野楽力研究所

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(入間市)さいたま緑の森博物館・・・令和4年6月30日

 ここは博物館といっても博物館の建物があるわけではありません。緑の森そのものを博物館としています。6月はヒメザゼンソウがここでの売りです。今日がその最後の日でした。最後の花が咲いています。そのほか、この花の少ない時期にオカトラノオ、チダケサシが満開です。ヤブカンゾウは咲きはじめでした。今日の様子です。

(↑上の写真)左=博物館案内所入口、中と右=今年最後のヒメザゼンソウ

 ヒメザゼンソウ(姫座禅草)はサトイモザゼンソウ属。「APG牧野植物図鑑スタンダード版」によると「北海道、本州の主に日本海側、および朝鮮半島北部の温帯に分布する多湿地に生える多年草で、花は初夏、果実は翌年の開花時に熟す」ということです。「青梅市文化財ニュース 第381号」には「分布の中心は日本海側で太平洋側には 少なく、関東地方南部ではごく少数の生息地が知られているのみです。本来、冷涼な地域に多いヒメザゼンソウが温暖な多摩地域の低標高地に生育するのはとても不思議なことです。同じく冷涼な地域に多いカタクリ多摩地域の丘陵に生育していますが、その生育地は高温や乾燥を避けることができる北向き斜面の湧水や滲出水のある湿潤な環境に限定されると考えられています。多摩地域のヒメザゼンソウカタクリよりもさらに稀なため生育地の条件を明らかにするの は難しいですが、限られた気候条件や地形条件の中で生き延びてきた植物であることには間違いありません」という記述があります。一度ご覧になると保護してあげたくなると思います。

(↑上の写真)左と中=オカトラノオ、右=キツネノボタン

(↑上の写真)左と中=チダケサシ、右=ハエドクソウ

  チダケサシ(乳蕈刺・乳茸刺)はユキノシタ科チダケサシ科。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州、四国、九州の山野のやや湿ったところに生える多年草。花は、淡紅色または白色」とあります。山渓野草ハンドブック「夏の花」には、山や野の湿ったところに多い草で、大抵草むらの中に他の草に混ざって生えている。信州では、この茎にチダケ(乳茸)というキノコを刺して持ち帰るのでこの名がついたという。花はピンク色で美しい。学名はアスチルベで、園芸品種として庭に植えられるものと同じ」とあります。上掲写真のように、さいたま緑の森博物館では湿った草むらの中に他の草に混ざって花茎を伸ばして咲いており、ほとんどが白色でしたがピンクのものも数本ありました。

(↑上の写真)左=ヤブカンゾウ、中=タケニグサ、右=湿地帯のある風景

 ヤブカンゾウ(藪萱草)はススキノキ科ワスレグサ属。APG牧野植物図鑑によると「北海道から九州の野原に生える多年草。日本のものは中国から渡来したとも言われる」という。生薬の甘草はマメ科カンゾウ(甘草)属植物の根や根茎を乾燥したもので、ヤブカンゾウ(藪萱草)の萱草ではありません。萱草の萱の字は、音は「カン」、訓読みは「わすれぐさ」「かや」となっています。八重咲になっている花弁は雄しべ雌しべが花弁化したものでしかも遺伝子が3倍体なので結実しないということです。野原に生えているものは人間が移植したものか、移植後、根茎から走出枝を出して繁殖したものになります。

(↑上の写真)左=ヤブソテツ、中=オオバノイノモトソウ、右=ベニシダ

(↑上の写真)左=ゼンマイ、中=ハリガネワラビ、右=リョウメンシダ