野楽力研究所

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東京多摩地区街中自然観察・・・令和5年11月17日

 11月も半ばを過ぎると服装もいよいよ冬物になります。この時期玄関前の落ち葉掃きをしながら思いだされるのが多摩出身、巽 聖歌(たつみせいか)作詞の「たき火」です。サザンカの花もこの季節です。街中では小さな木の紅葉が目を愉しませてくれています。今日の街中の自然の様子です。

(↑上の写真)左=多摩地区のまだ畑の残る街中の様子、中と右=サザンカ山茶花

 サザンカ山茶花)はツバキ科ツバキ属。「APG牧野植物図鑑」などによると「四国、九州、琉球列島の日当たりの良い山地に生える常緑小高木。花は、野生では白色だが園芸種には各種ある」ということです。湯浅浩史著「花おりおり」によると「サザンカの名は江戸時代以前には無い。元禄時代頃、中国でツバキを指す山茶花(さざんか)から転訛したもの。サザンカは日本の特産種」とあります。東野圭吾著「沈黙のパレード」より「(犯人新倉留美は)作業を始める前に花たちを眺めた。百日草はその名の通り、ずいぶんと長い間咲いてくれた。まだ満開のように見えるが、さすがに終わりかけだろう。薄いピンク色のサルビア・サクラプルコもまだ咲いている。こちらはまだ勢いがありそうだ。多年草だが、冬越しさせるには剪定して室内で育てる必要がある。今年はどうだろう、と留美は思った。もしかすると無理かもしれない。サルビアだけではない。ほかの花々も、誰も世話しなければ枯れていくだけだ。生垣のサザンカ、まだ開花していない。あと少しというところだが、果たしてゆっくりと鑑賞できる日が来るだろうか。蕾の状態を調べていると、生け垣の隙間から通りの様子が見えた。黒いワゴン車が道端に泊っている。(犯人留美の逮捕が間もないことの暗示の情景描写でした。留美の心境は如何に!)

(↑上の写真)左=ジュウガツザクラ(十月桜)、中=ヒイラギ(柊・疼木)、右=斑入りヒイラギ(柊・疼木)

  ヒイラギ(柊・疼木)はモクセイ科モクセイ属。「APG牧野植物図鑑」によると「関東地方以西の西日本から琉球列島および台湾の暖帯に分布する常緑小高木」とあります。漢字では「柊」「疼木」の二通りがあります。冬の木と書く「柊」と刺(トゲ)に刺さるとずきずき痛む、うずく(疼く)というので疼く木と書いて「疼木」。漢字が違いますね。どちらを書いてもいいようです。ヒイラギの鋭い刺は「鬼を退治する」と言われ、節分の日には、ヒイラギの枝に鬼の嫌がる臭いの強いイワシの頭を刺して戸口に飾っておくと、魔除けの効果がある、といわれています。しかし、この刺のある葉も老木になると枝先の葉は刺が無く全縁になっているものが見られます。老成して刺が取れたということでしょう。人間もそうあるよう・・・。

(↑上の写真)左=ボケ(木瓜)、中=ローズマリー、右=キバナコスモス(黄花秋桜

 芥川龍之介著「草枕」に「紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さえちらちら着ける。評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守るという人がある。この人が来世に生まれ変わるときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」と書かれているボケ木瓜)ですが、バラ科ボケ属。クサボケは日本の自生種で、ボケは中国から平安時代に渡来したものだそうです。普通は3月早春に咲くのですが、上掲写真のものは今頃咲き始めています。調べてみると「花の咲く時期は遅い秋から咲く寒ボケの系統から6月に入ってから咲く極遅咲き品種まである」ということです。写真のボケは名前からは想像できない気の早い寒ボケだったようです。そういうことがあるんですね。紛らわしい時代になりましたね。

(↑上の写真)左=アメジストセージ、中=タイワンホトトギス(台湾杜鵑草)、右=ジニア(百日草)、

(↑上の写真)左=ヒメツルソバ(姫蔓蕎麦)、中=ヒメジョオン(姫女苑)、右=シコンノボタン(紫紺野牡丹)

 シコンノボタン(紫紺野牡丹)は、ノボタン科シコンノボタン属の常緑低木。Web「garden story」によると「ノボタン科シコンノボタン属の常緑低木。冬に3℃以下になる地域では、越冬の工夫をしてください。開花期は7〜11月。1日で萎んでしまう一日花で一つひとつの花もちは悪いのですが、次々につぼみが上がって、初夏から晩秋まで長く咲き続けます。花色はピンク、紫。5弁花で花径7〜11cm。名前は花色が由来となっています。花屋さんでは矮化剤で小さく育てているので、購入した翌年は、草ではなく木なので、大きくなってしまいます」ということです(引用は翻案しています)。

(↑上の写真)左=コシロノセンダングサ(小白の栴檀草)、中=カヤツリグサ(蚊帳吊草)、右=イヌタデ(犬蓼)

(↑上の写真)左=ショウジョウソウ(猩猩草)、中=チチコグサモドキ(父子草擬)、右=ナンテン南天

(↑上の写真)左=ハナミズキ(花水木)、中=キンカン(金柑)、右=シマトネリコ(島梣、島秦皮)

 シマトネリコ(島梣、島秦皮)はモクセイ科トネリコ属。各種Webによると、日本では沖縄県、それに中国、台湾、フィリピンからインドに分布する常緑高木で雌雄異株だそうです。雄株を購入してしまうと花は咲かず、実もならないということです。雌株には上掲写真のような鞘状の実がつき、葉は艶やかな複葉で、新築住宅の玄関わきに植えられていたらほぼシマトネリコです。テレビで放送されたカブトムシが集まる木として有名になりました。カブトムシは夜行性ですが、この木にとりつくと昼行性になるそうですが、原因は判っていないということです。シマトネリコの名前の由来は、沖縄などの島のものなので「島」、トネリコは樹皮につくイボタロウムシが分泌する蝋物質(イボタロウ )から採れる白蝋をすべりの悪くなった戸の溝に塗ると滑りを良くなることから「戸に 塗る木(ト-ニ-ヌル-キ)」とされたのが、やがて転訛して「トネリコ」と発音されるようになった、という説が紹介されています。因みにトネリコは日本原産の落葉樹シマトネリコは常緑樹。

(↑上の写真)左=ブルーベリー、中=ドウダンツツジ灯台躑躅)、右=スズランノキ(鈴蘭の木)