野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

獅子岩植物保護区・・・令和3年7月6日

 一日曇天でしたが、写真を撮るには良い日でした。美し森と同じ八ヶ岳山麓ですから同じような花が咲いていました。日当たりのよい乾燥した草原の山野草です。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=保護区入口、中=ニッコウキスゲ、右=ニッコウキスゲ群落

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(↑上の写真)左=シモツケ、中=獅子岩、右=獅子岩を構成している礫岩(さざれ石)

 シモツケ(下野)はバラ科シモツケ属の落葉低木。初めて見た時には、ピンク色の霜を降らしたようなきれいな花、だからシモツケ即ち霜付かと思ったものです。しかし、牧野博士によると、下野国(栃木県)で最初に発見されたということからシモツケと名づけられたといいます。シモツケは木本ですが、シモツケソウという草本があります。園芸種でキョウガノコ(京鹿の子)として販売されています。どちらも街中で見られるようになりました。

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(↑上の写真)左=ヤマオダマキの群落、中=ヤマオダマキ、右=イブキトラノオ

 イブキトラノオ(伊吹虎尾)はタデ科イブキトラノオ属。日本各地(図鑑によっては関東以西)の山地の日当たりのよい草地に生える多年草。和名は滋賀県伊吹山に多く生えているので名づけられたと云います。茎は1本枝分かれせず直立してその茎頂に虎の尾に似た穂状花序の花穂をつけます。花茎・花穂は、他の草の中から抜きん出ていて、目立ち、先は他のトラノオのように尖っていません。タデ科ということで、花穂も葉もタデを大きくした感じの植物です。

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(↑上の写真)左=カラマツソウ、中=アカショウマ、右=カワラマツバ

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(↑上の写真)左=ミヤマタニワタシ、中=コウゾリナ、右=ヨツバヒヨドリ

 ミヤマタニワタシ(深山谷渡)はマメ科ソラマメ属。「APG牧野植物図鑑Ⅰ」によれば「関東、中部地方および朝鮮半島の温帯に隔離して分布し、山地の林下に生える多年草」ということです。隔離して分布(隔離分布)とは、広域に普通に分布していたものが、気候変動や地殻変動などで連続性が途切れて孤立化したものをいうようです。一目見にはナンテンハギ(別名フタバハギ)かと思いましたが、花のつき方がイマイチ違い、一方向に向いて房状に咲いているので、ミヤマタニワタシとしました。タニワタシと呼ばれるのは、弘法大師が谷を渡るときにこの草に援けられて渡ったということからタニワタシという名がついたという言い伝えがあります。

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(↑上の写真)左=ニガナ、中=ミツバツチグリ、右=イボタノキ

美し森・・・令和3年7月6日

 梅雨の合間に、清里「美し森」を訪ねました。シモツケが赤紫の霜が降りたような花を咲かせていました。谷戸の湿地のクリンソウの群落は花の時季を終え、代わりにバイケイソウを間近に見ることが出来ました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=美し森の登り口、中と右=シモツケ

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(↑上の写真)左=最後のクリンソウ、中=クリンソウ群落地、右=サワギク

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(↑上の写真)どれもバイケイソウ

 バイケイソウ(梅蕙草)はシュロソウ科シュロソウ属。APG牧野植物図鑑Ⅰによると「日本各地、朝鮮半島などの丘陵帯林内の湿ったところに生える有毒の多年草」ということですが、矢野亮監修「日本の野草」夏編では、本州中部地方以北となっています。どちらが正しいでしょうか。APG牧野植物図鑑では、和名は花が白梅に似て、葉がけい蘭に似ているからということです。調べてみると「けい蘭」とは「蕙蘭」のことのようで紫蘭の古名ということです。確かに葉は似ているようです。春の山菜として若芽がオオバギボウシに似ていて、誤って食すると血圧降下を招き、死に至ることもあるということで有毒植物とされています。

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(↑上の写真)左=ニッコウキスゲ、中=ノアザミ、右=ノハラアザミ

 ノアザミ(野薊)はキク科アザミ属。本州、四国、九州の山野に普通に生える多年草。北海道の人にとっては珍しい花でしょうか。春から夏に咲き、頭花は花柄が長く、1本だけ伸びて咲く。ノハラアザミとの区別点は、ノハラアザミ(野原薊)は夏から秋に咲き、頭花は花柄が短くしばしば2〜3個集まってつくことです。夏には両者とも咲いているので区別しにくいですが、頭花が2・3個集まって咲く、ということを基準にすると見分けられます。一本だけ花柄がすっと伸びて1個花をつけていればノアザミ。また、花の苞の部分が粘つくのがノアザミ。根生葉が大きく残っていればノハラザミです。なお、アザミという花はありません。シラサギという鳥がいないのと同じです。Web:BOTANICAによると、「アザミの名前の由来は、とげに驚き興ざめしてしまうという意味の「あざむ」が、語源」ということです。

