野楽力研究所

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御岳渓谷遊歩道(軍畑駅→御嶽駅)・・・令和5年7月20日

 二か月たって、同じところを訪ねてみました。前回は、キショウブの黄色の花が目立っていましたが、今回はヤマユリが大きな白い花を、ノカンゾウが黄橙色の花を、咲かせていました。アキノタムラソウの紫の花、セリの白い集合花が見られました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=軍畑(いくさばた)駅、中=駅前の様子、右=遊歩道への案内板

(↑上の写真)左=ボタンヅル(牡丹蔓)、中=ヤイトバナ(灸花)・サオトメバナ(早乙女花)・ヘクソカズラ(屁糞葛)、右=ハエドクソウ(蝿毒草)

 ボタンヅル(牡丹蔓)はキンポウゲ科センニンソウ属。「ウィキペディア」によると「日本では、本州、四国、九州に分布し、山野の日当たりのよい草原や林縁などで、低木林や他の草などにからんで生育する。世界では、朝鮮、中国の暖帯から温帯にかけて分布する。落葉つる性半低木。有毒植物。十字型になる花の4枚の花弁に見えるものは萼片で、花弁はない。花後、花柱が羽毛状に長く伸びる」とあります。他の草木に絡まってその上に出て花を咲かせるので目立ちますが、ヤブカラシと同じように絡まれた方はたまりませんが、落葉つる性半低木というので冬の間は助かります。絡まるものの方が死んでしまっては自分の生存も危ぶまれるので、落葉させるということでしょう? Web『農研機構』によると「センニンソウ属の植物には配糖体ラヌンクリンが含まれており、葉をすりつぶしたりすることにより加水分解され、プロトアネモニンを生じ、これが毒性を示します」とあります。家畜も近づかない毒性のある有毒植物ということです。

(↑上の写真)左=ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙)、中=ノコンギク(野紺菊)、右=ヤブラン(藪蘭)

(↑上の写真)左と中=ヤマユリ(山百合)、右=ノウゼンカズラ凌霄花

 ヤマユリ(山百合)はユリ科ユリ属。『APG牧野植物図鑑』によると「中部地方以北の低山帯に生え、また人家に栽培される多年草」とあります。『科博附属自然教育園の見頃情報2019年7月18日号』によると「日本固有のユリ。観賞価値が高く、栽培されます。1862年イギリスで紹介されるとヨーロッパで熱狂的に受け入れられ、明治、大正時代には、外貨獲得に大いに貢献した」ということです。「日本固有のユリ」と紹介されていますが、奥本大三郎翻訳『ファーブル昆虫記』第3巻㊦訳注によると「ヤマユリは中国中南部浙江省雲南省広東省四川省)が原産と言われ、13世紀宋との貿易で博多に渡来し、日本での栽培が始まった。最初は貴人の食用として球根が食卓に供せられた。やがて花の美しさから園芸種として人気が高まり、生産地に因んでハカタユリと呼ばれるようになった。江戸時代後半になると園芸趣味が武家から庶民へ広がり、百品種以上が栽培されるようになった。1862年ロンドンのフラワーショウにハカタユリが出品されて人気を博し、それをきっかけにヨーロッパへの輸出が始まった」とあります。中国中南部が原産地であるように紹介されています。科博附属自然教育園の「日本固有のユリ」か、奥本大三郎氏の「中国中南部が原産地」か、どうでしょうか。(→その後検討してみました。ヤマユリは科博附属自然教育園の「見頃情報」の日本固有種というのがよさそうです。奥本大三郎氏翻訳「ファーブル昆虫記」110頁の脚注に説明があり、本格的には146頁の訳注に説明があります。奥本氏は仏文学者、翻訳家で昆虫は翻訳を通して詳しいですが・・・。)

(↑上の写真)左=ヤブミョウガ(藪茗荷)、中=ミョウガ(茗荷)(葉)、右=寒山

 寒山(かんざんじ)は、もともとは600年代唐の時代の草庵から発祥し、現在は中国蘇州にある臨済宗の寺院。その寒山寺から寄贈された仏像を安置しているのがここ沢井の寒山寺。寒山寺に祀られる寒山、拾得(じっとく)の二人の先祖は仇敵の間柄であったが、豊干(ぶかん)禅師が二人を悟りに導き、肝胆相照らす間柄になったという。そのため、二人は非僧非俗の風狂の徒だったにも拘らず、仏教の哲理に深く通じ、寒山文殊菩薩、拾得は普賢菩薩の再来と呼ばれるようになり中国では「寒山拾得」を「和合二仙」または「和合二聖」と呼ばれ、豊干と合わせて「三聖」と呼ばれてもいる、ということです。

(↑上の写真)左と中=ノカンゾウ(野萱草)、右=渓谷の流れ

(↑上の写真)左と中=アキノタムラソウ(秋の田村草)、右=セリ(芹)

(↑上の写真)左=チダケサシ(乳茸刺)、中=キンミズヒキ(金水引)、右=ミゾソバ(溝蕎麦)

(↑上の写真)左=クサギ(臭木)(蕾)、中=シュウカイドウ(秋海棠)、右=遊歩道

(↑上の写真)左=ホシダ(穂羊歯)、中=ミツデウラボシ(三手裏星)、右=マメヅタ(豆蔦)

 ミツデウラボシ(三手裏星)はウラボシ科ミツデウラボシ属。シダ植物。或るWebでは「三出裏星」と表記していますが、牧野新日本植物図鑑では「三手裏星」と表記されているのでこちらを採用しました。その『牧野新日本植物図鑑』によると「低山地の岩上、道端などの日当たりのよいところに生える常緑性多年生草本。葉身は発育の良いものは3裂片に分れ、発育の悪いものは単葉。胞子嚢群は縁よりも中脈にやゝ近く並ぶ」とあります。上掲写真でも、よく見ると、単葉は今から左右の手を伸ばす準備をしています。鳥でも育ちの悪い幼鳥は後から育っていくのと似ています。また、胞子嚢(胞子の集まった袋)は裏側に付きますが、表側にその痕跡がでっぱって見えています。その列が中軸(葉の中心線)近くに並んでいるのが分かります。分布は『ウィキペディア』によると「日本では北海道南西部から琉球列島にかけて分布し、国外では朝鮮南部、中国、台湾、フィリピンに分布している」とあります。