野楽力研究所

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高尾梅郷遊歩道・・・令和6年3月30日

 初夏のような陽気に誘われて、ジロボウエンゴサクニリンソウが満開の高尾梅郷遊歩道を自然観察して歩きました。JR高尾駅から徒歩15分、遊歩道出発点の上椚田橋に出て、遊歩道を高速道路の下「高尾梅の郷まちの広場」まで歩きました。そこで昼食を摂り、来た道を高尾駅まで戻りました。

(↑上の写真)左=上椚田橋の遊歩道の入口の表示、中=梅の時期が終わっている様子、右=昼食場所の「高尾梅の郷まちの広場」

(↑上の写真)いずれもジロボウエンゴサク(次郎坊延胡索)

 ジロボウエンゴサク(次郎坊延胡索)はケシ科キケマン属。関東地方以西、四国、九州および台湾、中国の暖帯の原野や山麓に生える多年草。名前の由来は、伊勢地方でスミレのことを太郎坊、ジロボウエンゴサクのことを次郎坊と呼んでいたことが小野嵐山の著書(1802)に紹介されたのが始まりといわれます。幸田露伴著「太郎坊」では、菫の描かれている大きい猪口を太郎坊、小さい猪口を次郎坊と呼んで、秘めた楽しみを味わったことが書かれています。延胡索とは漢名でキケマン属の総称名とのことで、キケマン属の塊茎のことを漢方では延胡索といい、痛み止めなどに用いられるとのことです。(各種Web情報を参考)

(↑上の写真)いずれもニリンソウ二輪草

 ニリンソウ二輪草)はキンポウゲ科イチリンソウ属。日本各地と中国からロシアの極東に分布し、落葉広葉樹林の林縁や林床に生え、しばしば群生する多年草。日本では全国の林床地に早春のみ可憐な姿を見せる春の妖精(スプリング・エフェメラル)と言われる草花を代表する野草です。花びらは無く、花びらのように見えるのは、萼片で通常5枚。花柄(=花茎のようなもの)のもとに無柄の葉のように見える総苞葉が3枚茎を取り巻いています。そこから花柄を通常2本伸ばし、花をつけます。2本めの花は少し遅れて咲きますが、1本めの花に寄り添うようにみえるので、川中美幸が「二輪草」という歌でその様子を歌っています。もう少しすると2本咲いている二輪草が見られると思います。(各種Web、図鑑参照)

(↑上の写真)左と中=ヨゴレネコノメ(汚れ猫の目)、右=ユリワサビ

 ヨゴレネコノメ(汚れ猫の目)はユキノシタ科ネコノメソウ属。沢沿いや斜面のやゝ暗い湿ったところに群生。暗い中にあって驚くほど明るい黄色の苞葉に惹きつけられます。その外側の個性的な色をした厚ぼったい葉との対比がすばらしいです。ヨゴレとついているのはこの汚れている?感じの葉のことを言ったという説があります。ネコノメ(猫の目)というのは、蒴果(さくか=種子の入った袋)の閉じ口(縫線)のある蒴果のようすが猫の目のようだから、というのがもっとも一般的な説です。吉野光子共著「花のハイキング」高尾・陣馬篇には、「ネコノメの名は熟した実が割れた様子が猫の目に似ていることから」とあります。花が終わると蒴果ができますので確認できます。

(↑上の写真)左=アマナ(甘菜)、中=キバナノアマナ(黄花甘菜)、右=ミヤマカタバミ(深山片喰)

 ミヤマカタバミ(深山片喰)はカタバミ科カタバミ属。『牧野新日本植物図鑑』によると「山地の木の下に生える多年生草本。春に葉の間から花柄を出す。花弁は5個、萼片も5個。雄しべは長短10本、雌しべは1本。子房には花柱が5本ある。花が終わった後閉鎖花を出し、よく結実する」とあります。雄しべ雌しべのつくりは芸術的です。閉鎖花ともどもじっくり観察したいです。ところで世界的な分布は不明のようですが、Web『弘前大学白神山地植物情報検索』によると「本州東北地方南部から中国地方、中国、ヒマラヤに分布」とあります。

(↑上の写真)左=ナガバノスミレサイシン(長葉菫細辛)、中=マキノスミレ(牧野菫)、右=セントウソウ(仙洞草)

 セントウソウ(仙洞草)はセリ科セントウソウ属。セントウソウ属にはこの草一種ということで一属一種の世界的には珍しい植物で、日本固有種ということです。日本国中どこにでも分布していて、山野の林縁などによく生えている多年草。春の先頭を切って咲くので先頭草か、先陣を争って咲くので戦闘草と思っていましたが、仙洞草でした。上皇がお住いの御所を仙洞=世を超絶された仙人が住まわれる所という意味合いで仙洞御所と呼ばれますが、その御所に生えていた草と言うことでしょう。

(↑上の写真)左=ナツトウダイ(夏燈台)、中=ミミガタテンナンショウ(耳型天南星)、右=カンスゲ(寒菅) 

 カンスゲ(寒菅)はカヤツリグサ科スゲ属。日本原産の常緑多年草で各地の樹陰や山地の水辺に多く見られる強壮な多年草。冬でも艶のある堅い葉を多数根生させ、常緑で表面はやゝ光沢があって硬く、縁はざらついている。春に葉の間から多くの花茎をたてて先端に1個の雄小穂、その下に雌小穂を数個つける。スゲは清浄の意味でカンスゲ(寒菅)は冬の清浄を表している、とのこと。(各種Web参照)

(↑上の写真)左=コブシ(辛夷)、中=アブラチャン(油瀝青)、右=サンシュユ(山茱萸=咲き終わり)

 アブラチャン(油瀝青)はクスノキ科クロモジ属。本州から九州の山地でやや湿ったところに生える落葉低木。3~4月、葉に先立って淡黄色の小さな花を散形状に付ける。雌雄異株。果実は直径約1,5cmの球形。アブラチャンのチャンは瀝青(れきせい=コールタール、ピッチ)のこと。昔、果実や樹皮の油を灯用にしたことによる。果実や樹皮に油が多く、良く燃えるから油と瀝青(チャン)をあわせた名という。(各種図鑑及びWeb参照)

(↑上の写真)左=ヒサカキ(姫榊)、中と右=ツルマサキ(蔓柾)

 ヒサカキ(姫榊)はモッコク科ヒサカキ属。『牧野新日本植物図鑑』によると「やや乾いた山地に多く生える常緑低木または亜高木。花は、春の初めに葉腋に1~3個の柄のある白い花が束になって付き下向きに開く」とあります(上掲写真)。関西の神社で紙垂をつけて玉串として使われていますが、関東には榊(サカキ)がないので代わりに榊の小型のようなので姫榊(このように書いてヒメサカキ→ヒサカキとなった)を榊の代わりに使うようになったということです。榊に非ずということで非榊と書いていましたが、牧野富太郎博士の「日本名ヒサカキは姫サカキの訛りでサカキに比べて小型であることを示す」に倣いました。

(↑上の写真)いずれも八王子市立駒木野庭園、左=入口、右=日本庭園、右=石垣のユキヤナギ(雪柳)

(↑上の写真)左=小仏関所跡石碑、中=遊歩道のうち特に保護された場所、右=杉林の中を通る遊歩道