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(↑上の写真)左=ニガナ、中=シロバナニガナ、右=オオヤマフスマ

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(↑上の写真)左=ウツボグサ、中=カワラマツバ、右=ノコギリソウ(まだ蕾)

 ノコギリソウ(鋸草)はキク科ノコギリソウ属。北海道、本州の山地の草原に生える多年草八ヶ岳赤岳の麓のここにも生えていました。最近はセイヨウノコギリソウが幅を利かせています。うっかりすると見間違えてしまいます。葉の切れ込みが深く鋸のようだというので鋸草と名づけられたと言います。この葉の切れ込みが細かく「人」の字のような切れ込みの重なりになっているように見えたらセイヨウノコギリソウです。明治20年頃に渡来したものだそうで、園芸種として各種色づいた花のものが販売されています。日本のノコギリソウを保護したいです。山に行ったら気に掛けていただけたら嬉しいです。

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(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ(まだ蕾)、中=ヤマオダマキ、右=南アルプス地蔵岳オベリスク(地蔵仏)を遠望

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(↑上の写真)左=シルエットの富士山、中=イボタノキ、右=ノリウツギ(まだ蕾)

 

神代植物公園・・・令和3年6月29日

 神代植物公園もようやく再開されましたが、事前予約が必要です。今回は空きがあったので偶然入れてくれました。大温室の休憩室はテーブルも椅子も取り払われていました。人知れずマヤラン、タシロランが咲いていました。今日の様子です。

<水生植物園にて>

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(↑上の写真)左=水生植物園入口、中=クサレダマ、右=ヌマトラノオ

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(↑上の写真)いずれもマヤラン

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(↑上の写真)左=サガミラン?、中=マヤラン、右=マヤランが生えている所

 マヤラン(摩耶蘭)はラン科シュンラン属。APG牧野植物図鑑によると「関東地方南部から琉球列島の林下に散発的に発生する無緑葉の多年生の菌根蘭」ということです。自然教育園見頃情報2019年7月18日号によると「名前は最初の発見地『神戸市摩耶山』にちなみます。葉と根を持たず、地上に姿を現すのは、花だけです。光合成は行わず、共生する菌から栄養をもらっています。サガミランはマヤランに比べて花の色が白いことが特徴」とあります。Web:筑波実験植物園によると「マヤランの地下茎を切って見ると、細胞の中にたくさんの菌がいることが分かります。共生するこの菌から栄養と水をもらって大きくなります。共生菌のDNA を調べると、担子菌のベニタケ科、イボタケ科、シロキクラゲ科であることがわかりました。キノコの仲間です。これらのキノコは特定の種類の樹木の根としか共生しないため、共生関係にある木の種類が生えていなければ死んでしまいます。共生関係にある木の種類は調査中」ということです。ここ水生植物園では南側の城山の北側(水生園側)の麓のアズマネザサが程よく刈り取られたちょっと空間のあるコナラの木の傍らに生えているようでした。これは本園でも同じようでした。どうもアズマネザサとは何か関係ありそうですがどうでしょうか。アズマネザサが無いところでは見つけられませんでした。

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(↑上の写真)左=ミソハギ、中=アサザ、右=水生植物園湿地部分(右側の山が城山=深大寺城跡)

<本園にて>

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(↑上の写真)左=バラ園を望む、中=タシロラン、右=マヤラン

 タシロラン(田代蘭)はラン科トラキチラン属。APG牧野植物図鑑によると、関東地方以西から琉球列島の暖地の林下や陽地に稀に見られる無緑葉の菌根植物、花は、ほとんど白色で、すぐ淡褐色になる、ということです。田代善太郎氏が長崎県諫早で発見したので、この名があるとのこと。ここ本園では、保護されていて、アズマネザサが程よく刈り取られた木漏れ陽の差すようなところに見られました。

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(↑上の写真)いずれも秋を知らせるキキョウ

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(↑上の写真)左=オミナエシ、中=オオバギボウシ、右=チダケサシ

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(↑上の写真)左=トウフジウツギ、中=セイヨウニンジンボク、右=フサフジウツギ 

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(↑上の写真)左=ヤブカンゾウ、中=ノウゼンカズラ、右=(参考:都立薬草園にて)アメリノウゼンカズラ 

