野楽力研究所

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東京多摩地区街中自然観察・・・令和5年5月4・5日

 人に排除されながらもしっかり根を下ろして花を咲かせている草花があります。街中には園芸種のきらびやかな花が氾濫しています。そんな中でひっそり花を咲かせている外来種、在来種に注目しました。ハハコグサは希少になりました。チチコグサは見つかりませんでした。戦後入って来たイモカタバミが幅を利かせ、江戸末期に入って来たムラサキカタバミを追いやっています。今日の自然の様子です。

(↑上の写真)左=郊外の風景、中=トキワハゼ(常盤爆)、右=オニタビラコ(鬼田平子)

 トキワハゼ(常盤爆)はサギゴケサギゴケ属。各種Webによると「日本各地の道端などに生える1年草。冬を除いていつでも花をつけるので「常盤(ときわ)」とついた。「ハゼ」は「爆ぜる」から出た言葉で「はじける」を意味する。花がポンとはじけたような姿に見えるから」という。ムラサキサギゴケと似ていますが、地面に這う茎(ランナー、匍匐茎)があるとムラサキサギゴケですが、トキワハゼには、この匍匐茎がありません。それに花も一回り小さいです。ちょっと見、脣のような形をした唇形花で結構きれいな花姿です。除草する前に愛でてあげたいです。

(↑上の写真)左=ナガミヒナゲシ(長実雛芥子)、中=キツネアザミ(狐薊)、右=ドクダミ(蕺草、蕺)<ドクダミの花が咲きはじめました>

 ドクダミ(蕺草、蕺)はドクダミドクダミ属。朝ドラ「らんまん」の第6週の花になりました。「APG牧野植物図鑑」によると「本州から沖縄の山野の樹陰や、庭の湿地に生える多年草」という。「牧野富太郎植物記2」によると「日本のほか中国、インドシナ半島にしか分布しない世界的には名高い珍しい植物。葉は緑色で、古くなると褐色、或は紅紫色になる。花は花弁のように見える4枚は、苞と呼ばれる葉の変化したものである。中心の花穂は、小花の集まり。この小花には、花弁はなく、萼もなく、3本の雄しべと1本の雌しべがあるばかり。雌しべの柱頭は3つに分かれている。しかし、この小花は、花の役目をしません。雄しべも雌しべもしなびていて繁殖能力がありません。そのため種子が出来ず、もっぱら、地下茎を伸ばして繁殖します。地下茎はいたるところで枝分かれし、茎を立てて蔓延ります。地下茎はわずかでも残っていると忽ち蔓延ります。ドクダミ漢方薬として用いられ、乾かした葉をに出して虫下しや、皮膚病に効くと言われます。葉を少し温めて揉み、はれ物に貼ると毒を吸い出すと言います。このためドクダミの意味は「毒を溜める」という意味だとも言われます。また、「毒痛み」の意味だとも言われます。ドクダミは古くから食用にも供され、煮れば臭気は消え、葉は柔らかく味も悪くありません」とあります。宇佐美りん著「推し、燃ゆ」に「ピーターパンが舞台を蹴り、浮き上がった彼の両手から金粉がこぼれ落ちる。4歳だったあたしが舞台を実際に観たあと、地面を蹴って飛び跳ねていた感覚が戻る。そこは祖父母の家のガレージで、夏になると生い茂ったどくだみの、鼻を刺激する独特のにおいがたちこめている」と自分がピーターパンを真似した思い出とドクダミの独特の臭気の印象を書き留めています。

(↑上の写真)左=アメリカフウロ(亜米利加風露)、中=ツルニチニチソウ(鶴日々草)、右=ハハコグサ(母子草)

 アメリカフウロ(亜米利加風露)は、フウロソウ科フウロソウ属。「ウィキペディア」によると、「北アメリカ原産の帰化植物。日本国内では、1932年に京都で発見された。現代では全国的に広がっている。在来種のゲンノショウコと同じ仲間である。アメリカフウロの葉はしばしば赤い縁取りが入る」とあります。葉は高原に咲くアサマフウロなどと同じようですので大きな花を期待しがちですが、咲いてみたら小さい花なのでちょっとがっかりする人もいます。しかし、よく見ると5枚の萼片と5枚の薄いピンクの花びらがあり、10本のおしべと先端が5つに分かれているめしべからできていてなかなか繊細です。

(↑上の写真)左=イモカタバミ(芋片喰)、中と右=ムラサキカタバミ(紫片喰)

 モカタバミ(芋片喰)は、カタバミ科カタバミ属。南アメリカの比較的標高の高い地域が原産。日本へは、第二次世界大戦後に観賞用として導入され、最近急速に拡大繁殖し、ムラサキカタバミを圧倒しているようです。街中自然観察では、ほとんどイモカタバミばかりでした。イモカタバミはムラサキカタバミに似ていますが、区別点は、上掲写真でも分かるように、花弁の中心部が赤く彩られていて目立ちます。

 ムラサキカタバミ(紫片喰)もカタバミ科カタバミ属で南アメリカ原産。江戸時代末期に渡来した帰化植物。つい最近までほとんどムラサキカタバミの薄赤い花色の可愛らしい花ばかりのようでしたが、最近は数をぐっと減らし、代わってイモカタバミが勢力を拡大しています。以前、環境省により要注意外来生物に指定されていましたが、平成27年に要注意外来生物リストは、生態系被害防止外来種リストに改編され、そのリストの「2.被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の集積に努める外来生物」に入っています。今では数を減らしているようで「被害に係る知見」とは縁遠くなりました。むしろ貴重種になるのではないか、と要らぬ心配をしています。

