野楽力研究所

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井之頭恩賜公園・・・令和4年5月26日

 今日は井之頭公園で飼われていたアジアゾウの花子が平成28年に69歳で亡くなった命日ということで、お詣りがてら、最近井之頭公園を訪れていなかったので、自然観察に伺いました。公園内には北村西望のアトリエや彫刻が飾られています。八王子市の片倉城跡公園には北村西望氏と弟子たちの作品が飾られていますね。今日の様子です。

(↑上の写真)左=井之頭池、中=花子を偲ぶ象舍、右=北村西望胸像

(↑上の写真)どれも北村西望作品 左=長崎平和像、中=若き日の母親像、右=畠山重忠像(御岳神社にあるものの原型)

(↑上の写真)左=ホタルブクロ、中=アヤメ、右=ガクアジサイ

 アヤメ(菖蒲、文目、綾目)はアヤメ科アヤメ属。日本各地、朝鮮半島中国東北部、東シベリアの山野に生え、群生する多年草。生育は比較的乾燥している場所を好む。ということで庭に植えるにはとても良いです。ただし、秋から冬を越して花の時期まで葉が地面に倒れたようにだらしなくなります。それだけに花の時期は見事です。花は2~3個が同じ花茎から次々に咲き、前の花は二日ほどで萎み、その脇に新しい花が咲いていくのでいつも同じ花が咲いているように見えます。和名は文目(あやめ)の意味で外花被(横に開いている3枚の大きな花びら=この形を三英花という。)の基部に綾になった目があることからつけられたという。アヤメ属の他のノハナショウブカキツバタは湿地を好むが、アヤメが湿地に生えることは、稀である。昔、アヤメと言ったのは、今のショウブ(ショウブ科)のことでのちにアヤメの名が本種に移ったものである。(主に「APG牧野植物図鑑スタンダード版Ⅰ」、「ウィキペディア」、山渓「日本の野草」などを参照し、翻案した。)

(↑上の写真)左=ノアザミ、中と右=イワガネゼンマイ(葉裏の葉脈が二股に分かれてから交わらない)

(↑上の写真)左=ドクダミ、中=ウラジロチチコグサ、右=ヒューケラ

(↑上の写真)左=井之頭池弁財天、中=カイツブリ、右=アオサギ

神奈川県立東高根森林公園・・・令和4年5月23日

 南武線武蔵溝ノ口からバスで15分ほどで着きます。また南武線津田山下車で一山超える感じで墓地の中を30分歩き、裏道から入ることもできます。スイカズラ、アカショウマ、ワスレナグサが花盛りでした。鶯の鳴き声や清水の流れの音が爽やかに耳元に届いてきます。今日の様子です。

(↑上の写真)左=入口のパークセンター、中=スイカズラ、右=アカショウマ

(↑上の写真)左=ヤマアイ、中=ヤマアイの群落、右=ミドリハカタカラクサ

 ミドリハカタカラクサ(緑博多唐草)はツユクサムラサキツユクサ属、南アメリカ原産の常緑多年草帰化植物。日本では昭和初期に渡来して観賞用に栽培されていたものが逸出したものという。やや湿っている日陰や水辺に生え、群落を形成している。北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアにも定着し、日本では要注意外来生物に指定されており、特に愛知県では条例で野外への放逐する行為が制限されている、ということです。茎が茶色で葉がやや小さいものはトキワカラクサ(常盤唐草)またはノハカタカラクサ(野博多唐草)と呼ばれ、原種に近く、ここの写真の様に茎が緑で葉がやや大きいものは園芸種として改良されたものらしくミドリハカタカラクサと呼ばれているようです。(各種図鑑、Web参照翻案)

(↑上の写真)左=キショウブ、中=ワスエナグサ、右=オランダガラシ

 オランダガラシ和蘭芥子・和蘭辛子・阿蘭陀芥子・阿蘭陀辛子)はアブラナ科オランダガラシ属の水中または湿地に生育する多年草。 ヨーロッパから中央アジアの原産。 明治3~4年頃に日本に入り、今では各地に野生化し、水辺に見られる多年草。 一般にクレソンと呼ばれていて、標準和名オランダガラシは、外国から渡来したという意味で名付けられ、清流にしか育たないというのは俗説で、汚水の中でも生育する、という。 独特な香りとほのかな苦味、ピリッとする辛味があり、βカロテンを大量に含み、ビタミンC、鉄分、カルシウム、カリウム葉酸などの栄養素も豊富に含むことから、血液の酸化や貧血予防に役立つ野菜といわれている、という。 (APG牧野植物図鑑スタンダード版とウィキペディア参照翻案)

