野楽力研究所

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玉川上水(水車橋~百石橋の右岸・左岸)・・・令和2年12月31日

 自然観察納めを玉川上水でしました。この時季には常緑樹が目立つようになります。寒い中を頑張って生きているなあと常緑樹の生命の強さを感じます。どうでしょうか。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=玉川上水、中=サザンカ、右=ヤブツバキ

 玉川上水は昭和23年に太宰治が愛人と入水自殺を図り、情死した上水です。現在は上の写真のように赤土の壁面は垂直になっていて、下の方にわずかに水(それも処理水です)が流れています。当時は、多摩川の水が縁まで満水で、滔々と流れていたそうです。しかも壁面は壺の断面のようにまわるく抉れていて、一旦溺れると滑りやす赤土の這い上がれない構造になっていたということです。多摩地域では東京オリンピックの直前までこの上水を田の水として利用していました。そんな歴史を上水を覗く度に思い起こされます。大岡昇平の「武蔵野夫人」には国分寺恋ヶ窪の上水分水の場面が出てきます。

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(↑上の写真)左=アオキ、中=ヤツデ、右=イヌツゲ

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(↑上の写真)左=クマザサ、中=カクレミノ、右=ネズミモチ

 クマザサ(隈笹)はイネ科ササ属。普通、クマザサは如何にも熊が出そうなところに生えているので熊笹と書いてしまいますが、名前の由来は、冬に葉の縁に白い隈取ができ、それが歌舞伎役者の隈取りに似ているのでクマザサ(隈笹)と言われるようになったということで、漢字としては隈笹がいいようです。原産が京都盆地周辺だそうですが、若葉が綺麗なので庭園などの根締めに植えられたりして全国に広がって野生化したそうです。笹餅や料理の化粧笹、添え物などに使われたりしますが、Web「くまざさbing」によれば、葉に含まれる安息香酸が殺菌・防腐作用をもつからだそうです。ですから乾燥した葉を健康茶として喫したりしますが、有効性は個人差もあるようです。

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(↑上の写真)左=ワジュロ、中=ツルマサキ、右=ハリガネワラビ(夏緑性で気温が下がると枯れてきます。)

 ワジュロ(和棕櫚)はヤシ科シュロ属。トウジュロ(唐棕櫚)に対してワジュロといいますが、APG牧野植物図鑑では「中国原産と考えられ、九州にも自生すると考えられたことがあるが、確実な自生は知られていない」とのこと。ウィキペディアでは「中国湖北省からミャンマー北部まで分布する。日本では平安時代、中国大陸の亜熱帯地方から持ち込まれ、九州に定着した外来種である」としています。どうやら和棕櫚とは言っても日本自生のものではないらしいです。トウウジュロの葉は硬く小さめの扇形でピチッとした感じですが、ワジュロの葉は大きい扇形で葉先が垂れ下がります。この垂れ下がる(↑上の写真参照)ようすがだらしなく「日本的ではないなあ」「嫌だなあ」と思っていましたが、外来種のようなので今では納得しています。みなさんはどうですか。なお、ヒヨドリ玉川上水の和棕櫚の実を撒布するので、上水のあちこちにたくさん実生が芽生えています。このままでは自然とは言っても今に上水は和棕櫚の林になってしまうかもしれません。

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(↑上の写真)左と中=ヤマコウバシ、右=マルバウツギ 

 ヤマコウバシ(山香ばし)はクスノキ科クロモジ属。冬になっても葉が落ちず、翌春になって芽が出る頃落ちるので、冬の林の中でひときわ茶色の枯葉が目立ちます。芽が出るまで落ちないというので、受験生のお守りの葉となっているようですので、受験生のいらっしゃるご家庭では、この枯れ葉を(少し湿らせて)押し葉にしてお守りをつくって差し上げたらどうでしょうか。葉のつき方に進化の過程が見られる木です。輪生から対生を経て現在は互生になる過程のコクサギ型葉序になっているところが見られます。

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(↑上の写真)左=コナラと冬空、中=遊歩道、右=クヌギの冬姿と冬空