野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

神奈川県立東高根森林公園・・・令和3年6月24日

 東京に接し、多摩川を渡った川崎市にある里山の雰囲気の残る森と谷戸の公園です。梅雨の合間にちょっと寄ってみました。アジサイオカトラノオはもちろん立派に咲いていますが、オオハンゲ、ノカンゾウヤブカンゾウも咲いています。キツリフネは咲きはじめです。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=園内風景、中=ノカンゾウ、右=ヤブカンゾウ

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(↑上の写真)左=ナガバミズアオイ、中=ミズカンナ、右=ハナショウブ

 ナガバミズアオイ(長葉水葵)は、ミズアオイ科ポンテデリア属の栽培種。Web:EVERGREEN植物図鑑によると「北アメリカ東部~アルゼンチンの水湿地に生える多年草で、高さ60cmほどの花茎の先に、長さ7~15cmの青紫色の穂状花序をつける」(一部翻案)ということです。木道を隔ててミズカンナよりさらにはっきりした青紫の花を咲かせています。在来種はミズアオイで、ホテイアオイ外来種、水質浄化するといわれますが、繁殖力旺盛)に似ています。どちらもアオイと名づけられているのは葉が徳川家家紋フタバアオイの葉に似ているからですが、ナガバミズアオイではちょっと葵の葉は想像できませんね。

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(↑上の写真)左=オオハンゲ、中=ハンゲショウ、右=オオバギボウシ

 オオハンゲ(大半夏)はサトイモ科ハンゲ属。岐阜県以西から琉球列島の暖帯に生える多年草ということです。この公園で見られるのは、植栽によるものとなります。葉はムサシアブミのようで、大きく、花はカラスビシャクを大きくしたような仏炎苞に包まれた肉穂花序です。カラスビシャクはハンゲ(半夏)といわれ、半夏(今の時期)の時期に花を咲かせます。それより大きいのでオオハンゲと言われるようです。関東地方では自然には見られないものです。

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(↑上の写真)左=キツリフネ、中=オカトラノオ、右=オカトラノオの花の裏側

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(↑上の写真)左=ボタンクサギ、中=ヤブジラミ、右=ワスレナグサ

 ボタンクサギ(牡丹臭木)はシソ科クサギ属。Web:BOTANIKAによると「中国南部やインド北部が原産の落葉低木。別名「ベニバナクサギ」「ヒマラヤクサギ」とも呼ばれている。繁殖力が強く、挿し木ですぐ根付くので、株分けには苦労しないが、1度根付くと、地下茎をのばしてあっという間に増えてしまう。葉と茎は、傷をつけると独特の匂いを発す。牡丹のようにきれいな花を咲かせるが、葉と茎の匂いが強いため、「ボタンクサギ(牡丹臭木)」と名づけられた」(一部翻案)といわれています。ここの公園で見かけたきれいな花ですが、今後どのようになるでしょうか。

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(↑上の写真)左=オミナエシ、中=ヒヨドリバナ、右=ノハカタカラクサトキワツユクサ

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(↑上の写真)左と中=ヨウシュヤマゴボウ、右=ヤイトバナ(ヘクソカズラ

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(↑上の写真)左と中=コマツナギ、右=ネムノキ

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(↑上の写真)アジサイ

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(↑上の写真)左=ビジターセンター、中と右=園内風景

野川公園自然観察園・・・令和3年6月18日

 漸く開園された様なので訪れました。これからは月曜以外は開園するそうです。今は春の花の時季が終わり、ハンゲショウノカンゾウヤブミョウガヒヨドリバナなど夏の花が咲き始めています。春の花の実も大きくなりつつあるところです。命の鼓動に静かに耳を傾けてみましょう。訪れる人も少なくコロナの心配もありません。

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(↑上の写真)左=自然観察園入口、中と右=ハンゲショウ

 ハンゲショウ半夏生)はドクダミハンゲショウ属。本州以南に分布する水辺に生える多年草。夏(げ)というのは仏語で「僧が一所に籠って修行する期間(90日間)」のことだそうで、半夏(はんげ)とは夏(げ)の半分(45日間)、現在の暦で夏至の日から11日目の7月2日だそうで、修行の半分、半夏を終えたということです。カラスビシャクのことを半夏といいますが、ハンゲショウ半夏生で写真のような草本です。葉の半分が白く化粧をしたようになるので「半化粧」、それと仏語の「半夏」を掛けて、半夏生と名づけられたといいます。江戸時代の粋でしょうか。白く化粧した部分は盛夏を過ぎた頃には緑に戻りますので、気づかずに見過ごしてしまいます。また、花には特有の臭気があります。今年は気を付けて観察したいですね。