 ノウゼンカズラ凌霄花)はノウゼンカズラノウゼンカズラ属。中国原産の落葉つる低木。茎は長く伸び、気根を出して他物に絡みつき、葉は対生で羽状複葉。この花は一見、西洋風に見えますが、平安時代には渡来していて、湯浅浩史著『花おりおり』によると「ノウゼンは漢名の凌霄(りょうしょう)が語源という。凌霄から、平安時代の「本草和名」の乃宇世宇(のうせう)を経て、ノウゼンに転訛したとみられる」とあります。深津正著『植物和名の語源』には「凌霄花の霄は空の意味で、蔓が木にまといつき、天空を凌ぐほど高く登るので、この名前がついたものという」とあります。また、同書には「…家毎に凌霄(のうぜん)咲ける温泉(いでゆ)かな…子規。凌霄花は真夏の花である。焼けつくような真夏の炎天の道すがら、とある家の門柱や垣根にまといついた凌霄花の華やかに花開いた姿に、ふと歩みを止めた思い出は、誰にもあるに違いない」と。皆さんの記憶にはどうでしょうか。なお、「凌霄花」は、夏の季語にもなっています。(参考写真)のアメリノウゼンカズラは、山渓『日本の樹木』による「大正末期に渡来したもの」ということです。

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(↑上の写真)左と中=アカンサス、右=カンナ

ムクゲ園にて>

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(↑上の写真)いずれもムクゲ

 ムクゲ(槿・木槿)はアオイ科フヨウ属。中国原産と謂われる落葉低木。法律的に決まってはいないようですが、韓国(大韓民国)の国花とされています(発音ムグンホァorムングファ?)。一日花ですが次々に咲くので韓国では無窮花といわれているようです。王朝が次々に代わっても韓国は永久という象徴のようです。参考までに、北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)の国花は、北朝鮮でモンラン(木蓮)といわれるオオヤマレンゲ(モクレンモクレン属)。モンランとは木に咲く美しい花という意味だそうです。

<ダリア園にて>

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(↑上の写真)いずれもダリア

 ダリアはキク科ダリア属。メキシコ原産の多年草。牧野新日本植物図鑑によると「ダリアというが、正しくはダーリアである」と書かれています。ウィキペディアによると「ダリア(学名Dahlia)の名は、スウェーデンの植物学者でリンネの弟子であったアンデシュ・ダール(Anders Dahl)に因む」とあります。牧野博士はダリアを正しく学名で発音せよ、といったのですね。

<温室にて>

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(↑上の写真)左=温室内の様子オニバス池、中と右=ブーゲンビリア

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(↑上の写真)いずれもベコニア

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(↑上の写真)左と中はスイレン、右=ショクダイオオコンニャクの終わり

東京都薬用植物園・・・令和3年6月25日

 東京都薬用植物園は、閉園していましたが、22日から通常通り開園されています。随分いろいろな草花が咲いています。薬用植物園ですから、外国産の薬用植物も栽培されています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=入口から温室、中と右=ヤマホタルブクロ

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(↑上の写真)左=ノカンゾウ、中=ヤブカンゾウ、右=トウカンゾウ

 ノカンゾウ(野萱草)はススキノキ科ワスレグサ属。ワスレグサ(忘れ草)は牧野新日本植物図鑑に正式に記載されていて、別名ヤブカンゾウと書かれています。ノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草),トウカンゾウ(唐萱草)のどれもがワスレグサ属なので、どれも忘れ草ということになります。ワスレグサ属は学名ではヘメロカリスといわれます。ニッコウキスゲ、ムサシノキスゲユウスゲなどもヘメロカリスなので、ワスレグサということになります。ノカンゾウヤブカンゾウの母種で、日本が大陸と日本海で別れた時に取り残されたのがヤブカンゾウなのだそうです(牧野博士説)。Web:花図鑑によれば「トウカンゾウは中国のほか長崎の男女群島に自生していて、江戸時代から園芸植物として栽培されていたが、シーボルトによってヨーロッパに持ち帰られた。後にアメリカで品種改良が行われ、ヘメロカリスとして逆輸入されている。属名の Hemerocallis はギリシャ語の「hemera(一日)+callos(美)」からきている。この属の植物の花は一日でしぼむことから名づけられた」ということです。一日花であることとワスレグサの名前は関係あるでしょうか。

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(↑上の写真)左=ミソハギ、中=メハジキ、右=マツムシソウ

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(↑上の写真)左=アサザ、中=ギボウシ、右=オオバギボウシ

