野楽力研究所

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国立昭和記念公園・・・令和5年1月17日

 昨晩、雨が降り、気温も下がるということで霜柱に最適と思いましたが、曇り空で気温が下がらず、霜柱は出来ていませんでした。代わりに、節分草が早くも咲いていましたので気持ちを落ち着かせることができました。ソシンロウバイ、紅梅、白梅が綻び始め、セントウソウが一株咲いています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=シモバシラ(霜柱)の案内表示(こもれびの丘のこの案内表示の後ろ側で見られます)、中と右=セツブンソウ

(↑上の写真)どれも紅梅(八重寒梅)

 ウメ(梅)はバラ科アンズ属。徳富蘆花著「自然と人生」の「初春の雨」にある記述は、正に昭和記念公園にある「こもれびの里」の風景を述べたものではないかと思われます。こもれびの里は昔の武蔵野の面影を再現させようとしたものですから、徳富蘆花のこの表現は当然念頭に置いているものと思われます。「午前春陰、午後春雨、暖かにして長閑(のどか)に、且静かなり。……梅花は香を漬(ひた)し、椿は紅を流す。麦の緑湿(うるお)いて、山の碧(みどり)煙れり。此雨や如何に春色を催すらん」 梅花、椿、麦も本日の写真にあります。昨日から小糠雨が春雨として降っていましたね。

(↑上の写真)どれも白梅(八重野梅)、右=里の農家前の白梅の木

 ウメ(梅)はバラ科アンズ属。「APG牧野植物図鑑」によると「中国中部の原産で日本では、花は観賞、果実は食用として広く各地で栽培される落葉高木」とあります。さて、梅を観賞するには古来「老痩蕾稀」(ろうそうらいき)がよい」、といわれたそうです。「老いた枝・開いていない蕾・少ない花が良い」ということだそうです。上の写真の様子を言い当てたようですね。この時期のウメの様子にぴったりです。ぜひ、その折々の風情を味わってください。

(↑上の写真)どれもソシンロウバイ

(↑上の写真)どれも寒椿、右=散った花びら

(↑上の写真)どれもヤブツバキ、右=散った花がら

 ヤブツバキ(藪椿)はツバキ科ツバキ属。「APG牧野植物図鑑」によると「日本各地に分布する常緑高木。晩秋から春、枝端に1~2の花をつけ、花弁は5~6枚、雄しべは合着して筒状を成し、花後、花弁と一体となって落下する」とあります。筒状になった雄しべと花弁は一体となって花托(花床)から離れて落下します。これはまるで首を斬られたような格好です(上掲右の写真)。そのため武士に嫌われ、縁起でもないので庭には植えないことにしていたようです。今日ではそのような考えはありません。写真、上の段の寒椿は、ヤブツバキと同じ仲間ですが、花の散り方は花びらがバラバラになって散ります。朝井まかて著『実さえ花さえ』の記述から「見送る者も見送られる者も、静かである。吐く息が白い。風呂敷包みを手にした雀は皆に深々と頭を下げると、くるりと背を向けて歩き始めた。さくさくと、霜柱を踏む音だけが聞こえる。「雀ちゃん」お袖の手を振り切って、お梅が後を追った。藪椿が咲き揃った混ぜ垣の前で追いつき、小さな身体を丸く膨らませるようにして声を張り上げた。『行ってらっしゃい』雀は切り前髪のお梅の頭をくしゃくしゃと撫で、『行ってきます』と言い、もう一度皆に礼をして外へと踏み出した。(雀と今まで過ごした万感の思いが溢れ出るような場面でしたね。)

(↑上の写真)左=セントウソウ、中と右=ウグイスカグラ

(↑上の写真)左=クマザサ、中=こもれびの丘のまだ冬枯れの様子、右=こもれびの里の麦畑

 クマザサ(隈笹)はイネ科ササ属。APG牧野植物図鑑によると「京都盆地周辺が原産。本州から九州では野生化し、群生している」ということです。クマザサは如何にも熊が出そうなところに生えているので熊笹と書きたくなりますが、冬に葉の縁に白い隈取ができ、それが歌舞伎役者の隈取りに似ているので牧野富太郎氏がクマザサ(隈笹)と名づけたというのが名前の由来ですから、漢字としては隈笹ということになります。この時期、隈笹が華やいで見えるのは、周囲に緑のものが何も無いからでしょう。隈笹は、緑の若葉が初めて冬を迎える時に縁を枯らし隈取りの葉となります。秋までは隈取りのある古い葉と隈取りの無い若い葉が混在していました。冬になって全体が隈取られた葉となり、しかも新しく隈取られた若い葉が幅を利かせて上を覆うので目を惹くようになるのではないかと思います。