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(↑上の写真)左=ノカンゾウ、中=ウツボグサ、右=オカトラノオ

 オカトラノオ(丘虎尾)はサクラソウオカトラノオ属。日本全国日当たりのよい草原、丘陵地などに生える多年草。地表近くの地下茎で旺盛に増えるので、それぞれに群落をつくっています。丸山直敏解説『カラー野に咲く花』に、「オカとはヌマに対する乾いた土地を指し、トラノオとは花穂が長く出るので虎の尾に見立てたものであるが、姿の優しい花で虎はあまり連想できない」としている。ヌマ(沼)には、花穂が立っているヌマトラノオ(沼虎尾)が咲いていますが、両者の交雑種にイヌヌマトラノオ(犬沼虎尾)があります。科博付属自然教育園の池付近では、オカトラノオよりイヌヌマトラノオが優勢と解説されています。しかし、区別がなかなかつきません。

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(↑上の写真)左と中=ヤブミョウガ、右=ヒヨドリバナ(まだこれから)

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(↑上の写真)左=ヤブジラミ、中=クサノオウ(花終わり)、右=ホタルブクロ(1株のみ)

 ヤブジラミ(藪虱)はセリ科ヤブジラミ属。日本各地の野原や道端に生える2年草。葉の形が同じセリ科のヤブニンジンと似ています。花の時季には、花の形がそっくりなので葉の形を能く見ないと見誤ります。実ができるとはっきり違いが分かります。ヤブジラミは長円形丸型で周囲に先のとがったマジックテープのような毛が密集していています。ヤブニンジンは、細い棍棒状の実が、5本輪状に広がっていますので、実の形は全く違います。そのため別名ナガジラミといわれています。どちらの実も子供たちは「ひっつき虫」といって実をくっつけて遊びます。

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(↑上の写真)左=ムラサキシキブ、中=ガクアジサイ、右=ネムノキ

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(↑上の写真)左=アカザ、中=シロザ、右=園内風景

 アカザ(藜)、シロザ(白藜)は共にヒユ科アカザ属。日本全土の荒地や道端に生える一年草シロザはアカザの母種という考えもあり、いがりまさし著『四季の野の花図鑑』によると「アカザとシロザを分けずに考える説もある。ユーラシア原産で有史以前に広く帰化した史前帰化植物と考えられている。目立たない花を房状の花序に8~11月ごろつける。芽出しのころ、葉の基部が粉を吹くように白くなるのがシロザ、赤くなるのがアカザで、共に食用になる」という。 有川浩著小説『植物図鑑』に「それね、最近すごく少なくなってる植物なんだよ。シロザなんだけどさ。俺(主人公イツキ)結構いろんなところ歩き回ってきたけど、こいつら見掛けるのってホント少なくなってきててさ」「絶滅危惧種だったり?」「そこまではまだ行かないけどね」このままだといつかそうなってもおかしくないんだろうな、ということはイツキの表情で分かった。「分かった、そっとしとく」とさやかは応えた。・・・植物の好きな主人公が、山菜料理なども交えながら、二人の愛を育んでいく話でしたね。

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(↑上の写真:いずれも実)左=フタリシズカ、中=ホウチャクソウ、右=エナシヒゴクサ

 エナシヒゴクサ(柄無肥後草・柄無籤草)はカヤツリグサ科スゲ属。日本の山野や丘陵地の半日陰に生える多年草。花は、4~5月、茎頂にトウモロコシのように雄花(雄小穂)を咲かせ、茎に2~3個の雌花(小さい雌花が固まった雌小穂)をつけます。小さな雌花の塊が、トウモロコシのように受粉し、種子となり、熟すとパラパラ落ちて、子孫を増やします。花(雌小穂)に柄がないので柄無で、実は直立したままでうなだれません。また、根のような匍匐枝が地中を横に這い、先端をはじめ、その節ごとに新株をつくり、子孫を増やします。実のつき方が可愛らしいので、見とれている間に種子がこぼれ、また匍匐枝で増え始めます。一度蔓延らせると除草がままなりません。和名は、肥後で発見されたからという説の人は柄無肥後草とし、茎が竹籤(ひご)のようだからという説の人は柄無籤草としています。ご覧の皆様は、どちらの説でしょうか。または、別の説を立てられるでしょうか。

