野楽力研究所

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日野市役所東崖線の植物観察・・・令和5年10月6日

 日野市役所は日野台地の東端に位置し、その崖線下は豊富な湧水と用水を利用した田畑が広がっていました。今は住宅街になっていますが、崖線の住宅に不向きなところは市の緑地保全管理地となって、自然が僅かですが、残されています。今日は、市役所東側の崖線を神明一丁目の交差点を起点に自然観察をしました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=日野台地東端に建つ日野市役所、中=観察を始めた神明一丁目、右=左側道路は崖線上を、右側は崖線下に下る道。

(↑上の写真)左=セイバンモロコシ(西蕃蜀黍)、中=ツリガネニンジン(釣鐘人参)、右=ヒメジソ(姫紫蘇)

 ヒメジソ(姫紫蘇)はシソ科イヌコウジュ属。「APG牧野植物図鑑」によると「アジアの温帯から暖帯に分布。日本各地の山野に生える1年草。茎は四角く高さ20~60cm」とあります。イヌコウジュととても良く似ていて区別がしにくいということです。はじめイヌコウジュと思っていました。イヌコウジュは、葉が丈夫な感じ(厚手)で、鋸歯が7つ以上、葉のもとが細くスマートであるのに対して、ヒメジソは、葉が柔らかく、鋸歯が6つ以下、葉のもとが横広、という点を区別点とし検討を加え、ヒメジソとしました。ご検討ください。

(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ(鵯花)、中=シラヤマギク(白山菊)、右=ヨモギ(蓬)

(↑上の写真)左=ススキ(芒・薄)、中=崖線の中に入る道、右=クワクサ(桑草)

 ススキ(芒・薄)はイネ科ススキ属。日本各地、朝鮮半島、中国の温帯から暖帯に分布する山地のいたるところに生える多年草。かつては「茅」(かや)と呼ばれ、農家で茅葺(かやぶき)屋根の材料に用いたり、家畜の餌として利用することが多かった。そのため集落の近くに定期的に刈り入れをするススキ草原があり、これを茅場(かやば)と呼んでいた(ウィキペディアなど参照)。澤田ふじ子「花暦」のうち<野ざらし>から「(忠七の許嫁のきよは、江戸に出府したまま行方不明となった忠七を訪ねることにした。きよは、きっとかれは、かれが愛した芭蕉奥の細道を辿っているに違いないと、奥の細道へと、ここ大垣から黙って旅立ち、行方不明となった。)一方、それとも知らず、ひとり奥の細道を辿って郷里に戻った忠七は、前方の芒野に転がるものを見てふと足を止めた。風雨にさらされ、白くなった野ざらし(骸骨)が一つ、大きな二つの眼窩をこちらに向けていたからであった。一本の芒が右の眼窩から空にのび、白い穂をこまかくゆらしていた。――野ざらしや 眼にすすき活け月見かな――忠七の胸裏に一句がひらめいた。その野ざらしが、ここで無頼の旅人に犯され、命を失ったきよのものだと、かれが気づくはずもない。――野ざらしとなるか わが身も 秋の暮れ――つづいてまた一句がうかびあがった。芒の穂の海が大きくうねった」

(↑上の写真)左=イヌタデ(犬蓼)、中=アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)、右=セイタカアワダチソウ(背高泡立草)

(↑上の写真)左=ヤマハギ(山萩)、中=ヒメジョオン(姫女苑)、右=ハナズオウ(花蘇芳)の実

(↑上の写真)左=崖線に残る畑、中=タマスダレ(玉簾)、右=イヌマキ(犬槇)

