野楽力研究所

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麦草峠野草園・・・令和4年8月5日

 ここの野草園は傍のヒュッテが世話をしています。近くに白駒池があるので観光客はそちらへ行かれるので、ここの野草園は知る人ぞ知る花の穴場になっています。いつ行っても訪問客はほとんどなくゆっくり山野草が観察できます。入園の協力金は100円です。今日の様子です。

(↑上の写真)左=麦草峠標高2127m、中=野草園入口、右=ハクサンフウロ

(↑上の写真)左=アキノキリンソウ、中=キリンソウ、右=シシウド

(↑上の写真)左=キンバイソウ、中=ゴマナ、右=カニコウモリ

 カニコウモリ(蟹蝙蝠)はキク科コウモリソウ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「四国、奈良県及び本州中部の亜高山帯の針葉樹林の下に生える多年草。花は夏から初秋、頭花は3~5個の管状花からなる。和名は葉形がカニの甲羅に似たコウモリソウという意味」という。葉形はタラバガニの甲羅に似ています。谷川で見かける沢蟹の甲羅を想像してしまうとあれ?と思ってしまいます。この草も一度見掛けると葉の形が変わっていて忘れられません。山に出かけた時には探してみてください。

(↑上の写真)どれもシュロソウ、左=草姿、中=根元の葉、右=花

 シュロソウ(棕櫚草)はシュロソウ科シュロソウ属。牧野新日本植物図鑑によると「中部以北の山地の林の下に生える多年生草本。葉は茎の下部に3~4枚出て、細長い披針形。7~8月頃、黒紫色の花を開く。花軸はざらついており、下部は雄花、中部以上は完全花である」という。吉野光子共著「花のハイキング」高原篇によると「アオヤギソウの変種とされる。茎の基部に古い葉鞘の繊維がシュロ毛のようになって残っているのはアオヤギソウも同じ。この類は環境によって形や花の色や形に変異が多い」とあります。根元の葉鞘にシュロのような繊維がついている様子が名の由来といわれます。黒紫色の花をつけたシュロソウのつんと飛び出た花茎が、緑の葉や赤色、白色系統の明るい色の花が多い野草園の中でひときわ異彩を放っています。一度見たら忘れられない花となるでしょう。

(↑上の写真)左=ノアザミ、中=ネバリノギラン、右=オヤマリンドウ

(↑上の写真)左=イブキジャコウソウ、中=タカネナデシコ、右=ウスユキソウ

(↑上の写真)左=ソバナ、中=ヒメシャジン、右=(白花)ヒメシャジン

(↑上の写真)左=ウツボグサ、中=(白花)ウツボグサ、右=ヤマハハコ

(↑上の写真)左=コバノトンボソウ、中=カライトソウ、右=ワレモコウ

 カライトソウ(唐糸草)はバラ科ワレモコウ属。本州中部の高山帯に生える多年生草本、日本固有種で滋賀県、長野県、岐阜県などで絶滅が危惧されているそうです。ワレモコウ属なので葉のつくりや草全体の姿はワレモコウに似ています。紅紫色の糸状のものは、雄しべの変化したものだそうでその糸の感じが中国伝来の絹糸(唐糸)のようなので、それに擬して唐糸草と名付けられたということです。鮮やかな紅紫色の唐糸が垂れ下がったような花が印象的でした。唐糸草というと中国からの渡来種かと思いがちですが、日本固有種、しかも中部地方の限られた高山にしかないという貴重なものです。(各種Web、牧野新日本植物図鑑、APG牧野植物図鑑スタンダード版等参照)

(↑上の写真)左=シャジクソウ、中=ヤマオダマキ、右=マルバダケブキ

 シャジクソウ(車軸草)はマメ科シャジクソウ属。APG牧野植物図鑑では「中部地方以北から北海道、および東アジア、ヨーロッパまで北半球冷温帯に広く分布。山地の草原や海岸に生える多年草」とありますが、牧野新日本植物図鑑では「本州中部ことに長野県の高原に生える多年生草本であるが、旧大陸には広く分布する」と、またウィキペディアでは「日本では、北海道、本州(宮城県群馬県・長野県)に分布し、海岸の岩上、山地の乾いた草原などに生育する」とあります。分布が全国区でなく偏りがあるので普通の図鑑には、なかなか掲載されていないようです。マメ科なので種子が5~6個入った豆果ができるとのこと。車軸草の名前の由来は、小葉が掌状、車輪状に並んだようすを「車軸」にたとえたものということで説迷?されていますがどうでしょうか。節を2段重ねるとヤエムグラのように車輪と見えなくもありませんが、少し強弁過ぎないでしょうか。むしろ葉より紅色の花に注目して、舞姫が紅い扇をかざして踊っているようなあでやかさに凝らして「舞姫草(まいひめそう)」と名づけるのはどうでしょうか。野楽力研究所からの提案です。そう想像するとクロード・モネが浮世絵に憧れ、ご夫人を舞姫に仕立てて描いた「ラ・ジャポネーズ」の画が思い出されますね。

(↑上の写真)左=クガイソウ、中=ヒメヨモギ、右=イタドリ