野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

東京多摩地区街中自然観察・・・令和5年6月15・16日

 季節柄、自然の中では花が少なくなりましたので、雨の合間を縫って、手近な街中の花を観賞に行きました。アジサイは各家庭でそれぞれ自慢の花を咲かせていました。シモツケムラサキシキブなど山の自然の中で見られるような花も咲いていました。今日の街中の自然の様子です。

(↑上の写真)左=ヤマボウシ(山法師)、中=ムラサキシキブ紫式部)、右=ナツツバキ(夏椿)

 ナツツバキ(夏椿)はツバキ科ナツツバキ属。別名シャラノキ(沙羅ノ木)。「APG牧野植物図鑑」によると「宮城県以南、四国、九州の山中に生え、又寺院の庭に植栽する落葉高木。花弁の縁に鋸歯がある(上掲写真でよく分かります)。和名は夏にツバキのような花を開くために言う。別名はインド産のフタバガキ科のサラソウジュ(沙羅樹)と間違ったことに基づく。」とあります。澤田ふじ子著『天涯の花』に夏椿が出てきます。「(盲になった未生流宗家未生斎一甫が「挿花百練」の序文をなぞっている時、お葉の声がした)「父上さま、一瓶を床に置きまする」長廊下に足音が響き、葉の声が一甫をわれに返らせた。沙羅<ナツツバキ>の花の匂いが、ふと鼻についた。「おお、花活けをすませたか。そなたにしたためてもらいたいものがある。筆をとってくれまいか」一甫はすかさず葉にいいつけた」と。

(↑上の写真)左=アメリノウゼンカズラ(亜米利加凌霄花)、中=スモークツリー、右=ナンテン南天

 アメリノウゼンカズラ(亜米利加凌霄花)はノウゼンカズラノウゼンカズラ属。北米が原産地で日本には大正時代に渡来したといわれます。花筒が長い割合に、花の径が小さいので、コノウゼンカズラと呼ばれ、ケンタッキー州の州花となっているそうです。ノウゼンカズラの意味ですが、深津正著『植物和名の語源』に「凌霄花の霄は空の意味で、蔓が木にまといつき、天空を凌ぐほど高く登るので、この名前がついたものという」とあります。なお、ノウゼンカズラの方は中国から平安時代には渡来していて日本人の生活に馴染んでいるもののようです。田舎に行くと夏の暑さを表現してるようなノウゼンカズラの蔓に出会い、一見、「その雰囲気から、何でここに西洋のものが」と言いたくなりますが、古くから日本に馴染んでいるものなんですね。

(↑上の写真)左=キンシバイ(金糸梅)、中=ビヨウヤナギ(未央柳)、右=ヒオウギズイセン(檜扇水仙

(↑上の写真)左=シモツケ(下野)、中=エゴノキ(実)、右=アベリア(トキワツクバネウツギ=常盤衝羽根空木)

(↑上の写真)いずれもアジサイ(紫陽花)

(↑上の写真)いずれもガクアジサイ(額紫陽花)

(↑上の写真)左=ヤエドクダミ(八重毒痛み)、中=ハキダメギク(掃溜菊)、右=コオニタビラコ(小鬼田平子)

(↑上の写真)左=ユウゲショウ(夕化粧)、中=マツバギク(松葉菊)、右=ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)

(↑上の写真)左=ムラサキカタバミ(紫片喰)、中=イヌタデ(犬蓼)、右=ツユクサ(露草)

(↑上の写真)左=ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)、中=メマツヨイグサ(雌待宵草)、右=ウラジロチチコグサモドキ(裏白父子草擬き)

(↑上の写真)左=郊外の新築住宅と農地、中=カンナ、右=キキョウ(桔梗)

(↑上の写真)左=チェリーセージホットリップス、中=チェリーセージピンク、右=オルラヤ

(↑上の写真)左=ウキツリボク、中=ナツトウダイ(夏灯台)、右=ハルシャギク(波斯菊)

 ハルシャギク(波斯菊)はキク科ハルシャギク属の一年草。明治時代に日本に来たそうですが、昭和35年以降野生化が顕著になったといわれます。舌状花の基部が濃赤褐色でその文様が遠目に車のように見えたものですから春車菊と覚えていたのですが、波斯菊だそうです。つまりペルシャの菊という意味です。花の鮮やかさからそういう感じを受けますが、ペルシャにはこの花は無く、北アメリカ原産ということです。この文様を蛇の目傘の蛇の目と見て、別名ジャノメソウと言われるそうです。これから10月にかけて咲きますので、皆さんも自分なりの印象を持つのがいいかと思います。

(↑上の写真)左=ヤブカンゾウ(藪萱草)、中=フイリテイカカズラ(斑入定家葛)、右=シロタエギク(白妙菊)

(↑上の写真)左=オウシュウマンネングサ(欧州万年草)、中=ツタバウンラン(蔦葉鄆闌)、右=オオエノコロ(実)(大狗尾)

(↑上の写真)左=ヒイロタケ(緋色茸)、中=カワラタケ(瓦茸)、右=ヒイロタケとカワラタケ

 カワラタケ(瓦茸)はタコウキン科。環紋(半円形の縁取り)が幾重にも重なった様子が瓦屋根の様子に似ているので瓦茸といわれるということで納得できます。瓦茸の傘の色は黒~濃青~褐色などさまざまありますが、色が違っても同じ瓦茸ということです。広葉樹林、針葉樹林を選ばず、どちらの林にも生育している木材腐朽菌。カワラタケからは抗がん剤が発見されているということです。(各種図鑑参照)