野楽力研究所

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東京都薬用植物園・・・令和6年3月3日

 あまりにもいい天気に浮かれて、東京都薬用植物園に春の新しい花に出会えることを期待して出かけました。カワヅザクラサンシュユ、シダレウメ、紅梅が満開で迎えてくれました。草花ではセリバオウレンが満開、ヒロハアマナが咲き始め、フキノトウが芽を出していました。今日の様子です。

(↑上の写真)いずれもカワヅザクラ河津桜

(↑上の写真)左と中=シダレウメ(枝垂梅)、右=ヒボケ(緋木瓜

(↑上の写真)いずれもサンシュユ(山茱萸

 サンシュユ(山茱萸)はミズキ科サンシュユ属。中国原産で江戸時代享保年間(1720年頃)に薬用植物として渡来したそうです。「茱萸」とはグミのこと。グミとはドイツ語だそうです。秋に赤い実がなりますが、その実のことを漢字では「茱萸」と書きます。山茱萸は「やまのぐみ=やまぐみ」」ということになります。サンシュユは秋に赤い実をつけ、それがグミの実のようなので「山の茱萸=山茱萸」となったのでしょう。注意したいのは、サンシュユが日本に渡来したのは、享保年間ということですから、それ以前は、日本にはその木はなかったということです。稗搗節のサンシュウの木は、サンショウ(山椒)のことで、サンシュユ(山茱萸)のことではないということになります。

(↑上の写真)左と中=コショウノキ(胡椒の木)、右=ウグイスカグラ(鶯神楽

 コショウノキ(胡椒の木)は、ジンチョウゲジンチョウゲ属。『APG牧野植物図鑑』によると「関東地方以西から琉球列島の山地の林内に生える常緑小低木。高さ1m位。雌雄異株。和名<胡椒の木>は果実がコショウのように非常に辛いとされたため」とあります。Web『松江の花図鑑』によると「果実は液質の核果。直径8mmほどの球形で、6月に赤く熟す。有毒」ということですから、その辛さを胡椒と比べてみるわけにはいきませんね。ジンチョウゲ科なので花の香りは良いようですが、残念なことに、ここでは柵があって近寄れません。

(↑上の写真)左=コウバイ(紅梅)、中=オウバイ(黄梅)、右=ヒュウガミズキ(日向瑞樹)

(↑上の写真)いずれもセリバオウレン(芹葉黄蓮)

(↑上の写真)左と中=ヒロハアマナ(広葉甘菜)、右=ネモフィラ(日立臨海公園で有名)

 ヒロハアマナ(広葉甘菜)はユリ科アマナ属。『APG牧野植物図鑑』によると「関東地方以西の水田の間に残された日当たりのよい低湿の原野に生える多年草」とあります。アマナの仲間の花はとてもよく似ています。区別点は、広葉甘菜は、まず、葉の主脈に沿って白い帯があることと、2つ目は、花茎の先端の花の下の花茎に2本に線状の葉状苞をつけていることです。3枚つけているものはアマナです。和名は広い葉のアマナという意味。ヒロハアマナの葉はアマナに比べて幅が広いのでヒロハ(広葉)です。アマナといわれるわけは、葉が甘いのではなく、球根が甘く食用になることからアマナ(甘菜)と呼ばれているそうです。

(↑上の写真)左と中=セツブンソウ(節分草)、右=キバナセツブンソウ(黄花節分草)

(↑上の写真)左と中=フキノトウ(蕗の薹)、右=シュンラン(春蘭)

【↓温室にて】

(↑上の写真)左=温室外観、中と右=ムユウジュ(無憂樹)の花と新葉

 ムユウジュ(無憂樹)はマメ科サラカ属。インドから東南アジアにかけて広く分布している常緑小高木ということです。逸話では、釈迦族の王シュッドーダナ(浄飯王)に嫁いでいたマーヤー夫人は、お産のため実家に戻る途中、ルンビニーの花園で休憩をとりました。その時、紅く咲き誇るムユージュ(無憂樹)の花に心を惹かれ一枝を取ろうと右手を上げた時に夫人の脇から誕生したのがお釈迦さまといわれています。お釈迦さまは誕生と同時に七歩歩いて「天上天下、唯我独尊」と言われたそうで、何の不自由もなく、成長され、16歳で結婚、29歳で突然出家されることになります。出家するまでは何の憂いもなく成長されたのですからその間は「ムユウジュ(無憂樹)」のお陰だったことと思います。そんな由緒のある無憂樹の花と新葉が現在見られます。なお、無憂樹の花色は黄色から真紅まであるようですが、ここでは黄色でした。花は小さな筒状の花の集まりですが、この筒状の花は萼片(萼筒)が花びらのように変化したもので、花びら(花弁)は無いとのことです。萼筒から飛び出しているものは雄しべということです。一つの花を見てもいろいろなことが学べますね。(各種Webを参照、翻案しました。)

(↑上の写真)左=ブウゲンビリア、中=アンスリュウム、右=コエビソウ(小海老草)