(↑上の写真)左=カタバミ(片喰)、中=アカカタバミ(赤片喰)、右=ツルマンネングサ(蔓万年草)

 カタバミ(片喰、牧野富太郎博士は傍食を用いる)は、カタバミ科カタバミ属。世界の暖帯から熱帯に広く分布し、日本各地の道端に生える多年草といわれます。多田多恵子著『したたかな植物たち』によると「葉が緑のものをカタバミ、葉が赤みがかるものをアカカタバミ、中間色のものをウスアカカタバミと呼び分けることもあるが、同じ種類の中での個体差である。花は朝開き、午後には閉じるが、午前中に活動するハチに合わせて花を開き、ハチが活動しない時や雨の日は花を閉じて花粉の流出を防いでいる。3つの小葉を合わせた葉元に水分量で葉の開閉をする組織があり、葉も夜には閉じて、夜間に放射冷却で葉の温度が下がるのを防ぎ、また、日中でも光が強く葉の温度が上昇しすぎる時には、葉を閉じて温度を下げるようにしている」ということです。足元の何気ない植物ですが、なかなか賢い生活をしています。赤い葉と緑の葉のカタバミは別種と思われがちですが、多田多恵子氏によると同種で色の違いは個体差ということです。中間の色のものも同種とうことで分ける意味はないということです。顔が白い人とそうでない人がいるようなものでしょうか。

(↑上の写真)左=オオキンケイギク(大金鶏菊)、中=グンバイナズナ(軍配薺)、右=ギシギシ(羊蹄)

(↑上の写真)左=ツタバウンラン(蔦葉鄆闌)、中=ペラペラヨメナ(ぺらぺら嫁菜)、右=アヤメ(文目)

 ペラペラヨメナ(ぺらぺら嫁菜)はキク科ムカシヨモギ属。『日本帰化植物写真図鑑』によれば、「中央アメリカ原産の多年生草本」とあります。葉が薄くてぺらぺらしている花がヨメナに似ているからつけられた名前ということですが、花の色が白から赤に変わる(はっきりしませんが)ことからゲンペイコギク(源平小菊)といわれることもあるそうです。源平小菊という名の方が相応しいかも知れません。

(↑上の写真)左=シラン(紫蘭)、中と右=(ハルノ)ノゲシ(春・野罌粟)

 ノゲシ(野芥子)はキク科ノゲシ属。「APG牧野植物図鑑」によると「アジアやヨーロッパの熱帯から温帯に広く分布。日本でも各地の荒地や道端などに普通に生えている2年草。茎の高さは1m内外で中空。葉はアザミに似ているが棘がなく柔らかい。茎や葉を切ると白い乳液が出す。花は、春から夏。若菜は食用になる」とあります。「ウィキペディア」によると「ヨーロッパ原産で世界各地に広まったと考えられている。日本には史前帰化植物として入ってきたものと思われる。越年草(二年草)。茎は太く、高さは50 - 100cm 程で軟らかく、中は空洞である」とあります。今回、観察に歩き回りましたが、ノゲシの咲いている花に出会ったのは今回がはじめてでした。正午前後の1時間程度しか開花しないようでした。その後、早朝にたくさん咲いているのを確認しました。この点、もっと調べる必要がありますね。

(↑上の写真)左=ブタナ(豚菜)、中=コバンソウ小判草)、右=チチコグサモドキ(父子草擬き)

(↑上の写真)左=マユミ(真弓)、中=カルミア、右=シャリンバイ(車輪梅)

 カルミアツツジ科 ハナガサシャクナゲ属(カルミア属)各種Webによると「北アメリカ東部の原産の常緑低木。蕾はコンペイトウのような形をしています。花が開くと星のような皿形になります。東京市長アメリカにサクラを寄贈したお礼として、大正4年にハナミズキなどとともに贈られてきたのが最初とされています」ということです。可愛らしい花に魅了されて今まで蕾のことは頭にありませんでしたが、今回、両方を見ることが出来、蕾は変わっていて、蕾も可愛らしいですね。

(↑上の写真)左=ハクチョウゲ(白丁花)、中=テイカカズラ(定家葛)、右=カラタネオガタマ(唐種招霊)

 カラタネオガタマ(唐種子招霊)はモクレンモクレン属。中国南部原産、樹高4mくらいの常緑樹という。花にはバナナのような甘い強い芳香があり、遠くからも感じ取れる。東京都薬草園にもある。オガタマノキ(招霊木)は日本の関東以西から台湾まで自生しているが、カラタネオガタマは江戸時代中期~明治初期に中国から移植されたもので、それゆえ「カラタネ(唐種)」といわれている。「オガタマノキ」は、神道思想の「招霊」(おぎたま)から転化したものといわれる。日本神話においては、天照大神が天岩戸に隠れてしまった際に、天鈿女命がオガタマノキの枝を手にして天岩戸の前で舞ったとされる。神社によく植栽され、神木とされたり、神前に供えられたりする」とあります。(植木ペディア、ウィキペディアなど各種Web参照)