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東京都薬用植物園・・・令和3年6月25日

 東京都薬用植物園は、閉園していましたが、22日から通常通り開園されています。随分いろいろな草花が咲いています。薬用植物園ですから、外国産の薬用植物も栽培されています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=入口から温室、中と右=ヤマホタルブクロ

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(↑上の写真)左=ノカンゾウ、中=ヤブカンゾウ、右=トウカンゾウ

 ノカンゾウ(野萱草)はススキノキ科ワスレグサ属。ワスレグサ(忘れ草)は牧野新日本植物図鑑に正式に記載されていて、別名ヤブカンゾウと書かれています。ノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草),トウカンゾウ(唐萱草)のどれもがワスレグサ属なので、どれも忘れ草ということになります。ワスレグサ属は学名ではヘメロカリスといわれます。ニッコウキスゲ、ムサシノキスゲユウスゲなどもヘメロカリスなので、ワスレグサということになります。ノカンゾウヤブカンゾウの母種で、日本が大陸と日本海で別れた時に取り残されたのがヤブカンゾウなのだそうです(牧野博士説)。Web:花図鑑によれば「トウカンゾウは中国のほか長崎の男女群島に自生していて、江戸時代から園芸植物として栽培されていたが、シーボルトによってヨーロッパに持ち帰られた。後にアメリカで品種改良が行われ、ヘメロカリスとして逆輸入されている。属名の Hemerocallis はギリシャ語の「hemera(一日)+callos(美)」からきている。この属の植物の花は一日でしぼむことから名づけられた」ということです。一日花であることとワスレグサの名前は関係あるでしょうか。

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(↑上の写真)左=ミソハギ、中=メハジキ、右=マツムシソウ

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(↑上の写真)左=アサザ、中=ギボウシ、右=オオバギボウシ

 アサザ(浅沙、阿佐佐)はミツガシワ科アサザ属。APG牧野植物図鑑によると北半球の温帯から亜熱帯に広く分布し、本州、四国、九州の池や沼などに生える多年生の水草ということです。花は黄色の花弁が5枚のように見えますが、5裂した合弁花で、黄色の総で縁取りされています。朝に咲いて昼には閉じ始めます。主に根茎で増えるので、同じ沼にはクローンの花ばかりということになりかねません。ウィキペディアによると、アサザの花は「異型花柱性」で、雌しべの花柱が長く、雄しべの花糸が短い「長花柱花」と、反対に花柱が短く花糸が長い「短花柱花」の花があり、クローンを防ぎ、自家受粉しないようにして遺伝子の多様性を保っているということです。異花受粉でつくられた種子は翌年に発芽するほか、土壌シードバンク(埋土種子)を形成して、数年間休眠することもあるそうです。しかし、日本の狭い池や沼では、このような多様性は確保されていないようで、2つの花型が生育するのは霞ヶ浦だけだそうです。準絶滅危惧種に指定されています。

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(↑上の写真)左と中=タバコ、右=タチフウロウ 

タバコ(煙草)はナス科タバコ属。南米熱帯地方を原産とされる多年草。面白いので、ご存知、芥川龍之介の『煙草と悪魔』のお話を再掲します。「悪魔はイルマンの一人に化けて、フランシスコ・ザビエルと一緒に日本へやって来た。日本での退屈な時間に園芸を始めた。持ってきた種子を蒔いて育てたものは、茎の先に漏斗のような形をした薄紫の花をつけた。悪魔は骨を折っただけに、この花の咲いたのが、大変うれしかった。と、そこに通りかかった牛商人が『もし、お上人様、その花は何でございますか』と問うと、上人に化けている悪魔は『この名だけは教えられない』という。悪魔は『三日の間に誰かに聞いてもいいですよ。この名が当たったら、これをみんなあげますよ。その他にお酒なども』という。『賭けですよ』ともいう。悪魔は『もし当たらなかったら、あなたの体と魂をもらいますよ』と右の手をまわして帽子を脱いだ。三日目の晩、牛商人は、もくろんでいた計画を実行した。即ち、牛の尻を思い切りたたいて畑の中に追い込んだ。けたたましい牛の鳴き声と蹄の音に、寝込んでいた悪魔はびっくりして窓を開け『こん畜生、何だって、おれのタバコ畑を荒らすのだ』と怒鳴った。牛商人は、首尾よく、タバコと云う名が分かり、言い当てて、悪魔の鼻を明かした。悪魔は敗北した。が、それ以後、日本全土にタバコを普及させることができ、日本を堕落させることにおいては、悪魔として勝利した」タバコには、こんな裏話があったんですね。(一部翻案)

