野楽力研究所

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日野市立南平丘陵公園・・・令和5年4月5日

 春がどんどん過ぎて青葉若葉の季節になりそうな陽気に草花たちも踊り始めたようです。二輪草がひょうたん池の周囲に広がっています。保護活動のたまものです。20年前は吊り橋の袂に数株があっただけですが、今年は園内に広く繁殖したようです。今年はムサシアブミが2株咲いています。ヤマルリソウが可愛らしい薄紫の花を咲かせています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=公園入口、中=新緑に囲まれ始めた園路、右=水が無くなり草が繁茂したひょうたん池

(↑上の写真)いずれもニリンソウ、右=吊り橋の下に繁茂したニリンソウ

(↑上の写真)左=タチツボスミレ、中=ツボスミレ、右=ビオラ・リビニアナ

 ツボスレ(坪菫)はスミレ科スミレ属。別名ニョイスミレ。ウィキペディアによると「和名としてはツボスミレとニョイスミレがある。ツボスミレは坪菫で、坪は庭の意である。つまり、庭に生えるスミレとの意で、この種に対する古くからの名である。ニョイスミレは如意菫で、こちらは葉の形が仏具の如意に似ることによる。ニョイスミレは牧野富太郎命名によるもの」とあります。牧野富太郎はツボスミレという音からの発想に何か不快感があったようです。現在、多くの文献でツボスミレ(坪菫)が使われているということです。夏目漱石著「草枕」に「(鏡が池へ来る)うららかな春の日を受けて、萌え出でた下草さえある。壺菫の淡き影が、ちらりちらりとその間に見える。日本の菫は眠っている感じである。『天来の奇想のように』、と形容した西人の句は到底あてはまるまい」と。漱石は「壺菫(坪菫)」を使って賞でているようです。

 ビオラ・リビニアナはスミレ科スミレ属。外来種なので一般の図鑑には載っていません。各種Webによると「ユーラシア大陸およびアフリカに分布し、ヨーロッパではもっとも普通のスミレ」ということです。本公園で初めて見掛ける珍しいスミレでした。写真を拡大してみると柱頭の先が2本でブラシ状になっていると思いましたが、柱頭の先ではなく側弁の基部ということです。側弁は2枚あるので各側弁の基部に一つブラシ状のものがついているというわけです。日本のスミレにはない特徴なので、今後はこのブラシ状の装飾に注目したいと思います。しかし、ヨーロッパでは雑草扱いだそうなので、本公園も気を付けないとこのスミレに席巻されてしまうかも知れません。保護活動の皆さんが外来種にどう対応されているでしょうか。

(↑上の写真)左と中=サルトリイバラ、右=ハナイカダ雄株

 サルトリイバラ(猿捕り茨)はサルトリイバラ科サルトリイバラ属。別名サンキライ(山帰来)。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「日本各地、及び台湾、朝鮮半島、中国に分布し、山野に生えて木質の蔓でよじ登る低木。疎らに刺がある。葉は丈夫な革質で光沢がある。雌雄異株。花は春から初夏、秋に赤色の果実を結ぶ。西日本では葉に餅を包むときに使い、根茎は薬用にする。和名猿捕り茨は刺があり猿が引っかかる意」とあります。別名サンキライ(山帰来)は「重い瘡毒(そうどく=かさぶた)を病んだ者を山に捨てたところ、山の中に生育するサルトリイバラの根(土茯苓=どぶくりょう)のお蔭で病気が全快、元気で山から帰って来たので、この名が起こった」という解説もあります。「この別名山帰来といわれるものは中国原産で、全体にサルトリイバラに似るが、とげはない。夏、白い小花を開く。中国・インドシナ・インドに分布。日本のサルトリイバラとは別種」(各種Web参照)ということです。

(↑上の写真)左と中=コバノガマズミ、右=ヤマツツジ

(↑上の写真)いずれもヤマルリソウ

  ヤマルリソウ(山瑠璃草)はムラサキ科ルリソウ属。山渓カラー名鑑「日本の野草」などによると「福島県以西の本州、四国、九州の山地の湿り気のあるところ生える多年草」とあります。いつもホタルカズラと間違えてしまいますが、ホタルカズラの花は一回り大きく、紫色がはっきりしていて、花弁の先が丸くなく角張っていて5弁を知らせる筋がはっきり見えるので、このことに気を付けておけば、見間違えることはありません。花は茎の先に総状花序をつけ、初めは先が巻いていますがのちには伸びてまっすぐになります。根生葉は平たくロゼット状に広がり、そこから八方に花茎が伸びています。

(↑上の写真)左と中=カキドオシ、右=ムラサキケマン

 カキドオシ(垣通し)はシソ科カキドオシ属。別名連銭草(れんせんそう)。ウィキペディアにおると「日本の北海道・本州・四国・九州に分布し、海外では朝鮮半島、中国、台湾、シベリア、アジアの温帯域に分布するつる性の多年草。原野の草地、道端、庭などにふつうに自生する。生育地は日当たりの良い適度に湿った土地を選ぶが、半日陰でも生育し、茎をよく伸ばす。開花期は春(4 - 5月ごろ)で、対生する葉腋から1つずつ花が出て1 - 2、3個並ぶ。和名カキドオシは漢字で「垣通し」、生け垣の下などで、隣接地から垣根を突き抜けるほど、勢いよく伸びてくる様子に由来する。春の若くてやわらかな茎葉と花は食用することができる。茎や葉を乾燥させたものは、お茶代わりに飲めば健康維持やダイエットに良いとされる。また丸い葉が並んで見えることから、連銭草(れんせんそう)という別名もある。」(翻案)とあります。

(↑上の写真)左と中=ムサシアブミ、右=キランソウ

 ムサシアブミ(武蔵鐙)はサトイモ科テンナンショウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「日本全土に分布する多年草」とありますが、牧野新日本植物図鑑の方では「関西から西の海に近い方の林中に生える多年生草本」とあります。さらに「球茎から直立短大の偽茎を出し、偽茎の上部に対生した2葉を出し、葉は3小葉に分れ、その小葉は平面に30cmにも大きく広がるものもある。5月頃2葉の間に短柄を一本直立させて1肉穂花序を出す。仏炎苞葉は特異の形状をし、鐙のようである。日本名「武蔵鐙(ムサシアブミ)」は、その仏焔苞葉の形を昔武蔵国で生産したアブミにたとえたもの(一部翻案)」ということです。花の形は奇妙ですが、鐙の形と言われれば納得できます。この仏焔苞葉の中にはミズバショウなどのサトイモ科と同じように棍棒状の肉穂(にくすい)がついています。

(↑上の写真)左と中=タネツケバナ、右=ハナイバナ

(上の写真)左=オニタビラコ、中=ヒメオドリコソウ、右=オオイヌノフグリ