野楽力研究所

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東京多摩地区街中自然観察・・・令和4年8月29日

 東京は朝夕大分涼しく感じられるようになりました。ヒガンバナが街中で寂し気に咲いていました。サルスベリは依然咲き続け、ムクゲも咲き揃いました。僅かに残された雑木林のコナラがナラ枯れ病に冒されています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=住宅地に畑が残る、中=マルバルコウソウ、右=ハナトラノオ(別名カクトラノオ

(↑上の写真)左=ヤイトバナ(別名ヘクソカズラ)、中=ヤブカラシ、右=センニンソウ

 センニンソウ(仙人草)はキンポウゲ科センニンソウ属。白い十字の花弁のように見えるのは花弁ではなく萼片。花が咲き終わった後に、雌しべの花柱が伸び、その痩果に白い仙人の鬚のような毛が生えるので、センニンソウと言われるようになったという。別名が「ウマクワズ(馬食わず)」と言われる有毒植物で馬や牛が絶対に口にしないとのこと。茎や葉の汁に触れると水泡の原因となる。葉は羽状複葉で小葉は3-7枚(多くは5枚)、葉柄は曲がりくねって他の物に絡むつる性。葉柄を絡ませて他の植物の上に伸び太陽光を独り占めにする。似たような花にボタンヅルがあるが、葉が牡丹のように3出複葉で粗い鋸歯があるので区別がつく。

(↑上の写真)左=モミジアオイ、中=スイフヨウ、右=フヨウ

 スイフヨウ(酔芙蓉)はアオイ科フヨウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば「母種はフヨウで葉や花の小苞や萼の形が同じ。花は秋、つぎつぎに開き、1日で萎む。朝咲き始めた時は白色、午後には淡紅色、夜にかけて萎み、紅色に変わり、翌朝になっても落下しないので七変化という。和名酔芙蓉は紅く変わるのを酒の酔いにたとえた。白が赤くなるので酔っているようだから酔フヨウという」とあります。芙蓉とは蓮の花の美しさを表現したものですから、酔芙蓉は和服の美女が恥じらいながら一献戴き、ちょっと左手を畳について顔を仄かに赤くした嫋やかな姿が想像されますね。篠綾子著「酔芙蓉」には「藤原忠雅は11歳の時、母方の叔父の家成の婿になった。この時忠雅は一株の白い花を携えていた。それまで暮らしていた邸から忠雅が手放さずに持ってきたものはこの花だけだ。――名は酔芙蓉。明方には真っ白な5枚の花弁を開いているが、午過ぎには恥じらいを帯びた薄紅色に染まり始め、夕方にかけて次第に濃さを増していく。「この花は酒に酔ったようだ」一体、誰が言い出したことなのか、聞いたことは無い。しかし、それが名の由来であることはわかる」と。

(↑上の写真)左=ノシラン、中=ノシランの葉裏の葉脈、右=ミソハギ

 ノシラン(熨斗蘭)はキジカクシ科(旧ユリ科)ジャノヒゲ属。Webによると「東海地方より西から九州、四国、南西諸島や韓国の済州島などに広く分布している常緑の多年草で、海岸線の林の下などに自生している」ということです。ここ街中では用水沿いに咲いています。冨成忠夫著「山渓野草ハンドブック 夏の花」では「ノシ(熨斗)は『のしをつけてやる』という熨斗で、贈り物の飾りに使い、正式には紅白の紙の中に干したアワビを薄く切ったものを入れる。このノシアワビに葉の形が似ているのが名の出所と思われる」とあります。Web「BOTANICA」には「花の茎(花茎)が、きし麺のように扁平で『麺棒でノシたような形』に見えることから名付けられたという説と葉(裏)の葉脈が筋ばっていて縁起物や進物に添える熨斗に似ていること(上掲写真参照)が名前の由来になったという説」が紹介されています。どの説がよろしいでしょうか? なお蘭と言ってもラン科ではありません。