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(↑上の写真:いずれも実)左=コウゾ(=ヒメコウゾ)、中=エゴノキ、右=オニグルミ

 オニグルミ(鬼胡桃)はクルミクルミ属。九州から北海道にかけて広く分布し、主に山間の川沿いなどに自生する落葉高木。果実は水に浮くので、川沿いに流れ着いて発芽し、深く埋まっても実の中の自前の栄養分で地表まで芽を伸ばします。また、実(核果)は堅くて熊も鳥も食べられないそうですが、リスは殻を二つに、アカネズミは大きな穴を開け、中の栄養に満ちた果肉を食べることができます。両者は、冬に備えて実を地中に蓄えますが、食べ忘れた実は、程よい深さのところから発芽することが出来るのでオニグルミにはうれしいことです。まさにオニグルミは、いろいろ工夫を凝らした繁殖の天才です。Web:BOTANIKAによると、オニグルミは雌雄同株ですが、雄花と雌花の開花時期をずらし、風により他の株から運ばれた花粉によって受粉し、自家受粉を避けて別の遺伝子を持つ株と受粉するようにしている、そうです。オニグルミが生えているところは、以前、川が流れ、洪水などが発生したところと推定できるので、土地を評価する時には考えなければなりませんね。なお、名前の由来は諸説ありますが、この実を割る時に、力が要るので踏ん張りますが、その時に、顔が真っ赤になるので「鬼のようだ」というのでオニグルミというようになった、というのが説得力あるのではないかと思いますが、どうですか。

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(↑上の写真:いずれも実)左=ガマズミ、中=マユミ、右=ハゼノキ

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(↑上の写真)左=コウヤワラビ、中=ミドリヒメワラビ、木道のある園内風景

 

平山城址公園(西園・東園)・・・令和3年6月16日

 花の少ない時季ですが、梅雨の晴れ間に自然観察をしました。オカトラノオが満開、ヤブレガサも花を咲かせています。今日の様子です。

<西園にて>

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(↑上の写真)左=西園入口、中=オカトラノオ、右=ホタルブクロ

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(↑上の写真)左・中=ヒヨドリバナ(早めに咲き始め)、右=ドクダミの群落(遠目には綺麗)

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(↑上の写真)左=ギシギシ、中=ウマノミツバ、右=アカネ(特徴ある4枚の輪生葉)
 ウマノミツバ(馬之三葉)はセリ科ウマノミツバ属。日本全土の林下の木陰などに生える多年草。若葉のころは一見、食用のミツバのように見えるので大事に育てているとどんどん大きくなり、今度は花を期待して待つのですが、期待に応えず、見映えのしない小さな花で落胆させられます。それに根こそぎ除草しないと毎年大きな顔で出てきます。野田市HPによると「ミツバ に似ているが食用にならないどころか,毒性があるためこの名がある」と、あります。馬にでも食べさせておけば、くらいの軽い気持ちで「馬之三葉」と名づけられたようです。暗い木陰で頑張っているので愛でてあげてもらいたいと思います。

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(↑上の写真)左・中=コウゾ(=ヒメコウゾ)、右=猿渡の池

 コウゾ(楮)はクワ科コウゾ属。『APG牧野植物図鑑』によると「本州、四国、九州、琉球列島、及び台湾、朝鮮半島、中国の暖帯に分布。山地に野生化するが、普通製紙の原料として栽培する落葉低木。葉は互生し、若葉には深い切れ込みがある。雌雄同株。雄花は若枝の基部、雌花は上部葉腋に着く。果実が球形に集まり、初夏に赤熟し甘くて食べられる」ということです。ミツマタと共に古くから樹皮が製紙原料として利用されてきました。ウィキペディアによると「楮の皮の繊維は、麻に次いで長く、繊維が絡み合う性質も強く、その紙は粘りが強く揉んでも丈夫な紙となる」ということです。

<東園にて>

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(↑上の写真)左=東園入口、中・右=オカトラノオ

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(↑上の写真)左=ヤブレガサ、中=花のアップ、右=ヨウシュヤマゴボウ

