野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

野川公園自然観察園・・・令和3年6月18日

 漸く開園された様なので訪れました。これからは月曜以外は開園するそうです。今は春の花の時季が終わり、ハンゲショウノカンゾウヤブミョウガヒヨドリバナなど夏の花が咲き始めています。春の花の実も大きくなりつつあるところです。命の鼓動に静かに耳を傾けてみましょう。訪れる人も少なくコロナの心配もありません。

f:id:noyama_ko:20210619094359j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094411j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094424j:plain

(↑上の写真)左=自然観察園入口、中と右=ハンゲショウ

 ハンゲショウ半夏生)はドクダミハンゲショウ属。本州以南に分布する水辺に生える多年草。夏(げ)というのは仏語で「僧が一所に籠って修行する期間(90日間)」のことだそうで、半夏(はんげ)とは夏(げ)の半分(45日間)、現在の暦で夏至の日から11日目の7月2日だそうで、修行の半分、半夏を終えたということです。カラスビシャクのことを半夏といいますが、ハンゲショウ半夏生で写真のような草本です。葉の半分が白く化粧をしたようになるので「半化粧」、それと仏語の「半夏」を掛けて、半夏生と名づけられたといいます。江戸時代の粋でしょうか。白く化粧した部分は盛夏を過ぎた頃には緑に戻りますので、気づかずに見過ごしてしまいます。また、花には特有の臭気があります。今年は気を付けて観察したいですね。

f:id:noyama_ko:20210619094619j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094628j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094639j:plain

(↑上の写真)左=ノカンゾウ、中=ウツボグサ、右=オカトラノオ

 オカトラノオ(丘虎尾)はサクラソウオカトラノオ属。日本全国日当たりのよい草原、丘陵地などに生える多年草。地表近くの地下茎で旺盛に増えるので、それぞれに群落をつくっています。丸山直敏解説『カラー野に咲く花』に、「オカとはヌマに対する乾いた土地を指し、トラノオとは花穂が長く出るので虎の尾に見立てたものであるが、姿の優しい花で虎はあまり連想できない」としている。ヌマ(沼)には、花穂が立っているヌマトラノオ(沼虎尾)が咲いていますが、両者の交雑種にイヌヌマトラノオ(犬沼虎尾)があります。科博付属自然教育園の池付近では、オカトラノオよりイヌヌマトラノオが優勢と解説されています。しかし、区別がなかなかつきません。

f:id:noyama_ko:20210619094739j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094749j:plain
f:id:noyama_ko:20210619094804j:plain

(↑上の写真)左と中=ヤブミョウガ、右=ヒヨドリバナ(まだこれから)

f:id:noyama_ko:20210619095212j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095226j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095242j:plain

(↑上の写真)左=ヤブジラミ、中=クサノオウ(花終わり)、右=ホタルブクロ(1株のみ)

 ヤブジラミ(藪虱)はセリ科ヤブジラミ属。日本各地の野原や道端に生える2年草。葉の形が同じセリ科のヤブニンジンと似ています。花の時季には、花の形がそっくりなので葉の形を能く見ないと見誤ります。実ができるとはっきり違いが分かります。ヤブジラミは長円形丸型で周囲に先のとがったマジックテープのような毛が密集していています。ヤブニンジンは、細い棍棒状の実が、5本輪状に広がっていますので、実の形は全く違います。そのため別名ナガジラミといわれています。どちらの実も子供たちは「ひっつき虫」といって実をくっつけて遊びます。

f:id:noyama_ko:20210619095510j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095527j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095543j:plain

(↑上の写真)左=ムラサキシキブ、中=ガクアジサイ、右=ネムノキ

f:id:noyama_ko:20210619192400j:plain
f:id:noyama_ko:20210619192417j:plain
f:id:noyama_ko:20210619192437j:plain

