野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

八千穂高原花木園・・・令和5年8月18日

 標高2000mにある八千穂高原花木園は、夏の花から秋の花に移り変わる花の端境期で、いい花が見られませんでした。10日前、10日後がいいようです。それでもアキノキリンソウ、ノハラアザミ、マツムシソウ、マルバダケブキなどは咲きはじめ、見事な花をつけていました。シモツケシモツケソウは最後の一株が咲き残っていました。今日の花木園の様子です。

(↑上の写真)左=花木園入口、中=アキノキリンソウ(秋の麒麟草)、右=ノハラアザミ(野原薊)

 アキノキリンソウ(秋の麒麟草)はキク科アキノキリンソウ属で本州、四国、九州の日当たりのよい山野に生える多年草。黄金色の花が、夏のキリンソウに対して、秋に咲くのでアキノキリンソウと名付けられたといわれます。しかし、黄金色は同じでも、(夏の)キリンソウの花の付き方は平面的で、アキノキリンソウは花穂が伸びて塔のようです。キリンソウは、漢字では麒麟草と書きますが、そもそも黄輪草と書かれていたのではないかという説もあります。どう見ても、麒麟草から秋の麒麟草が思い出されたというよりも、花の付き方ではなく、黄金色の美しい花を黄輪草と言ったというのが自然ではないかと思います。そうすると夏に黄金色の目立つキリンソウにたいして、秋に黄金色の花を咲かせるものを秋の黄輪草と言った、ということになります。どうでしょうか。APG牧野植物図鑑では「別名はアワダチソウ(泡立草)で、花穂を酒の発酵した時の泡に見立てた。」としていますが、泡立つ様子はセイタカアワダチソウ(背高泡立草)には敵わないので、泡立草より黄輪草の方がいいのではないでしょうか。

(↑上の写真)左=オミナエシ(女郎花)、中=ヤブジラミ(藪虱)、右=ゴマナ(胡麻菜)

(↑上の写真)いずれもマツムシソウ松虫草)、左=花のアップ、中=クジャクチョウの訪花、右=草姿

(↑上の写真)左=キキョウ(桔梗)、中=ヤマハハコ(山母子)、右=コオニユリ(小鬼百合)

(↑上の写真)左=ギボウシ(擬宝珠)、中=ヤマオダマキ(山苧環)、右=園路風景

(↑上の写真)左=キツリフネ(黄釣船)、中と右=ヒメシロネ(姫白根)

 ヒメシロネ(姫白根)はシソ科シロネ属。APG牧野植物図鑑によると「北海道から九州まで、および朝鮮半島中国東北部、東シベリアの温帯に分布し、山野の湿地に生える多年草。葉は対生し、長楕円状披針形で長さ4~8cm、幅5~15mm、先は鋭く尖り、縁に鋭い鋸歯がある。葉の腋に小形で白色の唇形花をつける」と、あります。が、シロネよりも葉の形状は細長く鋸歯はあるものの、その形はすっきりしています。シロネもヒメシロネもその名の通り、根は白いそうですが、なかなか確かめられません。シロネよりも草姿が小形なので姫白根といわれるとのことです。

(↑上の写真)左=クガイソウ(九階草・残花)、中と右=マルバダケブキ(丸葉岳蕗)

(↑上の写真)左と中=ハンゴンソウ(反魂草)、右=コウゾリナ(顔剃菜)

 ハンゴンソウ(反魂草)はキク科ノボロギク属(以前はキオン属)。東アジアの温帯に分布し、日本では本州中部以北、北海道までの山地の草原や林の縁に生える多年草ということです。花はキオンに似ていますが、葉の形が違います。キオンは、葉は単葉で互生。ハンゴンソウは羽状に3~7深裂し、互生で、萎れるとお化けの手のように見えます。中村浩著「植物名の由来」などによると、反魂とは死者の魂をよび返すという意味で、返魂とも書かれるということです。昔、漢の武帝が、李夫人の他界を嘆き悲しみ、反魂草を煮詰めて反魂香をつくり焚いたところ、真っすぐに上がった煙の中に愛しい李夫人の面影が現れたということです。それから反魂香を焚くとその煙の中に死者の面影を見ることができると言い伝えられるようになったということです。日本にも古くから伝えられていたようで源氏物語瀬戸内寂聴訳、巻八)にも(大君と中の君姉妹が、亡くなった父宮に会いたいと思って)「昔、唐にあった、亡き人の魂を呼び戻すという反魂香を何とかして手に入れたいものと、お思いになります。」という行があります。

(↑上の写真)左と中=シモツケソウ(下野草・残花)、右=シモツケ(下野・残花)

(↑上の写真)左=ツリガネニンジン(釣鐘人参)、中=ハクサンフウロ(白山風露)、右=園内風景