野楽力研究所

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武蔵村山市立野山北公園・・・令和5年3月22日

 東京地方は急に暖かくなって一斉に春の花が開きました。ここ市立野山北公園ではミズバショウはきれいに咲いています。カタクリは満開です。蕾を探すのは大変です。奥の窪地にはネコノメソウの群落がありました。公園の足許にも咲いています。天気予報があまりよくありませんが、見るなら、今がチャンスです。今日の様子です。(周囲の里山六地蔵尊経由でゆっくり一周して1時間弱。公園入口には広い駐車場があります。)

(↑上の写真)左=公園入口、中=ミズバショウカタクリの保護区、右=六地蔵

(↑上の写真)いずれもミズバショウ

 ミズバショウ水芭蕉)はサトイモミズバショウ属。APG牧野植物図鑑によると「中部地方以北、北海道および千島、サハリン、カムチャツカ、東シベリアの温帯から寒帯に分布。山中の湿地や湿原に群生する多年草」ということです。白いヒジャブのようなものは、内側の棍棒のように見える肉穂花序(小さな花の集合体)の掩いで、苞とか苞葉または仏炎苞といわれ肉穂花序を保護する役割と目立たない花を目立たせて虫を呼び込む役割をしているものだそうです。松田修著「花の文化史」によると「花は一見、カラーに似た仏焔苞で淡緑色の肉穂花序を出し、この肉穂の下部に雌花、上部に雄花をつける」とあります。子孫を繁栄させるためにいろいろ工夫を凝らしています。水芭蕉の花を見る度に先祖代々の親のありがたみを感じますね。名前の由来は湿地に生える芭蕉に似た葉の植物という意味だそうです。

(↑上の写真)いずれもカタクリ

 カタクリ(片栗)はユリ科カタクリ属。APG牧野植物図鑑によると「日本各地、およびロシア極東の温帯から暖帯に分布。山中に生える多年草一茎に一花と一対の葉がある」とあります(上掲写真参照)。松田修著「花の文化史」によると「カタクリの名は、カタコユリの略されたもので、これにはカタコユリ、カタバナ、カタコ、ブンダイユリ、カガユリなど多くの地方の呼び名がある。万葉集大伴家持もののふの八十(やそ)をとめらが汲み乱(まが)ふ寺井の上の堅香子(かたかご)の花』(=現代語訳「春になって大勢の娘たちが寺の井戸の水を汲みに来る。その近くには堅香子の花が咲き乱れており、娘たちの様子も咲き乱れる花のようだ」)という堅香子(かたかご)の花というのもこのカタクリの花を指したもの」ということです。

(↑上の写真)いずれもネコノメソウ、右=ネコノメソウの群落(この窪地は見つけにくいです)

(↑上の写真)いずれもウグイスカグラ

 ウグイスカグラ鶯神楽)はスイカズラスイカズラ属。APG牧野植物図鑑によると「本州・四国の山野の生える落葉小低木。枝分かれが多く枝は若い時は紅紫色を帯びる。花は春に葉が出ると同時に葉腋から細い花柄を出し、1個ずつ下垂する。和名ウグイスカグラは鳥の鶯に関係があるらしいがはっきりしない」とあります。和名の由来は、はっきりしないようですが、鶯を捕まえる「狩り座(かりくら)」が訛ったもの、鶯がこの木の中を飛び回る様子が「神楽を舞う」ようだからというもの、鶯がこの木の中に隠れるようだから「鶯隠れ」が訛ったものなどが、相応しいように思います。福島県出身の方からは「この花が咲くころ、今はその風景が見られなくなってしまったが、種籾を蒔く準備をするため水温む苗代の代掻きを始めるのである。やがて苗が育ち田植えをする頃は、赤い実をつけよく食べたものである」との便りが寄せられています。今春も同じような光景が見られているでしょうか。

(↑上の写真)いずれもアオキ、左=実、中=雌花、右=雄花

 アオキ(青木)はアオキ科アオキ属。APG牧野植物図鑑に「北海道南部から琉球朝鮮半島南部、台湾に分布し、本州と四国東部の暖温帯内の樹林内に生え、庭木としても植栽される常緑低木。雌雄異株で雌花序は小さく、雄花序は大きい」とあります。シーボルトによってヨーロッパにもたらされたアオキは、椿と同様、大歓迎されました。しかし、アオキは赤い実をつけた雌木だけだったので、次の年から実が出来なかった。日本は鎖国中であり、雄木を持ち出すことができなかった。アオキの雄木は、開国と共にエディンバラ王立植物園のプラント・ハンター、ロバート・フォーチューンによって即ヨーロッパに移入され、それ以来、アオキは雌雄が揃い赤い実も楽しめるようになったということです。なお、雌花、雄花はこれからです。ぜひ、観察してみたいです。因みに雄木の雄花の方が先にたくさん咲き、後から雌木の雌花が咲くという自然の摂理がはたらいています。

(↑上の写真)左=タチツボスミレ、中=ナガバノスミレサイシン、右=カントウタンポポ

 カントウタンポポ(関東蒲公英)はキク科タンポポ属。APG牧野植物図鑑によると「東北地方南部から近畿地方東部の太平洋側の野原や道端に生える多年草」とあります。関西から西にかけては、白花タンポポが優勢のようです。子どもたちがタンポポの画を描くと関東の子供たちは黄色く描いて、関西から西の子供たちは白く描くそうです。もし親戚の方がおられたら確かめてみてください。セイヨウタンポポは総苞片の外側総苞外片が反り返って(反曲)していますがカントウタンポポは反り返らないので区別がつきます(上掲写真参照)。タンポポの英名は「dandelion(ライオンの歯)」というそうで、タンポポの葉の形からの連想のようです。タンポポは、花の茎(花茎)の切り口は中空円形で筒状になっています。6~7cm程切り取って、切り口両端の周囲を2~3mmの幅で切り込みを入れてしばらく置くと反り返り鼓のような形になります。その形から鼓を敲いた時の音を連想してタンポン→タンポポと呼ばれるようになったと言われます。

(↑上の写真)左=ユキヤナギ、中=コブシ、右=アカシデ 

 ユキヤナギ(雪柳)はバラ科シモツケ属。APG牧野植物図鑑によると「東北地方南部以西、四国九州、および中国大陸に分布し、川沿いの岩の上などに生え、また、観賞用に、庭などに栽植される落葉小低木。花は早春、若葉とともに前年の枝の葉腋に2~5個ずつ固まって咲く。和名雪柳は葉が柳に似て多数の白い小花が咲くのでいう」とあります。今回あまり剪定されず自然の樹姿を残している様でしたので撮りました。長く伸びた枝が白い花を雪のようにつけ、風に吹かれて枝垂れ柳のように揺れている風情に風趣を感じますね。ユキヤナギというと三浦綾子著「塩狩峠」を思い出し、自己犠牲の精神を忘れまじ、と思い返すところです。ただし、塩狩峠は北海道ですから植栽されたものと思われます。