野楽力研究所

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東京都薬用植物園・・・令和2年9月9日

 東京都薬用植物園には、いわゆる薬草が、諸外国のものを交えて栽培されています。いつ訪れても花を見ることが出来ます。タバコも花が見られました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=入口からの様子、中=キクイモモドキ、右=スイフヨウ

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(↑上の写真)左と中=オオケタデ、右=クズ

 クズ(葛)はマメ科クズ属。日本各地の山野に生えるつる性の多年草。日本では秋の七草のひとつとして親しまれていますが、アメリカやイギリスでは蔓延りすぎて嫌われものになっているようです。クズの英語名はそのままkuzuだそうです。(水上勉著「金色の淵」から)(面づくりの畑野は、奈緒子の案内で若狭納田庄の民芸の里を訪ねた)「半島のつけ根に掘られた隧道をくぐると岐れ道だった。一方は舗装のしてない石ころ道で、両側に草が生い茂っている。この辺りに多い葛である。葉が広くて、勢いよく育っているので、枝先がつるになって道路をまたいでいる。車はそこを折れて草を踏みしめながら走る。やがて「ここよ」と奈緒子が言った」「葛の葉の向こうに鉛色の沖が見える」山間を縫うように山襞にひっそり立ち並んでいる集落の若狭の山と沖の海の風景、葛の葉の青い匂いと潮風の香りが伝わってくるような描写です。

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(↑上の写真)左=カリガネソウ、中=カワミドリ、右=シモバシラ

 シモバシラ(霜柱)は、シソ科シモバシラ属。従って、茎は四角。冬に、茎に霜柱(帯状の氷柱のようなもの)ができることで、特に冬の高尾山では有名。夏の終りの今頃に純白の花房が葉腋ごとにつく(写真)ので、その花もきれいです。シモバシラほどではありませんが、霜柱ができるものにセキヤノアキチョウジがあります。条件がよければ、ミズヒキやオカトラノオなどにもできるようです。霜柱は、草が枯れた後、茎の導管がストローのように毛細管現象で水を吸い上げ、それが凍って氷となり導管を破って外に出て見事な霜柱を現出してくれます。放射冷却の厳しい早朝などは推奨です。

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(↑上の写真)左=シラヤマギク、中=オミナエシ、右=スギモリケイトウ

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(↑上の写真)左=ハッカ、中=ニチニチソウ、右=ヒツジグサ

 ニチニチソウ日々草)はキョウチクトウ科ニチニチソウ属。マダカスカル原産で天明元年(1781年)渡来し栽培されるようになった1年草ということです。日本大百科全書によるとマダガスカル、ジャワ、ブラジルなど熱帯地方原産で亜熱帯や熱帯地方では半低木性多年草だが、日本では耐寒性がなく、春播き一年草として扱う、ということです。薬草園で栽培されているのは、説明板によると、日々草の成分アルカロイド白血病抗がん剤の製造原料になるからということです。水泳の池江璃花子選手が白血病で長く入院され、回復されたという明るいニュースが伝わってから、さらに日々草のファンが増えたようです。

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(↑上の写真)どれもタバコ

 (再録)タバコ(煙草)はナス科タバコ属。南米熱帯地方を原産とされる多年草。ご存知の芥川龍之介の「煙草と悪魔」のお話です。「悪魔はフランシスコ・ザビエルと一緒にイルマンの一人に化けて、日本へやって来た。日本での退屈な時間に園芸を始めた。持ってきた種子を蒔いて育てたものは、茎の先に漏斗のような形をした薄紫の花をつけた。悪魔には、この花の咲いたのが、骨を折っただけに、大変うれしかった。と、そこに通りかかった牛商人が『もし、お上人様、その花は何でございますか』と問うと、上人に化けている悪魔は『この名だけは教えられない』という。悪魔は『三日の間に誰かに聞いてもいいですよ。この名があたったら、これをみんなあげますよ。その他にお酒なども』という。『賭けですよ』ともいう。悪魔は『もしあたらなかったら、あなたの体と魂をもらいますよ』と右の手をまわして帽子を脱いだ。三日目の晩、牛商人は、目論んでいた計画を実行した。即ち、牛の尻を思い切りたたいて畑の中に追い込んだのだ。けたたましい牛の鳴き声と蹄の音に、寝込んでいた悪魔はびっくりして窓を開け『こん畜生、何だって、おれの煙草畑を荒らすのだ』と怒鳴った。牛商人は、首尾よく、煙草と云う名が分かり、云いあてて、悪魔に鼻をあかさせた。悪魔は敗北した。が、それ以後、日本全土に煙草を普及させることができ、日本を堕落させることにおいては、悪魔として勝利した」煙草には、こんな挿話があったんですね。(一部翻案)

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(↑上の写真)左=ウメモドキ、中=ゴンズイ、右=ナンバンギセル

 ンバンギセル(南蛮煙管)は、ハマウツボナンバンギセル属。姿は、南蛮から渡来したキセルのような形をしています。日本全土、ススキ、ミョウガギボウシ、サトウキビなどの根に寄生する1年草。「牧野富太郎植物記2野の花2」によると「ナンバンギセルは古くは、思い草と呼ばれていた。万葉集巻十「道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ」(道端に茂る尾花の下蔭の思い草のように、今さら何を一人ひそかに思い煩ってうちしおれたりしようか。)と詠まれている。明治36年前田曙山の「園芸文庫」に『万葉の歌では、道のべの尾花が下の思い草とされている。尾花が下(した)と特にいったのは、尾花、つまりススキと特に深い関係があるためである。リンドウ、ツユクサオミナエシなどは、ススキの原にも生えるがススキのない所にも生える。ススキの下にしか生えないものとしてはナンバンギセルとすべきである』と主張した。この説が入れられ現在では万葉の思い草はナンバンギセルであるということが定説になった。」ということです。

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(↑上の写真)左=タヌキマメ、中=ゲンノショウコ(赤花)、右=アメリノウゼンカズラ