野楽力研究所

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(入間市)さいたま緑の森博物館・・・令和4年6月30日

 ここは博物館といっても博物館の建物があるわけではありません。緑の森そのものを博物館としています。6月はヒメザゼンソウがここでの売りです。今日がその最後の日でした。最後の花が咲いています。そのほか、この花の少ない時期にオカトラノオ、チダケサシが満開です。ヤブカンゾウは咲きはじめでした。今日の様子です。

(↑上の写真)左=博物館案内所入口、中と右=今年最後のヒメザゼンソウ

 ヒメザゼンソウ(姫座禅草)はサトイモザゼンソウ属。「APG牧野植物図鑑スタンダード版」によると「北海道、本州の主に日本海側、および朝鮮半島北部の温帯に分布する多湿地に生える多年草で、花は初夏、果実は翌年の開花時に熟す」ということです。「青梅市文化財ニュース 第381号」には「分布の中心は日本海側で太平洋側には 少なく、関東地方南部ではごく少数の生息地が知られているのみです。本来、冷涼な地域に多いヒメザゼンソウが温暖な多摩地域の低標高地に生育するのはとても不思議なことです。同じく冷涼な地域に多いカタクリ多摩地域の丘陵に生育していますが、その生育地は高温や乾燥を避けることができる北向き斜面の湧水や滲出水のある湿潤な環境に限定されると考えられています。多摩地域のヒメザゼンソウカタクリよりもさらに稀なため生育地の条件を明らかにするの は難しいですが、限られた気候条件や地形条件の中で生き延びてきた植物であることには間違いありません」という記述があります。一度ご覧になると保護してあげたくなると思います。

(↑上の写真)左と中=オカトラノオ、右=キツネノボタン

(↑上の写真)左と中=チダケサシ、右=ハエドクソウ

  チダケサシ(乳蕈刺・乳茸刺)はユキノシタ科チダケサシ科。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州、四国、九州の山野のやや湿ったところに生える多年草。花は、淡紅色または白色」とあります。山渓野草ハンドブック「夏の花」には、山や野の湿ったところに多い草で、大抵草むらの中に他の草に混ざって生えている。信州では、この茎にチダケ(乳茸)というキノコを刺して持ち帰るのでこの名がついたという。花はピンク色で美しい。学名はアスチルベで、園芸品種として庭に植えられるものと同じ」とあります。上掲写真のように、さいたま緑の森博物館では湿った草むらの中に他の草に混ざって花茎を伸ばして咲いており、ほとんどが白色でしたがピンクのものも数本ありました。

(↑上の写真)左=ヤブカンゾウ、中=タケニグサ、右=湿地帯のある風景

 ヤブカンゾウ(藪萱草)はススキノキ科ワスレグサ属。APG牧野植物図鑑によると「北海道から九州の野原に生える多年草。日本のものは中国から渡来したとも言われる」という。生薬の甘草はマメ科カンゾウ(甘草)属植物の根や根茎を乾燥したもので、ヤブカンゾウ(藪萱草)の萱草ではありません。萱草の萱の字は、音は「カン」、訓読みは「わすれぐさ」「かや」となっています。八重咲になっている花弁は雄しべ雌しべが花弁化したものでしかも遺伝子が3倍体なので結実しないということです。野原に生えているものは人間が移植したものか、移植後、根茎から走出枝を出して繁殖したものになります。

(↑上の写真)左=ヤブソテツ、中=オオバノイノモトソウ、右=ベニシダ

(↑上の写真)左=ゼンマイ、中=ハリガネワラビ、右=リョウメンシダ

入笠すずらん山野草公園・・・令和4年6月23日

 (長野県)冨士見パノラマリゾートの山麓駅(標高1050m)からゴンドラに乗って山頂駅(標高1780m)で下りると天空の花園という感じの「入笠(にゅうかさ)すずらん山野草公園」です。ニッコウキスゲマイヅルソウなどが迎えてくれます。珍しい釜無ホテイアツモリソウ、キバナノアツモリソウ、イチヨウランが見られるのはこの時期をおいてありません。ぜひ、この時期に訪れたいです。今日の様子です。

