野楽力研究所

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東京薬科大学薬用植物園・・・令和6年2月20日

 今季セツブンソウのそれらしい写真が撮れてなかったので、初夏を思わせる陽気にも誘われ東薬大の薬用植物園に行って来ました。花が終わっているかな?とも思われましたが、今日が満開だったようです。アズマイチゲコセリバオウレンも咲いており、いよいよ花の時期が到来したな、と実感させられました。これから、度々訪れたいです。お奨めの植物園です。東京ドームほどの広さの多摩丘陵斜面に野生植物500種、栽培植物1500種ほどが植栽されています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=薬用植物園入口、中=シダレウメと見本園、温室の眺め、右=観察路入口

(↑上の写真)いずれもセツブンソウ(節分草)

(↑上の写真)左=バイカオウレン、中と右=セリバオウレン 

 バイカオウレン(梅花黄蓮)はキンポウゲ科オウレン属。福島県以南から四国の山の半陰地に生える多年草。昨年朝ドラの「らんまん」で牧野富太郎翁が愛した花でした。その牧野富太郎記念館では昨年プランターに植えられたものが展示されていましたが、今年は、ここ東薬大植物園では地植えのものが観察できました。バイカオウレン(梅花黄蓮)という名は、根茎が中国原産の漢方薬オウレン(黄蓮)の根に似ており、花が梅の花に似ていることからつけられたということです。

(↑上の写真)左=アズマイチゲ、中と右=コセリバオウレン

 アズマイチゲ(東一華)はキンポウゲ科イチリンソウ属。この花が、見つかったのが東日本だったので「東一華」と呼ばれていますが、今では全国の山地や山麓の日当たりの良い場所に分布しています。花の花弁は萼が変化したもの、花の下に3出複葉の葉が3枚輪生。スプリング・エフェメラルの一種。

(↑上の写真)いずれもナニワズ(ナニワズはナニワヅ=難波津?)

 ナニワズジンチョウゲジンチョウゲ属。中部地方、東北地方、北陸地方南千島、サハリンの山地に生える雌雄異株の落葉小低木。冬の間に落葉樹の下で日光を受けて光合成を行い、早春に金色の花を咲かせ、夏には林内の中高木が葉を広げ、ナニワズのような小低木が生える林床には日光が届かなくなると落葉し、赤い実をつける。秋には、若芽を出し、林床に陽光が届く冬に備え、葉を広げ、栄養を蓄え早春を待つ、ことを繰り返している。なかなかの知恵者です。ナニワズの名を聞いた時にはその語源が知りたくなりました。しかし、牧野富太郎翁は「ナニワズは、オニシバリに対する長野県の方言で、長野県の人が北海道に移住して本種を見てオニシバリと見違え、ナニワズと呼んだことが始まりである」としています。多くの図鑑が、なぜ、ナニワズという方言ができたのか?は、解明せず右へ倣えをしています。そこに『植物和名の語源』を著した深津正氏が切り込んでいますので、耳を傾けることにします。「応仁天皇の頃来朝した百済王仁の詠んだ『難波津に咲くや此の花冬ごもり / 今を春べと咲くや此の花』は、その後、手習いの初歩の手本として用いられたため古くから人々に知られていた。この歌の「此の花」は、梅の花だが、雪深い北国の人々が、長い冬ごもりの生活から解放され、残雪の合間から鮮やかな黄金色に咲き始めたこの木の花の姿を目にした時、おそらく手習いで「難波津に」の歌を知るほどの人は、まず、これを念頭に浮かべ、春到来の感懐を見事に歌い上げたこの一首を正に実感として受け止めたのではなかろうか。そうしていつしか「難波津」がこの植物の呼び名となった。こういった語源の解釈はどんなものであろうか」と。皆さんは如何でしょうか。(山渓ハンディ図鑑「樹に咲く花」、山渓カラー名鑑「日本の樹木」、「牧野新日本植物図鑑」、深津正著「植物和名の語源」、Web:あきた森づくり活動サポートセンター、などを参照、引用、翻案させていただいた。)

(↑上の写真)いずれもオニシバリ(鬼縛り)

 オニシバリ(鬼縛り)はジンチョウゲジンチョウゲ属の夏に落葉する小低木。東北地方南部から九州まで分布する日本固有種。有毒植物で雌雄異株。ジンチョウゲ属なのでジンチョウゲやナニワズと同じような花が咲きます。花びらのように見えるものは萼が変化したもの、花の下の葉のように見えるものは総苞片が変化したもの。オニシバリ(鬼縛り)という名は、樹皮が強靭で、これで縛られると鬼も降参したということから。この樹皮は和紙の原料にもなります。別名ナツボウズ(夏坊主)と言われるのは、夏に落葉し、他の木々は青々した葉をつけているのに、この木は葉をつけていないことから。面白い命名のされ方の木ですね。

(↑上の写真)左=ウグイスカグラ(咲き始め)、中と右=モクレイシ

(↑上の写真)左と中=セントウソウ、右=ニホンズイセン

(↑上の写真)左と中=サルココッカ・コンフサ、右=ニオイカントウ