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(↑上の写真)左=スイレン、中=ソバ、右=トリアシショウマ

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(↑上の写真)左=イブキジャコウソウ、中=ヨウシュイブキジャコウソウ、右=モミジガサ

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(↑上の写真)左=クガイソウ、中=イヌゴマ、右=シオデ

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(↑上の写真)左=ノリウツギ、中=ニンジンボク、右=ソクズ

 ニンジンボク(人参木)はシソ科ハマゴウ属。APG牧野植物図鑑によると「中国大陸原産で享保年間(1716~1735)に種子が日本に入ったという記録がある落葉低木(一部翻案)」ということです。似たものにセイヨウニンジンボクが販売されています。これは地中海沿岸原産と言います。両者は、言えばユーラシア大陸の植物ですから、それほど変種していないのかもしれません。ご覧の皆様に区別点を教えていただきたいです。ニンジンボクには掌状複葉の小葉に鋸歯があるといいますが、無いこともあるということです。小葉の枚数も4枚前後で少ないのがニンジンボク、6枚前後の多いものがセイヨウニンジンボクということですが、中間のものもあるようです。享保年間に日本に渡来したのは、薬用のためで、Web熊本大学薬学部によると「果実はカゼに効果があり,咳や喘息,腹痛に用いる。根には発汗作用があり,また抗マラリア薬としても用いる。茎の汁は小児のひきつけ、,下痢、たむし、痰などに用いる。茎は火傷や焼けただれた傷に用いる。葉は寝違え,脚気の腫れなどに用いる」とあります。

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(↑上の写真)左=キクイモモドキ、中=コガネバナ、右=ジギタリス

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(↑上の写真)左=アメリノウゼンカズラ、中=ザクロ、右=ハマナス

 ザクロ(柘榴)はミソハギ科ザクロ属。APG牧野植物図鑑によると「西アジア地方の原産。日本には平安時代に渡来した落葉高木。若い枝には4稜があり、短枝は棘になる。材は黄色。葉は互生する。種子は甘酸っぱく食べられる。和名は柘榴の音に基づく」(一部翻案)ということです。(野上彌生子著『海神丸』:大正8年の遭難船の実話に基づく小説)船内の食料も底をつき始めると、五郎助と八蔵は船首の船具置き場を根城にし、船長と三吉は、船尾の船長室と隣の部屋を根城にした。いよいよ食料が底をつき、ひもじさに耐えられなくなると八蔵が「人間はどんな味がするもんじゃろか」と呟き、五郎助は「柘榴の実の味がするというじゃねえか」と応える。八蔵は、余りに腹が減りすぎて我慢ならず同僚の三吉を斧で殺して食べてみようとしていた。しかし、船長はそれを見咎め、甲板上で船長と八蔵はやり合った。が、五郎助が間に入り、船長に謝り、八蔵も引き下がった。それから3人で三吉の遺体を船室から甲板に引き上げ、船長が弔いを挙げて、海に流し、水葬に付した、という悲惨な話でした。日本人には、仏さまが鬼子母神に人の子の代わりに柘榴の実を与えたということから、柘榴の実は人の味がするという俗信が始まったということですね。

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(↑上は実の写真)左=ナワシロイチゴ、中=ボケ、右=ゴンズイ

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(↑上の写真は温室内)左=温室内の様子、中=ゲンペイクサギ、右=カカオ

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(↑上の写真はシダ各種)左=オシダ、中=ゲジゲジシダ、右=ヤマイタチシダ

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(↑上の写真)左=フモトシダ、中=園内林の中の様子、右=栽培園の風景