(↑上の写真)左=ゴンドラ、中と右=ニッコウキスゲ

(↑上の写真)いずれもマイズルソウ

(↑上の写真)左と中=釜無ホテイアツモリソウ、右=霧に包まれた「恋人の聖地」

  釜無ホテイアツモリソウ(釜無布袋敦盛草)は、入笠すずらん山野草公園の掲示板によると「長野県諏訪郡富士見町の西域、南アルプス山系釜無山や入笠山に自生し、紅い花を咲かせるラン科アツモリソウ属の多年草。野生での絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠA類に区分されています。本州で生育が確認されている県は長野県、山梨県福井県だけであり、長野県内では富士見町だけ。県内唯一の観賞ポイントと言えます。富士見町は豊かな自然環境を未来に引き継ぐために、住民一丸となって山野草保全活動に積極的に取り組み、アツモリソウの保護活動を通じて富士見町の自然環境・生物多様性を守る活動を推進しています」ということです(一部翻案)。アツモリソウは平敦盛(赤色、平家)クマガイソウは熊谷直実(白色、源氏)に因んでいますが、一の谷の合戦で熊谷直実が平山季重と先陣争いをしたとき、平敦盛を組み伏せて首級を取ったといわれます。この花は、その時の互いに背負っていた母衣(ほろ)に見立てて名づけられたといいます。

(↑上の写真)いずれもキバナノアツモリソウ

(↑上の写真)いずれもイチヨウラン(一葉蘭)左=つぼみ、中と右=花 

 イチヨウラン(一葉蘭)はラン科イチヨウラン属。別名:ヒトハラン。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「北海道、本州の主に太平洋側、四国、九州、および南千島に分布し、亜高山帯の針葉樹林に生える多年草。根茎は一成長期に1本だけが伸びる。葉は多肉で光沢は無い。花茎には鞘状葉が2枚付く。花は春から初夏。和名は、毎年葉が一枚付くことからいう」とあります(一部省略翻案)。

(↑上の写真)左=ズダヤクシュ、中=コバノイチヤクソウ、右=ベニバナイチヤクソウ

(↑上の写真)いずれもヤグルマソウ、右=開き始めた花

 ヤグルマソウ(矢車草)はユキノシタヤグルマソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば「北海道、本州、及び朝鮮半島に分布し、山地帯から亜高山帯の日の差し込む林内や谷間に生える多年草」という(一部翻案)。庭に植える紫やピンクの花の園芸種の矢車草は正式には矢車菊といわれるもので上掲写真のヤグマソウが正式の矢車草です。Web「ウィキペディア」によると「ヤグルマギク矢車菊)はキク科ヤグルマギク属。ヨーロッパ原産で、もとは麦畑などに多い雑草だったが、園芸用に改良され、現在の品種が作られた。近年一部でヤグルマソウとも呼ばれた時期もあったが、ユキノシタ科のヤグルマソウと混同しないように現在ではヤグルマギクと統一されて呼ばれ、最新の図鑑等の出版物もヤグルマギクの名称で統一されている」ということです(一部翻案)。ですから、山に生えているユキノシタ科のものはヤグルマソウで庭に植えているキク科のものはヤグルマギクと呼ぶようにお願いします。

(↑上の写真)左と中=グンナイフウロ、右=アヤメ

(↑上の写真)左と中=キバナノヤマオダマキ、右=オオヤマフスマ

(↑上の写真)左と中=サラサドウダン、右=ミヤマニガイチゴ

入笠湿原・・・令和4年6月23日

 梅雨明けが間もなくの今日、南アルプス北端の入笠山麓にある入笠湿原(標高1734m)を訪れました。(日本)スズラン群落地では、スズランが満開、レンゲツツジも満開、クリンソウは満開を過ぎたところでした。アヤメ、ウマノアシガタなどこの時期ならではの花たちが迎えてくれました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=スズラン群落地(左右の草原)、中=スズランとベニバナイチヤクソウ、右=スズラン

