野楽力研究所

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東京都図師小野路・・・令和4年10月20日

 底の抜けたような秋晴れの中、東京都図師小野路歴史環境保全地域を巡りました。ここは生活を保障しながら歴史環境を保全しようとするもので、特別に手を加えることは極力しないようにしています。そのため観光受けは狙ってはいませんので、大変不便で道の整備も昔のままです。そのかわり、自然が残された昔の谷戸風景が残されています。アクセスなど不便ですが、中を巡ると、昔のわらべ歌や子守歌、唱歌などが歌いたくなります。今日の様子です。(写真画面をクリックすると拡大されます。)

(↑上の写真)左=雲一つない青空が広がる小野路、中=シロヨメナ、右=ヤクシソウ

 シロヨメナ(白嫁菜)はキク科シオン属。APG牧野植物図鑑によると「本州、四国、九州から台湾、朝鮮半島、中国の山地に生える多年草」とあります。いがりまさし著「日本の野菊」の解説が分かりやすかったので引用します。「山の木陰で小さな白い野菊を見たらまずシロヨメナと推測できる。ノコンギクによく似ているが頭花は少し小さい。ノコンギクでも白色のものがあるので注意が必要。葉はノコンギクが明るいグリーンであるのに比べると、ややくすんだ緑色をしている。脈はノコンギクが羽状脈の傾向が強いのに対してシロヨメナは3行脈の傾向が強い。葉の質感は、ノコンギクはゴワゴワと波打った感じになることが多く、シロヨメナはぺらっとしている。ノコンギクが山地や人里の日当たりのよいところに多いのに対して、シロヨメナはほぼ山地に限られ、半日陰に多い」ということです。いわゆる野菊の仲間はどれも似ていて標本的な株に出会わないと区別がしにくいですが、この解説はよかったと思います。

(↑上の写真)左=ノハラアザミ、中=アキノノゲシ、右=ミゾソバ

 ハラアザミ(野原薊)はキク科アザミ属。APG牧野植物図鑑によると本州中部以北の山中で乾いた草地に生える多年草という。春から夏に咲くノアザミに似ていますが、こちらは夏から秋に咲くのでノハラアザミと春よりも名前がハラだけ長くなっていると覚えました。両方が咲いていることもあり、その場合、根生葉が残っていればノハラアザミ、根生葉が無ければノアザミです。上の写真では根生葉が残っています。また、花の総苞片(刺の部分)が粘つくのは春のノアザミで、粘つかないのは秋のノハラアザミです。

(↑上の写真)左=ツリフネソウ、中=真っ青な秋の空、右=クコ

(↑上の写真)左=熟柿と青空、中=ススキ、右=チャノキ

(↑上の写真)左=シラヤマギク、中=セイタカアワダチソウ、右=キバナガンクビソウ

(↑上の写真)左=富士山の頭の遠望、中=カタバミ、右=イモカタバミ

(↑上の写真)左=コブナグサ、中=アシボソ、右=ノガリヤス

 コブナグサ(小鮒草)はイネ科コブナグサ属。APG牧野植物図鑑によると北海道から琉球列島、およびアジアの熱帯に分布。田畔や原野に多い1年草という。八丈島では黄八丈の黄色染料に使うというので、それが東京にも生えているというので興味を持ちました。ススキでいう穂の部分に当たる枝穂と言われる棒状の2cm位の長さの穂が10本ほど束になったようにみえるのが特徴です。その色は茶色のものと思っていたのですが緑のものもあるということです。目立たない草ですが、黄八丈として役立っているんですね。上の写真を拡大してご覧ください。枝穂が束になっているのが分かると思います。言われてみないと見過ごしてしまいます。

(↑上の写真)左=小野神社、中=センダングサ、右=アメリカセンダングサ

 小野路の名称は小野神社に因みます。小野神社は平安初期の公卿でもあり、文人でもあった小野篁をその7代目の子孫が武蔵の国司に赴任した時に祀ったのが発祥ということです。小野篁小野小町の祖父ともいわれます。篁の父は陸奥守であった関係で小野小町の出身地は秋田と言われます。秋田県には秋田美人が多いのはそのためでしょうか。