鉄黐)、右=トキワマンサク(常盤満作、万作)

 Web「オザキフラワーパーク」によると・・レッドロビンは、「ベニカナメ」「カナメモチ」などと呼ばれますが、厳密にはそれぞれは異なります。「ベニカナメ」は「カナメモチ」の変種で、「カナメモチ」のうち特に新芽の紅が強いものを「ベニカナメ」として区別している場合があります。「レッドロビン」は、洋種「西洋カナメモチ」の事で、「カナメモチ」と「オオカナメモチ」の交配種になります。園芸店で流通しているのは、ほとんどは「レッドロビン」です。「レッドロビン」の方が葉の赤みが強いですが、ぱっと見には区別はつきにくいです・・ということです。街中には生垣としてあちこちで見かけますが、どれが「ベニカナメモチ」か「カナメモチ」か区別できないです。どれも綺麗に赤く染まっているので、それで良いでしょう。この赤色は初夏には緑色に変わってしまう、ということです。今見られる赤色を愛でたいです。因みにレッドロビンはバラ科カナメモチ属。

(↑上の写真)左=カラタネオガタマ(唐種招霊)、中=サトザクラ(里桜)、右=西洋シャクナゲ(西洋石楠花)

 カラタネオガタマ(唐種子招霊)はモクレンモクレン属。中国南部原産、樹高4mくらいの常緑樹。花にはバナナのような甘い強い芳香があり、遠くからも感じ取れます。東京都薬草園にもあますが、上掲写真は地元の植木販売農家の畑にたくさん植えられているものを撮ったものです。日本にはもともとオガタマノキがあり、カラタネオガタマは、江戸時代中期から明治初めにかけて中国から移植されたものといわれます。天鈿女命がオガタマノキの枝を手にして天岩戸の前で舞ったとされるのは日本在来のオガタマノキカラタネオガタマではないということがわかります。今ではカラタネオガタマが神社などに植栽されることが多いようです。因みにオガタマノキモクレンモクレン属。(植木ペディア、ウィキペディアなど各種Web参照)

(↑上の写真)左=タムケヤマ(手向山)(カエデ)、中=ノムラカエデ(野村楓)、右=キンヒバ(金桧葉)