野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

八千穂高原自然園・・・令和5年8月18日

 ここ自然園は花木園と道路を挟んで南北に隣接しています。鹿の防護柵の設置が遅れたので山野草は一部しか保護されていません。ママコナなど随分柵外にあったのですが鹿の食害で全く姿を消しています。自然の状態では山野草は消滅です。鹿にとって花は栄養価の高い食べ物ですから、好んで食べてしまいます。写真は、少数を除いてほとんど保護柵内のものです。今日の様子です。

(↑上の写真)左=自然園入口管理棟、中と右=ミヤマセンキュウ(深山川芎)

 ミヤマセンキュウ(深山川芎)はセリ科ミヤマセンキュウ属。山渓カラー名鑑「日本の野草」に「中部地方以北、北海道の高山や深山に生える多年草。茎は中空で上部は枝分かれし、葉は2~3回3出羽状複葉。小葉や裂片は深く切れ込み、先が長く尖る。枝先に複散形花序を出し白色5弁の小さな花を多数開く」と、あります。セリ科の花はどれも似ていて区別がしにくいですが、ミヤマセンキュウの複葉の先端は先が長く尖っているので、先が尖っていたらまずミヤマセンキュウに間違いありません。(写真を拡大して確認ください)。なお、センキュウ(川芎)はAPG牧野植物図鑑によれば、「中国大陸の原産。古く日本に渡来し薬用植物として広く栽培されている多年草」と、いうことですが、移入された薬用植物が八千穂高原の山の中に自然生えているとは考えにくいですし、葉先の尖りが異なります。やはり、これはミヤマセンキュウ。

(↑上の写真)左=飛竜の滝、中=トリカブト(鳥兜)、右=オタカラコウ(雄宝香)

 オタカラコウ(雄宝香)はキク科メタカラコウ属。東アジアに分布し、日本では北海道北部、本州、四国、九州の低山帯から亜高山帯の谷川のほとりに生える多年草といいます。高さ1~2m。メタカラコウに大変似ていますが、花の舌状花の数がメタカラコウは1~3個ですが、オタカラコウは5~9個です。舌状花の数が1~3個のものはメタカラコウ、4が無くて5個以上のものはオタカラコウ。葉の形も違います。マルバダケブキに似た丸い感じの葉はオタカラコウ。2点の区別点が大事です。

(↑上の写真)左=ゴマナ(胡麻菜)、中=ツリフネソウ(釣船草)、右=キツリフネ(黄釣船)

 ゴマナ胡麻菜)はキク科シオン属。APG牧野植物図鑑によると「本州、北海道および南千島、サハリンに分布。山地の日当たりのよう草原に生える多年草」という。山渓カラー名鑑「日本の野草」によると「茎は、葉とともに細かい毛があってざらつく。葉は互生して短い柄があり、長楕円形で、縁に鋸歯があり、両面に短毛がある。初秋の頃、茎の先に多数の小枝を分け、小形の頭花を散房状に多数つける。頭花は径1,5cmほどで、舌状花は白く、筒状花は黄色で、ともに冠毛を持つ」という。Web「イー薬草ドットコム」には「名の由来は、江戸時代の草木図説(飯沼慾斎著)の図に、ゴマナを『葉が胡麻(ごま)に似る』という記述から 、胡麻菜(ごまな)の名になったという。また、菜は若芽、若葉が食べられることから、菜がついた」とあります。どの図鑑もこの説と同じで葉が胡麻の葉に似ているのでゴマナとなったとしています。

(↑上の写真)いずれもタムラソウ(丹群草・田村草)

 タムラソウ(丹群草・田村草)はキク科タムラソウ属。本州以南の山の草地に生える多年草という。アザミの様ですが、葉の鋸歯が棘でなく、葉を握ってもアザミのように痛くないので、ほっとします。以前アキノタムラソウの項で紹介しましたが「昔、集合した軍隊のことを「屯(タムラ)」や「党(タムラ)」と言っていたことから、花が集合(群生)して咲く様子を軍隊の「屯(タムラ)」や「党(タムラ)」に擬え、タムラソウというようになった、また、紫色の花をたくさんつけることから「多紫草(たむらさきそう)」とも呼ばれ、それが「タムラソウ」になった」という説が何となく了解されますが、どうでしょうか。上掲右の写真が群生(「屯(タムラ)」や「党(タムラ)」)している様子です。