(↑上の写真)左=ヒヨドリジョウゴ、中=雑木林、右=ナラ枯れ病のコナラ

 多摩地区の雑木林でコナラの木が枯れるナラ枯れが目立つようになりました。ナラ枯れ勝浦市HPによると「カシノナガキクイムシという体長4~5ミリ程度の虫が媒介するナラ菌により、起こるものです。カシノナガキクイムシによりナラ菌を持ち込まれた樹木の過剰な防御反応により、結果として根から水分等を運ぶ道管が目詰まりして通水障害となり、枯死に至るものです。6月から8月頃、ナラ菌を持ったカシノナガキクイムシが健全な樹木に飛来し穿入します。これにより、ナラ菌は樹木内に持ち込まれ、ナラ菌が蔓延することで、最終的に通水障害を発症し、特に水分を必要とする夏の時期に枯死してしまうものです。穿入したカシノナガキクイムシの成虫は、樹木内で産卵して死に、卵からかえった幼虫は樹木内で越冬し、成虫となった後、翌年の6月から8月頃に脱出して健全な樹木に飛来します。このようなサイクルを経て、ナラ枯れの被害地域は拡大していきます」とあります。研究者の黒田慶子氏によれば、「昔の薪炭林は20年前後の若齢林のため,カシノナガキクイムシの繁殖は,ほとんど見られませんでしたが、なによりも、(昔のように萌芽更新をせず)大径木が増えたことと,感染して枯死した木を処理せずに放置したのが被害拡大の原因で、気温が上昇したことが病気の蔓延に直接つながったのではありません」ということです。皆さんの近所の雑木林ではどうでしょうか。

(↑上の写真:どれもサルスベリ)左=ピンクの花、中=深紅の花、右=猿も滑る木肌

 サルスベリ百日紅、猿滑り)はミソハギサルスベリ属。Web「みんなの趣味の園芸」によると「サルスベリは新梢を伸ばしながら枝先に花芽をつくり、夏から秋にかけて次々と開花します。枝の生育にばらつきがあるので、百日紅」の名どおり、開花期が長期間(百日も咲き続ける)となります」とあります。枝の成長にばらつきがあるので長期間咲いているのですね。上掲写真右端に木肌を載せました。つるつるの木肌で、猿も滑って登れないので「猿滑り」とついたということが多少納得できそうです。

(↑上の写真)左=ヒルガオ、中=コヒルガオ、右=オシロイバナ

 ヒルガオ(昼顔)はヒルガオヒルガオ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「北海道から九州、及び朝鮮半島と中国に分布し、野原や道端に生える多年草」という。Webによると「ヒルガオは自家受粉しないだけでなく、自株受粉をしないので他株の花粉が付かなければ結実しない。都会にはヒルガオの株が複数育っているところが少ないので、ヒルガオがたねをつくるのは珍しい。それでも毎年花を咲かせるのは地下茎で増殖するからである」とあります。確かにヒルガオの種子をアサガオのようには見かけませんね。なお、ヒルガオとコヒルガオの区別点は葉の耳の形(葉脚)の違いです。ヒルガオは写真のように葉の耳が三角形、従って尖りが一つですが、コヒルガオの葉の耳は、尖りが2つになっています。

(↑上の写真)左=ダンドボロギク、中=アキノノゲシ、右=フジカンゾウ

 ダンドボロギク(段戸襤褸菊)はキク科タケダグサ属。北半球の温帯に広く帰化し雑草化した北アメリカ原産の1年草。ウィキペディアによると「日本には昭和8年(1933年)に愛知県段戸山で初めて帰化が記録され、和名ダンドの由来にもなっており、現在では日本全国で雑草化している。また、綿毛は、使い古したボロ布に例えられており、それがボロギクの由来にもなっている(一部翻案)」とのことです。上掲写真のように勢いがよく立派なので、どんなすばらしい花が咲くのかなぁ、と期待していると花が咲かないうちにたんぽ果(綿毛)になってしまい、ノボロギクと同じようにがっかりしてしまいました。育てたことがありますが、全く期待外れでした。

(↑上の写真)左・中=ムクゲ、右=都道の造成

(↑上の写真)左=ツユクサ、中=キツネノマゴ、右=アキノタムラソウ

(↑上の写真)左=ノウゼンカズラ、中=アメリノウゼンカズラ、右=インカカタバミ・バーギッド

 インカカタバミ・バーギッドカタバミ科カタバミ属で南アメリカ原産の園芸種。こんな都会に葉が三角形で特徴のある山地に生えるオオヤマカタバミ、ミヤマカタバミのようなカタバミがある、どうしたのかな?と調べてみるとインカカタバミ・バーギッドという園芸種のようでした。葉が黒紫色のものがインカカタバミの主流のようですが緑色のものはバーギッドというそうです。どこかの庭から逸出したもののようです。数年後にどうなっているでしょうか。