野楽力研究所

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霧ケ峰八島ヶ原湿原(1)・・・令和2年8月20日

 霧ケ峰八島ヶ原湿原は、自然豊かで山野草が咲き乱れています。湿原一周は、ゆっくり写真を撮りながら2時間程度で歩けます。ハクサンフウロの可愛らしい花や紅色の濃いタチフウロは満開です。メタカラコウが観察できたのは、今回の収穫でした。2回に分けて紹介します。

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(↑上の写真)左=「あざみの歌」歌碑、中と右=ノハラアザミ

 「あざみの歌」は、横井弘作詞、八洲秀章作曲。昭和24年ラジオ歌謡として八洲秀章によって歌われ、翌年伊藤久男によってレコード化され、有名になりました。昭和24年は湯川秀樹ノーベル賞を受賞した年で、日本中の人々が「山には山の愁いあり、海には海の悲しみ・・・」を背負って、復興しはじめた年でしたね。今は若い人の観光地として賑わっていますが、横井弘は疎開経験のある下諏訪に住み、八島ヶ原湿原を訪れた時の感動を「あざみの歌」に託しました。「さくら貝の歌」を手掛けた八洲秀章に作曲され、全国に感動を与えました。年輩の方々には、それぞれに思い出があることでしょう。

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(↑上の写真)左と中=タムラソウ、右=ノアザミ

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(↑上の写真)左=イブキボウフウ、中=アキノキリンソウ、右=イワショウブ

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(↑上の写真)左=ハクサンフウロ、中と右=タチフウロ

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(↑上の写真)どれもメタカラコウ

 メタカラコウ(雌宝香)はキク科メタカラコウ属。本州、四国、九州の深山の湿地に生える多年草。深山の湿地に生えるということで、なかなかお目にかかれません。オタカラコウ(雄宝香)に似ていますがオタカラコウに比べ全体に小ぶり。花弁の数が1~3個と不規則なので、随分不十分な花と思っていましたが、これは、舌状花でしかも飾りではなく雌性花ということです。花の中心には、ヒマワリと同じように両性の管状花が集まっています。葉の形はフキの葉の先を尖らせたようでもあり、個体差もありますが、キツネの面の様でもあります。宝香(タカラコウ)とは宝のように大切なお香ということで、インドネシア原産の龍脳樹の樹脂を結晶化せた清涼感溢れるお香ということです。現在は、龍脳樹が採りつくされ、代用に樟脳が用いられているようです。メタカラコウは本家のタカラコウ(トウゲブキの別称)の根茎の香りが龍脳香に似ているということから我田引水しているようです。(各種Web参照)

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(↑上の写真)左=フシグロセンノウ、中=エゾカワラナデシコ、右=カワラナデシコ

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(↑上の写真)左=周遊路に広がる夏空、中=アキカラマツ、右=カワラマツバ

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(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ、中=ヨツバヒヨドリ、右=ヤマハハコ

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(↑上の写真)左=オミナエシ、中=ハンゴンソウ、右=ハンゴンソウの群落

 ハンゴンソウ(反魂草)はキク科キオン属の多年草。葉は互生ですが、葉の形に特徴があります。牧野植物図鑑の表現を借りると「柄があって羽状に3~7深裂し、裂片は狭長、側裂片は葉の先端に向かって狭角に着き、へりには鋭い鋸歯があり、先端は鋭くとがり、基部は葉柄に流れる」とあります。何のことか分かりずらいですが、写真を見ながら想像してください。漢の『海内十洲記』と晋の『博物誌』の伝説によると、聚窟洲にある神鳥山の返魂樹の根の中心部を釜で煮込み結晶させると反魂香ができ、焚かれた返魂香の香を病人が嗅ぐとすぐ病気が治り、三日の内に亡くなった人をその香でくすぶらせると生き返らせることができる、とあるそうです。講談社学術文庫『唐物語』小林保治訳の白楽天の「李夫人」の項に「反魂香ハ降ス夫人ノ魂。夫人ノ魂何レノ許ニカ在ル。香煙引キテ到ル焚香ノ処」とあります。煙の中に李夫人が蘇ったそうです。反魂樹を即ハンゴンソウに当てはめることも一考を要しますが、この話を知って観察するとありがたみが増すのではないでしょうか。反魂香で蘇らせたい人がいることは幸せですね。