 ヤブレガサ(破れ傘)はキク科ヤブレガサ属。本州以南の山地の木陰に生える多年草ウィキペディアによると、頭花は7~13個の小花からなり、すべて両性の筒状花。小花の花冠は5裂し、花柱の先は2つに分かれ反り返る、とあります。一見キク科コウヤボウキ属のハグマ、例えばカシワバハグマの花に似ています。APG牧野植物図鑑によると和名の破れ傘は、春先の絹毛に覆われた若葉の姿が、すぼめた傘のように見え、かつ切れ込みがあるのに基づく、と書かれています。若葉だけでなく写真の今の様子も破れ傘のように見えます。しかし、風情は確かに若葉の時の方があるかも知れませんね。

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(↑上の写真)左・中=チダケサシ、右=ギシギシ

 ギシギシ(羊蹄)はタデ科ギシギシ属。日本各地の原野、道端などの湿地に生える多年草。ギシギシとスイバは草姿がよく似ていて、間違えやすいですね。簡単で有効な見分け方は、茎に葉柄がなくついている葉の基部の形が「矢じり型」「片仮名のスイバのス型」だったらスイバで、葉柄があり、基部が丸型ならギシギシといえます。上の写真の者は葉柄があるのでギシギシです。ウィキペディアによると、「和名の由来は諸説あるが、正確な語源は明確ではない。京都の方言に由来するという説や、子供たちの遊びで茎をすり合わせてギシギシという音を出していたことからこの名があるという説が言われているほか、実が詰まってついていて、穂を振るとギシギシと音を立てるからともいわれる」と、ありますので、ご覧の皆様も由来に挑戦してみてください。羊蹄は漢名です。

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(↑上の写真)左=ヤネタビラコ、中=花のアップ、右=コブシの実

 ヤネタビラコ(屋根田平子)はキク科。長田武正著『原色日本帰化植物図鑑』によると「ヨーロッパ原産で、日本には昭和45年頃、北海道、長野県、東京都、千葉県などから前後して採集、報告されている。和名は、ヤネ・タビラコ(屋根・田平子)で、学名tectorum(屋根の)をもとに北村四郎博士がサハリンに入ったものにつけた名」ということです。今回、写真のようにコウゾリナと見紛う花を見つけました。茎にざらつきがありませんし、どことなくコウゾリナより柔らかい感じです。素人用の図鑑には、全く載っていませんでした。一般化したのが最近で、昭和45年頃に報告されるようになったものなので、仕方ありません。帰化植物図鑑の2冊と神奈川県植物誌に載っていましたが、原色日本帰化植物図鑑が一番詳しかったです。これからどれほどの速さで広まっていくか興味がもたれます。ご覧の皆様で、平山城址公園の写真のものがヤネタビラコでよいかどうか、同定していただけたらありがたいです。

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(↑上の写真)左・中=ムラサキシキブ、右=シロシキブ

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(↑上の写真)左=マルバアオダモの実、中=カマツカの実、右=終わりと始まりの広場

 マルバアオダモ(丸葉青梻)はモクセイ科トネリコ属。四国、九州と本州の山地に自生する高さ5~15mの落葉高木。。アオダモイチローのバットに利用されたたことで有名になりました。粘り気のある材質がバットにちょうど良いそうです。アメリカの選手はメープル、日本で言うカナダ産のカエデを使っているそうです。切った枝を水につけておくと水が青くなるのでアオダモといわれたそうで、ダモはトネリコのことをいったそうです。マルバアオダモアオダモの仲間で、アオダモの葉には鋸歯があるのですが、マルバアオダモの葉には鋸歯がなく全縁です。つまり、マルバとは葉の形が丸いという意味ではなく、葉の縁がギザギザせずつるっとした感じを丸い葉と表現したもののようです。

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(↑上の写真)左=ハリガネワラビ、中=フモトシダ、右=ミドリヒメワラビ

 

 

多摩地区街中自然観察・・・令和3年6月14日

 梅雨のような雨の間に薄日が差す頃合いを見計らって街中の自然を観察に歩きました。畑の周囲は自然があるように感じますが、綺麗に除草されています。作物以外の野の花は、却って、一般家庭の周囲に残されていました。アジサイは、例年より早く満開を過ぎていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)各種アジサイの様子