 スズラン(鈴蘭)はキジカクシ科スズラン属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると、「北海道に多く、本州中北部、まれに関西、九州などの山地にも生える多年草。花は、葉の脇に花茎を1本出して咲き、芳香がある。観賞用として栽培されるものはヨーロッパ原産ドイツスズランで、葉の裏が日本のものと逆に濃緑色」という(一部翻案)。Webウィキペディアによると「有毒植物で、有毒物質は全草に持つが、特に花や根に多く含まれる。ギョウジャニンニクと葉が似ているため山菜として誤って摂取した場合、嘔吐、頭痛、心不全、心臓麻痺などの症状を起こす。ドイツスズランは、日本に野生するスズランと比べると大型で、花の香りが強く、またスズランの花茎が葉より短いのに比べ、ドイツスズランは花茎が葉と同じ長さかそれ以上に伸びる」という(一部翻案)。

(↑上の写真)左=山彦山荘から見下ろした湿原風景、中=湿原解説板、右=山彦山荘を望む

(↑上の写真)どれもレンゲツツジ

(↑上の写真)どれもクリンソウ

 クリンソウ九輪草)はサクラソウサクラソウ属。北海道、本州、四国の山地の谷川沿いの湿地に生える日本固有の多年草。『APG牧野植物図鑑』によると「和名九輪草は、花が何段も輪生するのに対し、最大の数を表す九を当て嵌めたもの」とあります。そうかな?と思います。花が何段も輪生している様子は仏教寺院の塔の先端を飾っている宝輪(九つあるので九輪ともいう)にそっくりです。しかし、その数は、最大の数の九を表しているのではなく、『やさしい仏教入門』によると五大如来と四大菩薩を表しているということです。数が多いことを表すのは、八ヶ岳に象徴されるように八のはずで、九ではありません。日本固有種であり、仏教信仰の深まりとともに如来と菩薩をあがめる信仰にあやかって命名されたものに思われます。クガイソウ(九蓋草・九階草)という草の九は輪生の葉がたくさん(九つも)重なっている、という意味のようで、その解釈でいいと思います。それが九輪となった時は、特別の意味を持つのではないでしょうか。勝手な説を立てましたが、一理ありそうに思いますが、どうでしょうか。

(↑上の写真)どれもアヤメ

(↑上の写真)どれもウマノアシガタ

(↑上の写真)左=オオアマドコロ、中=サンリンソウ、右=オククルマムグラ

(東青梅)吹上しょうぶ公園・・・令和4年6月16日

 JR青梅線東青梅駅北口から徒歩15分。ここのしょうぶ公園はよく手入れがされており、ハナショウの解説にボランティアの方が大勢参加されていています。個人でも丁寧に解説してくださいました。各種ハナショウブが満開です。今年、まだハナショウブをご覧になっていない方には、お奨めです。アジサイも満開です。今日の様子です。

(↑上の写真)吹上しょうぶ公園の様子

(↑上の写真)左=水の都、中=鎌田錦、右=栄紫

(↑上の写真)左=加茂千歳、中=五色の珠、右=万里の響

(↑上の写真)左=花笠、中=桜が丘、右=雪燈篭

(↑上の写真)左=七彩の夢、中=青岳城、右=霞の衣

(↑上の写真)左=桔梗小町、中=日の丸一号、右=日月

(↑上の写真)左=ノハナショウブ、中=乙若丸、右=紅孔雀

(↑上の写真)左=フェアリーカリロン、中=ピンクフロスト、右=五湖の遊び

(↑上の写真)左=五月晴れ、中=小野小町、右=しょうぶ公園の様子

(↑上の写真)アジサイ各種

(↑上の写真)ガクアジサイ各種

(↑上の写真=しょうぶ公園の周囲で見られた野草)左=ホタルブクロ、中=クサノオウ、右=シモツケ

町田薬師池公園・・・令和4年6月13日

 花ショウブなどが見頃というので出かけました。各種園芸種が咲き揃い、同定は難しいですが、花のすばらしさを素直に観賞しました。花ショウブは180品種揃えてあるということです。同時にアジサイも花の盛りです。種類は、街中自然観察で見たものと同じようでした。「萬葉草花苑」では時期的にキリンソウ、クルマバナしか見られませんでした。今日の様子です。