 アサザ(浅沙、阿佐佐)はミツガシワ科アサザ属。APG牧野植物図鑑によると北半球の温帯から亜熱帯に広く分布し、本州、四国、九州の池や沼などに生える多年生の水草ということです。花は黄色の花弁が5枚のように見えますが、5裂した合弁花で、黄色の総で縁取りされています。朝に咲いて昼には閉じ始めます。主に根茎で増えるので、同じ沼にはクローンの花ばかりということになりかねません。ウィキペディアによると、アサザの花は「異型花柱性」で、雌しべの花柱が長く、雄しべの花糸が短い「長花柱花」と、反対に花柱が短く花糸が長い「短花柱花」の花があり、クローンを防ぎ、自家受粉しないようにして遺伝子の多様性を保っているということです。異花受粉でつくられた種子は翌年に発芽するほか、土壌シードバンク(埋土種子)を形成して、数年間休眠することもあるそうです。しかし、日本の狭い池や沼では、このような多様性は確保されていないようで、2つの花型が生育するのは霞ヶ浦だけだそうです。準絶滅危惧種に指定されています。

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(↑上の写真)左と中=タバコ、右=タチフウロウ 

タバコ(煙草)はナス科タバコ属。南米熱帯地方を原産とされる多年草。面白いので、ご存知、芥川龍之介の『煙草と悪魔』のお話を再掲します。「悪魔はイルマンの一人に化けて、フランシスコ・ザビエルと一緒に日本へやって来た。日本での退屈な時間に園芸を始めた。持ってきた種子を蒔いて育てたものは、茎の先に漏斗のような形をした薄紫の花をつけた。悪魔は骨を折っただけに、この花の咲いたのが、大変うれしかった。と、そこに通りかかった牛商人が『もし、お上人様、その花は何でございますか』と問うと、上人に化けている悪魔は『この名だけは教えられない』という。悪魔は『三日の間に誰かに聞いてもいいですよ。この名が当たったら、これをみんなあげますよ。その他にお酒なども』という。『賭けですよ』ともいう。悪魔は『もし当たらなかったら、あなたの体と魂をもらいますよ』と右の手をまわして帽子を脱いだ。三日目の晩、牛商人は、もくろんでいた計画を実行した。即ち、牛の尻を思い切りたたいて畑の中に追い込んだ。けたたましい牛の鳴き声と蹄の音に、寝込んでいた悪魔はびっくりして窓を開け『こん畜生、何だって、おれのタバコ畑を荒らすのだ』と怒鳴った。牛商人は、首尾よく、タバコと云う名が分かり、言い当てて、悪魔の鼻を明かした。悪魔は敗北した。が、それ以後、日本全土にタバコを普及させることができ、日本を堕落させることにおいては、悪魔として勝利した」タバコには、こんな裏話があったんですね。(一部翻案)

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(↑上の写真)左=スイレン、中=ソバ、右=トリアシショウマ

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(↑上の写真)左=イブキジャコウソウ、中=ヨウシュイブキジャコウソウ、右=モミジガサ

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(↑上の写真)左=クガイソウ、中=イヌゴマ、右=シオデ

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(↑上の写真)左=ノリウツギ、中=ニンジンボク、右=ソクズ

 ニンジンボク(人参木)はシソ科ハマゴウ属。APG牧野植物図鑑によると「中国大陸原産で享保年間(1716~1735)に種子が日本に入ったという記録がある落葉低木(一部翻案)」ということです。似たものにセイヨウニンジンボクが販売されています。これは地中海沿岸原産と言います。両者は、言えばユーラシア大陸の植物ですから、それほど変種していないのかもしれません。ご覧の皆様に区別点を教えていただきたいです。ニンジンボクには掌状複葉の小葉に鋸歯があるといいますが、無いこともあるということです。小葉の枚数も4枚前後で少ないのがニンジンボク、6枚前後の多いものがセイヨウニンジンボクということですが、中間のものもあるようです。享保年間に日本に渡来したのは、薬用のためで、Web熊本大学薬学部によると「果実はカゼに効果があり,咳や喘息,腹痛に用いる。根には発汗作用があり,また抗マラリア薬としても用いる。茎の汁は小児のひきつけ、,下痢、たむし、痰などに用いる。茎は火傷や焼けただれた傷に用いる。葉は寝違え,脚気の腫れなどに用いる」とあります。

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(↑上の写真)左=キクイモモドキ、中=コガネバナ、右=ジギタリス

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(↑上の写真)左=アメリノウゼンカズラ、中=ザクロ、右=ハマナス