(↑上の写真)左=ソバナ(蕎麦菜・岨菜・杣菜)、中=ハンゴンソウ(反魂草)、右=アキノキリンソウ(秋の麒麟草)

(↑上の写真)左=フシグロセンノウ(節黒仙翁)、中=ギボウシ(擬宝珠)、右=ヒヨドリバナ(鵯花)

 フシグロセンノウ(節黒仙翁)はナデシコ科マンテマ属で本州、四国、九州の山地の林下などに生える多年草。花が明るい橙色で花弁は厚く緑の草の中に咲いているとその鮮やかさに一際目を瞠ります。センノウ(仙翁)はナデシコ科マンテマ属で中国原産の観賞用として庭園に植えられる多年草京都府嵯峨の仙翁寺に代々伝わっているのでセンノウと名付けらたといわれます。フシグロセンノウはセンノウに似ていて節が黒いのでフシグロセンノウといわれるようになったということです。また、山渓カラー「山の花」Ⅰによると「フシグロセンノウは別名オウサカソウ(逢坂草)といって、これは近江(滋賀)と山城(京都)の境に聳えている逢坂山にたくさん生えているところからつけられたもので、フシグロセンノウという名よりも古くからあった呼び名である」ということです。仙翁寺のセンノウはお寺さんゆえ、中国原産のセンノウで、逢坂山に生えている別名オウサカソウは、後に和名フシグロセンノウとなったということのようです。

(↑上の写真)左=マルバダケブキ(丸葉岳蕗)、中=オミナエシ(女郎花)、右=トモエソウ(巴草)

(↑上の写真)いずれもマツムシソウ松虫草)、中=松虫草を訪花したクジャクチョウ

(↑上の写真)左=アカバナ(赤葉菜)、中=ワレモコウ(吾亦紅)、右=イヌゴマ(犬胡麻

 アカバ(赤葉菜・赤花)はアカバナ科アカバナ属。APG牧野植物図鑑によると「北海道南部、本州、四国、九州および中国と朝鮮半島など暖帯から温帯に分布し山野の水辺や湿地に生える多年草」と、あります。葉は対生し、下部では茎を抱いていて、花は淡紅白色から紅色、上掲写真では白色に近い。花弁は4枚で花弁の先は浅く2裂しています。和名赤葉菜は、赤花と書くこともありますが、実際は白色に近いことも多いので赤花をあてるのには疑問が残ります。秋が深まってくると葉や茎が赤みを帯びてきます。若菜はお浸しなどにして食べることもあるというので「赤葉菜」とすることの方が適しているように思いますが、皆様は如何ですか。

(↑上の写真)左=イタドリ(虎杖)、中=ノリウツギ(糊空木)、右=遊亀湖

 イタドリ(虎杖)はタデ科ソバカズラ属。APG牧野植物図鑑によると「北海道南部から奄美諸島、および朝鮮半島南部、台湾の温帯から暖帯に分布し、山野のいたるところに生える多年草」と、あります。田中修著「植物はすごい」に「茎をかじると甘酸っぱく、折るとポコンと音をたてます。だから「スカンポ」と呼ばれることもあります。この植物の葉を揉んですり傷につけると、痛みが取れると言われ、それが「イタドリ」の名前の由来です」と、あります。また、有川浩著(小説)「植物図鑑」に「イツキは水洗いしたイタドリをザルに上げ、一本取って皮を剥き始めた。根本から頭まで一息に剥ける。皮を剥き終わると、赤紫のまだらが入った少し不気味な色合いからは想像もできないほどきれいな黄緑色が現れた。「青リンゴみたいな色だね」「お、奇しくも至言。齧ってみな」差し出された茎を恐る恐る齧ってみる。すると――「えー。何これ!」「意外だろ」「意外どころの話じゃないよ!」齧った茎は甘酸っぱく、果物に近い味がした。それも――正にリンゴのようなみかんのような爽やかさだ。こんな味のする草があるなんて。「でも蓚酸が多いから、食べすぎると腹壊すんだよな。だから、やっぱりアク抜きをしっかりしないと料理には使えない」と、イツキは言う」。・・・今度出合ったら、齧ってみたくなりますね。