 タマスダレ(玉簾)はヒガンバナ科サフランモドキ属。「ウィキペディア」によると「アルゼンチン、ウルグアイパラグアイのラプラタ川流域及びチリ、ペルー原産。日本には明治時代初期の1870年頃渡来し、日本の風土にも良く適応し、人里周辺に半野生化した群落が見られることがある。日当たりさえよければ、乾燥地〜湿地まで生息できる。和名の由来は、白い小さな花を「玉」に、葉が集まっている様子を「簾」に例えたことによる」とあります。どの植物図鑑を開いても和名は、同じように 「白い小さな花を「玉」に、葉が集まっている様子を「簾」に例えたことによる」と書かれています。本当に実際を見て、そのように感じたのでしょうか? みなさんはどうですか。なお、「島根県のHP」によると「タマスダレは、全草が有毒ですが、鱗茎に特に毒性分が多い」とありますので、要注意です。

(↑上の写真)左=マルバルコウソウ(丸葉縷紅草、丸葉留紅草)、中=カタバミ(片喰)、右=氏神さま「神明社

(↑上の写真)左=イヌホオズキ(犬酸漿)、中=オオブタクサ(大豚草)、右=ダンドボロギク(段戸襤褸菊)

(↑上の写真)左=ハナトリカブト(花鳥兜)、中=オキザリス、右=ノブドウ(野葡萄)

 ハナトリカブト(花鳥兜)はキンポウゲ科トリカブト属。APG牧野植物図鑑では、ハナトリカブトトリカブトの別名、従ってハナトリカブトトリカブトのこととしています。日本大百科全書によると「ほかのトリカブト類に比べて花が大きく美しいためにこのハナトリカブトの名がある」としています。遺伝子解析で判ると思いますが、見た目での判断では今日の日野市のこのトリカブトは、ちょっと複雑な花をしているようでした。花が密集しているので見た瞬間ハナ(花)トリカブトと感じましたが、みなさんはどうですか? なお、トリカブトは江戸時代に渡来したものということです。トリカブト(鳥兜)の謂われは、花の形が舞楽伶人の冠に似ているからといわれます。

 ノブドウ(野葡萄)はブドウ科ノブドウ属。(APG牧野植物図鑑)によると「日本各地、朝鮮半島、中国の山野に生える蔓性の多年草」とあります。(Web:ウィキペディア)によると「落葉性つる性木本。冬に茎の地上部は枯れるが、基部は残って直径4cm にもなる。茎の節ごとに先が2つに分かれた巻きひげが伸び、他物に巻き付く。ノブドウは、ブドウやヤマブドウに似るが、別属であり、特に果実は葉と交互につくなどブドウ類とは異なる。果実は、緑色から熟すと光沢のある青色や紫色、白色などに色づく」とあります。色づいた果実は絵画的で、いかにも美味しそうですが、食べられないということです。ヤマブドウとは名前も姿も似ていますが、ノブドウの葉は裏面が緑色です。ヤマブドウの葉裏は白です。ブドウの仲間で葉裏が白いものは、果実が食べられるそうです。食べられるブドウは葉裏が白、と覚えておくと良いようです。

(↑上の写真)左=ヤブマオ(藪苧麻)、中=トネアザミ(利根薊)、右=アカネ(茜)

 アカネ(茜)はアカネ科アカネ属。本州、四国、九州および朝鮮半島から台湾、中国の暖帯に分布する山野に生えるつる性の多年草。「ウィキペディア」によると「葉は、茎に4枚輪生するが、そのうち2枚は托葉が変化したもので(偽輪生)、実際は対生である。見分けるには枝分かれを見ればよく、枝が出ている方向の葉とその向かいの葉が本当の葉で、それとは違う2枚が托葉の変化した葉である。茎の先端か上部葉腋から花序を出し、多数の淡い黄緑色や淡黄色の目立たないごく小さな花が咲く(上掲写真参照)」とあります。 髙樹のぶ子著「小説伊勢物語 業平」に「(藤原高子姫に袖にされて、傷心の業平は、兄のすすめで山科の庵に移り住んだ。)目を転ずれば、木の幹に絡みつく茜は薄緑の人目につかぬ小花をつけており、根こそ鮮やかな茜の色を生むものの、蔓は悲しきほどの目立たぬ様。」隠遁というべき今の業平の立場を象徴しているようにも見えます。