野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

都立神代植物園・植物多様性センター・・・令和4年4月1日

 令和4年度の自然観察・観察始めに、漸く再園された神代植物公園(水生植物園)・植物多様性センターを訪れました。前夜の冷たい雨に桜の花も打たれました。桜吹雪はこれからです。今日の様子です。   (写真をクリックすると拡大されます。)

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(↑上の写真)左=神代植物公園正門風景、中と右=園内風景

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(↑上の写真)左=神代曙の原木、中と右=神代曙のアップ写真

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(↑上の写真)左=八重紅枝垂れの樹姿、中と右=そのアップ写真

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(↑上の写真)左=寒緋桜の樹姿、中と右=そのアップ写真

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(↑上の写真)左=源平枝垂れの樹姿、中と右=そのアップ写真

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(↑上の写真)左=オニシバリ、中=シキミ、右=ユキヤナギ

 オニシバリ(鬼縛り)はジンチョウゲジンチョウゲ属。東北地方南部から東海地方の太平洋側、近畿地方以西、四国、九州に分布し、高さ1m以下の夏に落葉する小低木、日本固有種ということです。別名ナツボウズ(夏坊主)は夏に落葉するため。有毒植物で雌雄異株。花びらのようにみえるのは肉厚の萼(がく)が変化したもので、沈丁花の花びら(萼)に似ていますね。秋に新葉を出し、冬を越します。鬼縛りは、鬼もこの樹皮で縛られると解けないほど繊維が強靭なので、名付けられたということです。実(み)は液果で秋に赤く熟します。樹皮は和紙の材料になるということです。樹姿が整わないので庭木には不適とのこと。解説によると、そのひねくれた生態から、花言葉は「変わり者」とされているようです。いいじゃないですか、野楽力研究所のオニシバリの花言葉は「おら、おらで、ひどりいぐも」(芥川賞受賞 若竹千佐子著の題名を借用)です。(山渓ハンディ図鑑「木に咲く花」など各種図鑑、Web参照)

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(↑上の写真)山野草園にて、左=ヒトリシズカ、中=エンレイソウ、右=ミヤマエンレイソウ

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(↑上の写真)山野草園にて、左=カタクリ、中=ショウジョウバカマ、右=キクザキイチゲ

 ショジョウバカマ(猩々袴)は、以前はユリ科でしたから、古い図鑑ではユリ科になっています。新分類(APG分類)ではシュロソウ科ショウジョウバカマ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「日本各地の山地で少し多湿なところに生える常緑の多年草。根茎は短く、葉は常緑で地に広がってロゼット状、少し革質で滑らか。花は新葉の出る前に花茎を出し、花を短い総状花序に数個~15個つける。花茎は花後に30~40cmに伸び、花被片(花びらとがく)は落ちないで宿存する。和名は花を猩猩の赤い顔、葉の重なりを袴に見立てたものか」と、あります。「猩猩と袴」と見立てるには相当眼力が必要ですね。夏に高い山を登山すると雪解け水が滲み出ているような山の斜面に咲いているのをよく見かけますね。

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(↑上の写真)山野草園にて、左と中=トキワイカリソウ、右=バイモ(アミガサユリ

 トキワイカリソウ(常盤碇草)はメギ科イカリソウ属。本州の山陰地方から北陸地方にかけての落葉樹林下に生える多年草。名前の由来は、トキワ(常盤)は一年中葉が常緑であり、イカリソウ(碇草、錨草)は、4枚の花びらに長い反り返った距があり、それが船の錨のように見えるから。北陸では白花、山陰では紅花のものが目立つという。太平洋側には、イカリソウが分布し、冬には地上部が枯れる。(各種図鑑、Web参照)

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(↑上の写真)左=キケマン、中=ヤブレガサ、右=キジムシロ

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(↑上の写真)どれもミツバツツジ

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(↑上の写真)どれもヒカゲツツジ、左=樹姿、中と右=そのアップ写真

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(↑上の写真)どれもキブシの花穂、左=雌木の花穂、中=雌花、右=雄花

 キブシの花について「Web:BOTANIKA」によると、(↑上の写真参照)「花は小さく7〜9mm程の鐘形です。花弁が4枚、がく片も4枚で内側の2枚は大きく花弁状になります。開花時期でも花弁は大きく開かず半開きの状態です。花穂は、雌花より雄花の方がやや長く、花の色は、淡黄色をしているのが雄花、やや緑色をしているのが雌花です。よく見ると雌花の雄しべは退化していてほとんどありません。葉が出はじめると、淡黄色の雄花は花穂ごと落ちてしまいます。雌花は結実し、緑色の果実がつきます。熟すと黒くなり8mmほどの楕円形で、ぶどうのような姿になります。実は苦くて食べることはできません。」ということです。上の写真で雌花、雄花の様子がよく分かると思います。雄花の花穂の方が雌花の花穂よりも長いので、「鼻(花)の下が長いのは男(雄木)」と覚えておきましょう。

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(↑上の写真)左=キブシ雄木の花穂、中=ハナズオウ、右=ヒュウガミズキ

【↓大温室にて】

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(↑上の写真)左=エンジェル・トランペットの仲間、中=ブラジリアン・ローズ、右=西洋カリガネソウの仲間                                                              (↓フウリン・ブッソウゲ)