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(↑上の写真)各種ガクアジサイの様子

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(↑上の写真)左=コヒルガオ、中=ヒャクニチソウ、右=ホタルブクロ

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(↑上の写真)左=マツバギク、中=ハルシャギク、右=ゼニアオイ

 ゼニアオイ(銭葵)はアオイ科ゼニアオイ属。日本には江戸時代に鑑賞目的で渡来したものが逸出した越年生草本。原産地はヨーロッパ南部で、花はハーブティーになるそうです。和名の由来が載っている図鑑には「花の大きさが五銖銭と同じなので、銭葵と呼ばれるようになったという」と書かれています。しかし、江戸時代に渡来した花で、五銖銭は7世紀には中国で使われなくなっている貨幣で、江戸時代の人たちには馴染みがなかったはずです。しかも銭葵は、中国では漢名「錦葵」というそうで、銭葵の由来は俄かに怪しくなります。この花に関しては中国に倣い、錦葵がいいのではないでしょうか。錦葵なら上品さと香しさが表現されるのではないでしょうか。

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(↑上の写真)左=ヒメツルソバ、中=ペラペラヨメナ、右=ハキダメギク

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(↑上の写真)左=イヌガラシ、中=ノボロギク、右=ヤブガラシ

 ノボロギク(野襤褸菊)はキク科ノボロギク属。『APG牧野植物図鑑』によるとヨーロッパ原産で明治初期に渡来した帰化植物、各地の道端、空き地に生える1・2年草(越年草)ということです。和名の野襤褸菊は、上記図鑑では「ボロギク(サワギク)に似て野に生えるためという」と引用した表現になっています。サワギクとは花の姿が全く似ていないのに葉の形がちょっと似ているからといって、どうしてノボロギクとしたか疑問に感じます。他の説では、タンポ果(野楽力研究所の用語:タンポポのような実(痩果)の形)を遠くから見ると襤褸のようだから、というのがあります。タンポ果をそのように見るなら、タンポポの仲間はすべてボロギクということになります。野楽力研究所の和名の由来の提案です。ボロギクというのはダンドボロギク、ベニバナボロギクもすべてそうですが、花の開花を期待して待っていると遂に開花せずタンポ果になってしまうので、「折角大切に育てていたのに」と、がっかりします。この「なァーんだ咲かないのか」という感情をボロで表現したものと思います。ノボロギクも期待して開花を待っているといつの間にかタンポ果になってがっかりします。それで当にノ・ボロギクです。

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(↑上の写真)左=タチチチコグサ、中=チチコグサモドキ、右=スズメノカタビラ

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(↑上の写真)左=シモツケ、中=シロバナシモツケ、右=キンシバイ

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(↑上の写真)左=アメリデイゴ、中=常緑ヤマボウシ、右=シャラノキ(ナツツバキ)

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(↑上の写真)左=ウメ(完熟)、中=ダイコン、右=イヌタデ

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(↑上の写真)左=ヒマワリ、中=キュウリ、右=畑のある街中の風景

 

 

入笠湿原・入笠すずらん山野草公園・・・令和3年6月6日

 登山途中で予報通り、雨が降り出したので入笠山(にゅうがさやま)にある入笠湿原のクリンソウと入笠すずらん山野草公園のホテイアツモリソウを見ることを今日の目当てにしました。東京の四月初旬の陽気でした。

<↓入笠湿原にて>標高=1734m

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(↑上の写真)左=湿原風景、中=クリンソウ、右=クリンソウの群落

 クリンソウ九輪草)はサクラソウサクラソウ属。北海道、本州、四国の山地の谷川沿いの湿地に生える多年草だそうです。『APG牧野植物図鑑』によると「和名九輪草は、花が何段も輪生するのに対し、最大の数を表す九を当て嵌めたもの」とあります。そうかな?と思います。花が何段も輪生している様子は仏教寺院の塔の先端を飾っている宝輪(九つあるので九輪ともいう)にそっくりです。しかし、その数は、最大の数の九を表しているのではなく、「Web:やさしい仏教入門」によると九輪は五大如来と四大菩薩を表しているということです。数が多いことを表すのは、八ヶ岳に象徴されるように八のはずで九ではありません。勝手な説を立てましたが、一理ありそうに思いますが、どうでしょうか。

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(↑上の写真)左=スズラン、中=チゴユリ、右=シロバナノヘビイチゴ

