野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

東京多摩地区街中自然観察・・・令和4年6月8日

 郊外の住宅地には園芸種が色とりどりの花を咲かせています。自然の野草の花の数はこの時季少ないですから、補ってくれています。園芸種は園芸家が次ぎつぎに新しい品種を作り出していますので、同定するの難しいです。さて、この時季はアジサイの季節です。アジサイ観賞に公園に出かけますが、街中で結構、観賞できます。何を植えているのかでその家庭の考えを窺い知ることができますね。今日の様子です。

(↑上の写真)アジサイ各種

(↑上の写真)ガクアジサイ各種

(↑上の写真)左=カシワバアジサイ、中=ゼニアオイ、右=キンシバイ

 キンシバイ(金糸梅)はオトギリソウ科オトギリソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版などによると『中国大陸中部の原産で宝暦の頃(1760年頃)日本へ渡来し、観賞用に植栽。また、山地の人家付近の湿った崖などに野生化している常緑小低木。和名は中国名の「金糸梅」に由来し、これは5枚の花弁を梅に、長く突き出た雄しべを金の糸に喩えたもの』だそうです。似た花にビヨウヤナギ(未央柳・美容柳)がありますが、ビヨウヤナギは雄しべがもっと長く、雌しべを囲うようにして伸びています。

(↑上の写真)左=ムシトリナデシコ、中=ユウゲショウ、右=ペラペラヨメナ

(↑上の写真)左=ヒメジョオン、中=(ハルノ)ノゲシ、右=ブタナ

 ヒメジョオン(姫女苑)はキク科ムカシヨモギ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると『北アメリカ原産で明治初年に渡来し、各地の道端や原野に生える越年草の繁殖力の強い草花。茎は中空でなく充実している。葉は薄く両面に毛がある』ということです。花はハルジオンにひと月ほど遅れて、これから咲きはじめます。この時期、ハルジオン、ヒメジョオンの両方が同じような花を咲かせているので、見分けてみるとこの植物に親しみが湧くと思います。ハルジオンの蕾はうなだれていますが、ヒメジョオンの花は蕾の時から直立しています。さらに、ハルジオンの葉は葉柄が無く茎を抱いていますが、ヒメジョオンは葉柄があり、茎を抱いていません。ちょっと目を当ててみてください。

(↑上の写真)左=ムラサキカタバミ、中=イモカタバミ、右=コマツヨイグサ

 コマツヨイグサ(小待宵草)はアカバナ科 マツヨイグサ属。日本帰化植物写真図鑑によると『北アメリカ原産で、アフリカやアジアに広く帰化している越年生草本』という。Web「ウィキペディア」に『日本では明治43年に初めて確認された。鳥取砂丘の緑化に利用され、在来種と競合したため、在来種の数を大きく減らした。生態系を崩す事から外来生物法により要注意外来生物に指定され、現在各地で駆除が実施されている。匍匐性があり、花は萎れると赤く変化する。』(一部翻案)とあります。Web「国立環境研究所」には『体に粗毛がある。葉は多形で,羽状に裂けたものから浅い波状の歯をもつものまである。染色体数2n=14.変異が起きやすい』とあります。可愛らしい花でグランドカバーにいいと思いながら、難しい問題がありますね。

(↑上の写真)左=ハキダメギク、中=ウラジロチチコグサ、右=タチチチコグサ

(↑上の写真)左=ツユクサ、中=ムラサキツユクサ、右=ハンゲショウ

(↑上の写真)左=タイトゴメ、中=ウツボグサ、右=ヒルガオ

 タイトゴメ(大唐米)はベンケイソウ科マンネンクサ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば『関東以西、中国、九州の海岸の岩石に隙間や崖などに生える多年草。茎は地上を這って多数分枝し、主茎の上方は側枝と共に直立し、葉は互生し多肉質。花は、側生する枝上につき、主茎には花を付けない。和名は高知県柏島の方言で、葉形がダイトウマイ(大唐米)という米の形に似るため』という。多肉質なので乾燥や暑さ、寒さにも耐え、しかも寒くなると赤くなるのでそれもきれいだそうです。もともと海岸に生えているものだそうですが、適応力があり庭の隅で増えすぎないように注意してグランドカバー的に育てると楽しめるでしょう。

(↑上の写真)左=キショウブ(園芸種)、中=ナガミヒナゲシ、右=サルビア

 ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟)はケシ科ケシ属。Web「川越市」によるとヨーロッパ地中海沿岸原産の1年草で、秋に発芽し、ロゼット状態で越冬し、春先に急に大きくなり、4月から6月頃に直径3cm程の薄いオレンジ色の花を咲かせる。果実は6月頃に熟し、1つの果実に約1500粒もの種子ができ、一個体が100個もの果実をつけることもあるので、最大で一個体(一粒の種子)から15万粒の種子ができ、繁殖力が強いことも特徴。また、根から他の植物の生育を妨げる成分を含んだ物質を出すことから、生態系に影響を与える植物と言われています。種子の数が多く、爆発的に個体数を増やしているので、特定(または要注意)外来性物に指定はされていないということですが、要注意植物として各自治体から警告が出されています。平成21年4月19日付の朝日新聞によると『昭和36年(1961年)国内で初めて世田谷区で報告された』ということです。和名は、ケシの実のように丸っこくなく、筒状に長いので「長実(ナガミ)」、花はケシより小さいので「雛ケシ」といわれます。可愛い花ですが各地で増殖中であり、対応は十分気を付けてほしいということです。

(↑上の写真)左=ホソムギ、中=イグサ、右=コバンソウ

(↑上の写真)左=シモツケ、中=ザクロ、右=ヤマボウシ

 ザクロ(柘榴)は以前は、ザクロ科でしたが現在は、ミソハギ科ザクロ属。西アジア地方原産の落葉高木。深津正著「植物和名の語源」によれば、『ザクロはペルシャ北部(現在のイラン辺り)の「安石国」からシルクロードを通って中国、朝鮮を経て日本に渡来し、平安時代にはすでに栽植され、実を食用にし、根や幹の皮を條虫の駆除剤に用いたり、果実を下痢止めや染料などに使ったという。実の形が瘤(こぶ)に似ていることから「安石瘤」と呼ばれ、それが略称されて現在では「石榴」または「柘榴」と書かれる。和名のザクロは、漢名の石榴から来たものと説く人もあるが、石榴の中国音はシーローだから、そのままではザクロにならない。これに対して、ザクロは柘榴の別名若榴(じゃくりゅう)の中国音ジャクリュウがそのまま日本語になったという説があるという。古代イランと中国の文化交流の研究者のラウファーの説によれば、若榴は石榴と丹若という2つの別名が合体してできたものだという。若榴の名は、平安初期に著された「木草和名」にも既に載っており、昔は日本でも通用していた名だという。いずれにしてもザクロが漢名から転じたものであることには間違いない』という(一部翻案)。ザクロについては、いろいろな話や説があります。歴史を感じさせる果樹ですね。