野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

神奈川県立東高根森林公園・・・令和6年5月11日

 花の端境期、草花は春の花から夏の花へ遷るその前の梅雨の時期の備えをしています。目立ちませんが、季節の移ろいに遅れないように急いで実を結んでいるようです。今、この時季に花を咲かせている野草の多くは、外来種の様でした。キショウブ、ミドリハカタカラクサなどがそうです。木本のウツギ、ガマズミが咲きはじめました。今日の自然の様子です。(東高根森林公園はJR南武線武蔵溝の口南口から市営バスで10分ほどの森林公園下車です)

(↑上の写真)左=パークセンター、中と右=ギンラン(銀蘭)

(↑上の写真)左と中=オオハンゲ(大半夏)、右=ミドリハカタカラクサ(緑博多唐草)

 ミドリハカタカラクサ(緑博多唐草)はツユクサムラサキツユクサ属、南アメリカ原産の常緑多年草帰化植物。日本では昭和初期に渡来して観賞用に栽培されていたものが逸出したもの。やや湿っている日陰や水辺に生え、群落を形成している。北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアにも定着し、日本では要注意外来生物に指定されており、特に愛知県では条例で野外への放逐する行為が制限されている、ということです。茎が茶色で葉がやや小さいものはトキワカラクサ(常盤唐草)またはノハカタカラクサ(野博多唐草)と呼ばれ、原種に近く、ここの写真の様に茎が緑で葉がやや大きいものは園芸種として改良されたものらしくミドリハカタカラクサと呼ばれています。(各種図鑑、Web参照翻案)

(↑上の写真)左=キツネノボタン(狐牡丹)、中=ユキノシタ(雪の下)、右=チョウジソウ(丁字草)

(↑上の写真)左=ヤブレガサ(破れ傘)、中=ヤマアイ(山藍)、右=ワスレナグサ忘れな草

 ヤマアイ(山藍)はトウダイグサ科ヤマアイ属。本州から琉球列島、および中国、朝鮮半島、台湾、インドシナなどに分布し、山地の樹下に生える多年草。古代行われていたヤマアイによる青摺(あおずり)の染め方は、葉をすり潰して液状にして、布を浸して染めるものでしたが、水に濡れると色が落ちたり、変色したりしたため、よりきれいに藍色に染まるタデ科のアイが中国から渡来すると、ヤマアイは使われなくなったということです。(各種Web参照)

(↑上の写真)左と中=フタリシズカ二人静)、右=ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)

 ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)はアカバナ科マツヨイグサ属。北アメリカ原産で、日本へは観賞用に輸入・栽培され、戦後神奈川県などで逸出帰化した。世界の温帯域で花卉として栽培されている多年生草本。直径5cmほどの4弁花を茎の上部にやゝ総状につける。花は夜に開花するが、日中も萎まない。名称の由来は、宵に咲く月見草(マツヨイグサ)と違って、昼間にも開花していることによる、という。(各種図鑑、Web参照、翻案)

(↑上の写真)左=キショウブ黄菖蒲)、中=カルガモ、右=木道のある園内風景

 キショウブ黄菖蒲)はアヤメ科アヤメ属。外来種で明治30年ころヨーロッパ原産の花卉として移入されたものが逸出したものといわれます。現在、環境省は「要注意外来生物」の一種として「栽培にあたっては、逸出を起こさない」ように注意喚起しています。黄菖蒲というので黄色いショウブと思いがちですが、ショウブはショウブ科ショウブ属(以前はサトイモ科)でショウブにはいわゆる花らしい花はなく肉穂花序の花です。同じショウブがついてもハナショウブ(花菖蒲)はアヤメ科アヤメ属でアヤメの仲間です。キショウブは、ハナショウブの仲間でアヤメ科アヤメ属。アヤメの仲間で、ショウブの仲間ではありません。キショウブ外来種で、園芸種のハナショウブには黄色い花がないために、キショウブが重宝がられ、逸出してはびこる原因になっているようです。(各種Web、図鑑等参照翻案)

(↑上の写真)左=ヤブジラミ(藪虱)実になっています。中=カモジグサ(髢草)、右=ヤブソテツ(藪蘇鉄)

(↑上の写真)左=オオバノイノモトソウ(大葉の井之許草)、中=イノモトソウ(井之許草)、右=アワボスゲ(粟穂菅)

(↑上の写真)左=ウツギ(空木)、中=トチノキ(栃ノ木)、右=ヤマハゼ(山櫨)

 ウツギ(空木)はアジサイ科ウツギ属。別名=ウノハナ。この花が咲き始めると思い出すのが、佐々木信綱作詞の唱歌「夏は来ぬ」。(一番)「卯の花の匂う垣根に 時鳥 早も来鳴きて、忍音もらす 夏は来ぬ」・・・ウノハナが咲き、半袖に衣替えをすると、すっかり「夏が来たなあ」という感じになりますね。ところが卯の花をいくら嗅いでも甘い香りが漂ってきませんが?「卯の花の匂う」とは嗅覚の表現ではなく花が周囲に照り映える情景を思い浮かべる視覚の表現だそうです。「青丹よし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」この一首によって一座の者は、平城京に咲く桜の花を思い浮かべて懐かしがったという。その時の花は桜ですが、その時から、他の種の花でも、花が盛んに咲いている様子を「匂うがごとし」と表現するようになったといわれます。和名ウツギは、幹が中空なので空木といわれますが、他に、卯月(陰暦の4月)に咲くからともいわれます。なお、ウノハナはウツギ花が略されたということです。(牧野新日本植物図鑑や各種Webを参照)

(↑上の写真)左=ガマズミ(莢蒾)、中=マグワ(真桑)、右=コウゾ(楮)

 ガマズミ(莢蒾)はレンプクソウ科ガマズミ属。日本各地の丘陵、山地に見られる落葉低木。朝井まかて著『ボタニカ』の描写「(牧野富太郎は道端で花の観察をしていると高知中学の永沼小一郎先生に出会い)「これは莢蒾(がまずみ)ではないか」(と、問われ)「はい。佐川(富太郎の故郷)ではヨージメと呼びよります。霜が降りる頃に実の苦みが消えて、最も美味う(うもう)なります」「たいていは鳥が先に喰いますき、なかなか人間まで回ってこんがです。ジョービタキやツグミ、アトリの仲間もヨージメの実を好んで、よう突いちょりますよ」「しかし考えたら、植物の名は地方によってじつにさまざまや。植物の同定は、じつに難しいもんやな」(と永沼小一郎は呟く。)