(↑上の写真)左=ナガバオモダカ、中=ユキノシタ、右=水辺のある園内風景

(↑上の写真)左=ユウゲショウ白花、中=ユウゲアショウ紅花、右=ヘビイチゴ

(↑上の写真)左=コバンソウ、中=カモジグサ、右=ヤマアワ

(↑上の写真)左=ウツギ、中=ヒルザキツキミソウ、右=ドクダミ

 ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)はアカバナ科マツヨイグサ属。北アメリカ原産で、日本へは観賞用に輸入・栽培され、戦後神奈川県などで逸出帰化した。世界の温帯域で花卉として栽培されている多年生草本。夏から秋にかけて、淡桃色から白色、直径5cmほどの4弁花を茎の上部にやゝ総状につける。花は夜に開花するが、日中も萎まない。名称の由来は、宵に咲く月見草と違って、昼間にも開花していることによる、という。(各種図鑑、Web参照、翻案)

(↑上の写真)左=ヤブジラミの種子、中=セントウソウの種子、タチツボスミレの閉鎖花

(↑上の写真)左=オオバコ、中=ヘラオオバコ、右=木道のある園内風景

(↑上の写真)左=イワガネソウ、中=イヌワラビ、右=ミドリヒメワラビ

国営昭和記念公園・・・令和4年5月19日

 昭和記念公園では、みんなの原っぱや花の丘などで一面各種ヒナゲシ(ポピー)やネモフィラが鮮やかな彩りで花を咲かせています。一番奥(北)の花の丘はあまり人がおらず、ゆっくり楽しめます。トチノキが花盛りでアヤメ、テイカカズラ、ガクウツギが盛りを過ぎました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=西立川口入口、中と右=各種ヒナゲシ(ポピー)の花壇

(↑上の写真)いろいろなヒナゲシ(ポピー)

(↑上の写真)いろいろなヒナゲシ(ポピー)

 ヒナゲシ(雛芥子、雛罌粟)はケシ科ケシ属。別名:虞美人草グビジンソウ)。ヨーロッパ原産で、江戸時代に日本に渡来し、観賞用として栽培される越年草という。明治45年5月19日与謝野晶子は、パリの北駅頭に立った。半年ぶりに夫、寛(これが本名。与謝野鉄幹のこと)と感激の対面をする。ホテルの窓掛の間からは野生の雛罌粟(コクリコ・仏語=ヒナゲシのこと)の燃える様な緋の色の花が見える。郊外にはその雛罌粟と矢車草とが、総ての畦路と路傍とを埋めて居る。晶子は謳う「ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟われも雛罌粟」(各種資料を翻案)。別名虞美人草は、中国の伝説に由来。項羽の愛人だった虞は、項羽劉邦に敗れて垓下(がいか=垓下の戦い)に追い詰められた時に、虞は、死を覚悟して項羽が詠った垓下の歌に合わせて舞い、この舞の後に彼女は自害した。彼女を葬った墓に翌夏赤くこの花が美しく咲いた。それは美しかった虞美人の姿を彷彿とさせるものだった、という伝説から墓に咲いたこの花を虞美人草と呼ぶようになったという(資料より翻案)。

(↑上の写真)左=ネモフィラ、中=アカショウマ、右=ムシトリナデシコ

 アカショウマ(赤升麻)はユキノシタ科チダケサシ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州の太平洋側、四国、九州の暖帯の山地に生える多年草」という。白い花なのにアカショウマと言うので花や葉の形が似ているチダケサシと間違えてしまいます。同書には、アカショウマ(赤升麻)は地下茎の皮が赤色であるために言う、とあります。地下茎を見ないと赤いかどうか分かりません。花は、アカショウマは赤ショウマとは言いますが、初夏に白い花を咲かせ、チダケサシは夏に淡紅色または白色の花を咲かせるということです。アカショウマの白い花の方が少し早めに咲くようです。また、両者は葉の形も似ていますが、アカショウマは葉先が鋭尖頭(先が鋭く尖って伸びている)ですが、チダケサシはそれほど葉先が鋭く伸びているという感じではないようです。(写真をクリックし、拡大して葉をご覧ください。)

