野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

乙女高原・・・令和5年7月26日

 訪れる人が少なく、お花畑の穴場です。地元のボランティアが保護活動を行っているので年々山野草が見事に花開いています。甲府駅の北方、駐車場は広いですが、ほとんど車は止まっていません。行きつくまでが大変ですが、挑戦のし甲斐はあります。今日の自然の様子です。

(↑上の写真)左=シモツケ(下野)、中と右=シモツケソウ(下野草)

(↑上の写真)左=(白花)シモツケソウ、中と右=キリンソウ(麒麟草)

(↑上の写真)左と中=クガイソウ(九階草)、右=ヤマホタルブクロ(山蛍袋)

(↑上の写真)左=シシウド(猪独活)、中=ミヤマシシウド(深山猪独活)、右=ノアザミ(野薊)

 シシウド(猪独活)は、セリ科シシウド属。山地のやや湿った日の当たる地に生える多年生の大型草本。野原の中でこれほど目立つ山野草はありません。見得を切っているようです。茎は2mになるものもあり、中空で丈夫。鉄骨でもそうですが、太い場合は、中空にした方が、強度が保てるというわけです。セリ科ですからウド(独活)と同じ「独活の大木」になります。でも役立たずというわけです。猪にでもやっておけ、というくらい役立たずなので「猪独活(シシウド)」と言われるようになったということです。シシウドのために言うと、根は漢方で独活 (どっかつ)といい、発汗・鎮痛薬になるようですし、合掌造りの五箇山では、戦国時代、シシウドの葉(サクと言われていた)を原料の一つにして塩硝を作ったということです。世の中に役立たずのものはありませんね。ミヤマシシウドについては、牧野と名の付く植物図鑑には載っていません。手元にある図鑑では山渓「カラー山の花」Ⅰにしか載っていませんでした。区別がしにくいということです。区別点は上掲写真のように茎が茶色のものを特にそういうのかも知れません?山渓の写真では茎は茶色です。

(↑上の写真)左と中=チダケサシ(乳茸刺)、右=カラマツソウ(唐松草)

(↑上の写真)左と中=ヒヨドリバナ(鵯花)、右=ヨツバヒヨドリ四葉鵯)

(↑上の写真)左=オミナエシ(女郎花)、中=オオバギボウシ(大葉擬宝珠)右=イチヤクソウ(一薬草)

 イチヤクソウ(一薬草)はツツジ科イチヤクソウ属。日本の山野の林の下に生える常緑の多年草。Web「日本薬学会HP」によると「6月頃に葉の間から高さ20 cm程の花柄を出し、白い花を下向きに開きます。葉は厚く艶があり、長い柄があり根生葉として根元に集まって付きます。根毛が発達せず、内生菌根と共生することで栄養を得る菌根植物であるため、この植物の移植栽培は難しいとされています。和名は1つの薬草で諸病に効くことから「一薬草」の字が当てられたとする説がありますが、定かではありません。全草を日陰干しにしたものが生薬ロクテイソウ(鹿蹄草)で、強心、血圧の降圧や抗菌などの作用があるとされています。イチヤクソウは東京都では絶滅危惧種に指定されています」ということです。「牧野富太郎植物記2 野の花2」には「山野の林の下に生える常緑の多年草で、冬でも葉は緑色をしている。数枚の葉が根際に集まってついていて、裏側は葉の柄とともに紫色を帯びている。初夏葉の間から20cmほどの花茎が出て、上の方に白い花を5~6個つける。花には短い柄がついていて、下向きに開きます。このため、この花は自家受粉で実をつけます。雌しべの花柱は長く、花弁の外に突き出していて上に曲がっている。雄しべは10本、どれも上向きに曲がっている。子房は丸型で、縦に5本の溝がついている。実が熟すると小さな種ができる。この種子は、芽を出すと根菌と呼ばれる菌類がまつわりつき、これに養われて育つ」とあります。

(↑上の写真)左と中=ウスユキソウ(薄雪草)、右=風景(奥の赤い屋根は今は廃業した「乙女高原グリーンロッジ」の屋根)

