野楽力研究所

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日野市立南平丘陵公園・・・令和5年10月10日

 園内に入った途端、コバノガマズミとゴンズイの赤い実が眼の前に飛び込んできました。足もとでは、キバナアキギリが満開でした。管理棟の上の山道ではナツハゼが実っていました。斜面にはカシワバハグマが咲き始めたばかりの様子です。ひょうたん池は枯れていましたが、周囲にはミズヒキ、ギンミズヒキが絡み合って咲いていました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=公園入口、中=管理棟、右=コバノガマズミ(小葉莢蒾)の実

(↑上の写真)左=ゴンズイ(権萃)、中=ノブドウ(野葡萄)、右=ヤブマメ(薮豆)

 ゴンズイ(権萃)はミツバウツギ科ゴンズイ属。「APG牧野植物図鑑」によると「関東地方以西、四国、九州、琉球列島、および台湾、中国の暖帯の山野の林に生える落葉小高木」とあります。東北、北海道では見られないということです。そちら出身の方はどうですか? 和名ゴンズイの由来については触れているものは少ないようなので再掲してみます。ゴンズイは、山渓「樹に咲く花」に「材がもろくて役に立たないので、同じように役立たない魚ゴンズイ(権瑞)の名が付けられたという」説が紹介されています。中村浩著「植物名の由来」によると「歌人として知られた持統天皇の歌に『天上の五衰の花も散るとかや』という句の五衰(仏教の言葉で、欲界の天人が臨終のときにあらわす五種の哀相)がゴンズイの語源で、三島由紀夫の「豊饒の海」の第四篇「天人五衰」にある五衰です。しかし、ゴスイとは悲哀を表す忌名であるので、めでたい五瑞(ゴズイ)と実名忌避したと思われます。五の発音は「ゴ」または「ゴン」。つまり、ゴズイがゴンズイと変化したのではないか」と中村氏は述べています。なかなか説得力ありそうに思います。皆さんはどうですか?

(↑上の写真)左=キバナアキギリ(黄花秋桐)、中=キバナアキギリの群生、右=サラシナショウマ晒菜升麻

 サラシナショウマ晒菜升麻)はキンポウゲ科サラシナショウマ属。Web「ウィキペディア」によると「北海道・本州・四国・九州の範囲と、中国北部の低山帯から亜高山帯に分布する多年生草本で、山地の落葉樹林下や半日陰の草地に自生する。背丈は40 - 150 センチメートル (cm) で直立し、葉は互生し、長い柄の2 - 3回3出の羽状複葉。花は、夏から秋に多数の小さな白い花を20~30cm花穂に密集して咲かせる」とあります。草姿は大ぶりで、茎の高さも花穂の大きさも一際目立ちます。なお、和名サラシナショウマサラシナ(晒菜)は「若葉を煮て、水で晒し、味付けをして食べることによる(APG牧野植物図鑑)」とあります。お浸しにして食べたということです。ショウマ(升麻)は、根茎を升麻(ショウマ)といい日本薬局方に収録された生薬で、解熱、消化不良などに効果があるそうです。葉も根も有効利用されるというわけです。

(↑上の写真)左=ノガリヤス(野刈安)、中=チヂミザサ(縮み笹)、右=ミドリヒメワラビ(緑姫蕨)

 ガリヤス(野刈安)はイネ科ヤマアワ属。「APG牧野植物図鑑」によると「東アジアの温帯の各地林野の陽地に広く生える多年草。高さ1m位、細長く強硬。葉は表裏転倒し上面が灰緑色」とあります。この時季、イネ科のものとして、すごく白っぽくなった大きな花穂が目立ちます。葉は、葉の根元付近から表裏逆転していることが多いです。葉が硬いので鋸歯は結構痛いです。その点、ナキリスゲと間違えやすいですが、花や実のつくりが、ナキリスゲはカヤツリグサ科なのでイネ科のノガリヤスとは全く違います。和名野刈安は、Web「野山の草花・木々の花」によると「黄色染料に用いられるイネ科のカリヤス(刈安)に似ていることから」名づけられたということです。

(↑上の写真)左=カントウヨメナ(関東嫁菜)、中=クワクサ(桑草)、右=クワ(桑)幼木

 クワクサ(桑草)はクワ科クワクサ属。本州以南の道端、荒れ地などに生える一年草の在来種。クワ科には木本類と草本類の両方があります。和名桑草は、桑の葉のような様子をした草の意、ということで掲載写真右側に桑の幼木を葉の比較のため、掲載しました。桑の葉にそっくりですね。雌雄同株で雄花と雌花は混生するとのこと。葉腋に集まったポンポンのようなものが花です。花の観察は苦労しますが、雄花と雌花が10個ほど集まっているそうです。詳しくは、Web「三河の植物観察」に「雄花は花被が深く4裂し、雄しべ4個、葯は白色。花被片が開いて雄しべが飛び出すと花粉を出す。雌花も花被が4裂し、花被が閉じたまま花被片の隙間から花柱を外に伸ばす」とあります。この時季しか、花の観察ができません。ぜひ挑戦ください。

(↑上の写真)左=ミズヒキ(水引)とギンミズヒキ(銀水引)、中=ヒヨドリバナ(鵯花)、右=ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)

 ヨウシュヤマゴボウ洋種山牛蒡)はヤマゴボウヤマゴボウ属。「APG牧野植物図鑑」によると「北アメリカ原産。日本へは明治初年に渡来し、本州、四国、九州に広がり、空き地や造成地など至る所で野生化している多年草」という。高さは2m前後と高くなり、くきは赤く太くがっちりしている。葉は大きく20cm前後になり、秋に紅葉する。液果は黒く熟し、中から出る赤紫色の汁は、以前は学校で理科の時間に色染め液としてもてはやされましたが、アルカイドやサポニンなどの毒成分が含まれていることが分かり、今では使用されなくなり、見向きもされなくなりました。和名の洋種山牛蒡は北アメリカから来たヤマゴボウ(山牛蒡)という意味です。山牛蒡自体も日本の在来ではなく中国原産ということです。いつ渡来したかは不明。根が牛蒡のようですが、牛蒡ほど役立たないので山牛蒡と呼んだのではないかと推測されます。なお、湯浅浩史文「花おりおり」によると漬物にするヤマゴボウはキク科で毒もなく、ここでいうヤマゴボウとは全く違うものだそうです。

(↑上の写真)どれもナツハゼ(夏櫨)、右=樹姿

 ナツハゼ(夏櫨)はツツジ科スノキ属。「APG牧野植物図鑑」によると「北海道から九州まで、および朝鮮半島南部と中国の温帯から暖帯に分布し、日当りの良い山地に生える落葉低木。高さ1~2m。花は初夏、若枝の先に総状花序を一方に偏って下向きに咲く」とあります。実は酸味のある黒く熟す液果です。語源のハゼノキは、ウルシ科なのでその実から蠟を採ります。かぶれるので食べられませんが、ナツハゼはツツジ科なので大丈夫です。花は下向きに一列のように咲きますが、実は、重みで垂れ下がるため、ブドウのようなつき方で、花の時の様子からはちょっと想像がつきません。機会があったら花と実を実検してみてください。なお、実は「日本のブルーベリー」という人もいるそうです。和名ナツハゼは「ウィキペディア」によると「夏にハゼノキのような紅葉が見られることから名づけられた」とあります。

(↑上の写真)左=カシワバハグマ(柏葉白熊)、中=カツラ(桂)の落ち葉、右=ウマノミツバ(馬之三葉)