野楽力研究所

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府中市郷土の森・・・令和3年1月6日

 新年を迎えて初めて開園された府中市郷土の森のロウバイ園を自然初観察地として訪れました。ロウバイをじっくり観察しました。ここはロウバイソシンロウバイ、マンゲツロウバイと以前は名札が出ていましたが、数年前から撤去され、どれがどれだか素人目には分からなくなりました。そこで徹底観察して区別してみました。どうでしょうか。(なお、ここ郷土の森は、1月は月、火が交互に休園となります。2月は梅まつりのため休園日はありません。)

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(↑上の写真)どれもロウバイロウバイロウバイ属)

 ロウバイ(蝋梅)の花弁は、粘土細工をするときの竹へらのように横幅は狭く先が尖った形をしています。芯は紅をつけたよう様な感じ。見分けやすいです。

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(↑上の写真)どれもソシンロウバイロウバイロウバイ属)

 ソシンロウバイ(素心蝋梅)の花弁も竹へらの形でロウバイと同じですが、芯が紅をさしてなくて素心です。これも見分けやすいです。

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(↑上の写真)どれもソシンロウバイ

 これもソシンロウバイですが花弁に形が竹へらのように尖っていません。どちらかというと聖徳太子が両手で持つ笏(しゃく)のようで、花弁に横幅があって先端が丸みを帯びています。

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(↑上の写真)どれもマンゲツロウバイロウバイロウバイ属)

 マンゲツロウバイ(満月蝋梅)はロウバイと間違えそうですが、花弁が笏状のソシンロウバイのようで竹へらより横幅があり、先端に丸みがあります。

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(↑上の写真)左=ロウバイ園、中=川崎平右衛門の像、右=ニホンズイセン

 以上のような見方をもって、ロウバイ園で自分なりの見方で同定をしてみるとロウバイへの興味がいっそう深まると思います。

 川崎平右衛門は押立村(現在の府中市)出身の人望と徳と実績のある名主で大岡越前守と同時代、彼に認められ石見銀山の経営まで頼まれた人ですね。

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(↑上の写真)左=梅園、中=白梅、右=紅梅

 梅は、白梅と紅梅の数株がちらほら綻び始めた状態です。

 

玉川上水(水車橋~百石橋の右岸・左岸)・・・令和2年12月31日

 自然観察納めを玉川上水でしました。この時季には常緑樹が目立つようになります。寒い中を頑張って生きているなあと常緑樹の生命の強さを感じます。どうでしょうか。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=玉川上水、中=サザンカ、右=ヤブツバキ

 玉川上水は昭和23年に太宰治が愛人と入水自殺を図り、情死した上水です。現在は上の写真のように赤土の壁面は垂直になっていて、下の方にわずかに水(それも処理水です)が流れています。当時は、多摩川の水が縁まで満水で、滔々と流れていたそうです。しかも壁面は壺の断面のようにまわるく抉れていて、一旦溺れると滑りやす赤土の這い上がれない構造になっていたということです。多摩地域では東京オリンピックの直前までこの上水を田の水として利用していました。そんな歴史を上水を覗く度に思い起こされます。大岡昇平の「武蔵野夫人」には国分寺恋ヶ窪の上水分水の場面が出てきます。

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(↑上の写真)左=アオキ、中=ヤツデ、右=イヌツゲ

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(↑上の写真)左=クマザサ、中=カクレミノ、右=ネズミモチ

 クマザサ(隈笹)はイネ科ササ属。普通、クマザサは如何にも熊が出そうなところに生えているので熊笹と書いてしまいますが、名前の由来は、冬に葉の縁に白い隈取ができ、それが歌舞伎役者の隈取りに似ているのでクマザサ(隈笹)と言われるようになったということで、漢字としては隈笹がいいようです。原産が京都盆地周辺だそうですが、若葉が綺麗なので庭園などの根締めに植えられたりして全国に広がって野生化したそうです。笹餅や料理の化粧笹、添え物などに使われたりしますが、Web「くまざさbing」によれば、葉に含まれる安息香酸が殺菌・防腐作用をもつからだそうです。ですから乾燥した葉を健康茶として喫したりしますが、有効性は個人差もあるようです。