(↑上の写真)左=薬師池、中=公園案内図、右=自由民権の像

(↑上の写真)左=菖蒲田の世話をする早乙女たち、中・右=菖蒲田の様子

(↑上の写真)左=アヤメ、中=カキツバタ、右=キショウブ

(↑上の写真)各種ハナショウブ、いずれも菖蒲田にて

(↑上の写真)各種ハナショウブ、いずれも菖蒲田にて

(↑上の写真)各種ハナショウブ、いずれも菖蒲田にて

 ハナショウブ(花菖蒲)はアヤメ科アヤメ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「野生のノハナショウブを原種として改良された園芸品種で、水辺など湿った地に栽培される多年草。葉に隆起した中脈を持つのが特徴。花は初夏に咲き、大きいもので径20cm位に達し、花形は品種によりさまざま。色も紫、白、絞など変化に富む。和名は、花の咲く菖蒲(ショウブ)という意味」(一部翻案)という。ノハナショウブ(野花菖蒲)はアヤメ科で、ショウブ(菖蒲)はショウブ科ですから、ハナショウブ(花菖蒲、アヤメ科)はショウブ(菖蒲、ショウブ科)を品種改良したものではなく、ノハナショウブ(野花菖蒲、アヤメ科)を品種改良したものということになります。ややこしいですが、ショウブといってもアヤメなんですね。古くはショウブのことをアヤメまたはアヤメ草といったそうです。5月5日に風呂に入れるショウブは「尚武(しょうぶ)=武勇を重んじること」にあやかって男児のいる家庭には喜ばれたわけです。ショウブ自体の花は地味な花(=肉穂花序)で見てもつまらないです。葉は柔らかくいい香りがするので風呂に入れるのは適してるわけです。

(↑上の写真)いずれもアジサイ

 アジサイ(紫陽花)はアジサイアジサイ属。APG牧野植物図鑑によると「観賞用として広く栽植する落葉低木。ガクアジサイを母種とした園芸種で、全部が装飾花の萼片で、花弁、雄しべ、雌しべは退化して結実しない。花の色は、青、紅紫、白などで、咲くにつれて色が変化する。和名のアジはアツで集まること、サは真、イは藍(アイ)の約されたもので青い花が群れて咲くからだという。漢字は漢名の紫陽花を慣用する」(一部翻案)という。また、山渓ハンディ図鑑4「樹に咲く花」によると「アジサイガクアジサイの花序全体が装飾花に変化したもので、古くから栽培されていた。アジサイを初めて世界に紹介したのは、オランダのシーボルトでドイツのツッカリーニと共同で、「ヒドランゲア・オタクサ」と命名し、シーボルトの日本での植物研究の集大成である「フロラ・ヤポニカ」に発表した。当時シーボルトはこの花に随分感動したようで、妻の榎本滝の愛称「おたきさん」をこの花の学名にあてた」(一部翻案)という。

(↑上の写真)いずれもガクアジサイ

 ガクアジサイ(額紫陽花)はアジサイ科(以前はユキノシタ科)アジサイ属。関東地方南部、伊豆半島、伊豆諸島の暖地の海岸に生える落葉低木。葉は対生し、花は夏に咲き、枝先に集まり、萼片4~5枚からなる装飾花を周囲につける。中心部の両性花は萼片と花弁が5枚、雄しべは10本。和名は装飾花を額縁に見立てた名という(APG牧野植物図鑑スタンダード版参照、一部翻案)。花の周囲の装飾花を額縁にたとえ「額縁に入れたアジサイの花」という意味で額紫陽花、従って「萼紫陽花」ではないということです。ところで、柳美里著『JR上野駅公園口』に「雀の群れが何かに驚き、節分の豆をばら撒いたように飛び立つ。額紫陽花が咲いている。周りの薄紫の花が中央の濃く小さい紫の花の塊を額のように縁取っている。生きている時はそういうものが孤独を感じさせた。……不意の雨が落ち、(ホームレスの)コヤの天井のビニールシートを濡らす。雨が、雨の重みで落ちる。雨が降る夜は、雨音から耳を逸らすことが出来ず、眠ることが出来なかった。……一人息子が死んだ日も、雨が降っていた」という描写があります。詩を読んでいるような感じのホームレスの自叙伝といった感じの小説でしたが、何か寂しさを伝える雨とガクアジサイの花でしたね。