 ザクロ(柘榴)はミソハギ科ザクロ属。APG牧野植物図鑑によると「西アジア地方の原産。日本には平安時代に渡来した落葉高木。若い枝には4稜があり、短枝は棘になる。材は黄色。葉は互生する。種子は甘酸っぱく食べられる。和名は柘榴の音に基づく」(一部翻案)ということです。(野上彌生子著『海神丸』:大正8年の遭難船の実話に基づく小説)船内の食料も底をつき始めると、五郎助と八蔵は船首の船具置き場を根城にし、船長と三吉は、船尾の船長室と隣の部屋を根城にした。いよいよ食料が底をつき、ひもじさに耐えられなくなると八蔵が「人間はどんな味がするもんじゃろか」と呟き、五郎助は「柘榴の実の味がするというじゃねえか」と応える。八蔵は、余りに腹が減りすぎて我慢ならず同僚の三吉を斧で殺して食べてみようとしていた。しかし、船長はそれを見咎め、甲板上で船長と八蔵はやり合った。が、五郎助が間に入り、船長に謝り、八蔵も引き下がった。それから3人で三吉の遺体を船室から甲板に引き上げ、船長が弔いを挙げて、海に流し、水葬に付した、という悲惨な話でした。日本人には、仏さまが鬼子母神に人の子の代わりに柘榴の実を与えたということから、柘榴の実は人の味がするという俗信が始まったということですね。

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(↑上は実の写真)左=ナワシロイチゴ、中=ボケ、右=ゴンズイ

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(↑上の写真は温室内)左=温室内の様子、中=ゲンペイクサギ、右=カカオ

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(↑上の写真はシダ各種)左=オシダ、中=ゲジゲジシダ、右=ヤマイタチシダ

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(↑上の写真)左=フモトシダ、中=園内林の中の様子、右=栽培園の風景

神奈川県立東高根森林公園・・・令和3年6月24日

 東京に接し、多摩川を渡った川崎市にある里山の雰囲気の残る森と谷戸の公園です。梅雨の合間にちょっと寄ってみました。アジサイオカトラノオはもちろん立派に咲いていますが、オオハンゲ、ノカンゾウヤブカンゾウも咲いています。キツリフネは咲きはじめです。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=園内風景、中=ノカンゾウ、右=ヤブカンゾウ

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(↑上の写真)左=ナガバミズアオイ、中=ミズカンナ、右=ハナショウブ

 ナガバミズアオイ(長葉水葵)は、ミズアオイ科ポンテデリア属の栽培種。Web:EVERGREEN植物図鑑によると「北アメリカ東部~アルゼンチンの水湿地に生える多年草で、高さ60cmほどの花茎の先に、長さ7~15cmの青紫色の穂状花序をつける」(一部翻案)ということです。木道を隔ててミズカンナよりさらにはっきりした青紫の花を咲かせています。在来種はミズアオイで、ホテイアオイ外来種、水質浄化するといわれますが、繁殖力旺盛)に似ています。どちらもアオイと名づけられているのは葉が徳川家家紋フタバアオイの葉に似ているからですが、ナガバミズアオイではちょっと葵の葉は想像できませんね。

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(↑上の写真)左=オオハンゲ、中=ハンゲショウ、右=オオバギボウシ

 オオハンゲ(大半夏)はサトイモ科ハンゲ属。岐阜県以西から琉球列島の暖帯に生える多年草ということです。この公園で見られるのは、植栽によるものとなります。葉はムサシアブミのようで、大きく、花はカラスビシャクを大きくしたような仏炎苞に包まれた肉穂花序です。カラスビシャクはハンゲ(半夏)といわれ、半夏(今の時期)の時期に花を咲かせます。それより大きいのでオオハンゲと言われるようです。関東地方では自然には見られないものです。

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(↑上の写真)左=キツリフネ、中=オカトラノオ、右=オカトラノオの花の裏側

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(↑上の写真)左=ボタンクサギ、中=ヤブジラミ、右=ワスレナグサ

 ボタンクサギ(牡丹臭木)はシソ科クサギ属。Web:BOTANIKAによると「中国南部やインド北部が原産の落葉低木。別名「ベニバナクサギ」「ヒマラヤクサギ」とも呼ばれている。繁殖力が強く、挿し木ですぐ根付くので、株分けには苦労しないが、1度根付くと、地下茎をのばしてあっという間に増えてしまう。葉と茎は、傷をつけると独特の匂いを発す。牡丹のようにきれいな花を咲かせるが、葉と茎の匂いが強いため、「ボタンクサギ(牡丹臭木)」と名づけられた」(一部翻案)といわれています。ここの公園で見かけたきれいな花ですが、今後どのようになるでしょうか。

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(↑上の写真)左=オミナエシ、中=ヒヨドリバナ、右=ノハカタカラクサトキワツユクサ

