野楽力研究所

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白馬五竜高山植物園・・・令和4年8月19日

 北アルプスの白馬岳と五竜岳が眺望できる高山植物園ということで白馬五竜高山植物園と名づけられました。五竜テレキャビンのアルプス平山頂駅は標高1515m。乗車駅とおみ駅は標高818mですから、標高差700mをテレキャビンは8分で登ります。空には夏雲が湧きたっていますが、8月も半ばを過ぎると多くの花が盛りを終えています。そのような中でカライトソウ、コマクサ、シナノナデシコ、ホツツジなどがきれいに咲いています。今日の様子です。<写真をクリックすると拡大されます>

(↑上の写真)左=夏空の広がるとおみ駅前、中=とおみ駅、右=テレキャビンからの眺め

(↑上の写真)左=山頂アルプス平駅前、中=ヤマルリトラノオ、右=コオニユリ

 図鑑にはヤマトラノオ、ルリトラノオは載っているがヤマルリトラノオ(山瑠璃虎尾)は載っていない。両者の交雑種と考えたい。いずれにしてもオオバコ科クワガタソウ属。Web検索で調べると(Web:Tore -Teito com.)「ヤマルリトラノオは、亜高山帯の草原に生える多年草。まずクガイソウに似ているが、ヤマルリトラノオは葉が対生するので見分けられる、クガイソウは輪生する。また、同じような環境には、ヤマトラノオやその変種のヒメトラノオも生えるが、ヤマルリトラノオは、葉柄がはっきりしているので識別できる。ヤマルリトラノオは主に多雪地帯の亜高山帯に生えるのも目安になる」とあるので参考にしたい。葉柄がはっきりしているというが、どうだろうか。ここの高山植物園ではヤマルリトラノオとして名前を掲出している。8月18日の乙女高原のヒメトラノオの解説で「葉柄状の柄」ということで説明されたが、同じことで納得したい。

(↑上の写真)左・中=カライトソウ、右=ヤマユリ

(↑上の写真)左=シナノナデシコ、中=ツリガネニンジン、右=チングルマ

 シナノナデシコ信濃撫子)はナデシコナデシコ属。信州(信濃)を中心に中部地方の山地の高原や河原などの礫地に生える多年草。ここ高山植物園の説明板によると「国内でも長野県内に多く長野県のものが基準標本とされる日本固有種。学名にもシナノがついています。可愛い姿ながらも、石の多いところに生育する強い植物でもあります」ということです。因みに学名は「Dianthus shinanensis(シナネンシス)」。この花の名前の由来を知るまでは、すっかり「支那ナデシコ」と思っていました。日本固有種なんですね。

(↑上の写真)左=アカモノ(実)、中=シラタマノキ(実)、右=夏空と高山植物

(↑上の写真)左=アサギリソウ、中=タカネマツムシソウ、右=キバナノヤマオダマキ   

 アサギリソウ(朝霧草)はキク科ヨモギ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「北陸地方から東北、北海道および南千島、サハリンの高山や岩場に生える多年草」という。如何にも朝霧という感じの草姿・色ですね。朝霧というと朝霧高原が思い出されますが「ウィキペディア」によると「(朝霧高原は)富士山西麓の標高700-1,000 mに広がる高原である。朝に霧が発生しやすいことからこの名前がついたとされ、文久元年の『駿河志料』に『天子ヶ嶽の麓の郊原茅野を朝霧ケ原、又長者ケ原と云』とある」ということです。昔から朝霧は興味の対象のようです。朝霧高原も朝霧草も驚いていると思いますが、正に朝霧を彷彿とさせるような命名と思います。間もなく花が咲きますが、ヨモギ属ですから、期待するほどの花ではありませんが、ヤブタバコの花をもっと小形にしたような花をたくさんつけます。

(↑上の写真:どれもコマクサ)左=ピンクの花、中=ピンクと白花、右=白花 

 コマクサ(駒草)はケシ科コマクサ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「中部地方以北、北海道、千島、サハリン、東シベリアの寒帯に分布。高山帯の砂礫地に生える多年草。葉は根生。花は夏、花茎を出し長さ2cm位の花を1~数個垂れ下げる。和名「駒草」は花の形が馬の顔に似ることから」という。湯浅浩史著「花おりおり」によると「青白い葉とピンクの花のコントラストが絶妙で、高山植物の女王の名にふさわしい。ケシ科だが、北海道の大雪山系ではウスバキチョウの幼虫の食草となる」とあります。ここではピンクと真っ白の花がたくさん植栽されています。馬面というと圓楽を思い出しますが、駒草というと上品な娘さんの顔が思いだされますね。今回はタイミングよく、いい花をたくさん見ることができました。

(↑上の写真)左=キンレイカ、中=アキノキリンソウ、右=ヤナギラン

(↑上の写真)左=タカネナデシコ、中=クサボタン、右=イワショウブ

 クサボタン(草牡丹)はキンポウゲ科センニンソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州の山地に生える落葉低木。高さ1mくらい。葉は対生、3出複葉。花は秋、下向きに開き、雌雄異株。花弁はない。萼片4枚、長さ12~20mm。外面は白色の絹毛を被り、内面は紫色」という。筒状の花弁のように見えるものは4枚の萼片ということでしょう。このことを明確にしている図鑑は少ないです。佐藤邦雄著「軽井沢植物園の花」によると「北海道(渡島支庁)、本州の山地の林や草原に生える雑居性の落葉亜低木。茎は、木質で直立し、高さ1mほどになる。花期は8~9月。花は淡紫色で下向きにつく。花弁は欠存。日本に固有」とあります。花弁は欠存ということですから、花弁のように見えるものは萼片が変化したものといいたいのでしょう。日本固有種としています。牧野新日本植物図鑑によると「本種は木本であるが、全体の様子は草本のようであるからクサといった。草牡丹というのは、葉が牡丹のようであるからである」としています。

(↑上の写真)左=フシグロセンノウ、中=ユウスゲ、右=ヤマハハコ

 ユウスゲ(夕菅)はススキノキ科ワスレグサ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「本州中部、九州の山地の草原に生える多年草。夕方から開花し翌日の午前中に萎むのでこの名がある。やや芳香がある」とあります。ウィキペディアによると「別名が、キスゲ」とあります。キスゲにしては花の黄色が淡く、レモン色です。その説明に「花ではアントシアニンは合成されず、花弁は赤味を帯びない」とあります。これに関した詳しい説明書きは手元の資料にはありませんが、花弁がレモン色なのは、まず、こういうことだろうと思います。