(↑上の写真)左=キリンソウ、中=クルマバナ、右=サフランモドキ

(↑上の写真)左=ホタルブクロ、中=白花ホタルブクロ、右=薬師池の由来となった薬師如来を祀る薬師堂

東京多摩地区街中自然観察・・・令和4年6月8日

 郊外の住宅地には園芸種が色とりどりの花を咲かせています。自然の野草の花の数はこの時季少ないですから、補ってくれています。園芸種は園芸家が次ぎつぎに新しい品種を作り出していますので、同定するの難しいです。さて、この時季はアジサイの季節です。アジサイ観賞に公園に出かけますが、街中で結構、観賞できます。何を植えているのかでその家庭の考えを窺い知ることができますね。今日の様子です。

(↑上の写真)アジサイ各種

(↑上の写真)ガクアジサイ各種

(↑上の写真)左=カシワバアジサイ、中=ゼニアオイ、右=キンシバイ

 キンシバイ(金糸梅)はオトギリソウ科オトギリソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版などによると『中国大陸中部の原産で宝暦の頃(1760年頃)日本へ渡来し、観賞用に植栽。また、山地の人家付近の湿った崖などに野生化している常緑小低木。和名は中国名の「金糸梅」に由来し、これは5枚の花弁を梅に、長く突き出た雄しべを金の糸に喩えたもの』だそうです。似た花にビヨウヤナギ(未央柳・美容柳)がありますが、ビヨウヤナギは雄しべがもっと長く、雌しべを囲うようにして伸びています。

(↑上の写真)左=ムシトリナデシコ、中=ユウゲショウ、右=ペラペラヨメナ

(↑上の写真)左=ヒメジョオン、中=(ハルノ)ノゲシ、右=ブタナ

 ヒメジョオン(姫女苑)はキク科ムカシヨモギ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると『北アメリカ原産で明治初年に渡来し、各地の道端や原野に生える越年草の繁殖力の強い草花。茎は中空でなく充実している。葉は薄く両面に毛がある』ということです。花はハルジオンにひと月ほど遅れて、これから咲きはじめます。この時期、ハルジオン、ヒメジョオンの両方が同じような花を咲かせているので、見分けてみるとこの植物に親しみが湧くと思います。ハルジオンの蕾はうなだれていますが、ヒメジョオンの花は蕾の時から直立しています。さらに、ハルジオンの葉は葉柄が無く茎を抱いていますが、ヒメジョオンは葉柄があり、茎を抱いていません。ちょっと目を当ててみてください。

(↑上の写真)左=ムラサキカタバミ、中=イモカタバミ、右=コマツヨイグサ

 コマツヨイグサ(小待宵草)はアカバナ科 マツヨイグサ属。日本帰化植物写真図鑑によると『北アメリカ原産で、アフリカやアジアに広く帰化している越年生草本』という。Web「ウィキペディア」に『日本では明治43年に初めて確認された。鳥取砂丘の緑化に利用され、在来種と競合したため、在来種の数を大きく減らした。生態系を崩す事から外来生物法により要注意外来生物に指定され、現在各地で駆除が実施されている。匍匐性があり、花は萎れると赤く変化する。』(一部翻案)とあります。Web「国立環境研究所」には『体に粗毛がある。葉は多形で,羽状に裂けたものから浅い波状の歯をもつものまである。染色体数2n=14.変異が起きやすい』とあります。可愛らしい花でグランドカバーにいいと思いながら、難しい問題がありますね。

