野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

百草園・・・令和2年12月25日

 百草園は京王線百草園駅下車徒歩10分、多摩丘陵上に在ります。冬至が過ぎて徐々に昼の長さが長くなり始めました。春が近づいてきたという感じですね。ここ百草園では春を知らせるロウバイとニホンスイセンが咲き始め、寒咲アヤメが満開となっていました。春の足音は、秘かに、しかし確実に近づいてきています。由緒ある園なので丘陵斜面にはシダが楽しめます。どうでしょうか。

f:id:noyama_ko:20201226120429j:plain
f:id:noyama_ko:20201226120441j:plain
f:id:noyama_ko:20201226120452j:plain

(↑上の写真)左=ソシンロウバイ、中=ニホンスイセン、右=寒咲アヤメ

 ロウバイ(蠟梅)はロウバイロウバイ属。APG牧野植物図鑑によると「江戸時代、後水尾天皇(1611~1629)の時代に朝鮮半島から渡来した落葉低木。和名は漢名の蝋梅の音読み、花色が蜜蝋に似ていることに基づく。古名カラウメは中国から来た梅の意」と、あります。湯浅浩史著「花おりおり」には「名の由来に、二説。一つは臘月、つまり陰暦12月に咲く、梅に似た花の臘梅。またはロウ状の梅からの蠟梅」という二説だそうです。いろいろな説がありますが、中国から渡来したので唐梅(トウバイ)が訛ってロウバイとなったという説もありますが、まやかしの気がしますが、どうですか。これからロウバイの季節を迎えますが、謂れをちょっと気に留めておきたいですね。なお、ソシンロウバイ(素心蝋梅)は、中心の芯まで黄色のものを言っています。従って、素心蝋梅は素芯蝋梅がいいのかなあと思います。芯まで化粧せず素で美しいのが素心蝋梅で、芯に薄く紅をさしたものがもともとのロウバイ(蝋梅)です。

f:id:noyama_ko:20201225233756j:plain
f:id:noyama_ko:20201225233806j:plain
f:id:noyama_ko:20201225233816j:plain

(↑上の写真)園内の風景 左=入り口からの階段、中=昔を留める松連庵、右=雪吊り、

f:id:noyama_ko:20201225234302j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234311j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234322j:plain

(↑上の写真)左=イヌワラビ、中=オオハナワラビ、右=ゼンマイ

f:id:noyama_ko:20201225234528j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234539j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234548j:plain

(↑上の写真)左=トラノオシダ、中=ハリガネワラビ、右=ホシダ

 トラノオシダ(虎の尾羊歯)はチャセンシダ科チャセンシダ属。日本各地の低地の山野や路傍の石垣などに生える常緑性シダ。葉の形に栄養葉と胞子葉の二型があり、胞子葉は初秋に葉裏に胞子をつけます。冬のこの時季の上の写真は、栄養葉で丸い感じの葉(羽片)ですが、胞子葉は、栄養葉とは異なる切れ込みのある葉(羽片)となります。よく見ると可愛らしいシダですが、小さいので見落としがちです。図鑑でも詳しい解説は載っていないようです。なお、このシダの形が虎の尾に似ているので虎の尾羊歯と名づけられたようですが、牧野植物図鑑では「虎の尾羊歯は、細長い葉の形を虎の尾に見立てたものであるが、実状にそぐわず良い名ではない」としています。

f:id:noyama_ko:20201225234746j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234801j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234813j:plain

(↑上の写真)左=ミゾシダ、中=ヤマイタチシダ、右=ヤブソテツ

 ミゾシダ(溝羊歯)はヒメシダ科ミゾシダ属。本州から九州に普通に広く分布するそうです。和名は「溝シダ」で溝の近くに生えるシダの意味。しかし、溝のような湿ったところばかりでなく、やや乾き気味のところにも生えるようです。夏緑性ですが、関東地方南部以南の暖地では冬枯れしないこともある、ということで百草園の上の写真は、この時季まだ枯れていません。羽片には柄がなく、従って中軸(葉軸)に直接羽片がついているのが特徴の一つです。葉身は、上部に向かって小さくなり(細くなり)、頂羽片(葉身の先端)はやゝ不明瞭、図鑑によっては先端部分の上部の羽片は中軸に流れると表現したものもあります。そのため先端部分の羽片がはっきり分かれてなく、お互いにつながっているように見えます。

f:id:noyama_ko:20201225234919j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234929j:plain
f:id:noyama_ko:20201225234943j:plain

(↑上の写真)左=名残のもみじ、中=見晴らし台よりスカイツリーを眺める、右=ドウダンツツジの名残の紅葉