野楽力研究所

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府中郷土の森・・・令和4年2月17日

 都立公園が軒並みコロナのために閉園されています。ここは府中市立ですので開園しています。しかも3月6日まで「梅まつり」が開催されていますので2月は休園日がありません。今年はどこの梅林も開花が遅れているようで、ここ郷土の森でも、ほとんどの梅の木が蕾になったままです。ロウバイ園ではソシンロウバイ、マンゲツロウバイが満開です。両ロウバイは随分花期が長いです。慌てて正月に見ることはありませんでしたね。旧河内家住宅の東側では、早春の黄花三友の一つマンサクが満開をちょっと過ぎたところのようです。福寿草が梅林の根元で花を咲かせています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=入口正面、中=唐梅(とうばい)、右=野梅(やばい)

 ウメ(梅)はバラ科アンズ属。西日本の弥生時代の遺跡数ヶ所から梅の遺物が出土され、縄文時代の遺跡からは未発見ということですから、梅は、弥生時代に移入されたもののようです。梅は「歳寒の三友(松竹梅)」の一つに挙げられ、歳寒の折に、凛としたその立ち姿が愛でられています。ここ府中郷土の森の梅の種類は、解説板によると早咲きの八重野梅、八重寒紅、白牡丹などが約1割、中咲きの白加賀、月影、新茶青などが約7割、遅咲きの豊後、紅千鳥、小向などが約2割とあります。今日咲いているのは早咲きの1割の梅ですから、9割の梅の見頃はまだまだこれからだといえます。慌てずに観賞にお出で下さい。なお、梅の分類の仕方はいろいろあり、花梅を「3系9性」に分類する仕方もあります。野梅系、緋梅系、豊後系の3系、1野梅性、2紅梅性、3難波性、4紅筆性、5豊後性、6緋梅性、7杏性、8摩紅性、9青軸性、の9性に分けるというものです。ところで梅の香りは濃くはありませんが馥郁と香りますね。本園でその馥郁とした香りを明治時代、泉鏡花が体験したように体験できます。(泉 鏡花著『婦系図』より)「お蔦は、湯から帰って来た。艶やかな濡れ髪に梅花の匂い馥郁として、繻子の襟の烏羽玉にも、香やは隠るゝ路地の宵。格子戸を憚って、台所の暗がりへ入ると、二階は常ならぬ声高で、お源の出迎へる気配もない。(註:香やは隠るゝ梅の花の色は見えないけれどその素晴らしい香りだけは隠れようもない。)」という場面が描かれています。

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(↑上の写真)=どれも鹿児島紅

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(↑上の写真):左と中=一重緑萼、右=まだ硬い蕾の梅林

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(↑上の写真)どれも玉牡丹                       

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(↑上の写真)どれも八重寒梅(やえかんばい)

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(↑上の写真)どれも八重野梅(やえやばい)

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(↑上の写真)左と中=新茶青(しんちゃせい)、右=梅林の様子

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(↑上の写真)左=大和牡丹、中=鹿児島紅梅、右=左の2樹は太宰府から寄贈されたものであることを記した記念碑

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(↑上の写真)どれもマンゲツロウバイ(満月蝋梅)

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(↑上の写真)どれもソシンロウバイ(素心蠟藍)

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(↑上の写真)どれもマンサク 

 マンサク(満作、万作)は、マンサク科マンサク属。(Web:「植木ペディア」によれば)「早春、他の花に先駆けて「まず咲く」ことからマンサクという説や、枝いっぱいに花を付けることからマンサクとする説、花の様子が豊作を祈って踊る姿に似ているためマンサクとする説などがある」ということです。(他のWebによれば)「マンサクは日本固有種ですが、近縁で中国原産のシナマンサクというアジア系品種もあり、北アメリカの東部-南部に分布するアメリカ系品種もある」とのこと。花の形が変わっていますね。黄色っぽい紐が捻じれているような感じのものは4本の花びら(花弁)で、花びらの根元にある紫褐色の4弁のものは萼片、その中に雄しべ4本と2本の花柱をもつ(雌しべ)子房があります。(田中肇著『花の顔』によれば)「雄しべ雌しべも同じ紫褐色で統一されているのは、紫褐色はハエに、肉を連想させ、反射的に口を伸ばさせるからで、そこには4本の密腺がある」とうことで、蜜を吸う間に葯の蓋が開いて花粉を背中にこすりつけるわけです。

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(↑上の写真)どれも同じマンサク(?)

 園内の名札ではどれもマンサクと書かれています。

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(↑上の写真)どれもフクジュソウ福寿草

 フクジュソウ福寿草)はキンポウゲ科フクジュソウ属。(『牧野新日本植物図鑑』によれば)「国内に一般に野生するが、中部以南では稀にしか見られず、北地に多く産す。草質の軟らかい多年草草本」といいます。(Web: Green Snapによれば)「原産地は、シベリア、日本、中国、朝鮮半島。ゴボウのような根を多数持っていて毒性があります。強心作用、利尿作用があり民間薬として使われることもありますが、毒性が強く一般人の利用は危険とされています。漢字の福寿草は「幸福」と「長寿」を意味し、正月を祝う花として名付けらています。福寿草は黄色の花が一般的ですが、江戸時代から園芸品種が多数開発され、白色、紫色、オレンジ色などあり、花形も一重、八重、万八重と種類があります」とのこと。(田中肇著『花の顔』によれば)「早春、たくさんある黄色の花弁が、パラボラアンテナのように開く。蜜はないが、たくさんの雄しべがハナアブに花粉を提供している。花は初め地面に接するように咲いているが、花の柄が伸びてくると、太陽を追いかけるようになる。常に太陽の方を向き、光沢のある花弁が凹面鏡のように光を集めるのだ。そのため花の中の温度は外より10℃近く高くなる。アブが花粉をなめている間、花は光を集めてアブを暖める。体を暖めればアブは活発に花から花へと飛び回って花粉を他の花へ運ぶからだ。これは早春でまだ少ない昆虫を有効に使う知恵である」とあります。