(↑上の写真)左=アヤメ、中=ホタルカズラ、右=フタリシズカ

(↑上の写真)左=トチノキ、中=ヤマボウシ、右=ガクウツギ

(↑上の写真)左=ガマズミ、中=ハコネウツギ、右=コアジサイ

 ハコネウツギ(箱根空木)はスイカズラタニウツギ属。分布については、関東から中部地方の低地に野生しているとするAPG牧野植物図鑑スタンダード版と北海道南部〜九州に分布するとするWeb「ウィキペディア」と、その同地域の沿海地の海岸林に生える、とするWeb「ハコネウツギ」があります。ハコネウツギは落葉低木または小高木で花期は5・6月頃、花は初め白いが日が経つと次第に赤色に変るという。ゲンペイウツギ(源平空木)といいたいところですが、はじめから赤・白の花があるのではなく、白い花がやがて赤色に変化するというのですから源平とは名づけられませんね。敵味方が判らなくなってしまいますから。日が経つと花の色が変化するのは、スイカズラ科の特徴ですね。なお、ウィキペディアによると「和名は箱根ウツギだが箱根の山中には無く、山麓にのみ見られる」ということです。

(↑上の写真)左=マテバシイ、中=クスノキ、右=イボタノキ

(↑上の写真)左=サワラの葉表、中=サワラの葉裏、右=こもれびの丘風景

(↑上の写真)左=ヒノキの葉表、中=ヒノキ「の葉裏、右=日本庭園の池風景

 ヒノキ(檜、桧、檜木)はヒノキ科ヒノキ属。(Web:ウィキペディア)によると「本州の福島県以南、四国、九州の屋久島まで分布する。多雪を好まないとされ日本海側にはあまり分布せず、主な分布地は太平洋側に偏る。乾燥した場所を好む。典型的な陰樹の特性を持ち、幼樹は日当たりを嫌う。雌雄同株。語源は、古代において木をこすって火を起こすのに用いられ、「ヒノキ」は「火の木」という意味だという説と、尊く最高のものを表す「日」をとって「日の木」が由来だという説がある」という。田中修著『植物はすごい』によると「ヒノキは葉だけではなく、幹や枝の材も香りが高く、そのお陰でこの材は細菌や虫に強いのです。細菌の繁殖を防がねばならない「俎板」や湿気が高く細菌が繁殖しやすい風呂桶や、椅子などに使われます。奈良の法隆寺の建築には檜が使われているのもこの理由です」と、あります。サワラとヒノキは似ていますが、その区別点は、サワラの葉先は両肩が怒ったように葉身の一部が小さな針のように飛び出ていますが、ヒノキの葉先は丸く、撫で肩の様になっています。サワラとヒノキの区別を裏面の斑紋H型、Y型で区別することもできますが、この斑紋は季節によってはっきり見えないことがあり、ここで述べた葉先の肩の形の違いで区別すると、どの季節でも区別が可能です。

(↑上の写真)左=オニノヤガラ、中=シャクヤク、右=カルミア

都立平山城址公園・・・令和4年5月18日

 久し振りの青空に惹かれて、自然観察に出かけました。エゴノキが最後の花を咲かせていました。エゴノキの落花が園路のあちこちに散り敷かれています。また、オカタツナミソウが群落を形成し、園内いたるところに花を咲かせています。光合成を行わない珍しい植物「オニノヤガラ」が咲いていました。今日の様子です。なお、隣接する東京薬科大学植物園は、火・木は開園しているそうです。

(↑上の写真)左=西園入口、中と右=エゴノキ

(↑上の写真)左=ガマズミ、中=マルバウツギ、右=コゴメウツギ

(↑上の写真)左=オカタツナミソウ、中=オカタツナミソウの群生、右=ニガナ

 オカタツナミソウ(丘立浪草)はシソ科タツナミソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば本州と四国の丘陵地の木陰に生える多年草ということですから、九州、北海道の方にとっては珍しい草花ということになります。シソ科なので茎に触れてみると四角く角張った茎の様子でシソ科と分かります。ここの都立公園にはたくさん咲いていますが、東京区部では絶滅、東京多摩地区では絶滅危惧Ⅱ類ということです。貴重種ということになりますね。

