野楽力研究所

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野川公園自然観察園・・・令和5年11月12日

 野川公園自然観察園ではアワコガネギク、ホトトギスがたくさん花を咲かせています。見事です。キチジョウソウは根ぎわに花を咲かせていますので、見落として通り過ぎてしまうかも知れません。咲き始めで結構きれいな花です。ヤクシソウはやゝ返り咲きの感じ、ノギク類は残ったものが咲いているというようです。冬になる前の花の見納めです。今日の様子です。

(↑上の写真)左=自然観察園入口(無料)、中と右=ホトトギス(杜鵑草)

(↑上の写真)左=アワコガネギク(泡黄金菊)、中=ヤクシソウ(薬師草)、右=ツワブキ(石蕗)

 ツワブキ(石蕗)はキク科ツワブキ属。本州、四国、九州に自生し、海岸付近に生える多年草。なぜ、石蕗と書いてツワブキと読ませるのでしょう。ずっと疑問でした。深津正著「植物和名の語源」によると「『古庭のところどころに石蕗(つは)の花』(虚子)の句があり、これに詠まれた石蕗は、日本にだけ通用する漢字名で、葉がフキに似た丈夫な草で、岩(や石)の間などによく育つから、石蕗の名がある。ツワブキは、『大言海』にあるように、「艶葉蕗(つやはぶき)がなまったものとみるのが正しいようである。しかし、わが国では昔からツワブキについて石蕗でなく橐吾(たくご)の漢名を用いている」と解説しています。Web「Forbes  Japan」によると「鷗外は夏目漱石から東京朝日新聞への小説掲載を頼まれた。これに対し、鷗外は「橐吾野人(たくごやじん)」の筆名でコラム『木精(こだま)』を2日間のみ掲載した。理由はその数カ月前、石本新六陸軍省次官に小説『ヰタ・セクスアリス』発禁処分の件で訓戒を受け、今回も、鷗外と署名するな、と警告されたからという。「橐吾」は「つわ」とも読み、ツワブキを意味する。鷗外の生誕地津和野はツワブキが群生し、「つわ・の=津和野」と名付けられたという」とあります。(引用はどれも一部翻案しています。)

(↑上の写真)左=キチジョウソウ(吉祥草)、中=ヨメナ(嫁菜)、右=ユウガギク(柚香菊)

(↑上の写真)左=シロバナアブラギク(白花油菊)、中=シュウメイギク秋明菊)、右=タイアザミ(大薊)

(↑上の写真)左=サネカズラ(実葛・真葛)、中=ハダカホウズキ(裸鬼灯)、右=フユイチゴ(冬苺)

 サネカズラ(実葛・真葛)はマツブサ科サネカズラ属。「APG牧野植物図鑑」によると「関東地方から琉球列島、および台湾、中国の暖帯の山地に生える常緑蔓性木本。雌雄異株。和名の実葛は秋の果実が美しいのでいう。また、枝の皮の粘液を水に浸出して整髪に用いたのでビナンカズラ美男葛)の一名がある。」とあります。Webで検索すると「観察結果の記録から雌雄同株」ではないかとするものもあります。和名の実葛についてはWeb:「薬草コム」によると「名前の由来は、実(さね)の目立つ蔓(つる=かずら)という意味から転訛して、サネカズラと呼ばれたという」説が紹介されています。有吉佐和子著「華岡清洲の妻」に「於継(青洲の母)は背中も肩もほとんど露に見せて、湯の中に髪を泳がせては幾度も幾度も洗っていた。ふのりと美男葛から出た粘液を混ぜた洗湯の中で、短い髪は不気味な展がりを見せ、揉み洗う於継の細い指に黒々と巻き付く。加恵は身動きもせずにそれを見ていた。それは死出の支度に似て凄愴な姿であった。青洲はああ云ったが、やはり於継は心の底で万一の場合の覚悟はしているのだ。粛然としながら加恵は、その万一が来た時の自分の立場というものを考えなければならなかった。親は子の実験に命を供したのに妻が生きながらえるならば、加恵はひとびとの於継を称賛する声をきいて生涯を終えることになるだろう。だが、加恵は於継の次の番を受け持っていた。自分も間もなく、このようにして髪を洗う日がくるのだ、と思うと、於継の後姿に嫁も道連れにしてやろうという意思がありありと読めて、加恵は慄然とした」と嫁姑の確執の怖ろしい場面が描かれています。

(↑上の写真)左=ガマズミ(莢蒾)、中=カラスウリ(烏瓜)、右=園内風景

(↑上の写真)左=ハンノキ(榛の木)、中=シオデ(牛尾菜)、右=オオオナモミ(大葈耳、大巻耳)

 オオオナモミ(大葈耳、大巻耳)はキク科オナモミ属。「日本帰化植物写真図鑑」によると「ユーラシアまたは北アメリカ原産とされ、世界中に広がっているやゝ粗大な一年生草本。昭和4年岡山県で記録され、その後、全国に広がった」ということです。マジックテープはこの草の実にヒントを得たと言われることが多いですが、実際は「ゴボウの実」だそうです。Web:「gakusha」によると「マジックテープを発明したのはスイスのエンジニアのジョルジュ・デ・メストラル。彼は犬の散歩中、犬の毛に絡まりついていた『ゴボウの実』を見て、マジックテープを思いつきました。このくっつく構造をうまく利用し、1951年に特許を出願し、生産を開始したものです。ちなみに「マジックテープ」という名称は、日本のメーカー「クラレ」が取得している商標なので、一般には同類の製品を呼ぶ場合は「面ファスナー」といいます」ということです。植物観察からすごい発見、発明がされています。そいう気持ちで植物観察するのも楽しいかも知れません。