野楽力研究所

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入笠湿原・入笠すずらん山野草公園・・・令和3年6月6日

 登山途中で予報通り、雨が降り出したので入笠山(にゅうがさやま)にある入笠湿原のクリンソウと入笠すずらん山野草公園のホテイアツモリソウを見ることを今日の目当てにしました。東京の四月初旬の陽気でした。

<↓入笠湿原にて>標高=1734m

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(↑上の写真)左=湿原風景、中=クリンソウ、右=クリンソウの群落

 クリンソウ九輪草)はサクラソウサクラソウ属。北海道、本州、四国の山地の谷川沿いの湿地に生える多年草だそうです。『APG牧野植物図鑑』によると「和名九輪草は、花が何段も輪生するのに対し、最大の数を表す九を当て嵌めたもの」とあります。そうかな?と思います。花が何段も輪生している様子は仏教寺院の塔の先端を飾っている宝輪(九つあるので九輪ともいう)にそっくりです。しかし、その数は、最大の数の九を表しているのではなく、「Web:やさしい仏教入門」によると九輪は五大如来と四大菩薩を表しているということです。数が多いことを表すのは、八ヶ岳に象徴されるように八のはずで九ではありません。勝手な説を立てましたが、一理ありそうに思いますが、どうでしょうか。

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(↑上の写真)左=スズラン、中=チゴユリ、右=シロバナノヘビイチゴ

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(↑上の写真)左と中=ミヤマエンレイソウ、右=ミヤマバイケイソウとオオハンゴウソウの若草

 ミヤマエンレイソウ(深山延齢草)はシュロソウ科エンレイソウ属(以前はユリ科)。別名シロバナエンレイソウ。北海道から九州の山地の木陰に生える多年草。ミヤマ(深山)とつきますが、エンレイソウより高山に生えるということではないそうです。エンレイソウは延齢草で、根茎を干したものが生薬で胃腸薬とされます。有毒サポニンを含むので誤飲すると危険ですが、食べ物を吐き出させる効果があり、命拾いをすることがあるということで延齢草とついたともいわれます。外側と内側の3枚の花弁のように見えるものは萼片で、内側の萼片(内花被)は白く(花が終わりなので色づいています)花弁のようですが萼片だそうです。エンレイソウの萼片(普通内花被はありません)は紫色ですが、ミヤマエンレイソウの内花被は白色です。

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(↑上の写真)左=スズラン群生地、中と右=この群生地では、まだ花が一部開き出した状態。

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(↑上の写真)左と中=ズミ。右=山彦山荘を望む入笠湿原

 ズミ(酸実、桷)はバラ科リンゴ属。各地の山地、特に湿地に生える落葉低木ないし小高木。ウィキペディアによると「リンゴに近縁な野生種で、和名は、樹皮を煮出して黄色の染料を取ることから染み(そみ)というのが、語源と言われている。別説には、実が酸っぱいことから酢実、とよばれ、語源になった」ともいわれるそうです。ズミというと遠い故郷の山々を思い出しますが、花や実が、カイドウ、リンゴ(いずれもバラ科リンゴ属)、ナシ(バラ科ナシ属)に似ることから、ヒメカイドウ、コリンゴ、コナシなどとも呼称されるようで、こういう呼称を聞くと急に身近に感じられますね。 

 

<↓入笠すずらん山野草公園にて>標高=1740m

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(↑上の写真)左=(ホテイ)アツモリソウ、中=クマガイソウ(花最後の一株)、右=ヤマシャクヤク

 アツモリソウ(敦盛草)はラン科アツモリソウ属。本州中部地方以北の山地の草原に生える多年草クマガイソウ(熊谷草)はラン科アツモリソウ属。北海道から九州の山地の木陰に群生する多年草。写真のホテイアツモリソウはアツモリソウの変種とされ、地元の方はさらに釜無川に因んでカマナシホテイアツモリソウといって、大切に保存しています。ホテイは布袋様の布袋で、唇弁(花の下の膨らんだ部分)の膨らみが布袋様のおなかの膨らみに似ているということに由るものです。普通のアツモリソウはこれほどには膨らんでいないようです。アツモリソウは平敦盛、クマガイソウは熊谷直実に因んでいますが、一の谷の合戦で熊谷直実が平山季重と先陣争いをしたとき、平敦盛を組み伏せて首級を取ったといわれます。この花は、その時の互いに背負っていた母衣(ほろ)に見立てて名づけられたといいます。

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(↑上の写真)左=恋人の聖地八ヶ岳展望台も雨の中、中と右=すずらん園にて

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(↑上の写真)どれもマイヅルソウ

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(↑上の写真)左=サクラソウ、中=アマドコロ、右=クリンユキフデ

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(↑上の写真)左=ズダヤクシュ、中=ツバメオモト、右=ベニバナイチヤクソウ

 ズダヤクシュ(喘息薬種)はユキノシタ科ズダヤクシュ属。北海道、本州、四国の亜高山帯の林下に生える多年草。地味な花なので、眼を止める登山客はほとんどありませんが、薬効があると言われています。ズダとは長野、福井、富山県方面の喘息の呼び名ということです。ヤクシュは薬種で薬ということで全草を乾燥させて、お茶のように煎じて飲むようです。しかし、今では残念ながら自然保護の観点から採取して試してみるわけにはいきませんね。ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)は、イチヤクソウと同種でツツジ科イチヤクソウ属。本州中部以北から北海道の亜高山帯の森林内に群生する常緑の多年草。日本薬学会HPによると根毛が発達せず、内生菌根と共生することで栄養を得る菌根植物だそうです。『牧野富太郎植物記2 野の花2』では、この種子が芽を出すと根菌と呼ばれる菌類がまつわりつき、これに養われて育つということです。このために、移植栽培は難しいとされています。民間では生の葉汁を打撲傷、切り傷の外用に、また保温を目的に浴湯料に、また煎液には利尿作用があり、脚気やむくみによいとされています。このように和名は1つの薬草で諸病に効くことから「一薬草」といわれるようになったということです。イチヤクソウの白い花に対してベニバナイチヤクソウは紅い花です

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(↑上の写真)左=レンゲツツジ蕾、中=ヤグルマソウ蕾、右=ササバギンラン