野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

都立植物多様性センター・・・令和5年10月26日

 ここは東京都の各地域の植物がそこの環境と共に植栽されていて、居ながらにして東京の各地域の土壌や植物の特色を知ることが出来ます。入場無料で、神代植物公園に隣接していて好立地ですが、訪れる人が少なくじっくり自然の様子を観察することができます。今日の様子です。

(↑上の写真)左=西門、中=カリガネソウ(雁草)、右=ヒメシロネ(姫白根)

(↑上の写真)左=サクラタデ(桜蓼)、中と右=シロバナサクラタデ(白花桜蓼)

(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ(鵯花)、中と右=フジバカマ(藤袴)、右=フジバカマを示す葉

 フジバカマ藤袴)はキク科ヒヨドリバナ属。「APG牧野植物図鑑」によると「本州以南の川岸の土堤や湿った草地に生える多年草絶滅危惧種」。ヒヨドリバナに似ているの区別しにくいですが、フジバカマの花は淡紫色で、葉は3裂に深く切れ込んでいます。ただ、どの葉もということではなく、下の方の葉が一枚でも深く3裂していれば藤袴、全て葉に深裂が無ければ、花が淡紫色でも鵯花です。森鴎外著『雁』の中に藤袴が出てきます。「(お玉が)土曜日に上条から父の所へ帰ってみると、もう二百十日が近いからと言って、(父が)篠竹をたくさん買ってきて、女郎花やら藤袴やらに一本一本それを立て副えて縛っていた」→(小説の内容は伝わりませんが)藤袴が咲き始めるころの雰囲気を描写していますね。最近は東京に台風はあまり来ませんが、昔はよく来て、垣根を補強したり、草木に支えをしたり、小説と同じような様子でした。

(↑上の写真)左=カワラノギク(河原野菊)、中と右=ノコンギク(野紺菊)

(↑上の写真)左=セキヤノアキチョウジ(関屋の秋丁字)、中=テンニンソウ(天人草)、右=シモバシラ(霜柱)

 テンニンソウ(天人草)はシソ科テンニンソウ属。「ウィキペディア」によると「日本固有種。本州、四国、九州に分布し、落葉樹林内または山地の木陰に大群落をつくる。牧野富太郎は『天人草の意味は何によるものかわからない』としている」とあります。「APG牧野植物図鑑」によると「北海道から九州、および中国中部の山地の木陰に群生する多年草」とありますから、分布域も研究者によって異なるようです。和名天人草の名前の由来は、どの図鑑もわからないようです。ですが、「Web:テンニンソウ属 - FC2」には伝聞的個人的見解として「若い花穂についている幅広のうろこ状の苞葉が開花につれて、下のほうから一枚一枚剥がれ落ちる様子を、"天人が天花(てんげ)をまき散らす姿”に見立てた」とあります。苞葉の剥がれ落ちる様子を確認してからにしたいと思いますが、一理ありそうな見解に思えます。皆さんどうですか。天人草らしい花のタイプ写真は撮れませんでしたが、参考に上掲写真をご覧ください。

(↑上の写真)左=(赤花)ゲンノショウコ(現の証拠)、中=アキノノゲシ(秋の野芥子)、右=トネアザミ(利根薊)

(↑上の写真)左=シラヤマギク(白山菊)、中=レモンエゴマ檸檬胡麻)、右=ハッカ(薄荷)

(↑上の写真)左=オギ(荻)、中=ヌカキビ(糠黍)、右=チカラシバ(力芝) 

 オギ(荻)はイネ科ススキ属。「APG牧野植物図鑑」によると「日本各地、および朝鮮半島、中国北部の温帯から暖帯の原野の水辺等湿地に生える多年草。花時によく茎の下部が露出するのでススキと区別できる」とあります。「Webウィキペディア」によると「オギは地下茎で広がるために株立ちにならない。ススキと違い、オギには芒がない(ので穂は柔らかい)。一番湿地に生えるのはヨシで乾燥地に生えるのはススキ、中間地に生えるのがオギ」ということです。(一部翻案)

(↑上の写真)左=ナワシログミ(苗代茱萸)、中=シロヤマブキ(白山吹)、右=ヒトツバタゴ(一ッ葉田子)

 ナワシログミ(苗代茱萸)はグミ科グミ属。「APG牧野植物図鑑」によると「岩手県南部以西、四国、九州および朝鮮半島南部に分布する常緑低木。花は秋、花弁は無く、萼筒の先が4裂。果実は翌年の初夏に熟し、食べられる。和名は苗代の頃に実が熟すため」とあります。この時期にナワシロ(苗代)と聞くと季節外れの違和感がありますが、苗代の頃に実が食べられるというので苗代苺といわれるとのこと、名前の由来を聞くと「そうですか」ということになります。多分ナワシロイチゴ(苗代苺)の印象が強いからでしょう。苗代苺は晩春に咲いて、同じ季節の苗代の頃、実が熟すというわけです。共に実が熟す、つまり食べられる季節を表しているわけです。ナワシログミは他のグミ同様葉裏が銀白色鱗状毛が密集し、その上に褐色の鱗状毛が疎らについているのが特色です。また、花は、筒のようなものは花びらではなく萼ということで、花弁は無い、ということです。

(↑上の写真)左=センターを望む、中=ヤマコウバシ(山香ばし)、右=ガマズミ(莢蒾)

(↑上の写真)左=ノイバラ(野茨)、中=コムラサキシキブ(小紫式部)、右=園内風景