野楽力研究所

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多摩森林科学館・・・令和5年10月31日

 薄曇りの無風状態の中、秋が静かに深まっていく多摩森林科学館を訪れました。サラシナショウマ、ノハラアザミ、トネアザミ、アズマヤマアザミ、ノコンギク、シロヨメナ、シラヤマギクの残花が迎えてくれました。桜樹木園北半分は倒木処理、土留修繕、危険回避ということで閉鎖されています。当分ということで開放の見通し立っていないということです。第一、第二樹木園には全く草花はありませんでした。開放されている部分は結構草花がまだ残っていました。年輩者が散策するには丁度よい広さかと思います。今日の様子です。(JR高尾駅から北へ徒歩10分)

(↑上の写真)左=森林科学館正門、中=ヒヨドリバナ(鵯花)、右=コウヤボウキ(高野箒)

 コウヤボウキ(高野箒)キク科コウヤボウキ属。「牧野新日本植物図鑑」によると「関東以西の本州、四国、九州および中国中部に分布し、山地や丘陵のやゝ日当りのある乾いた疎林の下などに多い落葉小低木。秋にその年に出た枝の先ごとに白色の頭花を頂生する。一年枝は卵形で低鋸歯がある葉を互生し、二年枝はやゝ細長な小葉を節ごとに3~5枝ぐらいずつ束生し、いずれも3脈が目立つ。鱗片状に重なった総苞は長さ13~14mm」とあります。Web「万葉の植物」によると「高野山では昔、竹を植えることが禁じられていました。竹で箒を作り売り世俗に走ることは、修行の妨げになると考えられたようです。代わりにコウヤボウキの枝で箒を作ったのでしょう」とあります。Web「新・むかごの日記」には「古い言葉にある玉箒(たまはばき)は、一般にコウヤボウキを指すものとされています。万葉の昔、正月の初子(はつね)の日に、この玉箒で蚕室を掃く儀式がありました。大伴家持は「初春の初子(はつね)の今日の玉箒(たまばはき)手に取るからに揺らく玉の緒」と詠んでいます」とあります。コウヤボウキをひと花見ても草花に纏わる談義はつきませんね。(どの引用も翻案しています)

(↑上の写真)いずれもサラシナショウマ晒菜升麻)、左=群落、中=花穂のアップ、右=小花に花びらが見える

(↑上の写真)左=ノハラアザミ(野原薊)、中=トネアザミ(利根薊)、右=アズマヤマアザミ(東山薊)

 アズマヤマアザミ(東山薊)はキク科アザミ属。「APG牧野植物図鑑」によると「関東から中部地方の山地に生える多年草」とあります。東京近郊の山地にはたくさん見られます。葉は茎を抱かず、花は総苞(花の根元を囲んでいる部分)が細く花弁より長い。花柄が無く葉腋から数個が勝手気ままに飛び出している感じ。総苞は粘着せず、反り返りもない。

(↑上の写真)左=ノコンギク(野紺菊)、中=シロヨメナ(白嫁菜)、右=シラヤマギク(白山菊)

 ノコンギク(野紺菊)はキク科シオン属。「APG牧野植物図鑑」によると「北海道南西部以南の山野に多い多年草。茎はよく分枝し、葉とともにざらつく。多くの変種がある」とあります。多くの変種が存在するというので一般には図鑑で調べて見ても区別がつきにくいです。ノギク(野菊)と言ってはつまらないですから、紺色が濃かったらノコンギク、白っぽかったらシロヨメナとし、葉がざらつくようだったらノコンギク

(↑上の写真)左=園路風景、中=ヤクシソウ(薬師草)、右=キツネノマゴ(狐の孫)

(↑上の写真)左=ツリフネソウ(釣船草)、中=コセンダングサ(小栴檀草)、右=メナモミ(豨薟)

 メナモミ(豨薟)はキク科メナモミ属。牧野新日本植物図鑑によれば「北海道から九州屋久島まで、および朝鮮、中国の山野に多い多年草。花下に細長でへら状(註:棍棒状に見えるが?)の総苞片が5個あり、腺毛があって粘液を分泌し、これで衣服などにくっつき種子が散布される」という。棍棒状のものは総苞片ということですから、花を護っていたと思いますが、花が咲いても外側に大きく開いて残っているのはどういう意味があるのでしょうか。種子が出来た時に、人の衣服や動物の毛にひっついて、種子を拡散する働きをする。そのためこの棍棒状の総苞片は種子ができるまで無くならず残っているのだと思われます。花のつくりは、ヒマワリの花と同じく、周辺一列に舌状花を、中心部に筒状花を配置しています。両方ともに種子を作り、それが黒く熟し、棍棒状の総苞の粘液のお陰で物にひっつき運ばれるようです。この機会に、メナモミを見つけたら、観察を深めたいですね。

(↑上の写真)左=アキノキリンソウ(秋の麒麟草)、中=モミジガサ(紅葉傘)、右=アキノタムラソウ(秋の田村草)

(↑上の写真)左=アブラススキ(油薄)、中=ヤマウド(山独活)、右=イノコヅチ(猪の子槌)

(↑上の写真)左=園内風景、中=ヌルデ(白膠木)の紅葉、右=マンサク(満作)の黄葉