あちらこちらの公園でカタクリが咲き始めました。ここ数日、強い冷たい北風が吹き、咲き始めた花が首をすぼめてしまいました。ここ野山北公園のカタクリも寒さに花が開かずに閉じたままのものが多くなりました。ミズバショウも温かい風が吹くのを待っているようです。ネコノメソウも目を開くタイミングを見ているようです。今日の様子です。(写真をクリックすると拡大されます)
(↑上の写真)左=公園入口の池、中=カタクリの群生する北斜面、右=カタクリ(片栗)
(↑上の写真)いずれもカタクリ(片栗)
カタクリ(片栗)は、ユリ科カタクリ属。『APG牧野植物図鑑Ⅰ』によると「日本各地、およびロシア極東の温帯から暖帯に分布する山中に生える多年草」とあります。『万葉集 植物さんぽ図鑑』(木下 武司著)によると「(カタクリの)語義は印象的な花ではなく、葉だけに由来する。葉に鹿の子模様があって幼葉は片葉しかつけないから片鹿の子と名づけられたのです。現在名のカタクリは、東北地方の方言名カタコユリの訛りで、デンプンが取れる鱗茎を栗に見立てたのかもしれません」との見立てです。万葉集で大伴家持は『もののふの八十(やそ)をとめらが汲み乱(まが)ふ寺井の上の堅香子(かたかご)の花』=現代語訳「春になって大勢の娘たちが寺の井戸の水を汲みに来る。その近くには堅香子の花が咲き乱れており、娘たちの様子も咲き乱れる花のようだ」と詠んでいます。
(↑上の写真)いずれもネコノメソウ(猫目草)
ネコノメソウ(猫目草)はユキノシタ科ネコノメソウ属。南千島、北海道、本州、九州北部に分布し、山地の湿地、谷間、山麓の湿った場所などによく群生する多年草。和名「猫目草」は、果実が深く細く割れた様子が、瞳孔が縦に狭くなった昼間のネコの目に似ていることに因みます。仲間にヨゴレネコノメがあり、時々他の公園で見かけます。(『APG牧野植物図鑑』や『ウィキペディア』など各種Webを参照翻案しました)
(↑上の写真)左と中=アオイスミレ(葵菫)、右=カンスゲ(寒菅)
アオイスミレ(葵菫)はスミレ科スミレ属の多年草。葉は徳川家の家紋葵に似ていて丸い感じで縁に規則的な細かい丸い感じの鋸歯が綺麗に並んでいること、春一番に咲き始めること、地上茎は地表を這い、立ち上がらないことなど(上の写真参照)が特徴です。徳川家の家紋はフタバアオイ(二葉葵=ウマノスズクサ科カンアオイ属)を基に描かれたもので、京都加茂神社の御神紋とされていたものを徳川家の前身である松平氏が、所領の三河国にある賀茂神社の氏子だったことに由来するそうです。(『牧野植物図鑑』や各種Webを参照翻案しました。)
(↑上の写真)いずれもウグイスカグラ(鶯神楽)
ウグイスカグラ(鶯神楽)はスイカズラ科スイカズラ属。『APG牧野植物図鑑』には「本州・四国の山野に生える落葉小低木。全体が無毛である点がヤマウグイスカグラと異なるが、区別しない意見もある」と記述されています。花後、小さなグミのような赤い液果が熟します。名の由来は諸説あり、鶯を捕まえる「狩り座(かりくら)」が訛ったもの、鶯がこの木の中を飛び回る様子が「神楽を舞う」ようだからというもの、鶯がこの木の中に隠れるようだから「鶯隠れ」が訛ったものなど、どれもそれらしい感じがします(各種Webなど参照)。牧野植物図鑑では、恐らく鳥のウグイスに関係があろうがはっきり分からない、とあります。
(↑上の写真)いずれもコブシ(辛夷)
コブシ(辛夷・拳)は、モクレン科モクレン属の落葉高木。ハクモクレンとの違いは写真から分かると思います。葉室麟著『辛夷の花』に「澤井家の中庭には、辛夷が植えられている。毎年早春には、あでやかな白い花をつけるが、いまはまだ蕾のままだった。ある朝、志桜里は庭に出て、辛夷の蕾を見つめながら、今年は辛夷の花が咲くのは遅いかもしれない、と思った。そのとき、男の声がした。「辛夷の花がお好きですかな」志桜里が振り向くと、生垣越しに着流し姿の半五郎が立っているのが見えた。・(略)・すみ(女中)は、掃除の合間に庭に出て、うっとり辛夷の花を眺めていることがあった。白い辛夷の花は、青空に浮き出てまばゆいほど輝いて見えたのだ。隣りの庭に出てきた半五郎が明るい口調で声を掛けた。「新しい女中さんか」<略>空に伸びた辛夷の枝の形には味わいがある。懸命に枝を伸ばす様は、常に何事かに努めている人の姿のように思えて志桜里は好きだった」とあります。