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(↑上の写真)左と中=ヨウシュヤマゴボウ、右=ヤイトバナ(ヘクソカズラ

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(↑上の写真)左と中=コマツナギ、右=ネムノキ

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(↑上の写真)アジサイ

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(↑上の写真)左=ビジターセンター、中と右=園内風景

野川公園自然観察園・・・令和3年6月18日

 漸く開園された様なので訪れました。これからは月曜以外は開園するそうです。今は春の花の時季が終わり、ハンゲショウノカンゾウヤブミョウガヒヨドリバナなど夏の花が咲き始めています。春の花の実も大きくなりつつあるところです。命の鼓動に静かに耳を傾けてみましょう。訪れる人も少なくコロナの心配もありません。

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(↑上の写真)左=自然観察園入口、中と右=ハンゲショウ

 ハンゲショウ半夏生)はドクダミハンゲショウ属。本州以南に分布する水辺に生える多年草。夏(げ)というのは仏語で「僧が一所に籠って修行する期間(90日間)」のことだそうで、半夏(はんげ)とは夏(げ)の半分(45日間)、現在の暦で夏至の日から11日目の7月2日だそうで、修行の半分、半夏を終えたということです。カラスビシャクのことを半夏といいますが、ハンゲショウ半夏生で写真のような草本です。葉の半分が白く化粧をしたようになるので「半化粧」、それと仏語の「半夏」を掛けて、半夏生と名づけられたといいます。江戸時代の粋でしょうか。白く化粧した部分は盛夏を過ぎた頃には緑に戻りますので、気づかずに見過ごしてしまいます。また、花には特有の臭気があります。今年は気を付けて観察したいですね。

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(↑上の写真)左=ノカンゾウ、中=ウツボグサ、右=オカトラノオ

 オカトラノオ(丘虎尾)はサクラソウオカトラノオ属。日本全国日当たりのよい草原、丘陵地などに生える多年草。地表近くの地下茎で旺盛に増えるので、それぞれに群落をつくっています。丸山直敏解説『カラー野に咲く花』に、「オカとはヌマに対する乾いた土地を指し、トラノオとは花穂が長く出るので虎の尾に見立てたものであるが、姿の優しい花で虎はあまり連想できない」としている。ヌマ(沼)には、花穂が立っているヌマトラノオ(沼虎尾)が咲いていますが、両者の交雑種にイヌヌマトラノオ(犬沼虎尾)があります。科博付属自然教育園の池付近では、オカトラノオよりイヌヌマトラノオが優勢と解説されています。しかし、区別がなかなかつきません。

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(↑上の写真)左と中=ヤブミョウガ、右=ヒヨドリバナ(まだこれから)

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(↑上の写真)左=ヤブジラミ、中=クサノオウ(花終わり)、右=ホタルブクロ(1株のみ)

 ヤブジラミ(藪虱)はセリ科ヤブジラミ属。日本各地の野原や道端に生える2年草。葉の形が同じセリ科のヤブニンジンと似ています。花の時季には、花の形がそっくりなので葉の形を能く見ないと見誤ります。実ができるとはっきり違いが分かります。ヤブジラミは長円形丸型で周囲に先のとがったマジックテープのような毛が密集していています。ヤブニンジンは、細い棍棒状の実が、5本輪状に広がっていますので、実の形は全く違います。そのため別名ナガジラミといわれています。どちらの実も子供たちは「ひっつき虫」といって実をくっつけて遊びます。

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(↑上の写真)左=ムラサキシキブ、中=ガクアジサイ、右=ネムノキ

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(↑上の写真)左=アカザ、中=シロザ、右=園内風景

 アカザ(藜)、シロザ(白藜)は共にヒユ科アカザ属。日本全土の荒地や道端に生える一年草シロザはアカザの母種という考えもあり、いがりまさし著『四季の野の花図鑑』によると「アカザとシロザを分けずに考える説もある。ユーラシア原産で有史以前に広く帰化した史前帰化植物と考えられている。目立たない花を房状の花序に8~11月ごろつける。芽出しのころ、葉の基部が粉を吹くように白くなるのがシロザ、赤くなるのがアカザで、共に食用になる」という。 有川浩著小説『植物図鑑』に「それね、最近すごく少なくなってる植物なんだよ。シロザなんだけどさ。俺(主人公イツキ)結構いろんなところ歩き回ってきたけど、こいつら見掛けるのってホント少なくなってきててさ」「絶滅危惧種だったり?」「そこまではまだ行かないけどね」このままだといつかそうなってもおかしくないんだろうな、ということはイツキの表情で分かった。「分かった、そっとしとく」とさやかは応えた。・・・植物の好きな主人公が、山菜料理なども交えながら、二人の愛を育んでいく話でしたね。