(↑上の写真)左=ドクダミ、中と右=ヘビイチゴの花と実

(↑上の写真)左と中=ハルジオンの白花と赤花、右=オオジシバリ

(↑上の写真)左=キツネアザミ、中=アメリカフウロ、右=園内風景

(↑上の写真)左=オニノヤガラ、中=スイカズラ(ニンドウ)、右=マムシグサ

 オニノヤガラ(鬼の矢幹・鬼の矢柄・鬼の簳)はラン科オニノヤガラ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると北海道から九州、および台湾、中国の温帯から暖帯にかけて分布し、山野の林内に生える多年草で、花茎は高さ1m位になるものもあるそうです。各種Webによれば、本種は光合成を行わずナラタケから栄養提供をうけて生活する菌従属栄養植物なので、本種のみを単独で鉢植えなどにすると栄養の供給が断たれて衰弱枯死するそうです。キンランなどのラン類と同じで、盗掘して持って帰っても育たないと言われるのは、そのためです。本種は塊茎をつくるランで、この塊茎は、開花した年に消滅するそうですが、表面に小さな芽を生じ,その芽が数年間地中で生育肥大した後,再び花茎を伸ばして花をつけるそうです。

(↑上の写真)左=ギンラン、中と右=トウバナの花と種子

(↑上の写真)左=ムラサキツメクサ、中=シロツメクサ、右=ノアザミ

(↑上の写真)左=キツネノボタン、中=ヤブレガサ、右=タチツボスミレの閉鎖花

(↑上の写真)左=ウグイスカグラの実、中=エノキの実、右=ヒイラギナンテン

(↑上の写真)左=イヌワラビ、中=フモトシダ、右=ミゾシダ

多摩森林科学園・・・令和4年5月15日

 多摩森林科学園は中央線高尾駅下車、北へ徒歩7・8分のところにあり、園内標高は高い所で288m、7haの園内に樹木約500種、6000本が植栽されている樹木園です。桜を各種揃えていることで有名です。この時季、花の少ない時でしたが、日本固有種サンショウバラが咲いています。バラの野生種にしては大きめの花を見ることができました。春のアザミとしてノアザミが咲きはじめました。今は訪れる人も少なく、ゆっくり観賞することができます。今日の様子です。

(上の写真)左=森林科学館、中=サンショウバラの花、右=サンショウバラのつぼみ

 サンショウバラ(山椒薔薇)はバラ科バラ属。Web:ウィキペディアなどによると神奈川県、山梨県および静岡県にまたがる富士箱根地区の山地に分布している日本固有種。絶滅危惧Ⅱ類。幹は太く、高さは1~5mになる落葉小高木。花は5月~7月頃、 枝先に直径5cmほどの一重の薄ピンク色の花が一輪ずつ開き、咲いた当日あるいは翌日には散っていく。枝は6月頃よく分枝し、稲妻形に屈曲し、扁平な強い刺がある。葉は奇数羽状複葉。和名の由来は、葉がサンショウ(山椒)の葉に似ているため、という。

(↑上の写真)左=ノイバラ、中=オカタツナミソウ、右=エビネ

(↑上の写真)左=フタリシズカ、中=ニガナ、右=ヤブレガサ

(↑上の写真)左=ノアザミ、中=キツネアザミ、右=コウゾリナ

(↑上の写真)左=イヌガラシ、中=ヤブジラミ、右=ジシバリ

 イヌガラシ(犬辛子)はアブラナ科イヌガラシ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると日本各地、及び朝鮮半島、中国、インドの温帯から熱帯に分布する多年草で、花は春から夏という。花弁はアブラナ科なので4枚で十字形につく。黄色で、長さ3mmくらい。果実は長さ1~2cmの長角果(細長くて菜種のさやのように縫合線がついているもの)。和名は雑草で辛くなく、食用にならないからという。有川浩著『(小説)植物図鑑』に(さやかがイツキに教えてもらっています)「こっちがイヌガラシ、こっちがスカシタゴボウ」「分かんないってば!」「茎の色が違うだろ。茎が、黒っぽい方がイヌガラシ」指摘されてから見比べてみると、たしかにスカシタゴボウの方は茎の色が明るい緑だ。それを踏まえて葉を見直すと、葉の緑もイヌガラシの方が濃いようだ。「でも外で見たら自分じゃ絶対区別つかない……」とさやかは拗ねるのです。(さやかが見知らぬ青年イツキを部屋に上げたのが二人の植物談義関係の始まりでしたね。)