(↑上の写真)左=ハキダメギク、中=ウラジロチチコグサ、右=タチチチコグサ

(↑上の写真)左=ツユクサ、中=ムラサキツユクサ、右=ハンゲショウ

(↑上の写真)左=タイトゴメ、中=ウツボグサ、右=ヒルガオ

 タイトゴメ(大唐米)はベンケイソウ科マンネンクサ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば『関東以西、中国、九州の海岸の岩石に隙間や崖などに生える多年草。茎は地上を這って多数分枝し、主茎の上方は側枝と共に直立し、葉は互生し多肉質。花は、側生する枝上につき、主茎には花を付けない。和名は高知県柏島の方言で、葉形がダイトウマイ(大唐米)という米の形に似るため』という。多肉質なので乾燥や暑さ、寒さにも耐え、しかも寒くなると赤くなるのでそれもきれいだそうです。もともと海岸に生えているものだそうですが、適応力があり庭の隅で増えすぎないように注意してグランドカバー的に育てると楽しめるでしょう。

(↑上の写真)左=キショウブ(園芸種)、中=ナガミヒナゲシ、右=サルビア

 ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟)はケシ科ケシ属。Web「川越市」によるとヨーロッパ地中海沿岸原産の1年草で、秋に発芽し、ロゼット状態で越冬し、春先に急に大きくなり、4月から6月頃に直径3cm程の薄いオレンジ色の花を咲かせる。果実は6月頃に熟し、1つの果実に約1500粒もの種子ができ、一個体が100個もの果実をつけることもあるので、最大で一個体(一粒の種子)から15万粒の種子ができ、繁殖力が強いことも特徴。また、根から他の植物の生育を妨げる成分を含んだ物質を出すことから、生態系に影響を与える植物と言われています。種子の数が多く、爆発的に個体数を増やしているので、特定(または要注意)外来性物に指定はされていないということですが、要注意植物として各自治体から警告が出されています。平成21年4月19日付の朝日新聞によると『昭和36年(1961年)国内で初めて世田谷区で報告された』ということです。和名は、ケシの実のように丸っこくなく、筒状に長いので「長実(ナガミ)」、花はケシより小さいので「雛ケシ」といわれます。可愛い花ですが各地で増殖中であり、対応は十分気を付けてほしいということです。

(↑上の写真)左=ホソムギ、中=イグサ、右=コバンソウ

(↑上の写真)左=シモツケ、中=ザクロ、右=ヤマボウシ

 ザクロ(柘榴)は以前は、ザクロ科でしたが現在は、ミソハギ科ザクロ属。西アジア地方原産の落葉高木。深津正著「植物和名の語源」によれば、『ザクロはペルシャ北部(現在のイラン辺り)の「安石国」からシルクロードを通って中国、朝鮮を経て日本に渡来し、平安時代にはすでに栽植され、実を食用にし、根や幹の皮を條虫の駆除剤に用いたり、果実を下痢止めや染料などに使ったという。実の形が瘤(こぶ)に似ていることから「安石瘤」と呼ばれ、それが略称されて現在では「石榴」または「柘榴」と書かれる。和名のザクロは、漢名の石榴から来たものと説く人もあるが、石榴の中国音はシーローだから、そのままではザクロにならない。これに対して、ザクロは柘榴の別名若榴(じゃくりゅう)の中国音ジャクリュウがそのまま日本語になったという説があるという。古代イランと中国の文化交流の研究者のラウファーの説によれば、若榴は石榴と丹若という2つの別名が合体してできたものだという。若榴の名は、平安初期に著された「木草和名」にも既に載っており、昔は日本でも通用していた名だという。いずれにしてもザクロが漢名から転じたものであることには間違いない』という(一部翻案)。ザクロについては、いろいろな話や説があります。歴史を感じさせる果樹ですね。

つどいの里八ヶ岳自然園(山野草園)・・・令和4年5月30日

 東京近辺では春の花が終わり、夏の花が咲くまで梅雨時を迎えます。梅雨は、春の花にとっては花の後の種子づくり、夏の花にとっては体力を充実させるために大切な時期です。白樺湖手前、大門街道沿いにあるここ八ヶ岳山自然園も同じようで花の種類は少なったです。ここは標高1100~1200mですので、開花時期は、東京より一月ほど遅れるようです。今日の様子です。