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(↑上の写真)左=ワジュロ、中=ツルマサキ、右=ハリガネワラビ(夏緑性で気温が下がると枯れてきます。)

 ワジュロ(和棕櫚)はヤシ科シュロ属。トウジュロ(唐棕櫚)に対してワジュロといいますが、APG牧野植物図鑑では「中国原産と考えられ、九州にも自生すると考えられたことがあるが、確実な自生は知られていない」とのこと。ウィキペディアでは「中国湖北省からミャンマー北部まで分布する。日本では平安時代、中国大陸の亜熱帯地方から持ち込まれ、九州に定着した外来種である」としています。どうやら和棕櫚とは言っても日本自生のものではないらしいです。トウウジュロの葉は硬く小さめの扇形でピチッとした感じですが、ワジュロの葉は大きい扇形で葉先が垂れ下がります。この垂れ下がる(↑上の写真参照)ようすがだらしなく「日本的ではないなあ」「嫌だなあ」と思っていましたが、外来種のようなので今では納得しています。みなさんはどうですか。なお、ヒヨドリ玉川上水の和棕櫚の実を撒布するので、上水のあちこちにたくさん実生が芽生えています。このままでは自然とは言っても今に上水は和棕櫚の林になってしまうかもしれません。

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(↑上の写真)左と中=ヤマコウバシ、右=マルバウツギ 

 ヤマコウバシ(山香ばし)はクスノキ科クロモジ属。冬になっても葉が落ちず、翌春になって芽が出る頃落ちるので、冬の林の中でひときわ茶色の枯葉が目立ちます。芽が出るまで落ちないというので、受験生のお守りの葉となっているようですので、受験生のいらっしゃるご家庭では、この枯れ葉を(少し湿らせて)押し葉にしてお守りをつくって差し上げたらどうでしょうか。葉のつき方に進化の過程が見られる木です。輪生から対生を経て現在は互生になる過程のコクサギ型葉序になっているところが見られます。

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(↑上の写真)左=コナラと冬空、中=遊歩道、右=クヌギの冬姿と冬空

 

百草園・・・令和2年12月25日

 百草園は京王線百草園駅下車徒歩10分、多摩丘陵上に在ります。冬至が過ぎて徐々に昼の長さが長くなり始めました。春が近づいてきたという感じですね。ここ百草園では春を知らせるロウバイとニホンスイセンが咲き始め、寒咲アヤメが満開となっていました。春の足音は、秘かに、しかし確実に近づいてきています。由緒ある園なので丘陵斜面にはシダが楽しめます。どうでしょうか。

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(↑上の写真)左=ソシンロウバイ、中=ニホンスイセン、右=寒咲アヤメ

 ロウバイ(蠟梅)はロウバイロウバイ属。APG牧野植物図鑑によると「江戸時代、後水尾天皇(1611~1629)の時代に朝鮮半島から渡来した落葉低木。和名は漢名の蝋梅の音読み、花色が蜜蝋に似ていることに基づく。古名カラウメは中国から来た梅の意」と、あります。湯浅浩史著「花おりおり」には「名の由来に、二説。一つは臘月、つまり陰暦12月に咲く、梅に似た花の臘梅。またはロウ状の梅からの蠟梅」という二説だそうです。いろいろな説がありますが、中国から渡来したので唐梅(トウバイ)が訛ってロウバイとなったという説もありますが、まやかしの気がしますが、どうですか。これからロウバイの季節を迎えますが、謂れをちょっと気に留めておきたいですね。なお、ソシンロウバイ(素心蝋梅)は、中心の芯まで黄色のものを言っています。従って、素心蝋梅は素芯蝋梅がいいのかなあと思います。芯まで化粧せず素で美しいのが素心蝋梅で、芯に薄く紅をさしたものがもともとのロウバイ(蝋梅)です。

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(↑上の写真)園内の風景 左=入り口からの階段、中=昔を留める松連庵、右=雪吊り、

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(↑上の写真)左=イヌワラビ、中=オオハナワラビ、右=ゼンマイ