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(↑上の写真)左と中=ミヤマエンレイソウ、右=ミヤマバイケイソウとオオハンゴウソウの若草

 ミヤマエンレイソウ(深山延齢草)はシュロソウ科エンレイソウ属(以前はユリ科)。別名シロバナエンレイソウ。北海道から九州の山地の木陰に生える多年草。ミヤマ(深山)とつきますが、エンレイソウより高山に生えるということではないそうです。エンレイソウは延齢草で、根茎を干したものが生薬で胃腸薬とされます。有毒サポニンを含むので誤飲すると危険ですが、食べ物を吐き出させる効果があり、命拾いをすることがあるということで延齢草とついたともいわれます。外側と内側の3枚の花弁のように見えるものは萼片で、内側の萼片(内花被)は白く(花が終わりなので色づいています)花弁のようですが萼片だそうです。エンレイソウの萼片(普通内花被はありません)は紫色ですが、ミヤマエンレイソウの内花被は白色です。

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(↑上の写真)左=スズラン群生地、中と右=この群生地では、まだ花が一部開き出した状態。

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(↑上の写真)左と中=ズミ。右=山彦山荘を望む入笠湿原

 ズミ(酸実、桷)はバラ科リンゴ属。各地の山地、特に湿地に生える落葉低木ないし小高木。ウィキペディアによると「リンゴに近縁な野生種で、和名は、樹皮を煮出して黄色の染料を取ることから染み(そみ)というのが、語源と言われている。別説には、実が酸っぱいことから酢実、とよばれ、語源になった」ともいわれるそうです。ズミというと遠い故郷の山々を思い出しますが、花や実が、カイドウ、リンゴ(いずれもバラ科リンゴ属)、ナシ(バラ科ナシ属)に似ることから、ヒメカイドウ、コリンゴ、コナシなどとも呼称されるようで、こういう呼称を聞くと急に身近に感じられますね。 

 

<↓入笠すずらん山野草公園にて>標高=1740m

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(↑上の写真)左=(ホテイ)アツモリソウ、中=クマガイソウ(花最後の一株)、右=ヤマシャクヤク

 アツモリソウ(敦盛草)はラン科アツモリソウ属。本州中部地方以北の山地の草原に生える多年草クマガイソウ(熊谷草)はラン科アツモリソウ属。北海道から九州の山地の木陰に群生する多年草。写真のホテイアツモリソウはアツモリソウの変種とされ、地元の方はさらに釜無川に因んでカマナシホテイアツモリソウといって、大切に保存しています。ホテイは布袋様の布袋で、唇弁(花の下の膨らんだ部分)の膨らみが布袋様のおなかの膨らみに似ているということに由るものです。普通のアツモリソウはこれほどには膨らんでいないようです。アツモリソウは平敦盛、クマガイソウは熊谷直実に因んでいますが、一の谷の合戦で熊谷直実が平山季重と先陣争いをしたとき、平敦盛を組み伏せて首級を取ったといわれます。この花は、その時の互いに背負っていた母衣(ほろ)に見立てて名づけられたといいます。

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(↑上の写真)左=恋人の聖地八ヶ岳展望台も雨の中、中と右=すずらん園にて

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(↑上の写真)どれもマイヅルソウ

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(↑上の写真)左=サクラソウ、中=アマドコロ、右=クリンユキフデ

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(↑上の写真)左=ズダヤクシュ、中=ツバメオモト、右=ベニバナイチヤクソウ

 ズダヤクシュ(喘息薬種)はユキノシタ科ズダヤクシュ属。北海道、本州、四国の亜高山帯の林下に生える多年草。地味な花なので、眼を止める登山客はほとんどありませんが、薬効があると言われています。ズダとは長野、福井、富山県方面の喘息の呼び名ということです。ヤクシュは薬種で薬ということで全草を乾燥させて、お茶のように煎じて飲むようです。しかし、今では残念ながら自然保護の観点から採取して試してみるわけにはいきませんね。ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)は、イチヤクソウと同種でツツジ科イチヤクソウ属。本州中部以北から北海道の亜高山帯の森林内に群生する常緑の多年草。日本薬学会HPによると根毛が発達せず、内生菌根と共生することで栄養を得る菌根植物だそうです。『牧野富太郎植物記2 野の花2』では、この種子が芽を出すと根菌と呼ばれる菌類がまつわりつき、これに養われて育つということです。このために、移植栽培は難しいとされています。民間では生の葉汁を打撲傷、切り傷の外用に、また保温を目的に浴湯料に、また煎液には利尿作用があり、脚気やむくみによいとされています。このように和名は1つの薬草で諸病に効くことから「一薬草」といわれるようになったということです。イチヤクソウの白い花に対してベニバナイチヤクソウは紅い花です