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(↑上の写真:いずれも実)左=フタリシズカ、中=ホウチャクソウ、右=エナシヒゴクサ

 エナシヒゴクサ(柄無肥後草・柄無籤草)はカヤツリグサ科スゲ属。日本の山野や丘陵地の半日陰に生える多年草。花は、4~5月、茎頂にトウモロコシのように雄花(雄小穂)を咲かせ、茎に2~3個の雌花(小さい雌花が固まった雌小穂)をつけます。小さな雌花の塊が、トウモロコシのように受粉し、種子となり、熟すとパラパラ落ちて、子孫を増やします。花(雌小穂)に柄がないので柄無で、実は直立したままでうなだれません。また、根のような匍匐枝が地中を横に這い、先端をはじめ、その節ごとに新株をつくり、子孫を増やします。実のつき方が可愛らしいので、見とれている間に種子がこぼれ、また匍匐枝で増え始めます。一度蔓延らせると除草がままなりません。和名は、肥後で発見されたからという説の人は柄無肥後草とし、茎が竹籤(ひご)のようだからという説の人は柄無籤草としています。ご覧の皆様は、どちらの説でしょうか。または、別の説を立てられるでしょうか。

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(↑上の写真:いずれも実)左=コウゾ(=ヒメコウゾ)、中=エゴノキ、右=オニグルミ

 オニグルミ(鬼胡桃)はクルミクルミ属。九州から北海道にかけて広く分布し、主に山間の川沿いなどに自生する落葉高木。果実は水に浮くので、川沿いに流れ着いて発芽し、深く埋まっても実の中の自前の栄養分で地表まで芽を伸ばします。また、実(核果)は堅くて熊も鳥も食べられないそうですが、リスは殻を二つに、アカネズミは大きな穴を開け、中の栄養に満ちた果肉を食べることができます。両者は、冬に備えて実を地中に蓄えますが、食べ忘れた実は、程よい深さのところから発芽することが出来るのでオニグルミにはうれしいことです。まさにオニグルミは、いろいろ工夫を凝らした繁殖の天才です。Web:BOTANIKAによると、オニグルミは雌雄同株ですが、雄花と雌花の開花時期をずらし、風により他の株から運ばれた花粉によって受粉し、自家受粉を避けて別の遺伝子を持つ株と受粉するようにしている、そうです。オニグルミが生えているところは、以前、川が流れ、洪水などが発生したところと推定できるので、土地を評価する時には考えなければなりませんね。なお、名前の由来は諸説ありますが、この実を割る時に、力が要るので踏ん張りますが、その時に、顔が真っ赤になるので「鬼のようだ」というのでオニグルミというようになった、というのが説得力あるのではないかと思いますが、どうですか。

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(↑上の写真:いずれも実)左=ガマズミ、中=マユミ、右=ハゼノキ

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(↑上の写真)左=コウヤワラビ、中=ミドリヒメワラビ、木道のある園内風景

 

平山城址公園(西園・東園)・・・令和3年6月16日

 花の少ない時季ですが、梅雨の晴れ間に自然観察をしました。オカトラノオが満開、ヤブレガサも花を咲かせています。今日の様子です。

<西園にて>

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(↑上の写真)左=西園入口、中=オカトラノオ、右=ホタルブクロ

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(↑上の写真)左・中=ヒヨドリバナ(早めに咲き始め)、右=ドクダミの群落(遠目には綺麗)

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(↑上の写真)左=ギシギシ、中=ウマノミツバ、右=アカネ(特徴ある4枚の輪生葉)
 ウマノミツバ(馬之三葉)はセリ科ウマノミツバ属。日本全土の林下の木陰などに生える多年草。若葉のころは一見、食用のミツバのように見えるので大事に育てているとどんどん大きくなり、今度は花を期待して待つのですが、期待に応えず、見映えのしない小さな花で落胆させられます。それに根こそぎ除草しないと毎年大きな顔で出てきます。野田市HPによると「ミツバ に似ているが食用にならないどころか,毒性があるためこの名がある」と、あります。馬にでも食べさせておけば、くらいの軽い気持ちで「馬之三葉」と名づけられたようです。暗い木陰で頑張っているので愛でてあげてもらいたいと思います。

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(↑上の写真)左・中=コウゾ(=ヒメコウゾ)、右=猿渡の池

