JR高尾駅から北へ徒歩10分。この時季ジャコウソウ、トリアシショウマが迎えてくれました。エゴノネコアアシがたくさん見つかりました。第1樹林地と第2樹林地以外は開放されていませんでしたので、入園料100円、全園が開放されるのは来年の3月以降とのこと。今日の様子です。
(↑上の写真)左=森林科学園入口、中=ナツツバキ(夏椿)、右=ガクアジサイ(額紫陽花)
ガクアジサイ(額紫陽花)はアジサイ科アジサイ属。中央の細かい花の集まりの花が両性花で、周りの大きい装飾花は、花弁のように見えるものは萼の変化したもので受粉のための虫を呼び寄せる働きをしているということです。役割を終えると裏返ります。これが、萼が変化したものというので「萼アジサイ」かと思いましたが、この萼が額縁のように花の周囲を囲っているというので「額アジサイ」と額という漢字を当てているようです。ここ第一樹林地に植栽されている上掲写真のガクアジサイは解説板によると「関東南部から伊豆和歌山の海岸地帯に野生。アジサイの原種で耐潮性に強い」とあります。アジサイの原種として高幡不動尊境内で見られるヤマアジサイもあります。この辺りの事情について山本武臣著『アジサイの話』によると「ヤマアジサイの系統は関東以西の湿っぽい山地に自生し小型、葉には光沢がない。ガクアジサイは、伊豆・房総・伊豆七島などに自生する葉が厚くて光沢がある。大株になる。エゾアジサイは、新潟・長野県の豪雪地帯から北の山地、および日本海側の山地に自生。葉は大きいが光沢はなく毛深い。これらはもともとひとつだったものが生息地域の環境に適応するために進化したものだと考えられている。アジサイの仲間は変異が多く、また自然交雑による中間型が広く分布し、厳密に分類するのは難しい」とあります。元を正せば同じものということのようです。
(↑上の写真)いずれもジャコウソウ(麝香草)、右=群落
ジャコウソウ(麝香草)はシソ科ジャコウソウ属。『APG牧野植物図鑑』によると「北海道、本州、四国、九州の山の谷間や木陰の湿った場所に生える多年草」とあります。牧野富太郎著『植物一日一題』に「実際この草は、麝香の香りがすると誇りやかに言い得るほどのものではない。それが多数生えている所に行き、その前葉を揺さぶり動かすと、実に微々彷彿としてただ僅かに麝香の香りの気がするかのように感ずる程度に過ぎなく、ジャコウソウという名を堂々とその草に負わすだけの資質はない」とあります。鼻を近づけて嗅いでみても何も匂わなかったというのが実際です。期待外れの感がありました。
(↑上の写真)左=オオバギボウシ(大葉擬宝珠)、中=ヤブレガサ(破れ傘)、右=ネジバナ(捩花)とヨツバムグラ(四葉葎)
(↑上の写真)左と中=エゴノネコアシ(えごの猫足)、右=オカトラノオ(丘虎の尾)
(↑上の写真)左と中=トリアシショウマ(鳥脚升麻)、右=トリアシショウマのピンクの花(変種)
(↑上の写真)左=ヤハズアジサイ(矢筈紫陽花)、中=タケニグサ(竹煮草)、右=ムラサキシキブ(紫式部)
あまり見かけないアジサイ、ヤハズアジサイ(矢筈紫陽花)が第2樹木園で咲いていました。アジサイ科アジサイ属で『APG牧野植物図鑑』によると「紀伊半島、四国、九州の山地に生える落葉小低木。花は夏、当年枝に大きな花序をつける」とあります。紀伊半島、四国、九州のものというので、関東地方では見かけない花です。当園のものは植栽されたものということです。葉の形が矢筈のようだというので矢筈紫陽花と名づけられたということです。矢筈とは矢を弦にあてがう部分のことで、2つに割れています。葉の切れ込みがその部分に似ているということです。面白い葉の形ということで覚えておけそうです。
(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ(鵯花)蕾、中=ウマノミツバ(馬之三葉)、右=ビヨウヤナギ(未央柳)
(↑上の写真)左=ガクアジサイ(額紫陽花)、中=ネムノキ(合歓木)花と蕾、右=園内の様子
(↑上の写真)実、左=ヤマモモ(山桃)、中=コウゾ(楮)、右=サンショウバラ(山椒薔薇)
ヤマモモ(山桃)はヤマモモ科ヤマモモ属。『APG牧野植物図鑑』によると「福井県関東地方以西から琉球列島、および朝鮮半島南部、台湾、中国、フィリピンの暖帯から亜熱帯に分布。海岸近くの山地に生える常緑高木。高さ15m、径1m。花は春、雌雄異株。核果は初夏に熟し、甘酸味があり集合果を食用とする」とあります。暖帯、亜熱帯の暖かい地方に育つ相当な高木の様です。司馬遼太郎著『翔ぶが如く』(文春文庫第4巻)に「島津久光は横浜から汽船で西下した。鹿児島に着き、磯の別邸に入ったのは2月20日で、江藤新平らが佐賀城を占領した翌日である。背後には風化した死火山のような山があり、別邸はその裾野にある。庭にヤマモモの木がある。その木の向こうは海であった(一部翻案)」という描写があります。明治新政府の先行きがまだ不透明な時です。庭のヤマモモは国の先行きを暗示するようにどっしりと枝を張っていたに違いありません。
(↑上の写真)左=コバノヒノキシダ(小葉檜歯朶)、オオバノイノモトソウ(大葉井之許草)、右=ヒメワラビ(姫蕨)
【↓駅から森林科学園までの一般道に咲いていた花】
(↑上の写真)左=コヒルガオ(小昼顔)、中=ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)=アゼリア、右=ギシギシ(羊蹄)
(↑上の写真)左=ムクゲ(槿)、中=ワルナスビ(悪茄)、右=ヤブカラシ(藪枯)の花の蜜を吸うクロウリハムシ(黒瓜葉虫)
ムクゲ(槿・木槿)はアオイ科フヨウ属。中国原産といわれる落葉低木。ムクゲは大きな5枚の花びらの中に長い雌しべの軸柱があり、その先端は3つに分かれ、柱頭となっています。雌しべの軸柱の途中から多数の雄しべが出ています。これはフヨウ属(ハイビスカス属)の植物すべてがもつ特徴だそうです。フヨウ、モミジアオイなどフヨウ属の植物はすべて花の構造はよく似ています。花は一日花ですが次々に咲くので永久に咲き続ける花ということで、韓国では「無窮花」といわれ、王朝が次々に代わっても韓国は永久という象徴の花になっています。(各種Web参照、翻案)