(↑上の写真)左=ガクウツギ、中=マルバウツギ、右=コゴメウツギ

(↑上の写真)左=ガマズミ、中=アスナロ、右=アスナロの葉裏の斑紋

(↑上の写真)左=ミヤマウグイスカグラの実、中=バイモの実、右=深く緑に包まれる園内

(↑上の写真)左=コバノヒノキシダ、中=ヤマイタチシダ、右=ゼンマイ

(↑上の写真)左=コシダ、中=ウラジロ、右=ゲジゲジシダ

(↑上の写真)左=イノデ、中=ベニシダ、右=ミゾシダ

山梨県森林総合研究所・・・令和4年5月10日

 山梨県森林総合研究所北杜市小淵沢町にあり、愛称「シミック八ヶ岳薬用植物園」と呼ばれています。標高950m、9、5haの敷地に300種類の植物が植栽されています。今は春の花と夏の花が入れ替わる時期なので花の種類は、多くはありません。今日の様子です。

(↑上の写真)左=入口、中=山の幸展示館、右=アジュガ(西洋ジュウニヒトエ

(↑上の写真)左=斑入りアマドコロ、中=ジャーマン・カモミール、右=コモンタイム

(↑上の写真)左=アキグミ、中=エニシダ、右=フサスグリ

 エニシダ(金雀児・金雀枝・金雀花)はマメ科エニシダ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によるとヨーロッパ原産で延宝年間(1673~1681年)に中国を経て渡来した落葉低木という。Web:植木ペディアによるとホウキのような樹形に育つのが基本であり、ヨーロッパではその様子を魔女が使う箒に例え、エニシダが茂る家は主婦が強いとすると言い伝えがあるという。また、花の色は黄色が基本だが、赤が入る品種(ホオベニエニシダ)や乳白色が混じるものなど園芸品種は豊富にある、とのこと。芥川龍之介著『神神の微笑』には「彼(神父オルガンティノ)は南蛮寺の内陣のフレスコ画を見ていた。画中ではサン・ミグエルと地獄の悪魔がモーゼの屍骸を奪い合っていた。しかし、今夜は朧げな光の加減か妙に普段よりは優美に見えた。それは又事によると、祭壇の前に捧げられた、瑞瑞しい薔薇や金雀花(エニシダ)が、匂っているせいかも知れなかった。」(一部翻案)と描写されています。

(↑上の写真)どれもアキグミの花の様子

 アキグミ(秋茱萸)はグミ科グミ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば、北海道西部から琉球列島まで、および朝鮮半島、中国、ヒマラヤ、カラコルムの暖帯から温帯の山野の水辺などに生える落葉低木という。葉は互生、葉には銀白色の星状鱗片(星状のうろこのような細片)が密生して、銀白色に光っているのが特徴です。花の色は、白色から黄色に変わり銀白色の鱗片に覆われる。果実は丸く、秋に赤く熟し、食べられる。山中では、実は鳥や猿などの大切な餌となっていますね。ナツグミとの分かりやすい区別点は、ナツグミは実の形が細長く、花の後すぐに5・6月に熟すが、アキグミは実の形が丸く、秋にならないと熟さない、ということ。

(↑上の写真)どれもゴヨウアケビの花 左=雄花、中=雌花、右=雌花と雄花

(↑上の写真)左=クサノオウ、中=ノボロギク、右=モミジガサ

(↑上の写真)左=オニグルミの雄花の穂、中=カリン、右=ブルーベリー

 カリン(花梨、榠樝)はバラ科カリン属からAPG新分類ではバラ科ボケ属に変更になりました。中国東部原産の落葉高木で日本への渡来時期は不明とのこと。樹皮は緑褐色で縞状に剥げ落ちた跡が残り、ナツツバキ(シャラノキ)に似ています。西洋ナシのような形の実(梨果)の芳香は素晴らしく、食べられますので秋の収穫を楽しみに待ちたいと思います。江戸時代、屋敷の表門には「カリン」(借りん=借りない)の木を植え「お金は借りません」の意志表示をし、背戸(裏門)には「カシ」(貸し=貸す)の木を植え「お金は貸すほどあります」という意思表示をしたそうです。赤い花は借金まみれの赤を象徴し、そうはならじ、の意思表示をしているということでしょう。江戸時代の洒落た高度な庶民文化が感じられますね。