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(↑上の写真)左=トラノオシダ、中=ハリガネワラビ、右=ホシダ

 トラノオシダ(虎の尾羊歯)はチャセンシダ科チャセンシダ属。日本各地の低地の山野や路傍の石垣などに生える常緑性シダ。葉の形に栄養葉と胞子葉の二型があり、胞子葉は初秋に葉裏に胞子をつけます。冬のこの時季の上の写真は、栄養葉で丸い感じの葉(羽片)ですが、胞子葉は、栄養葉とは異なる切れ込みのある葉(羽片)となります。よく見ると可愛らしいシダですが、小さいので見落としがちです。図鑑でも詳しい解説は載っていないようです。なお、このシダの形が虎の尾に似ているので虎の尾羊歯と名づけられたようですが、牧野植物図鑑では「虎の尾羊歯は、細長い葉の形を虎の尾に見立てたものであるが、実状にそぐわず良い名ではない」としています。

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(↑上の写真)左=ミゾシダ、中=ヤマイタチシダ、右=ヤブソテツ

 ミゾシダ(溝羊歯)はヒメシダ科ミゾシダ属。本州から九州に普通に広く分布するそうです。和名は「溝シダ」で溝の近くに生えるシダの意味。しかし、溝のような湿ったところばかりでなく、やや乾き気味のところにも生えるようです。夏緑性ですが、関東地方南部以南の暖地では冬枯れしないこともある、ということで百草園の上の写真は、この時季まだ枯れていません。羽片には柄がなく、従って中軸(葉軸)に直接羽片がついているのが特徴の一つです。葉身は、上部に向かって小さくなり(細くなり)、頂羽片(葉身の先端)はやゝ不明瞭、図鑑によっては先端部分の上部の羽片は中軸に流れると表現したものもあります。そのため先端部分の羽片がはっきり分かれてなく、お互いにつながっているように見えます。

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(↑上の写真)左=名残のもみじ、中=見晴らし台よりスカイツリーを眺める、右=ドウダンツツジの名残の紅葉

 

東京都薬用植物園・・・令和2年12月24日

 26日から冬休みになる薬用植物園はひっそりしており、世話係の人が後始末をしていました。花壇は来春の準備をされておりました。今回目指したのは岩石園のシダたちです。スノードロップが雪の飴玉を掲げていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=園内雑木林の冬枯れの風景、中=サルトリイバラの実、右=スノードロップ

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(↑上の写真)左=イノモトソウ、中=カタヒバ、右=フモトシダ

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(↑上の写真)左=ベニシダ、中と右=シシオクマワラビ

 シシオクマワラビ(獅子雄熊蕨)はオシダ科オシダ属。中部地方山地の樹林下に生える地域限定の常緑性シダだそうです。オクマワラビの変種で羽片の先が変形しています。異形葉とかシシ葉とか言われています。珍しいシダで、東京で見られるのは幸せです。手元の図鑑には多分載っていないと思います。

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(↑上の写真)左=リョウメンシダ、中=ヤブソテツ、右=ヤマイタチシダ

 ヤマイタチシダ(山鼬羊歯)はオシダ科オシダ属。本州以西の半日陰の林縁などに生える常緑の多年草。葉は厚手革質、暗緑色で艶があります。一番下の羽片の一番葉軸(中軸)に近い小羽片(第一小羽片)がほかの小羽片よりも大きいので、それがこのシダを同定する一番の決め手です。上の写真で確認できます。この大きい小羽片が1枚でなく、2枚のものはオオイタチシダです。

 

武蔵国分寺公園・お鷹の道・武蔵国分寺万葉植物園・・・令和2年12月22日

 お鷹の道のシダ観察をメインに、都立武蔵国分寺公園から武蔵国分寺まで散策しました。武蔵国分寺公園ではサンシュユの実が鈴なりになっていました。お鷹の道には、野川源流の湧水路があり、その両側には各種シダが観察できます。万葉植物園では万葉の人々が愛でていた植物が栽培されています。戸建て住宅によく植栽されているカクレミノは万葉植物だったんです。今日の様子です。