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(↑上の写真)左=レンゲツツジ蕾、中=ヤグルマソウ蕾、右=ササバギンラン

 

 

都立長沼公園・・・令和3年5月25日

 今日は真夏のような日照りでした。ヤマボウシが満開で陽を照り返していました。コアジサイも咲き始めました。サイハイランが群落で満開でした。群落は、付近にたくさんありました。この珍しい様子は今、ここでないと見られません。今日の自然の様子です。

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(↑上の写真)どれもヤマボウシ、中=花のアップ、右=花の裏側

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(↑上の写真)左=コアジサイ、中=ウグイスカグラ実、右=ヤブムラサキ(裏側から)

 コアジサイ(小紫陽花)はアジサイアジサイ属。山渓ハンディ図鑑4『木の咲く花』2によると「関東地方以西の本州、四国、九州の山地や丘陵の明るい林内や林縁など普通に見られる日本固有の落葉低木」という。「葉は対生で縁には三角状の鋸歯が規則的に並ぶ。花は6~7月、枝先に直径5cmほどの散房花序を出す。装飾花はなく、花はすべて両性花の小花の集まり。花弁は白色から淡青色で5枚。なお、葉は秋には黄葉する。種子は約0,6mmと小さい」という。今の時期、花を林縁に見ることが出来ます。上の写真では白色ですが、紫色のように色づいたものもあります。

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(↑上の写真)どれもサイハイラン、右=ランの仲間であることを示す花のアップ写真

 サイハイラン(采配蘭)は、ラン科サイハイラン属。日本、東アジアの山地の木陰に生える多年草という。葉は、越冬性で、写真のように開花と前後して枯れるので茶色になった葉も写っています。その後、新しい葉を伸ばし、その葉は越冬します。部分的菌従属栄養植物ということです。菌類から必要な栄養をもらっているので葉の数が少なくても栄養が足りるとのこと。葉が広いので、他の草の葉が枯れている冬の間にも栄養を貯めているようです。そのうち従属栄養専科になるとオニノヤガラのように葉が無くなると考えられています。和名は、花の様子を武将の采配に見立ててつけられました。

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(↑上の写真)左=トリアシショウマ、中=オカタツナミソウ、右=園路

 トリアシショウマ(鳥脚升麻)はユキノシタ科チダケサシ属の多年草。トリアシショウマはアカショウマと似ていて区別がつきにくいです。ヤマブキショウマとは葉の形がヤマブキにそっくりで葉脈がはっきりしていて、葉が厚いので区別できます。矢野亮監修『日本の野草』夏編によると「北海道、本州(中部地方以北)の山地の林内や草原などに生えるアカショウマの1変種」ということです。だから似ているわけです。牧野富太郎著『牧野新日本植物図鑑』によると「草丈60cm内外、葉は2~3回3出複葉。小葉は薄く卵形または長卵形で先端は尾状に鋭く尖り、縁には重鋸歯があり、長さ3~10cm位」とあります。頂小葉の先端が尾状に鋭く尖るというところが区別点です。上の写真は、花に近づけずに撮りましたが、尾状の感じは撮れています。草姿が漢方の升麻に似ていて、花茎が丈夫にすっと伸びている感じが鳥の足ではなく、脚に似ているということだそうです。3出複葉が鳥の足(指)に似ているのかと思いましたが、そうではないようです。

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(↑上の写真)左=ドクダミ、中=オオバコ、右=ヘビイチゴ