 ウスユキソウ(薄雪草)はキク科ウスユキソウ属で本州、四国、九州の低山から亜高山帯に生える多年草。アルプスのエーデルワイスはこの仲間で、厚ぼったいヘラのように見える花弁のようなものは花の蕾を護っていた総苞で、白い綿毛が生えています。その綿毛が、薄く白い雪が積もったように見えるので薄雪草と名づけられたといいます。高貴な白といわれるドイツのエーデルワイスはこの仲間です。上掲写真はかなり良く映っていますが、花のつくりについて「牧野新日本植物図鑑」に「夏から秋にかけて茎頂に表裏共に白色の綿毛が被さる包状葉を数個生じ、葉内に灰白色の小さな頭状花が多数集まって着く。総苞は白綿毛を被り、小花は、周辺の雌花は糸状、中央の雄花は管状、両性花と雌性花が異株である」と書かれていますが、何度読んでも理解できません。皆さんは如何でしょうか。

(↑上の写真)左と中=ヤマハハコ(山母子)、右=ノコギリソウ(鋸草)

(↑上の写真)左と中=キンバイソウ(金梅草)、右=コオニユリ(小鬼百合)

 キンバイソウ(金梅草)はキンポウゲ科キンバイソウ属。初めて見た時には「これが園芸種でなく山野草か」と思いました。明るくて大きく野原を大きな顔で支配しているように感じたものです。ですから「金盃草」とずうっと思っていました。ワイングラスを高々と掲げ、訪れる人に祝杯を掲げてくれているようです。いい名前だな、と思っていたところ「金梅草」、梅の花に似ているから「金盃草」でなく「金梅草」だというのです。ちょっと気勢をそがれた感じを受けました。それ以来、植物学会は「金盃草」に改名してくれないものかと希って、今日に至っています。この花の梅と同じ5枚(実は6,7枚のもあります。ですから梅の花に似ているとは必ずしも言えないようです。)の花びらのようなものは、萼片が花びらに変化したもので、本来の花びらは雄しべの周囲に立っている線形状のものだというのです。それが花をいっそう際立たせているとも言えます。なかなか工夫された花のつくりです。山の草地や林の縁などに生える多年草ということです。ぜひ、出会って観賞してください。

(↑上の写真)左と中=ヤナギラン(柳蘭)、右=グンナイフウロ(郡内風露)

(↑上の写真)左と中=コウリンカ(紅輪花)、右=クルマバナ(車花)

 クルマバナ(車花)はシソ科クルマバナ属。「北海道から九州までおよび朝鮮半島と中国に分布し、日当たりのよい山野に生える多年草」ということでよく見かけますが、上掲写真のように背が高く大きいものは高原でしか見られないようです。シソ科なので茎が四角いのが特徴で、ハッカと同じような様子をしています。和名「車花」は花の輪生する様子が車輪のようなので名づけられたということです。冬に咲く花だったら襟巻(マフラー)とかに名づけられたでしょう。花の一つ一つは、可愛らしいくちびるの形をした淡紅色の唇形花です。近づいて観察したいです。

(↑上の写真)左=ミツモトソウ(水元草・水源草)、中と右=カワラナデシコ(河原撫子)

(↑上の写真)左=ワレモコウ(吾亦紅)、中=イケマ(生馬)、右=マルバハギ(丸葉萩)

 イケマ(生馬・牛皮消)はキョウチクトウ科イケマ属。「牧野新日本植物図鑑」によれば「北海道、本州、九州、四国、中国に分布し、山地に生える蔓性の草で根は肥厚し地中に直下する。イケマはアイヌ語で『巨大なる根』という意味である。従来これを生馬の意味にとり、馬の薬といったのは誤りで、この根には毒がある。漢名は慣例として牛皮消を当てている」とあります。草姿はガガイモに似ています。葉が対生で花は集合花のように集まって咲きます。ガガイモの花はピンク色に色づいていますが、イケマは白色ですから、花の咲く時期には区別は容易です。

(↑上の写真)左=駐車場から保護地の眺め、中=保護地の園路、右=山野草の様子