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(↑上の写真)武蔵国分寺公園の様子です。

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(↑上の写真)左=「もみじの敷物」の雰囲気、中=もみじ、右=ハゼノキ

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(↑上の写真)左=サンシュユの実、中=フユイチゴの実、右=ノシランのまだ未成熟の実

 ノシラン(熨斗蘭)はユリ科ジャノヒゲ属。関東南部以西に広く分布する常緑の多年草。ランと付きますが、ラン科ではなくユリ科です。名前に由来がありそうですが、冨成忠夫著「山渓野草ハンドブック 夏の花」では「のし(熨斗)は『のしをつけてやる』という熨斗で贈り物の飾りに使い、正式には紅白の紙の中に干したアワビを薄く切ったものを入れる。このノシアワビに葉の形が似ているのが名の出所と思われる」とあります。Web「BOTANICA」では「花の茎がきし麺のように扁平で『麺棒でノシたような形』に見えることから名付けられたという説」が紹介されています。ランは花が蘭のようだからというものや葉がランのようだからというものまであります。果たしてどの説が説得力を持つでしょうか。ご自分の説で挑戦するのもいいかも知れません。

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(↑上の写真)左=全国百名水の一つの真姿湧水、中=真姿天神様、右=お鷹の道

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(↑上の写真)左=(武蔵)国分寺、中=境内の万葉植物園、右=カクレミノ

 カクレミノ(隠蓑)はウコギ科カクレミノ属。関東南部以西の暖帯林内に生える常緑小高木、図鑑によっては亜高木。葉は厚く艶があり、枝先に互生します。葉柄は長短不揃いですね。よく見ると、葉は3つ手に裂けているものと裂けていない全縁のものもあります。和名の隠蓑は3裂した葉の形を蓑にたとえたものだそうです。APG牧野植物図鑑によると「古事記日本書紀のミツナガシワを本種にあてる説もある」と、書かれていますが、ここ万葉植物園の解説板には「ミツナガシワ 和名カクレミノ」としています。ウコギ科ですから花や実のつき方がウコギと同じです。今、近所で咲いているヤツデもウコギ科なのでカクレミノと同じ花、実の付き方です。

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(↑上の写真)左=イノデ、中=イノモトソウ、左=オオバノイノモトソウ

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(↑上の写真)左と中=ヤマヤブソテツ、右=ナガバヤブソテツ

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(↑上の写真)左=ゲジゲジシダ、中=フモトシダ、右=ホウライシダ

 ゲジゲジシダ(蚰蜒羊歯)はヒメシダ科ヒメシダ属。全国の低地の山野に生える夏緑性の多年草ですが、北海道では有珠山のみ、東北地方ではごく稀だそうです。夏緑性なので、気温が下がるにつれて黄色くなり、やがて枯れます。羽片は交互に出て、基部が中軸(葉軸)で翼状となっているのでジグザクの感じです。こういう羽片のつき方をゲジゲジの脚のよう、と見たということですが、特徴的な形ですから同定はしやすいですね。上の写真は、実にゲジゲジシダの特徴をあらわしています。

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(↑上の写真)左=イワガネソウ、中=ホシダ、右=リョウメンシダ

 

滄浪泉園・・・令和2年12月21日

 滄浪泉園(そうろうせんえん)はJR中央線武蔵小金井駅下車南西へ徒歩15分の国分寺崖線に在ります。波多野承五郎氏の別荘でしたが、現在は当時の1/3の1万2千㎡となって、崖線(ハケ)の湧水などの自然を活かした日本庭園として開園されています。もみじが輝いていました。ゆっくり歩いても周遊30分です。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=犬養毅揮毫の門標のある入口、中・右=もみじ

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(↑上の写真)いずれも園内のもみじ

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(↑上の写真)いずれもベニシダ

 ベニシダ(紅羊歯)はオシダ科。「宮野入谷戸のシダガイドブック」によると常緑性多年草。中型、2回羽状複葉。雑木林の林下で最も普通に見られる乾燥にも強いシダということです。若葉や包膜が紅色を帯びることが名の由来だそうですが、この時季の上の中の写真では茶色になってしまっています。右の写真のように最下羽片の下向き第1小羽片が形の違った小さい羽片になっている(①)ことが特徴です。中の写真のような胞子嚢のつき方(②)も特徴です。この①②の2点が揃っていればベニシダに間違いないようです。ですが、変異もあるということです。