 ドクダミ(蕺草、蕺)はドクダミドクダミ属。『牧野富太郎植物記2 野の花2』によると「日本のほか中国、インドシナ半島にしか分布しない世界的には名高い珍しい植物」ということです。「中心の花穂は、小花の集まり。この小花は、花弁も萼もなく、3本の雄しべと1本の雌しべがあるばかりで、雄しべも雌しべもしなびていて繁殖能力がありません。そのため種子が出来ず、もっぱら、地下茎を伸ばして繁殖します」と書かれています。しかし、多田多恵子著『したたかな植物たち』によると「日本のドクダミは、3倍体で受粉せずに結実〈単為生殖〉する」とあります。牧野先生より多田先生の方が現代の学者なので、多田先生を信じたいと思います。ドクダミの繁殖の様子を見ていると地下茎だけでなく、飛散した種子から芽生えたとしか思えない離れたところで芽生えが見つかり、繁殖しているのを見ることがあります。皆さんは如何でしょうか。なお、ドクダミの語源は、毒にも痛みにも効くという意味の「毒痛み」や独特のにおいが毒を溜めているようなので「毒溜め」が転訛したという説や抗菌や殺菌作用を持つので「毒を消す」という意味で「毒を矯める」と言われ「毒矯め」からドクダミになったという説もあります。

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(↑上の写真)左=リョウメンシダ、中=オクマワラビ、右=ヤマイタチシダ

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(↑上の写真)左=イノデ、中=ベニシダ、右=ヤブソテツ

 

津久井湖城山公園・・・令和3年5月17日

 神奈川県立公園です。ちょうど花の端境期で見られる花の種類は少なかったですが、オカタツナミソウ、フタリシズカは満開でした。ここでは、ミミガタテンナンショウが見られるのですが、今回は咲き終わっていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=筑井古城碑、中と右=オカタツナミソウ

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(↑上の写真)左=フタリシズカ、中=ジシバリ、右=ブタナ

 フタリシズカ二人静)はセンリョウ科チャラン属。日本各地の山地や林野に生える多年草。茎は分枝せず節がある。葉は一見、輪生に見えますが、対生し輪生状ではありません。ヒトリシズカは群生しますが、フタリシズカは、疎らに生え、なかなか広がりません。ヒトリシズカの花が終わるとひっそり咲き始めるのがフタリシズカ。花びらは無く、白い雄しべ(内側に花粉がついている)が雌しべを直接包み込んでいる形の花が花軸に並んでいます。花穂は普通フタリシズカと言われる所以の2本ですが、写真のように3本以上あるものもあります。ここ城山公園では2本だけというのが稀で、ほとんどが写真のような具合です。こうなると静ではなく、姦しいということになるでしょう。何をがやがや話しているのでしょうか。

 ブタナ(豚菜)はキク科ブタナ属。ヨーロッパ原産で、日本では昭和10年代に札幌と神戸で帰化が確認され、それ以後、帰化植物として各地に分布するようになった多年草。ブタナはフランス語の俗名で豚のサラダと言われていたものを翻訳したものだそうです。20年ほど前、多摩市で見られて以来、分布を周辺に広げ、今では多摩地区全域で見られます。葉が根元にロゼット状につき、花茎は普通途中で二股に分かれ、それぞれに鮮やかな黄色のタンポポ花をつけます。葉のつき方、花茎が二股に分かれるのが特徴で、見分けがつきます。

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(↑上の写真)左=ハルジオンとヒメジョオン、中=吸蜜するアサギマダラ、右=ヤブヘビイチゴ

 今まで春にはハルジオン(春紫苑)キク科ムカシヨモギ属が咲いていましたが、これからはヒメジョオン(姫女苑)キク科ムカシヨモギ属も咲き始めるので、両者が咲いていると区別がしにくくなります。上の写真は両者が写っています。ヒメジョオンは写真では、まだ咲いていません。名前は、ハルはジオンで、ヒメはジョオンです。お姫様は女性なのでジョオン(女苑)です。以下の特徴を確認すると区別が容易です。そのつもりになって観察してください。ハルジオンの茎を軽くつぶすと中空であることが分かります。ヒメジョオンは、充実していて堅いので、強そうに見えます。葉の基部が茎を抱いているようならハルジオンで、ちょっと葉柄がある感じだったらヒメジョオン。花の蕾がうつむいてうなだれている様だったらハルジオン。これは咲いてしまうと区別し難いです。どの図鑑にも書かれていませんが、ハルジオンの根は、ひげ根ですが、ヒメジョオンの根は、ゴボウ根、即ち主根がまっすぐ伸びています。除草する場合などに観察ください。

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(↑上の写真)左=エゴノキ、中=マルバウツギ、右=男坂の通行止め

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(↑上の写真)左=ハカタシダ、中=ヤブソテツ、右=オオバノイノモトソウ