(↑上の写真)左=マムシグサ、中=カキドオシ、左=展望台からの甲斐駒・南アルプスの眺望

都立浅間山公園・・・令和4年5月6日

 府中市にある都立浅間山(せんげんやま)公園は、5月連休中のキスゲフェスティバルを今年は再開し、7日(土)、8日(日)まで行われます。浅間山のみに自生するムサシノキスゲは見頃です。キンラン、ササバギンランは盛りを過ぎたところです。キンランはすごく増えていますが、ギンランは個体数が激減しています。ササバギンラン、ムサシノキスゲはほどほどの個体数を維持という感じです。今日の様子です。

(↑上の写真)左=キスゲ橋、中=鎮守・浅間神社、右=人見四郎墓跡

 多磨霊園とその西の浅間山を結ぶ橋がキスゲ橋です。橋から浅間山に入ると標高70mの浅間神社を祀る堂山です。富士山の浅間神社末社ですが、木花開耶姫命が祀られています。近くに人見街道がありますが、この辺りに勢力を持っていた人見氏に因んで名づけられたものです。その人見氏の墓跡と言われるところにこの石碑が建てられました。  (写真をクリックすると拡大されます。)

(↑上の写真)どれもムサシノキスゲ、右=群落

(↑上の写真)どれもムサシノキスゲ

(↑上の写真)どれもキンラン、右=群落

(↑上の写真)左と中=ギンラン、右=園路風景

(↑上の写真)どれもササバギンラン

(↑上の写真)どれもホウチャクソウ

(↑上の写真)左=ニガナ、中=ヤブジラミ、右=オオジシバリ

 ニガナ(苦菜)はキク科ニガナ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると日本の各地、朝鮮半島、中国中部、サハリン、沿海州に分布し、丘陵地や山地にごく普通に生える多年草という。根生葉は荒い鋸歯を持ち、しばしば羽状に裂け、茎葉(茎につく葉)は広く茎を抱くものから基部が細まってわずかに茎を抱くものまで変異が多いという。花は晩春から夏に咲き、頭花は1,5cmぐらい、花弁(花びら)は5・6枚で、ふつう5個の小花からなるという。花弁の数が少ないので(写真右端のオオジシバリと比較して)群生していてもすっきりした感じです。時々変種の白い花のシロバナニナガが見られることがあるかも知れません。葉や茎に苦みのある白い乳液を含むのでニガナ(苦菜)と呼ばれています。

(↑上の写真)左=ウグイスカグラの実、中=コウゾの実、右=ノイバラ

(↑上の写真)どれもエゴノキ 

 エゴノキ(和名の漢字は無し、野茉莉」を当てる人がいますが、これは中国語)は、エゴノキエゴノキ属。4月28日に掲載のハクウンボク白雲木)はエゴノキ科でした。このエゴノキは科名の代表になっています。現在、花は満開です。この花の様子を「森のシャンデリア」と表現した人がいました。森の中で舞踏会が開かれているような感じですね。エゴノキに当たる日本語の漢字がないということです。この実の果皮には発泡性物質サポニンが含まれているので、この実を口にすると口の中が大変なことになります。この感じをえぐい(蘞い・醶い)というそうです。筆者はそれを知らずに口中で噛んで見ましたが、数日、いくらうがいをしても口中に痺れが残り、困りました。この「えぐい木」という表現がいつの間にか「エゴノキ」になったということなので、名前としての漢字が無いということになったようです。白く緻密な材をロクロ細工に用いたことから別名「轆轤木(ろくろぎ)」というそうですが、これを標準和名にしたいですね。

(↑上の写真)左=ガマズミの蕾、中=イボタノキの蕾、右=おみたらし水神社