(↑上の写真)左=自然園入口、中=ニッコウキスゲ、右=グンナイフウロ

 グンナイフウロ(郡内風露)はフウロソウ科フウロソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば、中部地方以北から北海道に分布し、山の草地に生える多年草、ということです。フウロソウは種名になると「フウロ」と呼ばれるようになります。飯沼慾斎著「草木図説」によると、フウロとは、風露(ふうろ)のことで、夏の朝に、朝霧が露(つゆ)になり、花について風に揺れる様子をたとえて風露草(ふうろそう)になった、とあります。中村浩著「植物名の由来」には、フウロソウに風露草の字を宛てたのは江戸時代のこと、とあります。現代に言うフロ(風炉、風呂)はフウロが詰まったものだそうで、フウロは四方の三方が塞がっていて一方が、焚口になる開口部になっているものをいうそうです。三方が森に囲まれて草刈り場になっているところ、そこを例えば駿河地方では「フウロ野」といい、入口に当たるところを「フロ口」といっていたそうです。そういう草刈り場に生えている草をフウロソウと呼んでいたのではないか、と著者は問題提起しています。グンナイフウロの「グンナイ」は郡内のことで山梨県北・南都留郡地方のこと。且て、武田勝頼公が落ち行く先として頼りにしていた郡内を支配していた小山田信茂に裏切られ、信玄公に象徴される武田氏が滅亡したのは郡内を追われた勝頼公が自害した天目山の麓の田野でしたね。

(↑上の写真)左=フタリシズカ、中と右=マムシグサ(紫褐色と緑色)

 マムシグサ(蝮草)はサトイモ科テンナンショウ属の多年草。北海道から九州にかけて分布し、山地や原野の湿った林床に生える。形状に変異が多い多年草で、成長すると高さは50 - 60センチメートルに達する。葉は2枚あり、楕円形の小葉が7枚から15枚つく。仏炎苞は紫褐色に近く、白線がある。なかには仏炎苞が緑色のものもあり、アオマムシグサまたはカントウマムシグサと呼ばれる。上の写真の右端のものが仏炎苞の緑のアオマムシグサといわれるもの。

(↑上の写真)左=アヤメ、中=ヤマブキソウ、右=サクラソウ

(↑上の写真)左=クリンソウ、中=ギョウジャニンニク、右=ギンラン

 ギョウジャニンニク(行者大蒜)はヒガンバナ科ネギ属。近畿地方以北、北海道、千島、サハリン、朝鮮半島中国東北部の温帯に分布、深山の林下に生える多年草。種子を播いてから4年目にようやく葉が1~3枚となり、花茎を伸ばすようになる。標準和名ギョウジャニンニクという名前の由来は、ニンニク(大蒜)のような強い香りと、山にこもる修験道の行者が荒行の合間にこれを食べて体力を保持したからとも、逆にこれを食べると滋養がつきすぎて修行にならないため、食べることを禁じられたからとも言われている。(「APG牧野植物図鑑スタンダード版」、「ウィキペディア」を参照、翻案)

(↑上の写真)左=ヒレアザミ、中=ジシバリ(葉の形が丸型)、右=(参考)オオジシバリ(葉の形がへら形)

 ヒレアザミ(翼薊)はキク科ヒレアザミ属。ヨーロッパから東アジアの暖帯から温帯に広く分布し、日本では本州から九州の原野に生える越年生。日本には、古く大陸から渡来したと考えられている。既に、江戸時代から知られており、道端、畦畔、荒れ地、河原の土堤などに生えている。花は、普通は紅紫色をしているが、時に白いものもある。茎は直立し、分岐があり高さ70~100cm、縦に2条の著しいヒレ(翼)があり、ヒレには鋸歯があって先は鋭い刺となる。葉は互生、長さ5~30cm、不規則に羽状に裂け、縁に多くの刺がある。下面は白色の絡み合った毛に被われるが、後に毛は疎らになる。(主に「APG牧野植物図鑑スタンダード版」、山渓カラー名鑑「日本の野草」、「日本帰化植物写真図鑑」などを参照、翻案。)

(↑上の写真)左=左側がハルジオン(葉柄が無く茎に抱きつく感じ)、右側がヒメジョオン(葉柄があり、茎とキョリをおく)、中=ヘビイチゴ、右=園内の大岩(悲しみの人面岩と名づけたい)

(↑上の写真)左=クマノミズキ、中=クサソテツ(コゴミ)、右=ハリガネワラビ