ここ多摩森林科学園の桜保存林は8haの広さに全国の主要な桜の栽培品種や名木、天然記念物などの接ぎ木クローン約1800本が植えられているそうです。都心のソメイヨシノの花見はそろそろ終わりそうですが、ここでは同じ品種の桜の本数は少ないですが、品種が違うがゆえに、咲く時期が異なり、まだ暫く次々に開花していくようです。品種、名木の解説を読み乍ら、ゆっくり弁当持参で各種桜を堪能するのはどうでしょうか。今回はそのうちいくつかを紹介できると思います。今日の様子です。
(↑上の写真)左=多摩森林科学園の「森の科学館」、中と右=名木「はるか」
園内解説板によると「はるか」は多摩森林科学園の桜保存林にある「思川」の実生を1999年発芽させた原木。花粉親はサトザクラでマメザクラ・ヤマザクラ・エドヒガン・オオシマザクラ4種の関与が推定されている。2013年NHK大河ドラマ「八重の桜」に因み、福島県では八重桜を復興へのシンボルとしている。このため森林総研が育成した桜が福島県に寄贈され、大河ドラマ主演の綾瀬はるかさんによって「はるか」と名づけられた。といういわれがあるそうです。ところで、前回の自然観察「井の頭公園」の項で、染井吉野は何の交雑種であるかについて議論しましたが、当園の「ソメイヨシノ」園内解説板によると「エドヒガンとオオシマザクラの種間雑種の栽培品種」とあります。普通はエドヒガンとオオシマザクラの交雑種とさていますので、ウバヒガンが出て来た時に議論になるかも知れません。
(↑上の写真)どれも「近畿豆桜(キンキマメザクラ)」
(↑上の写真)いずれも「仙台枝垂れ(センダイシダレ)」
(↑上の写真)いずれも「御所御車返し(ゴショミクルマガエシ)」
(↑上の写真)いずれも「千原桜(チハラザクラ)」
(↑上の写真)いずれも「石廊崎の潮風桜(イロウザキノシオカゼザクラ)」
(↑上の写真)いずれも「ヨシノシダレ」
(↑上の写真)いずれも「サクラ保存林」の様子
(↑上の写真)左=バイモ、中=マルバコンロンソウ、右=セントウソウ
マルバコンロンソウ(丸葉崑崙草)はアブラナ科タネツケバナ属。APG牧野植物図鑑によると「本州、四国、九州の暖帯の山地の木陰などに生える越年草」とあります。ウィキペディアによると「国外では、済州島など韓国にも分布する。タネツケバナ属の種はすべて食べることができる。葉身は奇数羽状複葉になり、小葉は1-7個あり、葉の両面ともに毛が生える。」とあります。和名マルバコンロンソウ(丸葉崑崙草)のマルバ(丸葉)の意味は、コンロンソウ(崑崙草)に由来しています。コンロンソウ(崑崙草)は奇数羽状複葉で、小葉の先は尖っていて葉縁が大きくギザギザになっています。それに対してマルバコンロンソウ(丸葉崑崙草)は、小葉が全体に尖らず丸いという意味でマルバ(丸葉)といわれます。コンロンソウ(崑崙草)の名は「花の白さを崑崙山の雪に例えたものか」といわれています。
(↑上の写真)左と中=ヤマルリソウ、右=ニリンソウ
(↑上の写真)左=タチツボスミレ、中と右=ヒカゲスミレ(タカオスミレ)
ヒカゲスミレ(日陰菫)はスミレ科スミレ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「北海道、本州、四国、九州の山林の湿ったところに生える多年草」とあります。園内説明板によると「森の中の多年草。葉には毛が多く、白い開放花が咲く頃には小さいが、初夏には大きく広がる。春、葉の色が茶色になるものをタカオスミレと呼ぶことがある」ということです。菱山忠三郎著『高尾山 花と木の図鑑』によると「(タカオスミレは)小泉秀雄氏が高尾山で(最初に)発見し、1928年(昭和3年)中井猛之進博士によって発表され、現在はヒカゲスミレの一品種とされている」とのこと。Web:『高尾山マガジン』によると「(タカオスミレは)沢沿いの湿り気のある半日陰の林のふちなどを好んで咲いている。高尾山で最初に発見されたことから、その名が付けられた。全国にも分布しているが、高尾山で一番多く見られる。昭和3(1928)年にヒカゲスミレの変種として発表され、(タカオスミレは)花が咲く時期に葉の表面がこげ茶色をしているところが特徴である。ただし、花が終わると緑色の葉が出てくることでヒカゲスミレとの見分けはむずかしくなる」ということです。ここでは園内説明板に従いました。
(↑上の写真)左=ジロボウエンゴサク、中=ヤブレガサ、右=キランソウ
(↑上の写真)左=ジシバリ、中=オオジシバリ、右=ミミガタテンナンショウ
(↑上の写真)左=ネコノメソウ、中=ルイヨウボタン、右=トキワイカリソウ
ルイヨウボタン(類葉牡丹)はメギ科ルイヨウボタン属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「日本各地、およびサハリン、朝鮮半島、中国の温帯に分布する深山の林下に生える多年草」とあります。名前の由来は、漢字「類葉牡丹」の通り、葉が牡丹の葉に似ていることによります。花の6枚の花びらのように見えるものは萼片が変化したもので本当の花は花の中心部にある6枚の小さな変わった形の花びらに囲まれています。実は液果で暗紫色をしています。実は目立つのですが、花は至って地味です。森の科学館の左、第一樹木園入口の左斜面にあります。
(↑上の写真)左=クサイチゴ、中=モミジイチゴ(下向きの花なので下から上目線で撮る)、右=ニワトコ
(↑上の写真)左と中=ミヤマウグイスカグラ、右=ヤマブキ
ミヤマウグイスカグラ(深山鶯神楽)はスイカズラ科スイカズラ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州、四国、九州に生える落葉低木」とあります。園内説明板によると「日本特産の落葉低木ヤマウグイスカグラの変種。高さ3mに達する。花期は4~6月。果実は6~7月。ミヤマウグイスカグラは各部に腺毛が多く、若枝、葉柄、花柄、子房に目立つ」とあります。(註:腺毛=植物体の表面に生える毛のうち、分泌物を出すものの総称。繊毛=細胞から生えている毛状の構造のもの)