 コウゾ(楮)はクワ科コウゾ属。『APG牧野植物図鑑』によると「本州、四国、九州、琉球列島、及び台湾、朝鮮半島、中国の暖帯に分布。山地に野生化するが、普通製紙の原料として栽培する落葉低木。葉は互生し、若葉には深い切れ込みがある。雌雄同株。雄花は若枝の基部、雌花は上部葉腋に着く。果実が球形に集まり、初夏に赤熟し甘くて食べられる」ということです。ミツマタと共に古くから樹皮が製紙原料として利用されてきました。ウィキペディアによると「楮の皮の繊維は、麻に次いで長く、繊維が絡み合う性質も強く、その紙は粘りが強く揉んでも丈夫な紙となる」ということです。

<東園にて>

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(↑上の写真)左=東園入口、中・右=オカトラノオ

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(↑上の写真)左=ヤブレガサ、中=花のアップ、右=ヨウシュヤマゴボウ

 ヤブレガサ(破れ傘)はキク科ヤブレガサ属。本州以南の山地の木陰に生える多年草ウィキペディアによると、頭花は7~13個の小花からなり、すべて両性の筒状花。小花の花冠は5裂し、花柱の先は2つに分かれ反り返る、とあります。一見キク科コウヤボウキ属のハグマ、例えばカシワバハグマの花に似ています。APG牧野植物図鑑によると和名の破れ傘は、春先の絹毛に覆われた若葉の姿が、すぼめた傘のように見え、かつ切れ込みがあるのに基づく、と書かれています。若葉だけでなく写真の今の様子も破れ傘のように見えます。しかし、風情は確かに若葉の時の方があるかも知れませんね。

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(↑上の写真)左・中=チダケサシ、右=ギシギシ

 ギシギシ(羊蹄)はタデ科ギシギシ属。日本各地の原野、道端などの湿地に生える多年草。ギシギシとスイバは草姿がよく似ていて、間違えやすいですね。簡単で有効な見分け方は、茎に葉柄がなくついている葉の基部の形が「矢じり型」「片仮名のスイバのス型」だったらスイバで、葉柄があり、基部が丸型ならギシギシといえます。上の写真の者は葉柄があるのでギシギシです。ウィキペディアによると、「和名の由来は諸説あるが、正確な語源は明確ではない。京都の方言に由来するという説や、子供たちの遊びで茎をすり合わせてギシギシという音を出していたことからこの名があるという説が言われているほか、実が詰まってついていて、穂を振るとギシギシと音を立てるからともいわれる」と、ありますので、ご覧の皆様も由来に挑戦してみてください。羊蹄は漢名です。

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(↑上の写真)左=ヤネタビラコ、中=花のアップ、右=コブシの実

 ヤネタビラコ(屋根田平子)はキク科。長田武正著『原色日本帰化植物図鑑』によると「ヨーロッパ原産で、日本には昭和45年頃、北海道、長野県、東京都、千葉県などから前後して採集、報告されている。和名は、ヤネ・タビラコ(屋根・田平子)で、学名tectorum(屋根の)をもとに北村四郎博士がサハリンに入ったものにつけた名」ということです。今回、写真のようにコウゾリナと見紛う花を見つけました。茎にざらつきがありませんし、どことなくコウゾリナより柔らかい感じです。素人用の図鑑には、全く載っていませんでした。一般化したのが最近で、昭和45年頃に報告されるようになったものなので、仕方ありません。帰化植物図鑑の2冊と神奈川県植物誌に載っていましたが、原色日本帰化植物図鑑が一番詳しかったです。これからどれほどの速さで広まっていくか興味がもたれます。ご覧の皆様で、平山城址公園の写真のものがヤネタビラコでよいかどうか、同定していただけたらありがたいです。

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(↑上の写真)左・中=ムラサキシキブ、右=シロシキブ

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(↑上の写真)左=マルバアオダモの実、中=カマツカの実、右=終わりと始まりの広場

 マルバアオダモ(丸葉青梻)はモクセイ科トネリコ属。四国、九州と本州の山地に自生する高さ5~15mの落葉高木。。アオダモイチローのバットに利用されたたことで有名になりました。粘り気のある材質がバットにちょうど良いそうです。アメリカの選手はメープル、日本で言うカナダ産のカエデを使っているそうです。切った枝を水につけておくと水が青くなるのでアオダモといわれたそうで、ダモはトネリコのことをいったそうです。マルバアオダモアオダモの仲間で、アオダモの葉には鋸歯があるのですが、マルバアオダモの葉には鋸歯がなく全縁です。つまり、マルバとは葉の形が丸いという意味ではなく、葉の縁がギザギザせずつるっとした感じを丸い葉と表現したもののようです。

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(↑上の写真)左=ハリガネワラビ、中=フモトシダ、右=ミドリヒメワラビ