野楽力研究所

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八千穂高原自然園・・・令和4年8月5日

 天気のはっきりしない日でしたが、観察の時は、偶然晴れ間に恵まれました。ここではシカの食害でほとんど花は食べられてしまっていますが、フェンスで囲われた二か所の柵内では山野草が咲き乱れていました。なかなか観察できないトモエソウはシカの食害から免れたようで柵外でもたくさん咲いていました。満開の時期を少し過ぎていました。今日の様子です。<写真をクリックすると拡大されます>

(↑上の写真)左=自然園入口、中=入口を通って園内に出た様子、右=トチバニンジン

(↑上の写真)左=ソバナ、中と右=トモエソウ

 トモエソウ(巴草)はオトギリソウ科オトギリソウ属。日本各地の日当たりのよい草地に生える多年草。5枚の花弁が巴形になっている花ですが、一日しかもたない一日花。巴というと大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に木曽義仲の側室として出てきた巴御前を思い出します。第16回に義仲と共に出ていました。書物では「色白く黒髪長く、容顔まことに優れた強弓精兵、一人当千の兵者なり」といわれたそうです。黒髪を鎧に垂らし、烏帽子を被り、白鉢巻を締めた凛々しい姿が思い浮かびます。宇治川の戦い義経軍に攻められ、義仲は、巴御前に落ちのびるよう指示すると、(書物では)最後のご奉公と言って、敵将の首を斬り落とし、その後、姿を変えて東国の方へと落ちのびて行きました。しかし、彼女は強運で、頼朝から召され、和田義盛に嫁ぎ、朝比奈義秀を産み、和田合戦のあと越中の石黒氏に身を寄せ、その後出家して、菩提を弔う日々を送り、91歳で生涯を終えたと伝えられています。出演は、木曽義仲青木崇高、巴=秋元才加でした。こういうことで今年は、特にトモエソウの花を見たかったです。(平家物語源平盛衰記、各種植物図鑑・Webなど参照)

(↑上の写真)左=サワギク、中=苔むす園路、右=ヒカゲノカズラ

 ヒカゲノカズラは「ウィキペディア」によると「ヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属。北半球の温帯から熱帯域の高山に分布し、日本では沖縄以外に広く分布している。山野に自生する多年草で、カズラという名をもつが、つる状ながらも他の植物にからまることなく、地表を這っている。茎には主茎と側枝の区別がある。主茎は細長くて硬く、匍匐茎となって二又分枝しながら地表を這う。所々から根を出し、茎を地上に固定する。側枝は短くて、数回枝分かれをし、その全体にやや密に葉をつける。夏に、胞子をつける。まず茎の所々から垂直に立ち上がる枝を出す。この茎は緑色で、表面には鱗片状になった葉が密着する。茎は高さ5-15cm、先端近くで数回分枝し、その先端に胞子嚢穂(ほうしのうすい)をつける。(上の写真参照)」という。村田威夫共著「シダ植物」には「常緑性のシダの仲間。日当りのよい斜面や道端に生育する」とあります。山の林縁の日の当たる湿った斜面でよく見かけます。

(↑上の写真)左=ギボウシ、中=ツリフネソウ、右=アカバ

(↑上の写真)左=チダケサシ、中=ワレモコウ、右=クガイソウ

(↑上の写真)左=コオニユリ、中=ヤマハハコ、右=夏空の広がる遊亀湖

(↑上の写真)左=オカトラノオ、中=ウツボグサ、右=タムラソウ(蕾)

(↑上の写真)左=シシウド、中=ミヤマウド、右=ヒヨドリバナとアサギマダラ(チョウ)

(↑上の写真)左=ノリウツギ、中と右=フシグロセンノウ

(↑上の写真)左=ヤマユリ、中と右=ヤナギラン 

 ヤナギラン(柳蘭)はアカバナ科ヤナギラン属。APG牧野植物図鑑によれば「本州中部以北と北海道の山野の日当たりの良いところに生える多年草。根でよく増えるので、しばしば群落をつくる。葉の形が柳に似ているので柳蘭」とあります。Web「四季の山野草」によると「高原の草地に群生し、名前は、葉が シダレヤナギ などの柳の葉に似、花が シランなどのランの花に似ていることから。しかし蘭の仲間ではない」とあります。アカバナ科ですね。田中肇著「花の顔」には「花は雄から雌に性転換する。朝開いた花では雄しべの半数ほどが花粉を出し、2日目には残った雄しべの葯が裂ける。この間、雌しべは下を向いていて花粉を受けない。3日目になると前方に突き出ていた雄しべはうなだれ、雌しべが立ち上がって柱頭を4つに開いて花粉を受けるようになる。花穂は下から順に咲きあがるので、花穂の下部に雌の状態の花が、上部に若い雄の状態の花がつくことになる。マルハナバチは蜜を吸いながら、この花穂を登っていく。そのため、ハチはまず雌の花に別の花穂の花粉を渡し、やがて雄の花から花粉をもらって次の花穂に飛んでいくことになる」とあります。そばでゆっくり観察したいですね。

(↑上の写真)左=イブキジャコウソウ、中=キバナノヤマオダマキ、右=マルバダケブキ