野楽力研究所

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霧ケ峰八島ヶ原湿原(2)・・・令和2年8月20日

 霧ケ峰八島ヶ原湿原は標高1632m。尾瀬ヶ原(1400m)と並ぶ高層湿原です。尾瀬ヶ原ミズバショウで有名ですが、ここで有名なのはアザミでしょうか。ヤナギランが煌びやかさを競っています。ユウガギク、ノコンギクなどの野菊が咲き始め、木陰に秋の気配の風が吹きすぎます。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=「山小舎の灯」歌碑、中=ベニバナシモツケソウ、右=シモツケソウ

 昭和63年に建之された『山小舎の灯』の歌碑が、ここ八島ヶ原湿原にあります。作詞作曲は米山正夫で、近江俊郎が昭和22年に歌ってヒットした曲です。米山正夫水前寺清子の「365歩のマーチ」も作曲しています。ここに歌碑が設置されているわけをビジターセンターで訪ねると、あの部分は諏訪市の領分でビジターセンターは下諏訪町の領分なので分からないということでした。その後、諏訪市に問い合わせると、そこは私有地で所有者が勝手に設置したものだから、役所としては関知しないという情無い答えでしたが、その後返事をいただき、結局分からないということでした。「この地区は小和田牧野(こわだぼくや)という組合が活動していたが、今は解散し関係者は高齢化、または亡くなられて辿れなかった」ということでした。歌碑の傍にある山小舎らしきものは、キャンプ場跡の建物ということでした。然しながら、この歌は、昭和30年代、大学の山岳部やワンゲル部で白馬や穂高に憧れ、盛んに歌われた懐かしい歌ですね。登山ブームでした。穂高といえば井上靖の「氷壁」は、成就しない淡い恋愛感情を漂わせたナイロンロープに纏わる話でしたね。

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(↑上の写真)左=ユウガギク、中=ノコンギク、右=シラヤマギク

 いがりまさし著「日本の野菊」によると、「野菊は『キク属およびシオン属とその周辺』のもので、日本人の美観がつくりだした日本固有のカテゴリーに属するもの」と言うことです。明治39年の伊藤左千夫著「野菊の墓」に出てくる野菊は、その雰囲気からしヨメナ(嫁菜)ではないかと思います。昭和24年の石坂洋次郎著「山のかなたに」に出てくる野菊はユウガギク(柚香菊)ではないでしょうか。この場面では戦後の解放された明るい自信に満ちた女性(林タケ子)と軍隊帰りの委縮した男性(志村高一)が描写されています。「タケ子はピンクのワンピース姿、途中で摘んだらしい白い野菊を髪にさしていた。手にも一本もっており、のびのびした楽しそうな顔をしている。それの寄り添う志村は、見るからに窮屈そうな恰好をしていた。『ホラ、志村さん』と、タケ子は男の胸に片手を当てて、野菊で街の方をさしながら、『ああ、この花、志村さんも胸につけてよ』タケ子は志村にすれすれに寄り添って、背広の襟の穴に、長い茎をちぎった野菊をさしてやった」長い茎の白い花の野菊というのですから、ユウガギクが候補になるだろうと思いますがどうでしょうか。ユウガギク(柚香菊)はキク科シオン属。近畿地方以北の日当たりのよい山野に生える多年草。上部で四方に大きく枝を広げ、その先に花をつけますね。

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(↑上の写真)左=マルバダケブキ、中=ゴマナ、右=シュロソウ

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(↑上の写真)左=湿原風景、中と右=マツムシソウ

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(↑上の写真)左=シシウド、中=ノコギリソウ、右=クサレダ

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(↑上の写真)どれもヤナギラン

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(↑上の写真)左と中=イワアカバナ、右=コウゾリナ 

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(↑上の写真)左=ワレモコウ、中=イブキトラノオ、右=ヤマハッカ