野楽力研究所

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高尾山(ケーブル往復利用)・・・令和6年5月16日

 午前中曇り、午後晴れとの予報でしたので出掛けました。ケーブル清滝駅セッコクが花をたくさんつけていました。ここでこのタイミングでたっぷり見ることが出来たのは初めてです。ウツギはこの時季満開です。サイハイランがこれほどあちらこちらで見ることが出来たのも驚きです。今日見られた自然の様子です。

(↑上の写真)左=ケーブル清滝駅、中と右=フタリシズカ二人静

(↑上の写真)いずれもケーブル清滝駅で見られるセッコク(石斛) 

 セッコク(石斛)はラン科セッコク属。『APG牧野植物図鑑』によると「岩手県以南、四国、九州、琉球列島および朝鮮半島、中国の暖帯に分布し、森林内の岩上や樹上に着生する常緑の多年草」とあります。Web『ヤサシイエンゲイ』によると「岩や樹木に根を張り付かせて自生する着生ランで、水分は空気中からとります。茎(バルブ)は太くて内部に水分を蓄えられるようになっています。主な開花期は初夏で、茎の先端当たりの節から花茎を出して1~3輪の花を咲かせます。花色は白もしくは淡い紅色で芳香があります。前年の茎の株元から新たに芽を出して、新たな茎になります。葉は1年目に先端から落ち始め、2年も経つとすべて落葉します。落葉しても棒状の茎は枯れずに残ります。毎年新しい芽を吹いて、茎の数は増えていくので大株のものは株元からわさわさと茎が茂った状態になります。(上掲写真はこのわさわさした感じが捉えられていると思います。)セッコクの名前は中国での呼び名「石斛(せきこく)」が訛ったものとされています」ということです(一部翻案)。

(↑上の写真)いずれもマルバウツギ(丸葉空木)

(↑上の写真)左=カラスビシャク(烏柄杓)、中=コバノタツナミ(小葉立浪)、右=オカタツナミソウ(丘立浪草) 

 カラスビシャク(烏柄杓)はサトイモ科ハンゲ属。『APG牧野植物図鑑』によると「日本各地、朝鮮半島、中国の温帯から暖帯の田畑に生える駆除困難な多年草」。名前の由来と言うほっそりした花の形が如何にもカラスが使いそうな柄杓の形をしています。ミズバショウなどと同じく仏焔苞と言われますが、苞に包まれて肉穂花序の花があり、花穂の下の方には雌花の集まりがつき、間隔をあけて上部には雄花の集まりがついているということです。カラスビシャクの漢名は半夏(ハンゲ)なので、別名をハンゲといわれたり、ハンゲの生える頃までに田植えを終わらないと収穫が減少するというので田植えの終える目安にもしていたようです。なお、ハンゲショウ半夏生ドクダミ科)とは別の草です。(各種参考書:Web参照)

(↑上の写真)左=浄心門、中=ナルコユリ(鳴子百合)、右=コゴメウツギ(小米空木)

(↑上の写真)左=薬王院山門、中=その山門の傍で咲いていたシャクナゲ(石楠花)、右=ハンショウヅル(半鐘蔓)

 シャクナゲ(石楠花)はツツジツツジ属。上掲写真はアマギシャクナゲ(天城石楠花)と思いますが、どうでしょうか。シャクナゲは江戸時代末期プラントハンターによって中国から西欧にもたらされ、そこで現在では5000種以上に品種改良され世界に流布したものといわれ、これらを総称してシャクナゲ(石楠花)と呼ばれているとのこと。シャクナゲという名称だけでは図鑑に載っていないようです。原田マハ著『美しき愚かものたちのタブロー』に次のようなエピソードが載っています。「(昭和28年5月、葉山の吉田邸を訪れた美術史家田代雄一に対して)薫風にかすかに揺れる石楠花に視線を移して、不意に吉田茂が言った。『わしはなあ、田代君。悔いているんだよ。松方(幸次郎)さんの葬式(昭和25年6月27日)に顔を出せなかったことを』と。吉田は対日講和のために訪れたダレスに6月21日以来会っていたのだ。そして6月25日北朝鮮が南進、朝鮮戦争勃発、6月27日トルーマン大統領が北朝鮮に宣戦布告したのだ(一部翻案)。こういう時代背景があったんですね。葉山の吉田茂邸の庭にこの時季シャクナゲが咲いていたということです。吉田茂邸は平成21年消失し、平成29年再建され公開されているとのことです。

(↑上の写真)いずれもサイハイラン(采配闌)、左=つぼみ、中=草姿、右=斑入りの葉

(↑上の写真)左=ササバギンラン(笹葉銀蘭)、中=高尾山本因坊山門、右=その山門前で見られるカンアオイ(寒葵)

(↑上の写真)左=ミズキ(水木)、中=トチノキ(栃ノ木)、右=キブシ(木倍子・木五倍子)の実

(↑上の写真)いずれも参考写真、ミズキが伐り口から赤い樹液を流している様子。

 ミズキ(水木)はミズキ科ミズキ属。『ウィキペディア』によると「北海道、本州、四国、九州と朝鮮半島、台湾、中国からヒマラヤのアジア南部、南千島にまで分布する落葉高木。和名「ミズキ」は漢字で「水木」と書き、早春に地中から多くの水を吸い上げて、枝を切ると大量の水のような樹液が流れ出ることに由来する。樹皮の上に樹液の赤い筋ができることがあり、樹液に糖分を含んでおり、空気中の天然酵母が樹液中で繁殖して、違うカビ類が飛び込んでくるために赤くなる。」とあります。実際にミズキを山梨県北杜市で平成30年2月5日に伐り、2mほど残しておいたところ幹の伐り口から早春4月17日に赤い樹液を多量に流していたので驚きました。まるで伐られたことを悲しみ血の涙を流しているようでした。上掲参考写真がそれです。貴重な経験ということで載せましたのでご覧ください。このことからミズキは特に春先の芽出しの時期には多量の水を吸い上げていることが分かります。

(↑上の写真)左=オオモミジ(大紅葉)の実、中=ジュウモンジシダ(十文字羊歯)、右=オオバノイノモトソウ(大葉の井之許草)

(↑上の写真)左=ヤブソテツ(藪蘇鉄)、中=ベニシダ(紅羊歯)の新葉、右=ハリガネワラビ(針金蕨)