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【↓水生植物園にて】

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(↑上の写真)左=水生植物園入口、中=ミツガシワ、右=ノウルシ

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(↑上の写真)いずれもフキ(フキノトウ

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(↑上の写真)左=左右を里山(丘陵)に囲まれた谷地に水生植物が植えられている。中=ヒメオドリコソウ、右=つくし

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(↑上の写真)左=アオキの雄花、中=アオキの雌花、右=ムラサキケマン

 アオキ(青木)はミズキ科アオキ属。北海道南部、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島南部に分布し、山地の林下に普通に生える常緑低木。日本からヨーロッパにもたらされたアオキは、ツバキ同様、冬に緑がなくなるヨーロッパでは珍重されました。そこで、学名をAucuba japonicaと名づけ、種名にjaponica(ジャポニカ=日本の)と記しているという。属名Aucuba(アウクバ)は、青木葉(アオキバ)で、即ちAucuba japonicaは「日本の青木葉」ということであるという。雌雄異株で、雄花序(花穂)は7~15cmと大きい。雄花には雄しべが4個あり、雌花では雄しべは退化している。上の写真のように4個の雄しべ(葯=花粉袋)が確認できます。雌花序は長さ2~5cmと小さく、雌花には雄しべは無く、雌しべが1個ある。しかも、雄花は雌花よりも先に咲き、雌花が成長するのをじっと待っているんですね。今の時季、ちょっと早く咲く雄花とちょっと遅れて咲く雌花の様子が見られます。朝井まかて著『先生のお庭番」に「ことに先生から『必ず(船に)積んでくれ』と指示されているのは、熊吉が作出した新種の紫陽花と、萼紫陽花の多くの品種、そして日陰でも美しい葉を広げる擬宝珠などである。射干(しゃが)や紫蘭、藪蘭、それに赤い実が美しい青木なども欧羅巴の庭によく合うに違いないと先生は言い、熊吉は航海中に枯れ死する数も含めて大量の株の準備を進めていた」と書かれています。先生はシーボルト。園丁の熊吉(クマキチ)のことを先生はうまく発音できずコマキと呼んでいましたね。学名でもアオキバというところをアウクバと発音しているのは仕方ないことですね。

【植物多様性センターにて】

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(↑上の写真)左=植物多様性センター西入口、中=ヤマルリソウ、右=ルリソウ

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(↑上の写真)左=ヒメウズ、中=タカオスミレ、右=正門から奥の情報館を遠望

 ヒメウズ(姫烏頭)はキンポウゲ科ヒメウズ属。関東地方以西、四国、九州、及び朝鮮半島南部などに分布し、山裾や路傍に生える多年草の小草本皇居東御苑で見たのがはじめてで、知らないと見落としてしまいそうな小さな草花です。姫は小さいということを表し、烏頭(ウズ)はトリカブトの漢名ということです。烏頭が生薬として日本に渡来し、花の形が舞楽の鳥兜に似ているのでトリカブトという和名がつけられたようですが、それまでは漢名烏頭を使用していたのでしょう。ですからヒメトリカブトと言って差し支えはなかったはずですが、どういう経緯か、こちらは姫烏頭ということになったようです。花はとても小さいので納得できるほどの確認は難しいですが、茎につく葉はトリカブトの葉に似ていると言われれば似ています。

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(↑上の写真)左=レンギョウ、中=サラサボケ、右=オオカナメモチ

 オオカナメモチ(大要糯)はバラ科カナメモチ属。本州西部、奄美大島、徳之島、西表島から台湾、中国南部にかけての暖帯を中心に分布する常緑高木。若葉は紅葉を帯びるが落葉する時にも紅葉する。花は散房状で上部が平たんな円錐花序。カナメモチという和名の由来は、その材を扇の要(かなめ)に使い、モチノキ(黐)に外観が似るためとされる、という。カナメは金目と思いましたが、全く違い、要でした。モチノキは樹皮から鳥もちを作ることから名付けられたのですが、オオカナメモチは、そうではないようです。(各種図鑑・Web参照)

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(↑上の写真)左と中=ヨコハマヒザクラ(横浜緋桜)、右=クロモジ

 クロモジ(黒文字)はクスノキ科クロモジ属。山渓ハンディ図鑑「木に咲く花」などによると、東北地方南部以南の太平洋側、四国、九州北部の山地の落葉樹林内に生える落葉低木で、若い枝は黄緑色から暗緑色で、普通黒い斑が入る。材は白く、独特の香気があるので楊枝にする。葉や種子からは香油が採れる。花は葉の展開と同時に開花する(↑上の写真、参照)。黄緑色の小さな花が集まってつき、雌雄別株で、雄木の雄花の雄しべは9個。雌木の雌花は、子房の周りを黄色の腺体(密腺が棒状になったもの)が囲む。退化した仮雄しべは腺体より小さい。松田修著「花の文化史」によると、クロモジは黒文字の意味で、この枝に地衣類の一種が付着して、文字を書いたように見えるので、この名がある、という。牧野富太郎著「牧野新日本植物図鑑」によると「(日本名『黒文字』は、)おそらく黒文字の意味で、樹皮上の黒色の斑点を文字になぞらえたものだろうと思われる、とあります。両大家の説です。