(↑上の写真)左=アカザ、中=シロザ、右=園内風景

 アカザ(藜)、シロザ(白藜)は共にヒユ科アカザ属。日本全土の荒地や道端に生える一年草シロザはアカザの母種という考えもあり、いがりまさし著『四季の野の花図鑑』によると「アカザとシロザを分けずに考える説もある。ユーラシア原産で有史以前に広く帰化した史前帰化植物と考えられている。目立たない花を房状の花序に8~11月ごろつける。芽出しのころ、葉の基部が粉を吹くように白くなるのがシロザ、赤くなるのがアカザで、共に食用になる」という。 有川浩著小説『植物図鑑』に「それね、最近すごく少なくなってる植物なんだよ。シロザなんだけどさ。俺(主人公イツキ)結構いろんなところ歩き回ってきたけど、こいつら見掛けるのってホント少なくなってきててさ」「絶滅危惧種だったり?」「そこまではまだ行かないけどね」このままだといつかそうなってもおかしくないんだろうな、ということはイツキの表情で分かった。「分かった、そっとしとく」とさやかは応えた。・・・植物の好きな主人公が、山菜料理なども交えながら、二人の愛を育んでいく話でしたね。

f:id:noyama_ko:20210619095723j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095749j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095803j:plain

(↑上の写真:いずれも実)左=フタリシズカ、中=ホウチャクソウ、右=エナシヒゴクサ

 エナシヒゴクサ(柄無肥後草・柄無籤草)はカヤツリグサ科スゲ属。日本の山野や丘陵地の半日陰に生える多年草。花は、4~5月、茎頂にトウモロコシのように雄花(雄小穂)を咲かせ、茎に2~3個の雌花(小さい雌花が固まった雌小穂)をつけます。小さな雌花の塊が、トウモロコシのように受粉し、種子となり、熟すとパラパラ落ちて、子孫を増やします。花(雌小穂)に柄がないので柄無で、実は直立したままでうなだれません。また、根のような匍匐枝が地中を横に這い、先端をはじめ、その節ごとに新株をつくり、子孫を増やします。実のつき方が可愛らしいので、見とれている間に種子がこぼれ、また匍匐枝で増え始めます。一度蔓延らせると除草がままなりません。和名は、肥後で発見されたからという説の人は柄無肥後草とし、茎が竹籤(ひご)のようだからという説の人は柄無籤草としています。ご覧の皆様は、どちらの説でしょうか。または、別の説を立てられるでしょうか。

f:id:noyama_ko:20210619095943j:plain
f:id:noyama_ko:20210619095957j:plain
f:id:noyama_ko:20210619100012j:plain

(↑上の写真:いずれも実)左=コウゾ(=ヒメコウゾ)、中=エゴノキ、右=オニグルミ

 オニグルミ(鬼胡桃)はクルミクルミ属。九州から北海道にかけて広く分布し、主に山間の川沿いなどに自生する落葉高木。果実は水に浮くので、川沿いに流れ着いて発芽し、深く埋まっても実の中の自前の栄養分で地表まで芽を伸ばします。また、実(核果)は堅くて熊も鳥も食べられないそうですが、リスは殻を二つに、アカネズミは大きな穴を開け、中の栄養に満ちた果肉を食べることができます。両者は、冬に備えて実を地中に蓄えますが、食べ忘れた実は、程よい深さのところから発芽することが出来るのでオニグルミにはうれしいことです。まさにオニグルミは、いろいろ工夫を凝らした繁殖の天才です。Web:BOTANIKAによると、オニグルミは雌雄同株ですが、雄花と雌花の開花時期をずらし、風により他の株から運ばれた花粉によって受粉し、自家受粉を避けて別の遺伝子を持つ株と受粉するようにしている、そうです。オニグルミが生えているところは、以前、川が流れ、洪水などが発生したところと推定できるので、土地を評価する時には考えなければなりませんね。なお、名前の由来は諸説ありますが、この実を割る時に、力が要るので踏ん張りますが、その時に、顔が真っ赤になるので「鬼のようだ」というのでオニグルミというようになった、というのが説得力あるのではないかと思いますが、どうですか。

f:id:noyama_ko:20210619100148j:plain
f:id:noyama_ko:20210619100204j:plain
f:id:noyama_ko:20210619100219j:plain

(↑上の写真:いずれも実)左=ガマズミ、中=マユミ、右=ハゼノキ

f:id:noyama_ko:20210619100347j:plain
f:id:noyama_ko:20210619100409j:plain
f:id:noyama_ko:20210619100430j:plain

(↑上の写真)左=コウヤワラビ、中=ミドリヒメワラビ、木道のある園内風景