野楽力研究所

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麦草峠野草園・・・令和5年7月28日

 国道299号線(メルヘン街道)の蓼科高原八千穂高原を結ぶ峠が麦草峠です。そこの「麦草ヒュッテ」が世話をし保護している野草園です。少し離れたところに白駒池がありますがその周辺では山野草の花は余り見られませんので、ここの野草園で山野草を堪能していただきたいです。峠の蓼科高原側にある市営の駐車場(無料)から徒歩10分くらいです。この駐車場は満杯の時が多く、その時は、峠の八千穂高原側の有料駐車場に止め、そこからも徒歩10分ほどです。今日の麦草峠野草園の様子です。

(↑上の写真)左=麦草峠2,127mの標識、中=野草園入口、右=麦草ヒュッテ

(↑上の写真)左と中=テガタチドリ(手形千鳥)、右=ハクサンフウロ(白山風露)

 テガタチドリ(手形千鳥)はラン科テガタチドリ属。「APG牧野植物図鑑によると「アジア、ヨーロッパの寒帯から温帯に広く分布し、日本では本州の兵庫県以北、北海道の高山の草地に生える多年草。高さ30~50cm。花は夏、多数が茎の先に密集して開く。花径は1cmに満たない。和名の手形千鳥は、地下に手の形をした白色の多肉根があることからつけられた」ということです。花は一見、ブッドレア(フサウツギ)の花を縦にしたような花姿(上掲中の写真)なので園芸種が迷い込んだのかと思ったほど見事な花でした。テガタ(手形)というので葉の形か花の形が手形に似ているのかと思いましたが根の形というのには驚きました。掘り返すわけにいかず「そうですか」と言うほかありません。千鳥は花の姿を千鳥に見立てたということです。千鳥が一斉に群れ飛ぶ感じがします。

(↑上の写真)左=カニコウモリ(蟹蝙蝠)、中=ノアザミ(野薊)、右=バイケイソウ(梅蕙草)

 バイケイソウ(梅蕙草)はシュロソウ科シュロソウ属。「APG牧野植物図鑑」によると「日本各地、朝鮮半島などの丘陵帯林内の湿ったところに生える有毒の多年草。和名は花が白梅に似て、葉が蕙蘭に似ているから」ということです。矢野亮監修「日本の野草」夏編では、分布は、本州中部地方以北となっています。「蕙蘭」を調べてみると紫蘭の古名ということです。確かに葉は紫蘭に似ているといわれれば似ています。仲間にコバイケイソウがありますが、どちらかというとコバイケイソウの方が白くふっくらしていて花茎の分枝も左右にはっきりしているように思われます。

(↑上の写真)左と中=キンバイソウ(金梅草)、右=ヤマオダマキ(山苧環)

(↑上の写真)左=ハナショウブ(花菖蒲)、中=チダケサシ(乳茸刺)、右=園内からのヒュッテの眺め

(↑上の写真)左=アキノキリンソウ(秋の麒麟草)、中=トンボソウ(蜻蛉草)、右=オトギリソウ(弟切草

 トンボソウ(蜻蛉草)はラン科ツレサギソウ属。「APG牧野植物図鑑」によると「北海道から九州、南千島朝鮮半島、中国の温帯から暖帯に分布し、山林の下に生える多年草で地上部は冬に枯れる」ということです。花の距が長く、その姿が、トンボが飛んでいるようだというので蜻蛉草と名づけられたと言います。草丈20cmくらいなので見落としがちですが、確かにトンボが群がって飛んでいるようにみえなくもありません。どうでしょうか。

(↑上の写真)左=ネバリノギラン(粘芒蘭)、中=ミヤマシシウド(深山猪独活)、右=ゴマナ(胡麻菜) 

 ネバリノギラン(粘芒蘭)はキンコウカ科ソクシンラン属。北海道から九州に生える多年草といわれます。Web「野山で出会った花」によると「山地~亜高山帯の草地、湿原に咲く多年草。長い茎の先に淡黄色の目立たない壺型の花を付けます。花は平開することはありません。花の名は花や茎を触るとネバネバし、花がノギラン(芒蘭)に似ているところから付きました。ノギランの花は完全に開く、ネバリノギランの花は開かないのが見分けるポイント」とあります。花に触ってみるとネバネバしています。咲いたところを見ようと探し回りますが見当たりません。開かない(平開しない)花ということです。

(↑上の写真)左と中=イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)、右=ヤマハハコ(山母子)

 イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)はシソ科イブキジャコウソウ属。「APG牧野植物図鑑」によると「北海道、本州、九州、及び朝鮮半島、サハリンに分布、主としては北東アジアの温帯に広がっている。山の日当たりのよい岩地、ときに平地や海岸の崖にも生える小低木。茎は地上を這い、よく分枝する。和名伊吹麝香草は滋賀県伊吹山に多く、全体に麝香の芳香があるのでいう。薬用、香料になる」とあります。毎回鼻を近づけるのですが、香りが嗅げたことがありません。みなさんは如何ですか。この夏、挑戦してはいかがですか。

(↑上の写真)左と中=ソバナ(蕎麦菜・岨菜・杣菜)、右=キンロバイ(金露梅)

 キンロバイ(金露梅)はバラ科キンロバイ属。「APG牧野植物図鑑」によると「本州の中部地方以北、北海道、朝鮮半島、中国の高山帯に生える高さ30~100cmの落葉小低木。和名は梅に似た花で黄金色だから金露梅」とあります。緑の奇数羽状複葉の中に鮮やかな黄色い花を咲かせており、印象的でした。草本のようですが、木本です。山渓「野草ハンドブック 夏の花」によると「中部地方の山岳では北アルプスにはなく、南アルプスには多い」ということです。ここで見られたのは奇遇でしょうか。

 ソバナ(蕎麦菜・岨菜・杣菜)はキキョウ科ツリガネニンジン属。「APG牧野植物図鑑」によると「本州、四国、九州および朝鮮半島から中国に分布し、山地の林内や斜面に生える多年草。和名は軟らかな若葉をソバにたとえ、また岨菜で山地の険しい斜面に生える菜という説もある」としています。深津正著「植物和名の語源」によれば「ソバナの語源を岨菜の意味に解する人が多い。つまり「そば(岨)」すなわち山の傾斜地に生える菜(食用とする草の意味)というわけである。しかし、この岨菜説にはどうも賛成しかねる。なぜならば、この植物にヤマソバという方言がある。よく知られているように、山村の住民は、昔からこの植物の若菜を茹でてお菜や汁の実にしたり、飯に混ぜたりしたりして食べるが、歯切れがよく、美味なのである。昔はこの菜を蒸してから、これを切り、かゆ(羹粥)につくったというから、まさにソバ(蕎麦)の食べ方と同じである。だからソバナの名は蕎麦菜と解すべきであろう。ソバナは一ヶ所で大量に採取できるという利点があり、単に副食としての用途だけでなく、飢饉のときなど、蕎麦の代用品として主食同様に用いられたものと思われる」とあります。さらに、杣人(そまびと)が好んで食べるから杣菜という、という説もあります。どうでしょうか? 

(↑上の写真)左=ウツボグサ(靭草)、中=シロバナウツボグサ(白花靭草)、右=シュロソウ(棕櫚草)

(↑上の写真)左=タカネナデシコ(高嶺撫子)、中=ワレモコウ(吾亦紅)、右=シモツケ(下野)