野楽力研究所

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野川公園自然観察園・・・令和4年9月3日

 秋の気配がどことなく近づいてきているように感じます。ここ野川公園自然観察観察園では、秋を知らせるカリガネソウが咲きはじめました。また、草や木の実が色づき始めました。なお、自然観察センターは改築取り壊しのため休館中です。新規開館は未定です。今日の様子です。

(↑上の写真)左=改築される自然観察センター、中=自然観察園入口、右=園内の様子

(↑上の写真)左と中=カリガネソウ、右=オミナエシ 

 カリガネソウ(雁草)はシソ科カリガネソウ属。別名:ホカケソウ(帆掛草)。牧野新日本植物図鑑によると「北海道、本州、四国、九州から朝鮮、中国に分布し、山地や原野に生える多年草で、高さ1m位、強い不快な臭気を持つ、茎は四角形で直立し上方は枝分かれする」とあります。Web:ヤサシイエンゲイによると「花びらは5枚で、下の一枚が大きめで白い斑点が入ります。雄しべと雌しべの姿が非常に特徴的で、最初上向きに伸びて途中でくりっと大きく下に湾曲します。下の花びらが大きいのは昆虫が蜜を採るために留まりやすいため、白い斑点が入るのは蜜の位置を教えるため、雄しべと雌しべが湾曲するのは留まった虫の背中に花粉を付けるため(もしくは、付いた花粉を雌しべにくっつけるため)、とされています」ということです。名前の由来について、花の形が雁に似ている様には見えませんね。帆掛け船のようには見えないこともありません。みなさんはどう思いますか?

(↑上の写真)左=キツリフネ、中=イヌキクイモ、右=ノダケ

(↑上の写真)左=ヌスビトハギ、中と右=フジカンゾウ

 ヌスビトハギ(盗人萩)はマメ科ヌスビトハギ属。日本全国の山野の林下に生える多年草。和名盗人萩は、泥棒が足音を立てないように歩く足跡が豆果(種子)の形が似ているため。現代的には豆果の形はサングラスに見立てられています。従って、小さいサングラスはヌスビトハギ、大きいサングラスはフジカンゾウとして見分けられます。豆果には短いかぎ型の毛が生えていて、衣服などに引っ付き、ひっつき虫などと呼ばれています。フジカンゾウも同じです。

 フジカンゾウ(藤甘草)はマメ科ヌスビトハギ属。本州以南の山野の林内に生える多年草。和名は、花が藤の花のようであり、葉が甘草の葉のようであることから藤甘草と名付けられたといいます。多年草なので一度根づくと根は木化し、除去に苦労します。種子はヌスビトハギと同じようにサングラス型の引っ付き虫で子供たちが遊ぶにはいいですが、この種子の拡散によって翌年はすごくフジカンゾウが蔓延ることになります。草丈も大きいので、他の草を圧倒します。花はきれいなので植えたくなります。株を増やさぬように注意しながら世話してみてください。

(↑上の写真)左=ヤブラン、中=アキカラマツ、右=ヤマハギ

(↑上の写真)左=ミズヒキ、中=キンミズヒキ、右=ミソハギ

 キンミズヒキ(金水引)はバラ科キンミズヒキ属。本州、四国、九州、琉球列島および朝鮮半島、台湾、中国の暖帯から温帯の山野や道端に生える多年草という。この草の名前が何でキンミズヒキなのか未だに理解できないでいます。ミズヒキはタデ科キンミズヒキバラ科で全くちがうものです。タデ科のミズヒキは花を表から見ると赤で裏返してみると白なので赤白の水引といわれれば「それはそうですね」と言わざるを得ませんが、金水引のどこに水引の様子が見られるのか不思議です。APG牧野植物図鑑では「金水引の意味で、細長い黄色の花穂を金色の水引(タデ科)にたとえたものである」としています。大先生のこの説明で納得できますか、どうでしょうか?

(↑上の写真)左=ミズタマソウ、中=メハジキ、右=ユウガギク 

 ミズタマソウ(水玉草)はアカバナ科ミズタマソウ属。沖縄を除く日本各地、および中国、台湾、朝鮮半島インドシナに分布し、山野の日陰または、半日陰に生える多年草ということです。上掲写真のように子房には白い毛があり、果柄は下を向きます。和名水玉草は、白い毛のある球形の子房を、露がかかった水玉にたとえたものということです。花・実が無い時には、長い葉柄の葉が対生している草姿はイノコヅチのような地味な草ですので、見落としている場合が多いです。しかし、この水玉の様子を一度見たら、来年も見たくなる魅力を持っています。見たことのない方は、ぜひ今年こそ探してみてください。

(↑上の写真)左=ハッカ、中=ワレモコウ、右=コバギボウシ

(↑上の写真)左=シュウカイドウ、中=ムラサキシキブ、右=シロシキブ

 シュウカイドウ(秋海棠)はシュウカイドウ科シュウカイドウ属。江戸時代初めに中国から渡来した多年生の帰化植物といわれます。湯浅浩史著「花おりおり」によると「雌雄異花で雄花は大きい2枚の萼片と小さい2枚の花弁を持ち、雌花は花弁を欠く」とあります。雄花は上の方で咲き、雌花は重そうに下の方で三角形をした子房に花弁はありませんが2枚の萼が花弁の役割をした花です。この垂れ下がった花穂の感じが寺院を飾る瓔珞(ようらく)のようなので別名瓔珞草と言われるようです。この名の方が相応しいように思いますが、どうですか。永井荷風著「墨東奇譚」に「四五日過ぎると季節は彼岸に入った。空模様は俄かに変わって、南風に追われる暗雲の低く空を行き過ぎるとき、大粒の雨は礫を打つように降り注いではたちまち止む。夜を徹して小息(おや)みもなく降り続くこともあった。私が庭の葉鶏頭は根元から倒れた。の花は、葉とともに振り落とされ、すでに実を結んだ秋海棠の赤い茎は大きな葉を剥がれて、痛ましく色が褪せてしまった。濡れた木の葉と枯れ枝とに狼藉としている庭のさまを生き残った法師蝉と蟋蟀とが雨の霽(は)れま霽れまに嘆き弔うばかり」という今年のように台風がらみの天候が続いた後の庭の様子を活写しています。

(↑上の写真)左=ヒオウギ、中=ヤブミョウガ、右=サンショウ

(↑上の写真:どれも熟す前の実)左=カラスウリ、中=ガマズミ、右=マユミ