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(↑上の写真)左=ニシキギ、中=ヤツデ、右=センリョウ

 ニシキギ(錦木)はニシキギニシキギ属。日本各地の山野に生える落葉低木。枝に4稜あって各稜に褐色のコルク質の翼が張り出ています。これがニシキギの特徴で、この翼のないものはコマユミと言われます。秋の紅葉が錦のように美しいので名づけられたといいます。果実(蒴果)は双子の赤ずきんちゃんが赤い帽子と赤いおべべで並んでいるという感じで可愛らしいです。蒴果とは熟すと果皮が裂けて中のものがとびだすものをいうそうです。

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(↑上の写真)左=園路の雰囲気、中=おだんご地蔵尊、右=池畔のようす

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(↑上の写真)左=ハケよりの湧水、中=水琴窟、右=鼻欠地蔵尊

 

昭和記念公園・・・令和2年12月17日

 この時季に訪れる人は、ほとんどありません。キチジョウソウの花がひっそり咲いていました。イイギリの赤い実が青空にくっきり浮きたち、日本庭園の松には雪吊りが掛けられ、池の面には、静かに池畔の木々が写し出されています。シダも、会いたかったホシダに会うことができました。こもれびの丘の北側園路に各種シダが見られます。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=正門を入って正面の風景、中、右=もみじ

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(↑上の写真)左=柳ともみじ、中と右=もみじ

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(↑上の写真)左=イイギリ、中=クロガネモチ、右=サンシュユ

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(↑上の写真)左=マユミ、中=キチジョウソウ、右=センボンヤリ

  キチジョウソウ吉祥草)はキジカクシ科キチジョウソウ属。関東以西、四国、九州の樹林内の木陰に生える常緑多年草。花は秋から晩秋に咲き、冬に赤い実(液果)をつけます。植えている家に吉事があると花開くという伝説により、吉祥草といわれるそうで、縁起の良い花といわれます。庭にナンテン南天=難転)、吉祥草、オモト(万年青)を植えておくと一年中いいことだらけですね。

 センボリヤリ(千本槍)はキク科センボンヤリ属。春に咲く普通の開放花と秋につく閉鎖花との2型があるとのこと。秋の蕾は閉鎖花ですから開花することがなく、自家受粉によって突然という感じで種子が作られます。確実に種子がつくられますが、クローンですから、病気などの適応に弱いと言われます。上の写真は、秋にできた痩果(たんぽぽ果)です。大名行列の儀仗用の毛槍のようです。それがたくさん並んでいるようなのでセンボンヤリと言われるそうです。どのような大名の露払いをしたのでしょうか。そういう歴史に思いを馳せると山野草観察も暫し愉しくなりますね。

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(↑上の写真)左=ヤブソテツ、中=ヤマヤブソテツ、右=シケシダ

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(↑上の写真)左=ホシダ、中=オクマワラビ、右=オクマワラビの胞子嚢(ソーラス)

 ホシダ(穂羊歯)はヒメシダ科ヒメシダ属。東北南部以西に生える常緑性のシダ。葉の先端は槍の穂先のように尖るのが特徴です。イヌワラビにも葉先が穂状に尖っているようなものもあり、見違えやすいです。イヌワラビは2回羽状複葉で羽片の切れ込みが完全に羽軸まで達し、小羽片が独立しています。ホシダは、図鑑によって1回羽状とか単羽状とか2回羽状中裂とか表現されています。中裂というのは小羽片の切れ目が羽軸までの1/2までしか届いていないことの表現ということですから、ちょっと切れ込みのある感じです。イヌワラビとの違いは、小羽片の切れ込みをよく見れば、明白です。

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(↑上の写真)左=トラノオシダ、中=タチシノブ、右=オオバノイノモトソウ

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(↑上の写真)左=こもれびの丘の園路、中と右=日本庭園の池の周縁の風景