野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

高尾山(ケーブルカー→野草園→3号路→山頂→6号路を下る)・・・令和4年9月13日

 サル園に併設されている野草園は穴場です。ほとんど登山道に山野草が咲いていないこの時期、ここでは花が見られます。スズムシバナが咲き、キレンゲショウマがうつむき加減に黄色の花をつけています。登山道ではヤマホトトギスがやっと花をみせてくれています。各種シダの観察を楽しみたいです。今日の様子です。<写真をクリックすると拡大されます>

(↑上の写真)左=ケーブルカー乗り場、中=野草園入口、右=シュウカイドウ

(↑上の写真)どれもキレンゲショウマ

 キレンゲショウマ(黄蓮華升麻)はアジサイ科キレンゲショウマ属。日本の固有種で宮崎県市房山を南限とする希産植物の一つということです。宮尾登美子著『天涯の花』はこの花にまつわる小説です。キレンゲショウマはレンゲショウマの黄色い花と思いがちですが、花姿が下向きのところは似ていますが花形は全く違います。しかもレンゲショウマは(御岳山で有名ですが)キンポウゲ科です。キレンゲショウマはアジサイ科ですから同じ仲間とは言えません。どうしてこういう名前が付いたのか理解できませんが、皆さまはどう考えますか。しかし、このお陰で両者の理解を深めることができたことは喜ばしいことでした。

(↑上の写真)どれもスズムシバナ、左=紫花、中=群生、右=白花

 スズムシバナ(鈴虫花)はキツネノマゴ科イセハナビ属。「APG牧野植物図鑑」によると「近畿地方以西、四国、九州及び韓国済州島、中国大陸中部の暖帯に分布。山地の木陰に生える多年草」ということです。暖帯のものなのによくこの野草園で増えていると思います。ラン科植物にスズムシソウという名があるので近年は本種にスズムシバナの和名を使うことが多いそうです。関東地方にはもともと無い花なので、これを見た時には「何の花?」と思いました。「花は秋、朝開いて午後には散る」ということです。これからまだ楽しめそうですが、午後には散るということですから、午前中の入園をお奨めします。

(↑上の写真)左=カリガネソウ、中=マツカゼソウ、右=モミジガサ

(↑上の写真)左=イセハナビ、中=フジカンゾウ、右=イノコヅチ

 イセハナビ(伊勢花火)はキツネノマゴ科イセハナビ属。「APG牧野植物図鑑スタンダード版」によると「中国原産で、観賞用に栽培され、九州の低山の林内に帰化するやや低木状の多年草」ということです。Web「かぎけん花図鑑」によると「イセハナビ(伊勢花火)は東南アジア原産で、キツネノマゴ科イセハナビ属の多年草です。夏から秋に、薄赤紫色の唇形の花を咲かせます。日本へは観賞用として中国を経由して伝来したものが野生化しました。葉は対生し、花弁の先は5深裂します。日本では本州岐阜以西から九州の山地の木陰に生える多年草」ということです。APG牧野植物図鑑スタンダード版では「中国原産」としていますが、Web「かぎけん花図鑑」は「東南アジア原産、中国経由で日本に渡来した」とあります。どちらを信頼したらいいでしょうか。いずれにしても日本に渡来したもので、岐阜以西に帰化しているようです。関東地方では見られないものですから、ここ野草園で見た時には「何という花だろう?」と思いました。

(↑上の写真)どれもシュウブンソウ

 シュウブンソウ秋分草)はキク科シオン属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「宮城県以西から琉球列島および朝鮮半島南部、台湾、中国、マレー、インドの暖帯から熱帯に分布し山地の木陰に生える多年草」とあります。ちょうど今の時期、秋分の頃に花を咲かせるというので秋分草と名づけられたそうです。とても地味な草でよく注意しないと見過ごしてしまいます。高尾山には登山道の左右にたくさん見られました。一見ヤブタバコの感じです。主茎の途中から枝を四方に広げているところも花も遠目には似て見えます。この草を知ると秋分の日(9月23日)の前後に妙に気づくようになります。

(↑上の写真)左=ヤマホトトギス、中=フユイチゴ、右=マルバハギ

(↑上の写真)左=ノブキ、中=アカソ、右=カラムシ

(↑上の写真)左=オオバノイノモトソウ、中=フモトシダ、右=イノデ

(↑上の写真)左=ジュウモンジシダ、中=ナツノハナワラビ、右=ヤブソテツ

(↑上の写真)左=イワガネゼンマイ、中=イワガネゼンマイの葉裏、右=リョウメンシダ

 イワガネゼンマイ(岩が根発条)はホウライシダ科イワガネゼンマイ属。Web「岡山理科大学」によれば「北海道から九州、東アジアに広く分布する常緑のシダ植物。森林の谷筋などに生育する。同じ属によく似たイワガネソウがあるが、葉裏の葉脈が(イワガネソウは網の目状になるのとくらべ)イワガネゼンマイは二叉に別れたままどこまでも合流しない(ゼンマイ=発条のように)平行脈であること、イワガネゼンマイの小羽片の先端は急に細くなる(が、イワガネソウは小羽片の中部が最も広く、先端に向けて次第に狭くなる)ことにより区別できます(一部翻案・写真参照)」

(↑上の写真)左=ベニシダ、中=ゲジゲジシダ、右=ホソバカナワラビ

 ホソバカナワラビ(細葉鉄蕨)はオシダ科。村田威夫共著「シダ植物」によると「常緑性。やゝ乾燥した林床に生育する。照葉樹林内ではしばしば大群落になる」とありますが、大群落を見たことが無く、単独のことが多い印象を受けています。ですから、これを見た時にはラッキーという気持ちでカメラを向けました。北川淑子著「シダハンドブック」には、「『カナワラビ』といわれるシダは、葉が革質で硬く、表面が金属光沢を放っていることからつけられた名で、『ホソバ』とは羽片が細いから」名づけられたとあります。確かに上の写真でも金属的光沢を放っています。羽片も 締まった細身の感じです。 

(↑上の写真)左=浄心門、中=高尾山頂、右=琵琶滝